半導体チップとは? ウェーハ、IC、半導体とはどう違うのか
チップとは、小さなシリコンの上に、たくさんのトランジスタと、それをつなぐ配線をつくり込んで、ひとつの回路にまとめたものです。正式な名前は「集積回路」、英語では integrated circuit で、略してICといいます。ウェーハは、チップをつくるための大きな丸いシリコンの板です。1枚のウェーハの上で数十個から1万個以上のチップを同時につくり、切り分けてはじめて1個ずつになります。そして半導体は、チップの材料であり、この産業全体の名前でもあります。
4つの言葉の関係は、切手シートで考えるとわかりやすいでしょう。印刷した1枚のシートがウェーハ。同じ絵柄がずらりと並んでいて、そのひとつひとつがチップです。ミシン目で切り離すと、1枚ずつの切手になります。切手は紙に印刷しますが、チップは半導体、たいていはシリコンの上につくります。
チップの中には、何が入っているの?
いちばん多いのはトランジスタです。電気で操作する小さなスイッチで、オンが1、オフが0です(どうやって切り替えるかは「トランジスタとは?」へ)。スイッチ1つでできることはわずかです。設計どおりにたくさんつなぎ合わせて、はじめて計算したり、データを覚えたりできます。
だからチップのもうひとつの大事な部分が、配線です。トランジスタはいちばん下にあり、その上にとても細い金属の配線が何層も重なって、スイッチどうしをつないでいます。ビルにたとえると、1階にスイッチがぎっしり並び、上の階はすべて廊下と階段。最先端のチップでは、配線が10層以上にもなります。小さな抵抗やコンデンサも、同じ1枚の上にいっしょにつくられています。
これがすべて、小さなシリコンの上におさまっています。チップの大きさは、米粒より小さいものから、爪くらい、あるいはそれより大きいものまであります。いまのスマートフォンのプロセッサのチップには100億個以上のトランジスタがあり、いちばん細い配線は髪の毛の1000分の1よりも細いのです。
なぜ「集積」回路と呼ぶの?
「集積」は、たくさんのものを集めて、ひとつにまとめるという意味です。
集積回路が生まれる前、回路はばらばらの部品でつくっていました。トランジスタが1個、抵抗が1個、コンデンサが1個。それを1つずつ基板にはんだ付けし、線でつなぎます。部品が増えるほどはんだ付けの箇所も増え、1か所つながっていないだけで、機械全体が動かなくなることもありました。
1950年代の終わりに、技術者たちはこれを解決する方法を思いつきます。部品と、そのあいだの配線をすべて、1枚の半導体の上にいっしょにつくってしまうのです。1つずつはんだ付けするのではなく、1枚の上で一度につくる。これが集積回路です。その後、部品はどんどん小さくなり、1枚に数個だったものが、いまでは100億個以上になりました。
チップとウェーハは、どう違うの?
ウェーハは丸くて薄いシリコンの板で、いまいちばん一般的なのは直径300ミリ(12インチ)です。なぜ丸いのかは「ウェーハはなぜ丸いのか」へ。
チップは1個ずつ別々につくるのではありません。半導体工場では、同じチップの設計を碁盤の目のようにウェーハ全体に並べ、すべてのチップをいっしょにつくり、いっしょに仕上げます。1枚にいくつ入るかは、チップの大きさしだい。爪くらいの大きさなら1枚に数百個、1〜2ミリ角のとても小さなチップなら1万個以上、とても大きなチップなら数十個しか入りません。
チップとチップのあいだには、細いすき間がわざと残してあります。できあがったら、まずウェーハのまますべてのチップをテストし、そのすき間に沿ってダイシングで切り分けて、1個ずつにします。切り出したばかりで、まだパッケージに入っていない小片を、業界ではダイと呼びます。最後に保護のためのケースに収めるのが、パッケージングです(「パッケージングとは?」)。
ひとことで言えば:ウェーハはシート全体、チップはその中のひとコマ。
チップ、IC、ダイ。同じものなの?
だいたい同じものですが、使う場面が違います。
- チップ、半導体チップ、ICチップ:ふだんの呼び方。英語の chip はもともと「かけら、小片」という意味で、まさにシリコンの小さなかけらです。
- 集積回路、IC:正式な名前。どちらかというと「つくり方」を表す言葉で、部品と配線をすべて1枚の上にまとめてつくる、ということです。大規模なものはLSIとも呼ばれます。
- ダイ:ウェーハから切り出した、パッケージに入れる前の小片。
- 晶片、芯片:中国語の呼び方で、台湾では「晶片」、中国大陸では「芯片」と書きます。どちらもチップのことです。
もうひとつ、よくある混同があります。ふだん「チップ」と言うとき、シリコンの小片を指すこともあれば、回路基板の上の黒い小さな四角を指すこともあります。正確に言うと、黒い四角はパッケージで、本物のチップはその中にあります。
チップと半導体は、同じもの?
違います。半導体は材料です。電気の通しやすさが導体と絶縁体の中間にあり、しかも電気を通すかどうかを制御できます。いちばん使われているのはシリコンです(なぜ「半」導体なのかは「半導体とは?」へ)。チップは、その材料でつくったものです。ニュースでいう「半導体」は、チップをつくる産業全体を指していることがよくあります。
チップには、どんな種類があるの?
たくさんありますが、大きく分けると、計算するプロセッサ(ロジックチップとも呼びます)、データを覚えるメモリ、電池の電気を各部分に必要な電圧に分ける電源管理IC、光や音を電気の信号に変えるセンサー、無線の信号を送受信する通信用のチップなど。スマートフォンには、これが全部入っています。プロセッサとメモリの違いは、また別の記事で書きます。
チップは、どうやってつくられるの?
大きく4つの段階があります。
- 設計:技術者がコンピュータで回路を設計します。どのスイッチをどこに置き、どうつなぐかを決め、コンピュータ上で何度もシミュレーションして確かめます。できあがったら設計データを渡し、フォトマスク(回路を焼き付けるための原版で、パターンの層ごとに1枚)をつくります。これをテープアウトといいます。テープアウトのあとで設計を変えるには、マスクをつくり直さなければなりません。
- 半導体工場での製造:ウェーハ投入のあと、ウェーハは工場の中で数百の工程を通ります。パターンを焼き付け、そのとおりに削り、膜を重ね、平らに磨く。1層ずつトランジスタと配線をつくっていき、数週間から数か月かかります(「半導体工場の7つのプロセスエリアは、それぞれ何をしている?」)。
- 後工程:まずウェーハのまますべてのチップをテストし(ウェーハテスト)、切り分けてパッケージに入れ、もう一度テストします(ファイナルテスト)。良品だけが出荷されます。
- 製品の中へ:回路基板にはんだ付けされ、スマートフォン、パソコン、車、家電に組み込まれます。
この4つは、別々の会社が受け持つこともよくあります。チップの設計だけをして自分の工場を持たない会社、ほかの会社のチップをつくる専門の半導体工場、後工程だけを行う工場もあります。
fab24hrでは
fab24hrのメインストーリー「チップの一生」は、架空の補聴器用チップ「Glowmere」を追いかけて、この道のりをまるごと歩きます。設計したのは、補聴器をつくる小さな会社です。はじめてメインストーリーを遊ぶと、まずプロローグ「テープアウト」が出てきます。設計が半導体工場に渡り、フォトマスク一式になる場面です。第一幕は開発ラインでの試作。第二幕は量産工場で、特急ロットH-2417のウェーハにつくられているのが、このチップです。第三幕は後工程工場で、テストし、切り分け、パッケージに入れ、もう一度テストします。終章では補聴器に組み込まれ、シェンさんの父のもとへ届きます。図鑑の「チップの一生」のページには、いまどこにいるかを示すチップの履歴書があります。
ゲームのウェーハは直径30センチで、1つのケースに25枚入っています。会社、チップ、人物、数字は架空のもので、チップとは何か、どうつくられるかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」は、架空の補聴器用チップ「Glowmere」を追いかけます。テープアウトから開発ライン、量産工場、後工程工場をへて、使う人のもとへ。図鑑の「チップの一生」のページには、いまどこにいるかを示すチップの履歴書があります。
fab24hrでは、1つのチップが開発ラインから使う人のもとへ旅をします。章ごとに、あなたはそれを手渡していく人のひとりです。
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