MOとは? 半導体工場でいう「誤操作」
台湾の半導体工場の現場でいうMOは、人による誤操作のことです。英語ではMis-operationと書き、Miss Operationと書く人もいます。レシピを間違える、ロットを取り違える、ウェーハを選び間違える、違う工程で流す、工程を1つ抜かす。人が操作するときに間違えたものは、どれもMOです。装置が自分で壊れるのとは別の話で、装置のダウンは設備の問題、MOは人と手順のあいだで起きた間違いです。現場の言い方で、統一された用語ではなく、呼び方や数え方は工場によって少しずつ違います。研究の文章では、ふつう「ヒューマンエラー」と書くか、ウェーハが「誤処理された(misprocess)」と書きます。
半導体ニュースの「Mo」は同じもの?
そうとは限りません。書き方と前後の文脈で決まります。
- Mo(oが小文字):たいていは金属元素モリブデンの記号です。金属の一種で、薄膜の材料に使う工程もあります。操作ミスとは関係ありません。
- MOCVDのMO:metal-organic、「有機金属」の意味です。MOCVDは薄膜をつける方法のひとつで、発光ダイオード(LED)などの化合物半導体デバイスをつくるのによく使われます。
MOには、どんな形がある?
先に2つの言葉を。レシピは、装置が従って動く設定のセットです。どのガスを使うか、何度にするか、何秒流すか。1ロットはたいてい、1つのケースに入った25枚のウェーハです。よくあるMOは、だいたい次のとおりです。
- レシピ違い:リストに似た名前が2つあり、もう一方を選んでしまう。
- ロット違い:同じ見た目のケースが2つあり、別のロットを装置に載せてしまう。
- ウェーハ違い:数枚だけ処理すればいいのに、画面ではケース全部が選ばれている。
- 工程違い:まだこの工程の番ではない、またはもう済んでいるのに、流してしまう。
- 工程の抜け:やるべき工程をやらないまま、次へ送ってしまう。
ふだんの多くのロットは、ウェーハ番号とレシピを、システムが作業票から装置へ送ります。人が自分で選ぶことはありません。MOが特に起きやすいのは、ふだんの流れから外れて、人が自分で選ぶ操作、つまり手動投入です。たとえば装置が止まったあと、途中で残ったウェーハを仕上げるときに使います。半導体工場のヒューマンエラーを扱った論文も、同じことを書いています。装置が止まったあと、途中まで処理したウェーハを人が手で扱うと、誤処理が起きることがあり、その損失は大きい、と。レシピそのものについては「半導体のレシピとは?」へ。
なぜ工場はMOをそんなに恐れるの?
理由は3つあります。
- ミスがロット全体に及びやすい:装置はたいていロット単位で処理するので、ひとつの選択がケースの中の全部のウェーハに当てはまってしまうことがあります。
- やり直せない工程が多い:リソグラフィの失敗なら、たいていレジストをはがしてやり直せます。これをリワークといいます(なぜやり直せるのかは「リソグラフィのエリアは、なぜ黄色い照明なのか」へ)。エッチングで材料を削ったり、イオン注入で原子を打ち込んだりしたあとは、元に戻せません。スクラップになることもよくあります。
- 後の工程ほど高くつく:ウェーハは何百もの工程を、何週間もかけて進みます。終わり近くで間違えると、それまでにかけた時間と材料がまとめて無駄になります。
スクラップが出なくても、記録が合わなくなります。システムには「指示どおりに処理した」とあるのに、装置が実際にしたことは別のことです。ロットはいったん止まり、1枚ずつウェーハ判定を待つことになり、納期が遅れます。
MOが起きたら、まず何をする?
間違いに気づいたら、待てないことが3つあります。
- ロットを止める:ホールドして、次の工程へ進ませません。間違ったロットが1工程進むたびに、片づける工程が1つ増えます(ロットがふだんどう進むかは「半導体工場の製造部は何をしている?」へ)。
- 報告する:そのロットの担当者と上司に、すぐ伝えます。早く言うほど、救えるものが多くなります。
- 現場をそのまま残す:装置の実行記録、画面で何が選ばれていたか、そのときの指示。慌てて直さないこと。今直してしまうと、あとで当時の様子を確かめられなくなります。
原因と対策は、そのあとです。今いちばん大事なのは、何があったかをはっきり説明すること。事故調査についての公開された労働安全の指針も同じ順番で、まず現場を確保して証拠を残し、それから原因を探すとしています。
検討では、誰のせいかを探すの?
いいえ。よい検討が問うのは「手順のどこが、間違えやすくしていたか」で、「誰が不注意だったか」ではありません。
人は、どんなに気をつけていても間違えます。安全の研究には「スイスチーズモデル」という有名なたとえがあります。防護の1つひとつは穴のあいたチーズの薄切りのようなもので、穴がたまたま一直線に並んだときだけ、ミスが最後まで突き抜けます。最後の1人だけを見ていても、穴はそのまま残り、次の人も同じように引っかかります。同じ労働安全の指針も、原因を「不注意」「手順を守らなかった」と書くのは簡単すぎて、しばしば誤解を招くと注意しています。本当に変えるべきところが見つからないからです。
検討でよく見つかる「穴」は、たとえばこんなものです。
- 2つの選択肢の名前が似すぎていて、ひと目では区別できない。
- 画面を開いたときの初期値が、ちょうど今回は使わないものになっている。
- ウェーハ番号やレシピを、チャットのメッセージから書き写すか、記憶に頼っている。
- 注意表示が多すぎて、みんな習慣で閉じてしまう。
半導体工場の製造システムの画面を研究した学位論文でも、画面の設計がよくないと、操作する人が間違えやすくなり、負担も大きくなるという結果が出ています。
検討の結果は不具合報告書にまとめます。よくある形式では順に、何が起きたか、どう封じ込めたか(まず、ほかのロットにも及んでいないかを調べる)、根本原因は何か、どう再発を防ぐかを書きます。
同じミスを繰り返さないためには?
対策はおおまかに3種類で、前のものほど確実です。
- システムで止める:間違った操作そのものをできなくします。たとえば、ウェーハ番号とレシピはシステムが入れ、人は「実行」を押すだけにする。装置が動く前に、このロット、このレシピで合っているかをシステムが照合し、合わなければ動かさない。こういう設計をポカヨケといいます。
- 2人で確認する:1人が操作し、もう1人が指示と照らし合わせて、確かめてから押します。1人の見間違いを、もう1人がその場で止められます。
- 注意と教育:注意事項をSOPに書き、画面の横に貼り、もう一度教える。効果はありますが、いちばん弱い方法です。結局、毎回みんなが覚えていることに頼るからです。
労働安全の考え方でも順番は同じで、設計で危険をなくすほうが、ルールや注意に頼るより確実です。最後の一歩が横展開です。この穴をふさいだら、ほかの装置やほかの課にも同じ穴がないかを見に行き、一緒にふさぎます。
fab24hrでは
fab24hrでは、MOはエッチングのプロセスエンジニアの昼シフトの中心です。「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてプロセスエンジニアで止め、名前の下の「エッチング」を押します。4つのシフトのどれになるかは開いた時刻で決まり、12:00〜18:00なら昼シフトです。夜中にETCH-03の中に残ったウェーハを、15秒の追加エッチングで、自分の手で仕上げます。こうした手当ては、装置の前での手動投入でしかできません。画面を開くと25枚がすでに全部選ばれていて、レシピは前回使ったもの。リストには、名前の似た使用停止の版が2つ残っています。横には、装置エンジニアのカイに見てもらうボタンがあります。
「実行」を押したあと、午後は2つに分かれます。MOを起こした場合は、製造部のユンにロットをホールドしてもらい、インテグレーションのヤーティンにどのウェーハに何が流れたかを伝え、課長に報告します。課長の最初のひとことは「わかった。今は謝らなくていい。何があったか、はっきり説明するほうが大事だ」。起こさなかった場合は、隣のETCH-05で新人のシャオアンがMOを起こし、報告書はあなたが彼と一緒に書きます。15:00に不具合報告書。発生経緯のほかの3つの欄は、3人のところへ取りに行きます。16:30に検討会で、3つの対策それぞれに担当者を決めます。「チップの一生」の第8章「時間との勝負」は、この午後です。品質保証エンジニアや生産管理の昼シフトでも、ETCH-05の手動投入のトラブルに出会います。片方はまず現場を残し、もう片方は今週の出荷を組み直します。ゲームに出てくる会社・人物・装置番号・枚数・画面は架空です。ミスがどう起きるか、起きたあとどうするかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。MOという呼び方や実際のやり方は、会社によって違います。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかエッチングのプロセスエンジニア(量産工場 › プロセス › エッチング)を遊ぶと、昼シフトで夜中に止まった1枚を自分で仕上げます。ところが手動投入の画面を開くと、25枚すべてが選ばれています。そのあと不具合報告書を書き、検討会に出ます。
fab24hrの昼シフトでは、手動投入の画面を開くと、最初から全部のウェーハが選ばれています。「実行」を押す前にもう一度見るかどうかは、あなた次第です。
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