半導体入門講座・第20回
問題が起きたら:アラームから再発防止まで
どんなに慎重な工場でも、問題は起きます。違いが出るのは、最初の数分を正しい順番で動けるか、そしてそのあと、間違いを通してしまった穴をふさげるかです。
わかること
- 問題が起きたあとの順番を言える。まず止めて、封じ込めて、それから確かめ、範囲を決め、1枚ずつ行き先を判断し、原因を探す。なぜこの順番なのか、ふつう誰が判断するのかを説明できる。
- OCAP(異常処置計画)をなぜ前もって書いておくのか、書かれていない場合はどうするのかを説明できる。
- なぜなぜ分析(5 Why)で根本原因を変えられる層までどうたどるのか、なぜ「誰が不注意だったか」ではなく手順の穴を探すのか、どの対策がいちばん確実か、そしてなぜ証拠を見てから終えるのかを説明できる。
一歩ずつ
- 合図を見張る。管理図の点が限界を出る、片側に寄り続ける、FDCが通知を出す、装置がアラームを出して赤ランプで止まる、など。
なぜどれも「いつもと違う」という知らせで、何かが起きた最初の証拠です。
しないと気づかなければ装置は動き続け、悪いロットが次々にできていきます。
- まず装置を止め、その間に処理したロットをホールドし、そのあとで数字を確かめる(ガス漏れ、薬品の漏えい、火災なら、まず人が避難経路に沿って離れる)。
なぜ数字は測り間違いかもしれませんが、確かめているあいだ装置を動かし続ければ、もう1ロットだめにするかもしれません。
しないと悪いロットが1工程進めば、片づける工程も1つ増えます。
- 止める、ホールドする、確かめるという手順は、前もって書いたOCAPに沿って1つずつ進め、書かれていないことは待機当番(オンコール)のエンジニアに電話する。修理に手をつける前に現場を残し、直した装置もそれに沿って、まずテストランをする。
なぜ夜中に問題が起きると人は疲れて慌てていて、記憶はいちばん当てになりません。紙の順番なら抜けがありません。直して引き渡された装置も、「動く」というだけです。
しないとその場で考えると手順が抜けやすく、シフトが違えば最初の1歩まで違ってしまうかもしれません。直した装置にすぐロットを入れれば、修理のどこかがうまくいっていないとき、最初のロットがまた影響を受けます。
- 範囲を決める。最後に問題がないと確かめた時点から、同じ装置で処理したロットを全部含め、まず全部止める。
なぜ装置に問題が出たとき、だめになるのが1枚だけということはめったになく、全ロットを測っているわけでもないので、その間につくったロットにも問題があるかもしれません。先に範囲を囲ってから判断すれば、漏れません。
しないと目の前の1ロットだけ判断して通すと、あとで同じ時間帯のほかのロットも当たっていたとわかったときには、それらはもう次の工程へ進んでいます。
- 範囲の中のウェーハを1枚ずつ判断する(ウェーハ判定)。通す、記録を付けて先へ流す、リワーク、スクラップのどれか。
なぜ甘く判定すれば悪いウェーハはずっとあとで見つかり、厳しすぎれば良いウェーハまで捨てることになり、後の工程ほどスクラップは高くつきます。OOSでもやり直せるならリワークしますが、削った材料や打ち込んだ原子は戻せません。決まりどおりでないのに通すロットは、逸脱申請を書いて承認をもらい、品質保証が確かめます。
しないとだれも決めなければ、ロットは止まったまま待ち、時間の上限がある工程(Qタイム)のカウントダウンは進み、納期が延びます。決まりどおりでないロットを1人の一存で通せば、問題が起きたとき、何を根拠に通したのかたどれません。
- 残しておいた証拠をもとに「なぜ」を問い続け(なぜなぜ分析)、変えられる手順まで行き着く。「なぜもっと早く止められなかったか」も問う。
なぜ人は必ず間違えます。防御の層はどれも穴のあいたチーズのようで、穴が一直線に並んだときだけ間違いが最後まで抜けます。
しないと最初に見えた原因で止まったり、最後に押し間違えた人だけを責めたりしても、穴はそのまま残り、次の人も同じ目にあいます。

ゲーム fab24hr の画面です。装置、ロット番号、人物はすべて架空です。 ゲームでこの場面を遊ぶ → - 根本原因に向けて穴をふさぎ、同じ型の装置やほかの製品にも同じ穴がないかを見る(横展開)。効いたと確かめてから終える。
なぜ前にあるものほど確実です。システムで止め(ポカヨケ)、次に2人で確認し、注意喚起と教育は最後。「やった」は「効いた」ではないので、たとえば数週間続けて数字がいつもの範囲にあるかといった証拠を見ます。
しないとこの1台だけ直しても、数か月後に同じ型の装置で同じことが起きるかもしれません。確かめずに終えれば、しばらくして同じことが戻ってきます。
要点の解説
見つけたら:まず止めて封じ込め、それから確かめる
注意を促す合図は、管理図の点が限界の外に出たり、ずっと片側に寄ったりすること、FDC(装置のセンサーを見張る仕組み)からの通知のこともあれば、装置自身がアラームを出し、シグナルタワーが赤ランプになって止まること、ウェーハに傷が1本あるのを人が見つけることもあります。そのとき最初にするのは原因探しではなく、被害を止めることです。装置を止め、あとのロットは入れない。その間に処理したロットはホールドし、その場にとどめて次の工程へ進めない。ホールドはMES(どのロットがどの工程にいるかを記録するシステム)でかけるので、システムは次の工程へディスパッチしなくなります。何を見たか、処置の担当は誰かも書いておかないと、引き継いだ次のシフトは、なぜ動かせないのか、誰に聞けばいいのかがわかりません。数字そのものを確かめる、つまり入力ミスはないか、計測装置がずれていないかを見るのは、そのあとです。数字が測り間違いということもありますが、確かめているあいだ装置を動かし続ければ、もう1ロットだめにするかもしれません。ガス漏れ、薬品の漏えい、火災のように人がけがをしうることは例外で、まず人が避難経路に沿って離れ、ロットや装置はあとまわしです。
前もって書いたOCAPに従い、夜中にその場で考えない
OCAPは前もって書いておく異常処置の手順です。何を止めるか、どのロットを止めるか、何を確かめるか、誰に知らせるか。いちばんありそうな原因や、いちばん調べやすい項目を先に並べることがよくあります。前もって書くのは、問題が時を選ばないからです。午前3時に装置が赤ランプになれば、現場の人は緊張し、起こされたエンジニアもまだ目が覚めきっていません。疲れて慌てているとき、記憶はいちばん当てになりません。紙の順に1つずつ進めば抜けがなく、ラインの人は1歩ごとにエンジニアの折り返しを待たずにすみ、どのシフトが出会っても最初の1歩は同じになります。書かれていないことは、その日の待機当番(オンコール)のエンジニアに電話し、あとでOCAPに書き足します。直した装置もそれに沿います。装置担当が引き渡しても、それは「動く」というだけなので、まず何枚かのテストウェーハでテストランをして、結果が規格内でプロセス担当も確認してから、復旧してロットを入れます。
先に範囲を決め、それから1枚ずつ判断する
目の前の1ロットを止めるだけでは足りません。最後に問題がないと確かめた時点から数えて、同じ装置で同じ時間帯に処理したロットにも及んでいるかもしれません。装置に問題が出たとき、だめになるのが1枚だけということはめったにないからです。だから先に範囲を決めてその中を全部止め、それから記録と測定結果を見て1枚ずつ判断します。これをウェーハ判定といい、同じロットでも何枚かはスクラップ、何枚かはリワーク、残りはそのまま続行、と分けられます。OOCのロットはまだ規格内かもしれず、通すことも、ホールドしたまま調べることもあります。OOSなら、やり直せるものはリワークします。削った材料や打ち込んだ原子は戻せないので、まず影響を評価し、まだ使えるものは記録を付けて先へ流し、測り直してから判断するものもあり、使えないものだけをスクラップにします。誰が判断するかは、よくある分担では、その工程のプロセスエンジニアがどこに問題があるかを判断し、プロセスインテグレーションがウェーハ1枚ずつの履歴を見て行き先を決め、品質保証が処置の記録を確かめます。決まりどおりに流れなかったのにまだ使えると判断したロットを通すには、逸脱申請を書き、何が違ったか、なぜまだ使えるか、誰が承認したかを残します。お客さんの同意が要る場合もあります。
探すのは人ではなく穴。変えられる層まで掘り、効いたと確かめてから終える
根本原因とは、最初に見えた原因で止まらず、「ここを直せば同じことは二度と起きない」という層まで掘り下げたもので、どの答えにも証拠が要ります。よく使うのは「なぜ」を5回くり返すなぜなぜ分析(5 Why)です。たとえばエッチング装置がパーティクルを出し続けるなら、最後の答えは、レシピ変更の申請書に「PMの周期を見直すか」という欄がなかった、ということかもしれません。変えられる手順に行き当たって、はじめて底に着きます。証拠は現場から来るので、起きたその場で現場を残し、装置の記録はすぐには変えません。「なぜもっと早く止められなかったか」も問います。壊れたのがチップの中なら、故障解析が証拠を出します。電気を通して測り、外から見て範囲を1点まで絞り、その点を切って見るのは最後です。切ったら元に戻せないからです。人は必ず間違えるので、「不注意」で止まると、対策は「次から気をつける」しか残りません。対策は前にあるものほど確実です。システムで止める(ポカヨケ)、2人で確認する、そして最後が注意喚起と教育。さらに、同じ型の装置やほかの製品にも同じ穴がないかを見ます(横展開)。「やった」と「効いた」は別のことで、たとえば数週間続けて数字がいつもの範囲にあるといった証拠を見て、はじめて終わりにします。全体は8Dの不具合報告書にまとめることがよくあります。
よくある誤解
- よく聞く数字は測り間違いかもしれないから、確かめてから止めても遅くない。
- 実は確かめるには時間がかかり、そのあいだ装置を動かし続ければ、もう1ロットだめにするかもしれません。だからOCAPの順番は、止める、封じ込める、それから確かめる。なぜ悪くなったのかわからないうちは、まず被害を止め、原因探しは少しあとでかまいません。
- よく聞く間違いが起きたら、誰が押し間違えたかを突き止め、もっと気をつけてもらえば終わりだ。
- 実は人はどんなに気をつけても間違えます。原因を「不注意」「手順を守らなかった」と書くのは簡単すぎ、しかも誤解を招きがちです。本当に変えるべきところが見つからず、穴はそのまま残るからです。よい振り返りは、手順のどこが間違えやすくしていたかを問います。起きたその場でいちばん大事なのも、誰かを責めることではなく、何があったかをはっきり伝えることです。
必読
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遊ぶ
第8章「時間との勝負」から:夜中に止まった1枚をやり直し、振り返りの会議で手順の穴をふさぐ →
考える
- 午前3時、装置が赤ランプになりました。ロットは待っていて、エンジニアは寝ています。となりの人は「リセットを1回押せば、たいてい通る」と言います。OCAPどおりに電話することと、まず試してみることには、それぞれどんな代償がありますか?
- あなたが何度もしてしまう小さな失敗を1つ思い浮かべてください。たとえば鍵を持たずに家を出る。自分の不注意を責めるのではなく、「どこが忘れやすくしているのか」を探すとしたら、どう変えれば、それが起きない、あるいは忘れられないようにできますか?
授業の教材:スライド
この回の要点、図、装置、問いをまとめたスライドです。そのまま投影することも、自分のプリントに入れることもできます。
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授業や非営利の目的なら無料で使えます。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
この記事を引用する「半導体入門講座・第20回:問題が起きたら:アラームから再発防止まで」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/learn/troubleshooting/