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工場の中約7分

半導体のレシピとは? 工場の装置が従う「処理条件」

半導体工場でいうレシピとは、装置がウェーハを加工するときに従う設定一式のことです。温度、圧力、ガスの流量、時間、パワーといった数字を手順ごとに書き、装置や工場のシステムに保存しておきます。言葉は料理のレシピから来ています。同じオーブンでも、レシピが違えばできる料理が違う、というわけです。

レシピには何が書いてある?

家の洗濯機を思い浮かべてください。「標準」「お急ぎ」「おしゃれ着」、どのコースも、水の量、洗う時間、脱水の回転の速さが前もって決まった数字のセットです。1つ選べば、あとは洗濯機がそのとおりに動きます。

半導体工場の装置も同じで、数字がもっと多く、もっと精密なだけです。レシピには、ふつう次のようなことが書いてあります。

  • ガス:どのガスを入れ、それぞれどれだけ流すか(単位はよくsccmを使います)。
  • 圧力:ウェーハを実際に加工する密閉した空間(チャンバー)の圧力を、いくつに保つか。
  • パワー:プラズマを使う装置なら、プラズマをどれだけ強くするか。
  • 温度:ウェーハや炉を何度にするか、どれくらいの速さで上げ下げするか。
  • 時間:手順ごとに何秒、何分やるか。

しかも、手順ごとに分かれています。拡散炉なら、ウェーハを入れ、ゆっくり温度を上げ、目標の温度になったら反応させるガスを入れ、しばらく保ち、最後にゆっくり冷やします。どの手順の温度、ガス、時間も、同じ1つのレシピに書いてあります。大学のクリーンルームが公開しているエッチング装置の資料でも、レシピはよく小さな表になっています。どのガスをどれだけ、圧力はいくつ、パワーは何ワット。その横に、この条件で1分間にどれくらい削れるかが書き添えてあります。

1台の装置に、なぜレシピがいくつもある?

1台の装置が、1つの仕事しかしないわけではないからです。

  • つくるものが違う:1台の装置で、何種類もの膜や何層もの層を扱うことがあります。材料が違えばガスが違うことが多く、厚さが違えば時間が違います。
  • 目的が違う:ふだんの生産用に1つ。やり残しを仕上げる、たとえば追加エッチング用に別の1つ。チャンバーを開けて掃除したあと、ダミーウェーハを何枚か流して内壁を落ち着かせるシーズニングも、1つのレシピに従います。
  • 版が違う:何かを1回変えるたびに新しい版ができ、古い版は使用停止にします。

測定装置にもレシピがあり、どう測るか、どこを測るかが書いてあります。ですから、1台の装置がいくつも、ときにはたくさんのレシピを持っているのは、ごくふつうのことです。

レシピは誰が変えられる? 変える前に何をする?

レシピはふつう、その工程を担当するプロセスエンジニアが受け持ち、変えるかどうか、どこを変えるかを決めます(「プロセスエンジニアと装置エンジニアはどう違う?」へ)。現場のオペレーターは作業票に従ってロットを流し、システムが出してきたレシピを使います。自分で書き換えることはありません(「オペレーター(技術員)とエンジニアはどう違う?」へ)。

量産で使うレシピは、装置の上で誰でも書き換えられるようにはせず、まとめて管理するシステムに置いておくことが多いです。作業が始まると、システムが正しいレシピを装置へ送ります。変えるときは、おおよそ次の流れになります。

  1. まず試す:いきなりお客様のウェーハで試すことはしません。テスト用のウェーハを使うか、スプリット実験で一部のウェーハだけ新しい条件にして、変えなかったものと比べます。
  2. 審査する:どの数字を、なぜ変えたか、試した結果はどうだったかを書き、関係する人に見てもらって承認を受けます。品質マネジメントの国際規格も、生産の変更はレビューし、その結果と誰が承認したかを記録に残すよう求めています。
  3. 記録する:新しい版を保存し、いつ誰が変えたかも残します。問題が起きたときにさかのぼれるようにするためです。古い版は使用停止にして、選べる一覧から外します。
  4. 変えたあとも見張る:新しい条件で流し始めたら、測った数字を管理図に描き、片側にずれていかないかを見ます(「SPCの管理図とは?」へ)。

なぜここまで手間をかけるのか。数字が少し違えば、できるものも少し違うかもしれず、その小さな違いは、何工程もあとにならないと測れないことがあるからです。

レシピとPORはどういう関係?

工場でよく聞くPORは、Process of Recordの略で、量産が従う標準プロセスです。各工程でどの種類の装置をどんな条件で使うか、すべて固定されています。PORが1冊のレシピ本なら、レシピはその中の1ページ。その工程で装置が実際に従う数字です。

ですから、量産のレシピを変えることは、PORの数字を変えることで、変更手続きが必要です。顧客が認定したのはまさにこの組み合わせなので、変えれば試験や顧客へのデータ提出をやり直すことになりかねません。半導体の供給元が工程を変えるとき、顧客にどう知らせるかを定めた公開の業界規格まであります。

前もって決めてある「変更」もあります。リソグラフィで重ね合わせのずれが測定されると、システムが露光装置の位置や角度を少し調整して、次のロットが合うようにします。これを補正といいます。どの数字をどう計算して動かすかは前もって設計されていて、誰かがその場でレシピを書き換えているわけではありません。

それに、同じレシピならいつまでも同じものができる、とも限りません。チャンバーの内壁は少しずつ変わり、エッチングの結果もそれにつれてずれていきます。だからメンテナンス、シーズニング、テストランも必要です(「エッチングとは?」へ)。

レシピを間違えるとどうなる?

装置は、あなたが選び間違えたことを知りません。間違ったレシピのとおりに、正確に仕上げます。膜が厚すぎたり薄すぎたり、削りすぎたり足りなかったり、打ち込んだ原子が多すぎたり少なすぎたり。

元に戻せない間違いも多くあります。削った材料は戻せず、シリコンに打ち込んだ原子は取り出せません。軽ければやり直せますが、重ければスクラップです。

ですから、ふだんのロットでは、システムが作業票からレシピを出してきて、人が選ぶ必要はありません。いちばん危ないのは、エンジニアが装置の前でウェーハとレシピを自分で選ぶ手動投入です。名前が数文字しか違わない2つのレシピ、前回使ったレシピが最初から選ばれている画面、外すはずだったのに残っている古い版。どれも落とし穴です。よいやり方はポカヨケです。「気をつけて」と呼びかけるだけでなく、間違ったレシピをそもそも選べないようにします。

半導体工場では、レシピの選び間違いはMO(人為的な誤操作)のいちばん典型的な例の1つです。「MOとは?」へ。

fab24hrでは

「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてプロセスエンジニアで止め、名前の下の「エッチング」を押すと、エッチングのプロセスエンジニアになります。朝シフトでは、追加エッチングのレシピ一覧を開きます。使用停止になった古い版が2つ、まだ選べる状態で残っていて、名前は今の版と数文字しか違いません。この一覧の担当はあなたです。昼シフトでは、ETCH-03の前で手動投入をします。7枚目だけ、レシピは「追加エッチング15秒」。画面を開くと、ウェーハは全選択、レシピは前回使ったものが選ばれていて、一覧には5つのレシピが並んでいます。メインストーリー「チップの一生」の第8章「時間との勝負」が、この午後です。製造部を遊ぶと、どの装置も流せるレシピは数種類だけで、ロットはそのレシピを持っている装置にしか送れません。開発ラインで注入の開発プロセスエンジニアになると、深夜に電話がかかってきます。選んだレシピは、正しいものの隣のものだった。2つの名前は1文字しか違いません。ゲームに出てくる会社・人物・装置・レシピは架空です。レシピとは何か、どう管理するかは公開されている一般的な資料をもとに書いていて、実際のやり方は会社ごとに違います。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかエッチングのプロセスエンジニア(量産工場 › プロセス › エッチング)を遊ぶと、朝シフトには追加エッチングのレシピ一覧の整理が待っていて、昼シフトではETCH-03の前で手動投入をして、自分でレシピを選びます。

fab24hrのエッチングのプロセスエンジニアは、昼シフトに装置の前で自分でレシピを選びます。一覧には5つ、そのうち2つは名前がよく似た古い版です。

エッチングのプロセスエンジニアで遊び、手動投入で正しいレシピを選ぶ

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