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半導体入門講座・第27回

チップのニュースを読み解く

ニュースの「成熟プロセスが不足」「AIチップ」「大きなブレークスルー」も、ここまでに学んだことで読み解けますし、どこで話が飛んでいるのかも見えてきます。

わかること

要点の解説

成熟プロセス:何年もつくられてきた古い世代

成熟プロセスは、何年も量産されてきた古い世代のつくり方で、いちばん新しい何世代かは先端プロセスと呼ばれます。何ナノからが成熟かに統一された線はなく、よくある見方は28ナノとそれより古い世代です。この線は時間とともに前へ動きます。多くのチップは、スイッチをいちばん多く詰めこむ必要がありません。充電器や電源のチップは高い電圧や大きな電流に耐える必要があり、スイッチも絶縁も大きく、厚くつくります。音や温度のように連続して変わる信号を扱うアナログチップは、小さくしてもあまり得をしません。そして古いつくり方は安いのです。古い工場の装置の費用はたいてい払い終えていて、工程が少なく、つくり慣れているので良品の割合(歩留まり)も高くなります。

不足と供給過剰は、なぜ交互にやってくる?

需要はすぐに変わりますが、生産能力はゆっくりしか増えないからです。今ある工場にラインを足すにも、装置を手に入れ、据えつけ、安定するまで調整するのに何か月以上もかかることがよくあり、新しい工場ならさらに長く、年単位です。装置が空いていても、ウェーハは投入(ラインに入れてつくり始めること)から完成まで数週間から数か月かかります。小さくて安いチップが1つ足りないだけで、車は完成しません。しかも車載チップは、寒さや暑さ、ずっと続く振動に耐えて10年以上使えなければならず、自動車業界の公開された規格(ニュースでいう「車載グレード」)を1項目ずつクリアする必要があり、チップ単体の試験から車に載せた試験まで、何か月も、長ければ1年以上かかることがよくあります。製法を変えたり別の工場でつくったりするなら、品質に影響しうるかぎりもう一度検証が必要なので、不足してもすぐには埋まりません。不足するとみんながラインを増やし、数年後にいっせいに立ち上がります。そのころ需要が落ち着いていれば、ラインが余り、工場は注文を取り合い、ニュースは「供給過剰」と言います。

AIチップ:いちばん速く計算するのではなく、たくさん同時に計算する

AIのモデルを使うときにしていることは、お会計に似ています。たくさんの数字にそれぞれ別の数字を掛けて、全部足すのです。1つ1つの計算は単純ですが、回数がとてつもなく多く、その多くは同時にできます。ふつうのプロセッサ(CPU)は強力なコアが数個から百個あまりで、長い順番待ちになります。AIチップは単純な計算ユニットを数千から数万個並べて、いっせいに計算します。計算ユニットをたくさん詰めこみ、電力もたくさん使うので、最新の世代のプロセスがよく使われます。チップはいくらでも大きくはできず、データも速く届けなければならないので、先端パッケージで複数のチップと積み重ねたメモリを1つにまとめます(「先端パッケージと新しい材料」の回)。学習はモデルを教えることで、たくさんの大きなチップをつないで何日から何か月も計算し続けることがよくあります。推論は学習ずみのモデルで質問に答えることで、省電力と応答の速さがより重視されます。

ニュースの「ブレークスルー」:いまどの段階?

ニュースが「研究チームが1ナノのトランジスタを作った」「2次元材料で大きなブレークスルー」と伝えると、1〜2年後にはスマートフォンに入りそうに聞こえます。この「1ナノ」は、「2ナノ」のような世代の名前とは別のものです。けれど実際には、チップの新しい技術が最初の論文から大量生産にたどり着くまで、10年以上かかることがよくあります。研究室で1個できても、アイデアがうまくいくと示せただけです。次にウェーハ1枚全体にたくさん、どれも同じにつくり、ほかの数百の工程とかみ合わせ、量産用の装置と材料も追いつかなければなりません。そのうえで開発ラインで試作して信頼性を試し、量産工場に渡して、歩留まりを少しずつ上げていきます。はじめは、それをいちばん必要とし、費用も払えるチップだけに使われることが多く、使うメーカーが増えてようやく広がります。立てたトランジスタ(FinFET)は、大学の論文が1990年代の終わり、大量生産が始まったのは2010年代の初めでした。だからニュースを読むときは、まず「研究でできた」「量産が始まった」「広く使われている」のどれなのかを見分けましょう。

よくある誤解

よく聞く最新のプロセスがいちばん良く、どのチップもいずれはそれに移る。
実は成熟プロセスと先端プロセスは分担していて、新しいものが古いものを置きかえるわけではありません。スイッチをいちばん多く詰めこみたいチップは先端プロセス、高い電圧に耐え、長持ちし、安いことが大事なチップは成熟プロセスです。スマホにも両方が入っていて、計算を受け持つプロセッサは最新の世代のことが多く、そのまわりで電源や充電、センサーを受け持つチップの多くは成熟プロセスです。
よく聞くAIチップとは、もっと速いCPUのことだ。
実はむしろ逆の方向です。CPUは、どんな帳簿でもこなせる数人のベテラン会計士のようなもので、分かれ道の多い仕事に向いています。AIチップは、講堂いっぱいの人がそれぞれ電卓を持ち、号令でいっせいにキーを押すようなものです。AI専用のアクセラレータはさらに専門的で、掛け算と足し算をたくさん、少ない電力でこなせますが、ほかの仕事には融通がききません。

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考える

  1. 最近のチップのニュースを1つ選び、家族に3つのやさしい文で説明してみましょう。この講座で学んだ言葉はどれですか? そこに書かれていることは、研究でできた段階、量産が始まった段階、広く使われている段階のどれでしょう? 大げさ、またはわかりにくいと感じた言い方はありますか?
  2. 車、スマホ、AIサーバーは、それぞれどんなチップを必要とするでしょう? ラインを1本だけ増やせるとしたら、どれのために増やしますか? それはなぜですか?

授業の教材:スライド

この回の要点、図、装置、問いをまとめたスライドです。そのまま投影することも、自分のプリントに入れることもできます。

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