半導体入門講座・第7回
チップのつくり方:全体の流れ
1枚のウェーハは、工場の中で数百の工程を数か月かけて進みます。まず全体の地図を見て、次の回から工程エリアを1つずつ見ていきます。
わかること
- 設計、フォトマスク、半導体工場、テスト、パッケージングというおおまかな順番を言える。
- 工場の7つのプロセスエリア(洗浄、拡散炉、成膜、リソグラフィ、エッチング、CMP、イオン注入)がそれぞれ何をするかを知る。
- チップは「膜をつける、パターンを焼き付ける、いらない部分を削る」を何度も繰り返し、1層ずつ積み上げてつくることを理解する。
一歩ずつ
- 層を重ねる。まずシリコンの中にトランジスタをつくり、その上に金属の配線を重ねる。
なぜチップはビルのようなもので、下のトランジスタがスイッチ、上の配線がスイッチどうしをつなぎます。トランジスタと配線のあいだは、金属を詰めた小さくて深い穴で上下をつなぎます。この穴をコンタクトといいます。
しないと配線でつながなければスイッチはばらばらのままで、計算する回路になりません。穴が底まで削れていなかったり、埋まりきっていなかったりすると、上下がつながりません。
- 1層ごとにひと回りする。成膜、必要なら平坦化、パターンの焼き付け、計測(だめならリワーク)、エッチングかイオン注入、レジスト除去、洗浄、そして何枚か測る。
なぜ削るには先に材料が要ります。残す部分をレジストで覆い、覆われていない部分だけを削るか打ち込みます。
しないと表面を平らに磨かないと凸凹が残り、次の層のパターンがくっきり焼けず、位置も合いません。
- 同じ流れを何十回もくり返し、全部で数百の工程になる。どの工程も安定させる。
なぜ複雑なチップは何十層もあり、どの層もリソグラフィに戻って自分のパターンを焼きます。
しないと1工程ごとの差はわずかでも、数百工程をかけ合わせると、最後の歩留まり(できたチップのうち良品が何割か)は大きく下がります。
- 同じ仕事の装置を1つのエリアに集め(この講座はゲームに合わせて7つ。実際の分け方は工場ごとに違う)、ウェーハはエリアのあいだを行き来する。
なぜ同じ仕事の装置を並べると条件を管理しやすく、人の分担もしやすくなります。
しないと同じ種類の装置がばらばらだと条件をそろえにくく、分担もしにくくなります。それに層ごとに同じ種類の装置へ戻るので、道すじはもともと一直線ではありません。
- ウェーハ投入(ラインに載せること)の日に量を決めておく。1ロットは投入から完成まで数週間から数か月かかる。
なぜ工程は数百あり、時間の大半は加工ではなく、装置の前で順番を待っています。
しないと途中まで進めて待たせておいたウェーハがない限り、途中で追加したウェーハも最初の工程からやり直しで、また数週間から数か月かかります。
要点の解説
設計とフォトマスクが先、工場はそのあと
半導体工場は図面どおりにつくります。エンジニアはまずコンピュータで回路を設計し、シミュレーションとチェックを何度もくり返します。決まったら設計データを渡します。これがテープアウトです。設計データはフォトマスク一式になり、パターン1層に少なくとも1枚、回路を焼き付けるための原版になります。ウェーハとフォトマスクが両方とも工場にそろうと、ウェーハのロットを生産ラインに載せます。これがウェーハ投入で、ここから数百の工程を、数週間から数か月かけて進みます。
7つのプロセスエリアと、それぞれの仕事
同じ仕事をする装置を集めたものが、ひとつのエリアです。洗浄は目に見えない汚れを洗い流します。拡散炉は100枚以上をとても熱い管に入れ、電気を通さない酸化膜を育てたり、打ち込んだ原子を熱で落ち着かせたり(アニール)します。成膜は新しい材料の層をつけます。リソグラフィは光に反応するレジストを塗り、フォトマスク越しに光を当ててパターンを焼き付けます。エッチングはパターンで守られていない部分を削り取ります。CMP(化学機械研磨)は表面を平らに磨きます。イオン注入はホウ素やリンなどの原子をシリコンに打ち込み、どこに電気を通すかを決めます。
チップはビルのように、1層ずつ建てる
チップのいちばん下はシリコンの中につくるトランジスタで、その上にとても細い金属の配線が1層、また1層と重なり、スイッチどうしをつなぎます。層ごとに形が違うので、層ごとにひと回りします。材料の層をつけ、必要なら平らに磨き、リソグラフィでその層のパターンを焼き、エッチングかイオン注入をし、洗って、次の層へ進みます。複雑なチップでは焼き付けるパターンが何十層にもなる(金属配線が10数層、そのあいだのビアや下のトランジスタの層もそれぞれ焼き、いちばん細い層は2〜3回に分けて焼く)ので、ウェーハはリソグラフィに何十回も戻り、全部で数百、いちばん複雑なものでは千を超える工程になります。
できたらテストし、切り、包み、またテスト
ウェーハの上に回路をつくる段階は、トランジスタもその上の配線も含めて、業界ではふつう「前工程」と呼びます。できたウェーハを専門の工場でテストし、切り分け、パッケージに入れる段階が「後工程」です。なお工場の中では、ウェーハ工程の前半(トランジスタをつくる部分)と後半(配線をつくる部分)を、FEOL・BEOLと呼び分けることもあります。まず、できたウェーハのすべてのチップの端子にとても細い針を当てて電気を流し、テストします。これがウェーハテストで、前工程の工場、後工程の工場、テスト専門の工場のいずれかで行います。ここで不良品を見つけておけば、パッケージにお金をかけずにすみます。次にウェーハを1個ずつに切り分け、薄くて割れやすいチップを守り、端子を外へつなぐパッケージに入れます。パッケージの工程で壊れることもあり、パッケージ後でないと十分にできないテストもあるので、もう一度テストし、良品だけを出荷します。
よくある誤解
- よく聞く工場にいる数か月のあいだ、ウェーハはずっと加工されています。
- 実はウェーハ投入からウェーハ完成までの時間の大半は、加工ではなく、装置の前で順番を待っている時間です。装置は高価で、ウェーハはそれだけ長くラインにいるので、半導体工場は24時間止まらず、人が交代勤務で見守ります。
- よく聞く半導体工場から出てくるのは、すぐに使えるチップです。
- 実は半導体工場が出荷するのはウェーハ丸ごとで、チップはまだつながったまま、1個ずつのテストもすんでいません。後工程の工場でテストし、切り分け、パッケージに入れて、はじめて製品に組み込める部品になります。
見る:分解して見られる装置
必読
関連
遊ぶ
第2章「一工程ずつ」から:7つのプロセスエリアで、1つずつ自分で作業する →
考える
- チップはなぜ「成膜、焼き付け、エッチング」を1層ずつ繰り返してつくるのでしょう? 一度にはつくれない理由を、家づくりなど身近な例で説明してみましょう。
- 1枚のウェーハは数か月も工場にいます。これほど長い流れの中で、いちばん大きなリスクはどこにあると思いますか? どうすれば早く気づけるでしょう?
授業の教材:スライド
この回の要点、図、装置、問いをまとめたスライドです。そのまま投影することも、自分のプリントに入れることもできます。
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この記事を引用する「半導体入門講座・第7回:チップのつくり方:全体の流れ」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/learn/process-flow/
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