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チップの基本約6分

半導体とは? なぜ「半」導体なのか

半導体とは、電気の通しやすさが「導体」と「絶縁体」の中間にある材料のことで、いちばん使われているのはシリコンです。「半」はこの「中間」を指します。金属ほどよく電気を通すわけでも、ガラスやプラスチックのようにほとんど通さないわけでもありません。ただ、半導体がこれほど大事なのは「半分通す」からではなく、電気を通すかどうかを人が決められるからです。スマートフォンやパソコンのチップは、この性質の上にできています。

導体、絶縁体、半導体は何が違う?

電気を水道管の水にたとえてみます。

  • 導体は、いつも開いている管です。押せば電気が流れます。電線の中の銅は導体です。
  • 絶縁体は、ふさがった管です。どれだけ押しても通りません。電線の外側のプラスチック、ガラス、陶磁器は絶縁体です。
  • 半導体は、弁のついた管です。弁はふだんほとんど閉じていて、少しだけ漏れます。でも開けることができ、どれだけ開くかも調整できます。

管を流れる「水」の正体は電子です。金属の中には自由に動ける電子がたくさんあり、少し押すだけで動きます。絶縁体の電子は原子にしっかりつかまっていて動けません。純粋な半導体はその中間で、ほとんどの電子はつかまっていて、動けるのはごくわずかです。

なぜ「半」導体と呼ぶの?

名前は電気の通しやすさから来ています。英語のsemiconductorのsemiは「半分、部分的」という意味で、通しやすさが導体と絶縁体の中間にあることを表しています。ですから「半」は、半分の強さで通すという意味でも、半分の時間だけ通すという意味でもありません。役に立つのは、その弁をどこで、どれだけ開くかを人が決められることです。

いちばん使われている半導体はシリコン。なぜ?

シリコン(ケイ素)は元素のひとつで、地殻に含まれる量は酸素に次いで2番目です。砂や石英の主な成分である二酸化ケイ素は、シリコンと酸素からできています。チップにシリコンが選ばれる主な理由は、次のとおりです。

  • 原料が多い:シリコンを含む鉱物はどこにでもあります。
  • 自分でよい絶縁膜をつくれる:シリコンを高温で酸素に触れさせると、表面に均一な二酸化ケイ素の膜ができます。これはとてもよい絶縁体です。チップの中には「ここは通す、となりは通さない」場所がいたるところにあり、シリコンなら拡散炉でこの膜をそのままつくれます。これが最大の長所のひとつです。
  • 熱に強い:最初のトランジスタは、ゲルマニウムという別の半導体でできていました。ゲルマニウムは温度が上がると電気が漏れやすく、表面の酸化膜も不安定だったため、のちにシリコンに置き換わりました。
  • 大きくそろった単結晶に育つ:原子がきれいに並んだシリコンは大きな塊に育てられ、薄く切ってウェーハにできます(ウェーハはなぜ丸いのか)。

ドーピング:ほかの原子を少し加えるだけで、電気の通り方がまったく変わる

チップ用のシリコンは、まず徹底的に純度を上げます。金属の不純物は10億分の1ほどのレベルまで減らします。そのうえで、決まった原子をわざとほんの少し加えます。これがドーピングです。

加える量はとても少なく、少ないときはシリコン原子およそ1億個に1個、多いときはおよそ1万個に1個で、場所によってはもっと多くなります。それでもこのわずかな量で、電気の通しやすさは純粋なシリコンの数千倍から数万倍になり、多く加えれば100万倍を超えます。

なぜこれほど違うのでしょう。「手」で考えてみます。シリコン原子にはそれぞれ4本の「手」(いちばん外側の4つの電子)があり、となりのシリコン原子と1本ずつ手をつないで、きれいな格子をつくっています。手がすべてふさがっているので電子は動けず、純粋なシリコンはあまり電気を通しません。

  • リンを加えるとn型:リンには手が5本あります。シリコン原子1個の代わりに入って4つのとなりと手をつなぐと、1本余ります。余った電子はつなぐ相手がいないので、自由に動き回れます。動くのはマイナスの電気をもつ電子で、マイナスは英語でnegativeなので、n型と呼びます。ヒ素も手が5本で、同じはたらきをします。
  • ホウ素を加えるとp型:ホウ素には手が3本しかないので、となりの1つは手をつなぐ相手がいません。そこに空席ができます(教科書では「正孔」と呼びます)。近くの電子が移ってきて埋めると、空席は別の場所に移ります。ひとつだけ空席のある列で、みんながひとつずつずれると、空席が列の向こうへ動いていくのと同じです。電子がひとつ足りない空席はプラスの電気のようにふるまい、プラスは英語でpositiveなので、p型と呼びます。

シリコン全体が電気を帯びているわけではありません。n型とp型の違いは、動くのが電子か空席か、というだけです。ひとことで言えば、加える原子の種類でn型かp型かが決まり、加える量でどれだけ電気を通すかが決まります。

工場ではどうやって原子を加えるの?

いまは主にイオン注入で行います。ホウ素やリンなどの原子を電気を帯びたイオンにし、電界で加速して、シリコンにそのまま打ち込みます。打ち込む数で電気の通しやすさが、打ち込む速さで深さが決まります。

打ち込みたくない場所は、先にレジストで覆います。レジストのパターンはリソグラフィで焼き付けたものなので、どの小さな部分をn型に、どこをp型にするかを、とても正確に描き分けられます。打ち込んだあとはもう一度加熱し(アニール)、乱れた並びを直して、ようやく原子が決まった位置に収まり、電気を通すようになります。打ち込んだ原子は取り出せないので、この工程でいちばん怖いのは設定の間違いです。

電気を通すかどうかを決められると、なぜ大事なの?

導体はいつも通し、絶縁体はいつも通さないので、どちらもスイッチにはなりません。半導体なら、この小さな部分は通し、となりは通さない、ということができ、しかも電気で切り替えられます。

n型とp型の小さな部分を並べ、制御用の電極をひとつ加えると、トランジスタになります。電気で切り替える小さなスイッチで、その電極の電圧を変えると、通るか止まるかが切り替わります。通れば1、止まれば0です(しくみは「トランジスタとは何か」へ)。

トランジスタの前、電子のスイッチは真空管でした。小さな電球ほどの大きさで、熱くなり、切れることもありました。半導体のスイッチは小さく、電力も少なくてすみ、1秒に1億回以上切り替えられます。チップ1つには何億、多ければ100億を超えるスイッチが載っています。スマートフォンで写真を撮るのも、道順を調べるのも、AIを動かすのも、もとをたどればこのスイッチが入ったり切れたりしているのです。

ニュースでいう「半導体」は何のこと?

材料ではなく、チップをつくる産業全体を指していることがよくあります。チップを設計し、工場でつくり、後工程(パッケージングとテスト)をへて、出荷するまで。簡単に分けると、半導体は材料であり、この産業の名前でもあります。チップは、半導体でつくったものです。

fab24hrでは

fab24hrでは、量産工場のイオン注入エリアにイオン注入装置IMP-01があります。注入エンジニア(量産工場 › プロセス › イオン注入)を遊ぶと、モニターウェーハのシート抵抗を見て、打ち込んだ量が正しいかを確かめます。打ち終わったロットは拡散炉のアニールに回します。夜シフトでは、3ロットのレシピ(ホウ素、リン、ヒ素、エネルギー、ドーズ)を1行ずつ照合します。ゲームの会社、人物、装置番号、ロット番号、数字は架空のもので、半導体とは何か、ドーピングのしかたは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うか量産工場のイオン注入エリアには、イオン注入装置IMP-01があります。注入エンジニアを遊ぶと、仕事はまさにドーピング。ホウ素、リン、ヒ素をシリコンに打ち込み、シート抵抗で電気の通り方が正しいかを確かめます。

fab24hrの注入エンジニアが見ているのは、ドーピングの工程です。打ち込んだ原子は取り出せないので、流す前に数字をひとつ残らず確かめます。

注入エンジニアで遊び、シリコンに打ち込む原子を確かめる

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