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ニュースのことば約7分

ニュースの「成熟プロセス」とは? 何世代も前のチップが、なぜ今も大事なのか

ニュースの「成熟プロセス」とは、何年も量産されてきた、古い世代のつくり方のことです。「成熟プロセスの半導体が不足」「成熟プロセスは供給過剰」「成熟プロセスの生産能力を増強」は、どれもこのつくり方でつくるチップの話です。「2ナノ」「3ナノ」のような名前は、プロセスの世代を表します(名前の由来は「ニュースの「2ナノ」、いったい何が2ナノなのか?」で説明しています)。いちばん新しい何世代かを先端プロセスと呼び、何世代かさかのぼって、工場が長くつくり慣れているものを成熟プロセスと呼びます。ニュースでは「レガシー半導体」とも呼ばれます。

何ナノからが「成熟」? 先端プロセスとの境目は?

統一された線はありません。よくある言い方のひとつは、28ナノと、それより古い世代を成熟プロセスとするものです。もっと新しい世代に線を引く人もいます。

この線は時間とともに動きます。いまの先端プロセスも、何年かたって新しい世代が出てくれば、だんだん成熟プロセスになっていきます。

「成熟」とは、装置も材料も、ひとつひとつの工程も何年も使われてきた、ということです。起こりうる問題はほとんど見つかって解決ずみで、生産は安定し、良品の割合(歩留まり)も高い。つくりはじめたばかりの新しい世代は、その逆です。

なぜ全部を最新の世代でつくらないの?

最新の世代のよさは、同じ広さにスイッチ(トランジスタ)をより多く入れられ、速く、省電力になることです。スマホやパソコンで計算を受け持つプロセッサや、AIチップには、これがいちばん必要です。

でも、多くのチップは仕事が違います。スイッチはそれほど多くいりません。必要なのは別のものです。

  • 高い電圧と大きな電流:充電器や電源のチップは、コンセントや電池の電気を、各部分が使う電圧に変えます。電圧が高く電流が大きいほど、スイッチは大きく、中の絶縁の層も厚くしなければなりません。最新の世代のスイッチは小さく薄いので、とても低い電圧でしか使えず、電圧が高いと、絶縁が突き破られてしまいます。
  • 暑さ、寒さ、長い年月:車のチップは、車が冬の屋外に止めてあっても、夏のエンジンのそばにあっても、ちゃんと動かなければなりません。車、工場の機械、医療機器は、何年も使われます。
  • 安く、安定して、ずっと買える:家電1台、車1台にはたくさんのチップが使われ、1個1個が安くなければなりません。同じチップが何年たっても買えることも大事です。チップを1個替えると、機械全体をもう一度テストし直すことが多いからです。

こうした仕事は、古い世代のつくり方で十分に、安定して、安くこなせます。

アナログのチップは、なぜ小さくしたがらないの?

チップには、アナログという大きな仲間があります。アナログのチップが扱うのは、0と1だけの信号ではなく、なめらかに変わるもの。音の大きさ、温度、光の明るさ、電池の残りなどです。センサー、電源のチップ、無線の信号を送受信するチップには、アナログ回路がたくさん入っています。

アナログ回路は、小さくしてもあまり得をせず、かえってつくりにくくなることもあります。

  • 最新の世代は電圧がとても低いので、信号が上下に振れる幅が小さくなり、少しの雑音でも大きく見えます。とても小さな声で話す人の言葉が、まわりのわずかな物音で聞き取れなくなるのと同じです。
  • アナログ回路には、抵抗やコンデンサのような部品がよく使われます。その大きさは必要な値で決まるので、スイッチが小さくなっても、いっしょには小さくなりません。

だから多くのアナログのチップは、古い世代のつくり方のままです。

古いつくり方は、なぜ安いの?

おもな理由は3つあります。

  1. 装置の償却が終わっている。工場の装置はとても高く、買ったあとは毎日、減価償却で価値が減っていきます(「半導体工場はなぜ24時間止まらないのか」で説明しています)。古い世代のチップをつくるラインの多くは何年も動いていて、装置の代金はもう償却し終わっています。いまは1枚つくるごとに負担する分が、ずっと少なくてすみます。
  2. 工程が少ない。新しい世代ほど、1つのチップが通る工程が多く、つくるのも難しくなります。古い世代は道のりが短めです。
  3. つくり慣れている。歩留まりが高く、思わぬトラブルが少ないので、廃棄も少なくなります。

電源、アナログ、センサーのチップをつくるラインの多くは、いまも直径20センチ(8インチ)のウェーハを使っています。最新のラインでよく使われる30センチより、ひと回り小さいサイズです。

使われているものは、どのくらい?

とても多いです。車、家電、充電器、工場の機械、医療機器、ネットワーク機器の中には、成熟プロセスでつくったチップがたくさんあります。新しめの車には、チップが千個以上入っていることもあり(数え方によります)、その多くがこのつくり方でつくられています。

スマホも同じです。計算を受け持つプロセッサは最新の世代のことが多い一方、そのまわりで電源や充電、センサーを受け持つチップには、成熟プロセスのものがたくさんあります。

ニュースは、なぜ不足と言ったり、供給過剰と言ったりするの?

需要はすぐに変わるのに、生産能力はゆっくりしか変わらないからです。

需要は一気に増えることがあります。みんなが同じ時期にある製品をたくさん買う、あるいはみんながチップを少し多めに在庫しておきたくなる。でも、生産能力はすぐには追いつきません。いまの工場にラインを増やすにも、装置を手に入れて、据えつけて、安定するまで調整しなければならず、数か月以上かかることもよくあります。新しい工場を建てるのはもっと時間がかかり、年単位の話です。装置に空きがあっても、ウェーハ1枚がウェーハ投入から完成するまでに、数週間から数か月かかります。

車は、小さくて高くないチップが1個足りないだけで、組み上がりません。だから成熟プロセスのチップが不足すると、影響を受けるのはとても大きなものになりがちです。

逆の場合もあります。不足しているあいだはみんながラインを増やし、何年かあとにいっせいに完成します。そのころ需要が落ち着いていれば、ラインが余り、工場どうしで注文の取り合いになって、ニュースは「供給過剰」と言います。不足と余りは、こうして交互にやってくることがよくあります。

成熟プロセスは、いずれなくなるの?

なくなりません。先端プロセスとは役割分担で、新しいものが古いものに取って代わるわけではありません。スイッチをいちばん多く詰めこみたいチップは先端プロセス、電圧に耐え、長持ちして、安くあってほしいチップは成熟プロセス。1つの製品の中に、両方あることもよくあります。

成熟したつくり方も、まだ改良が続いています。もっと省電力のもの、もっと長持ちするもの、機能をひとつ足したものが出てきます。ニュースの先端パッケージでも、いちばん必要な部分を最新の世代で、ほかの部分を古い世代でつくって、ひとつにまとめることがあります(「ニュースの「先端パッケージ」」で説明しています)。

次にニュースで見たら、こう読める

  • 「成熟プロセスの半導体が不足」:古い世代のつくり方でつくるチップが、ラインでつくれる数より多く求められている。小さなチップがいくつか足りないせいで、車や家電の完成が遅れるかもしれない。
  • 「成熟プロセスは供給過剰」:このチップをつくれるラインが、必要な分より多く、工場どうしで注文を取り合っている。
  • 「成熟プロセスの生産能力を増強」:古い世代のつくり方でチップをつくるラインを増やす。車や家電、電源に使うようなチップです。
  • 「先端プロセスと成熟プロセス」:一方はスイッチをいちばん多く詰めこむ最新の何世代か、もう一方は何年もつくられてきた、安定して安い古い世代。両者がつくっているのは、違うチップです。

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