ホールドとは? 止めたロットを流すか、リワークか、スクラップかは誰が決める?
ホールドとは、ロットをその場に止め、次の工程へ進ませないことです。どうするかを誰かが決めるまで、そのままにしておきます。半導体工場で何かおかしいと気づいたとき、最初にやることのひとつがホールドです。まず止めて、調べて、それから決めます。決め方はおおまかに3つ。問題がなければ流す(リリース)、手直しできるならリワークでその工程をやり直す、救えなければスクラップです。ロットホールド、ホールドロットとも言います。
異常が出たら、工場はどんな順番で動く?
おおまかに6つのステップです。
- 気づく:人かシステムが、おかしいことに気づく。
- 止める:そのロットをホールドし、影響を受けたかもしれないほかのロットも止める(封じ込め)。
- 計画どおりに対応する:前もって書いてあるOCAPに沿って、一歩ずつ進める。
- このロットをどうするか決める:流すか、リワークか、スクラップか。
- 根本原因を見つける。
- 二度と起きないように変える。
この記事では最初の4つを扱います。残りの2つは「根本原因分析とは?」へ。
例外がひとつあります。ガス漏れ、薬品の漏えい、火災のように人がけがをしうることでは、まず人が避難経路に沿って離れることが先で、ロットや装置はあとまわしです(ガスになぜ気をつけるのかは「半導体工場ではどんなガスを使う?」へ)。
ステップ1:おかしいことに気づく
何をする:合図はいくつもあります。測定値が規格から外れる。管理図の点が限界線の外に飛ぶ(「SPCの管理図とは?」へ)。装置のセンサーの数値がおかしく、FDCが通知を出す(「FDCとは?」へ)。あるいは人が見つける。たとえば装置が赤ランプで止まる、ウェーハに傷が1本ある。
なぜ:早く気づくほど、影響を受けるロットが少なくて済みます。
しないと:問題はウェーハといっしょに工程を進み、最後に見つかったときには、さらに何ロットもつくってしまっています。
ステップ2:止める。まずこのロットをホールドし、範囲を決める
- このロットをホールドし、理由を書く:MES(どのロットがどの工程にいるかを記録するシステム)でホールドをかけると、システムは次の工程へディスパッチしなくなります。同時に、何を見たか、処置の担当は誰かを書き、ケースにもタグを貼ります。なぜ:どこが悪いのかまだわからないうちは、悪いロットが1工程進むたびに、片づける工程が1つ増えるから。しないと:理由が書いていなければ、引き継いだ次のシフトはなぜ動かせないのか、誰に聞けばいいのかがわからず、ロットは棚に置かれたまま誰も見なくなります。
- 範囲を決め、影響を受けたかもしれないロットも止める:「ほかに影響を受けたのは?」と問います。同じ装置で同じ時間帯に流れたロットは、最後に問題がないと確かめた時点から数えて、すべて疑わしいものとして、まず全部止めてから判断します。どのロットかはMESで調べられます。なぜ:装置に問題が出たとき、だめになるのが1枚だけということはめったにないから。しないと:見つけたロットだけを止めれば、同じ問題を抱えたほかのロットはそのまま進み、最後はお客さんのところまで届くかもしれません。
ステップ3:OCAPに沿って対応し、直した装置はテストランを通す
何をする:その装置、その種類の異常のOCAPに沿って動きます。装置を止める、数値が測り間違いでないか確かめる、オンコールのエンジニアに連絡する(OCAPに何が書いてあるかは「OCAPとは?」へ)。
なぜ:異常は夜中に起きることもあり、前もって書いた順番に沿えば、その場で考えなくて済みます。
しないと:めいめいが記憶で動き、このシフトと次のシフトでやることが違い、一歩抜けることもあります。
装置を直しても、すぐにロットを流すわけではありません。装置担当が引き渡しても、それは「動く」というだけです。まず何枚かのテストウェーハでテストランをして、結果が規格内か確かめ、プロセス担当も確認してから、やっと復旧してロットを入れます。しないと:修理のどこかがうまくいっていなければ、最初に入れたロットがまた影響を受けます。装置の確認に使うウェーハは「モニターウェーハ、ダミーウェーハとは?」へ。
ステップ4:このロットをどうするか決める。流す、リワーク、スクラップ
何をする:記録と測定結果を1枚ずつ見て、それぞれのウェーハをどうするか決めます。これをウェーハ判定と言います。同じロットの中で分けて決めることもできます。何枚かはスクラップ、何枚かはリワーク、残りはそのまま続行、というように。
| 判定 | どんなとき | そのあと |
|---|---|---|
| 流す | 調べたら問題がなかった。たとえば測り直したら限界線の内側に戻った | ホールドを解除し、予定どおりの流れに戻す |
| 逸脱申請をつけて流す | 決まりどおりには流れなかったが、まだ使えると判断した | どこが違うか、なぜ使えるか、誰が承認したかを書く。この書類はロットにずっとついて回る |
| リワーク | その工程をやり直せる、または追加できる | たとえばリソグラフィはエッチング前ならレジストをはがしてやり直せる。終わったらもう一度測る |
| スクラップ | 救えない | そのウェーハをロットから外す |
なぜ1枚ずつ:甘く判定すれば、悪いウェーハはずっとあとで見つかります。厳しすぎれば、良いウェーハまで捨てることになります。しかも後の工程ほど、スクラップは高くつきます。ウェーハは何百もの工程を何か月もかけて進み、完成に近いほど、それまでの手間を多く抱えているからです。リワークにもコストがあります。もう1回流す分、何時間も余計に待ちます。
最後に、ホールドを解除する:判定が決まり、処置も終わってから、ホールドを解きます。誰が解除したか、なぜ解除できたかも記録します。しないと:あとで誰かが調べたとき、このロットがなぜ流れたのか説明できません。
流す、リワーク、スクラップは誰が決める?
ひとりで決めるわけではありません。よくある分担は次のとおりです。
- その工程のプロセスエンジニア:数値と装置を見て、どこに問題があるかを判断する。
- プロセスインテグレーション:ウェーハ1枚ずつの履歴を見て、続行か、リワークか、スクラップかを決める(「プロセスインテグレーションエンジニア(PIE)は何をする?」へ)。
- 品質保証:いっしょに見て、処置が記録されているか、逸脱申請に必要な承認がそろっているかを確かめる。場合によってはお客さんの同意も必要(「半導体工場の品質保証(QA)は何をしている?」へ)。
こうした部門をまたいだ判定の場を、MRB(Material Review Board)と呼ぶ工場も多くあります。呼び方や分担は工場ごとに違いますが、考え方は同じです。要求を満たさないものは表示して分けておき、処置を記録して、誰が承認したかがわかるようにします。
ホールドしたロットを、なぜ置きっぱなしにできない?
ホールドしたロットは自分では動きませんが、時間は進み続けます。
- サイクルタイムが延びる:ウェーハはもともと何か月もかかり、ホールドでさらに待ちが増えます(「ウェーハをつくるのにどれくらいかかる?」へ)。
- Qタイムのカウントダウンは止まらない:工程によっては、次の工程を時間内に始めなければなりません。ホールド中もカウントダウンは進み、上限を超えると、問題のなかったロットまでリワークが必要になることがあります(「Qタイムとは?」へ)。
- 納期が遅れる:お客さんが待っているロットが止まると、生産管理が段取りを組み直して遅れを見積もり、営業担当からお客さんに伝えます(「半導体工場の生産管理は何をしている?」へ)。
だから、どのホールドにも理由と担当者を書き、いつごろ判定するかを言える人が必要です。止めたら終わり、ではありません。
fab24hrでは
メインストーリー「チップの一生」第6章「あの電話」では、あなたは今週オンコールのエッチングのプロセスエンジニアです。02:47から、夜勤のハオが電話をかけてきます。ETCH-03のチャンバーAでアラームが出て、特急ロットH-2417の7枚目がチャンバーの中に残っています。あなたは電話で伝えます。チャンバーAはダウン登録、7枚目は無理に取り出さない、最初の6枚はロット分割して先にウェット洗浄へ、残りはロットごとホールド。洗浄装置の前には3ロットが並んでいて、どれを先に洗うかはあなたが決めます。04:05、ハオから引き継ぎ表の下書きが届きます。ホールドの理由と処置担当の欄は空欄です。電話をかけ直して書き足してもらうか、「はい」と返すかは、あなたが決めます。空欄のままだと、洗い終わった6枚はシステム上ホールドされておらず、あやうく次の工程へディスパッチされかけます。
第7章「火消し」では、インテグレーションのヤーティンに、ロットがなぜホールドされたのか、誰も先に伝えていません。装置のカイは、部品を替えて渡せるのは「装置が動く」ところまでで、つくるものが正しいかどうかは、あなたのテストランが通ってはじめて決まると言います。テストランが通るとほかのロットは流せますが、H-2417はホールドのまま。7枚目の残りの厚さを測ってからでないと、ヤーティンは追加で削るかどうかを判断できません。
品質保証の側から見るには、「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプして品質保証エンジニアを選びます。4つのシフトのどれになるかは、サイトを開いた時刻で決まります。深夜のシフト「出すか、止めるか」では、25枚のロットが朝6時半にトラックに載る予定で、抜き取った5枚のうち2枚に傷があります。25枚を全部見直すか、ロットごと止めるか、1枚だけ外すか。
ゲームの会社、人物、ロット番号、装置、手順の中身は架空のものです。ホールドとは何か、異常が出たときの順番と分担は、品質マネジメントの規格の一般的な考え方と、公開されている学術資料をもとに書いています。実際の呼び方、分担、書類は工場ごとに違います。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」第6章「あの電話」では、02:47に夜勤から自宅へ電話がかかってきます。エッチング装置ETCH-03が止まり、特急ロットの1枚がチャンバーの中。何をホールドし、引き継ぎ表に何を書くかは、この電話から始まります。第7章「火消し」では、直した装置にテストランが必要で、ホールドした特急ロットはインテグレーションの判断を待っています。
fab24hrでは、02:47に電話が鳴ります。装置が止まり、特急ロットが中に残ったまま。洗浄の前に並んだ3ロットのどれを先に洗うか、引き継ぎ表のホールド理由を書き足すかは、あなたが決めます。
第6章を遊び、夜中の電話で特急ロットをホールドする先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「ホールドとは? 止めたロットを流すか、リワークか、スクラップかは誰が決める?」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/lot-hold/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
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