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ニュースのことば約8分

ニュースの「車載半導体」とは? ふつうのチップと何が違うのか

ニュースでは「車載半導体が不足」「車載グレードのチップ」「AEC-Q100に準拠」といった言葉をよく見かけます。車載半導体とは、車に積まれたチップのことです。スマートフォンのチップと同じ工場でつくりますが、違うのは求められることです。もっと寒いところ、もっと暑いところ、ずっと続く振動に耐え、10年以上使えなければなりません。誤動作すると、人がけがをするおそれがあるものもあります。こうした点で自動車業界の規格をクリアしたものを「車載グレード」と呼びます。英語ではautomotive gradeです。

車にはどんなチップが入っている? それぞれ何をしている?

新しめの車には、電子制御ユニット(ECU)と呼ばれる小さなコンピュータが数十個、多いものでは100個以上あり、それぞれが1つの仕事を受け持っています。車全体のチップは、数え方によっては1000個を超えます。おおまかに分けると、次のようになります。

  • エンジン、モーター、電池:ガソリン車なら、燃料をどれだけ噴射し、いつ点火するか。電気自動車なら、モーターにどれだけ電力を送るか、電池のセル1つ1つの電圧と温度はどうか。ここには電力を扱うスイッチがたくさんあり、炭化ケイ素でつくるものもあります(「ニュースの「ワイドバンドギャップ半導体」とは?」)。
  • ブレーキとエアバッグ:タイヤがロックしそうになると、ブレーキをすばやく緩めては効かせ直し、ハンドルが効くようにします。ぶつかったときは、車がどれだけ急に減速したかを測り、まばたきより短い時間で、エアバッグを開くかどうかを決めます。
  • センサー:カメラ、レーダー、駐車用の超音波センサー、タイヤの空気圧センサーが、車のまわりや車そのものの状態を信号に変えます。
  • エンタメとナビ:ダッシュボードの画面、ナビ、オーディオ。スマートフォンのチップにいちばん近い種類です。

なぜスマホより要求が厳しいのか

  • 温度の幅が広い:車は冬には屋外に止められ、夏は日差しの下に置かれ、エンジンのそばはさらに熱くなります。一般的な電子機器でよく使われるグレードは、動作を保証する温度がおよそ0〜70℃です。車載でよく使われるグレードは、-40℃から125℃まで耐えなければなりません。
  • ずっと揺れている:でこぼこ道、回り続けるエンジン。チップも、チップの中の細いワイヤも、基板にはんだ付けした接合部も、もちこたえる必要があります。さらに湿気、上がったり下がったりする電圧、まわりの電気機器からのノイズもあります。
  • 10年以上使う:スマートフォンは数年で買い替えますが、車は10年以上乗ることもよくあります。15年使う前提で設計する、という言い方がよくされます。
  • 故障が安全にかかわる:スマートフォンが固まったら、再起動すればすみます。ブレーキやエアバッグのチップが誤動作すれば、人がけがをするかもしれません。だから不良の割合は「100万個あたり何個か」で数えることが多く、目標はできるかぎりゼロに近づけることです。

ゼロに近づけるやり方の1つが、規格の範囲内でも、同じロットのほかのチップと大きく違うものは取り除いておくことです。クラス全員が80点前後のなかで、1人だけちょうど60点だったら、合格ではあっても、もう一度よく見てみる。そういう考え方です。歩留まりは少し下がりますが(「ニュースの「歩留まり」とは?」)、車に届く不良品は減ります。テストも厳しく、たとえばファイナルテストを低温と高温の両方で測るものもあります(「チップはどうテストする?」)。出荷前に1個ずつ「焼く」チップもあります(「バーンインとは?」)。

どんな規格がチェックしているのか

AEC-Q100:「壊れないか」を試す

AEC(Automotive Electronics Council)は、自動車の電子部品の業界団体です。1990年代に、車の部品を認定するとき、みんなが共通の規格を使えるようにつくられました。AEC-Q100は、チップ(集積回路)のための規格です。トランジスタやダイオードのような単体の部品はQ101、抵抗やコンデンサはQ200を使います。

考え方は、チップが壊れるパターンを1つずつ挙げ、それぞれに加速試験を用意するというものです。ふつうなら何年もかかって起きることを、数週間から数か月で起こします。たとえば次のような試験です。

  • 高温で電圧をかけ、1000時間動かし続ける(HTOL)。3ロット、各77個で、1個も壊れてはいけません。
  • 数百個を抜き取り、高温で電気を流して短い時間動かし、初期故障(使いはじめてすぐの故障)がどれだけ出るかを見る。
  • とても寒い状態ととても暑い状態を何度も行き来させる。高温で湿度の高い環境に置く。
  • チップの中の細いワイヤを引っぱったり押したりして、しっかりついているかを見る(プルテスト)。
  • 静電気を当てて、壊れないかを見る。

耐えられる温度によるグレード分けもあります。よく使われるGrade 1は-40℃から125℃、いちばん上のGrade 0は150℃までです。

ISO 26262:「もし誤動作したら」に備える

どれだけ試験をしても、絶対に壊れないとは言えません。もう1つの国際規格ISO 26262は、道路を走る車の「機能安全」の規格です。電子システムがもし誤動作しても、危険を十分に低く抑える、という考え方です。

まず、それぞれの機能が誤動作したときにどれだけ危ないかを考えます。けがはどれだけ重いか、運転中どれくらいの頻度でその状況になるか、ドライバーが自分で制御を取り戻せるか。この3つから、ASIL AからDまでの4段階を決め、Dがいちばん厳しくなります。ブレーキのように誤動作がとても危ない機能はレベルが高く、レベルが高いほど、どの段階でも求められることが増えます。2018年版には、半導体にこの規格をどう当てはめるかを説明する部分があります。

チップの中に「自分で自分をチェックする」回路を入れることもよくあります。たとえばメモリはデータを1つ記憶するたびに、チェック用のビットを少し余分に記憶しておき、間違いの多くを見つけて直せるようにします。あるいは、同じコアを2つ並べて同じ計算をさせ、答え合わせをします。答えが合わなければ、システムを安全な状態に移します。

なぜ車載チップの多くは成熟プロセスなのか

車載チップの多くは、スイッチをいちばん多く詰めこむ必要がありません。熱や高い電圧に耐え、安定していて、何年も買えることが大事です。古い世代のつくり方は何年もつくられてきて、どう壊れるかがほぼわかっていて、信頼性のデータもたくさんあります。だから車載チップの多くは成熟プロセスでつくられます(「ニュースの「成熟プロセス」とは?」でくわしく説明しています)。運転支援でカメラの映像を読み取るなど、大量の計算をする一部のチップは、古い世代のつくり方とはかぎりません。

なぜ認定に時間がかかる? なぜ調達先を替えにくい?

チップが車に載るまでには、いくつもの関門があります。まずチップそのものがAEC-Q100のような試験を受け、HTOLだけでも6週間ほどかかります。次に、組みこまれる部品の中で試験し、さらに車全体で試験します。合わせると何か月もかかり、1年を超えることもあります。

しかも、認定されたのは「このチップを、このつくり方でつくったもの」です。材料を変える、プロセスを変える、別の工場でつくる。機能、品質、信頼性に影響するおそれがあれば、規格にそって試験を選び、認定をやり直し、先に顧客へ知らせる必要があります。だから1つの車種が売られているあいだは、たいてい同じチップを使い続け、調達先はめったに替えません。

次にニュースで見たら、こう読める

  • 「車載グレードのチップ」「AEC-Q100に準拠」:自動車業界の規格(AEC-Q100など)にそって信頼性の試験をひととおり受け、すべてクリアしたので、車に使える。
  • 「車載半導体が不足」:車に必要なチップが、十分につくられていない。小さなチップが1つ足りないだけで車は完成しない。認定ずみの調達先は替えにくいので、不足をすぐには埋めにくい。
  • 「機能安全ASIL D対応」:機能安全規格のいちばん厳しいレベルにそって設計されていて、ブレーキのように誤動作がとても危ないところに使える。

fab24hrでは

ゲームに車載半導体は出てきません。メインストーリー「チップの一生」が追いかける「Glowmere」は、小さな会社の補聴器用チップです。いちばん大事なのは、待機中のリークをできるだけ少なくすること(「チップはなぜ電気を使う?」)で、つくり方は成熟した世代のプロセスです。

それでも、車載の規格がいちばん重んじる関門には、ゲームの中で出会えます。メインストーリー第4章「2週間前倒し」では、あなたは開発ラインの開発インテグレーションエンジニアで、HTOLを待っています。3ロット、各77個です。第11章「ボールが浮いた」では、あなたは組立プロセスエンジニアです。プルテストで2本の数字が低く、ワイヤボンダを止めるかどうかを決めます。第12章「出荷前夜」では、あなたは後工程工場の顧客窓口です。信頼性試験室のファンが、数百個を抜き取って高温で電気を流し、2日間動かせば初期故障を調べられると言います。ロット全体の出荷を1週間遅らせるかどうか、決めるのはあなたです。

「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「後工程工場」を押し、左右にスワイプして顧客窓口にします。夜のシフトが第12章です。ゲームに出てくる会社・チップ・人物は架空です。車載半導体と規格については、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかゲームに車載半導体は出てきません。メインストーリー「チップの一生」の「Glowmere」は、架空の補聴器用チップです。それでも、車載の規格がいちばん重んじる信頼性には出会えます。第4章「2週間前倒し」ではHTOLが終わるのを待ち、第12章「出荷前夜」では、後工程工場の信頼性試験室のファンが、数百個を抜き取って2日間、初期故障を調べられると言います。

fab24hrに車載半導体はありません。でも「今ちゃんと動くか」と「しばらく使ったら壊れないか」の2つの関門は、どの種類のチップも通ります。ゲームの中にも、それを見守る人がいます。

出勤して、チップが出荷前に通る関門を見る

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

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