半導体工場はなぜ24時間止まらないのか
ふつうの工場は夜になれば明かりを消せますが、半導体工場は一年じゅう24時間動き、エンジニアは夜中にも電話を受けます。装置が高い、ウェーハ1枚に数か月、止めると再開が大変、そして交替勤務と呼び出しのしくみをやさしく解説します。

半導体工場の明かりは消えません。お正月も、台風の日も、夜中の3時も、クリーンルームには人がいて、装置は動いています。半導体工場で働く人は「交替勤務」「夜勤」「4組2交替」といった言葉を使い、エンジニアは「夜中に呼び出される」と言います。なぜ半導体工場は、ふつうの工場のように夜になったら門を閉められないのでしょうか。
理由1:装置が高すぎて、遊ばせておけない
半導体工場には、とても高価な装置がずらりと並んでいます。装置は買ったあと、使っていてもいなくても毎日減価償却されます。費用が時間とともに割り振られ、新しい世代の工程が出てくれば、だんだん古くもなります。
計算は単純です。同じ投資でも、1日24時間ウェーハを流すのと8時間だけ流すのとでは、ウェーハ1枚あたりに割り振られる装置の償却費が約3倍違います。だから工場はできるだけ装置を動かし続けようとし、稼働率のような指標で、装置が使える時間・動いている時間を毎日見ています。
理由2:ウェーハ1枚の完成に、何か月もかかる
ウェーハが生産ラインに投入されてから工場を出るまでには、何百もの工程があります。レジスト塗布、露光、エッチング、成膜、洗浄、測定……と一層ずつ重ねていきます。全体で数週間から3か月ほどかかるのがふつうで、そのあと後工程に送られます。
つまり、どの瞬間にもラインには何千枚ものウェーハが同時にあって、それぞれ別の工程で止まっています。その時間の大半は、装置の前の順番待ちです。夜ごとにライン全体を止めれば、どのウェーハも完成がさらに遅れ、納期も後ろにずれていきます。
工程によっては時間の制限もあります。Qタイムと呼ばれるもので、前の工程が終わったら、決められた時間内に次の工程をしなければなりません。ウェーハの表面を長く置くと空気と反応して変わってしまうからです。これは明日の朝まで待てません。
理由3:止めると、再開が大変
多くの装置は、スイッチを切って入れ直せばいい、というものではありません。
- 高温の炉:とても高い温度まで加熱します。温めたり冷やしたりを繰り返すと炉そのものが傷むので、ウェーハがなくても、完全には止めずに少し低めの温度で待機させることがよくあります。
- 真空チャンバー:多くの工程は真空の中で行います。チャンバーを一度大気に開けると、真空を引き直し、きれいなことを確かめるまでに長い時間がかかり、それまでウェーハを入れられません。
- 工程を安定させる:止まったり修理したりした装置は、まずテスト用のウェーハを流して結果が正常か確かめてから、製品を戻します。これがテストランと復旧です。
建物全体も同じです。クリーンルームの空調、超純水、ガスや薬液の供給は、どれも24時間動いています。止めて再開するのはスイッチの問題ではなく、すべてを確かめ直す大仕事です。
それなら、装置を100%まで詰め込めばいい?
矛盾するようですが、工場はふつう、いちばん忙しい装置を100%までは詰め込みません。レジの行列と同じです。レジ係が休む間もないほど、行列はどんどん長くなり、しかも急に長くなります。装置も同じで、詰め込みすぎるとウェーハの待ち時間が一気に延び、ちょっとしたこと(どこかの装置のダウン、どこかのロットのリワーク)でライン全体が詰まってしまいます。24時間動かすのは、装置をいっぱいにするためではなく、ウェーハを流し続けるためなのです。
交替勤務のしくみ
工場に24時間人がいて、しかも同じ人が働き続けないようにするために、よくあるのは12時間勤務を4つの組で回す方法です。ある時点で、1組が日勤、1組が夜勤、残りの2組は休み。「4組2交替」「2勤2休」「4勤4休」などと呼ばれ、細かいところは工場ごとに違います。
技術員や製造部の人は、こうした交替勤務で働くことが多いです。エンジニアは主に日勤ですが、交代でオンコールを担当します。夜中に装置に問題が起きて判断が必要になると、当番のエンジニアの電話が鳴ります。交替勤務や夜勤が睡眠や注意力に与える影響は、労働安全衛生の研究で長く扱われてきたテーマです。だからこそ工場は引き継ぎを大事にします。次の組が、前の組の残したことをきちんと受け取れなければならないのです。
fab24hrでは
fab24hrの「工場の一日」は、まさにこのことを元に作られています。サイトを開いた時刻によって、深夜・朝・昼・夜の4つのシフトのどれかに入ります。深夜シフトは午前2時47分の電話から。エッチング装置がダウンし、特急ロットが中に止まっています。ゲームに出てくる会社・人物・ロット番号・数字は架空です。工場が止まらない理由や交替勤務のしくみは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。1日の流れは「半導体工場エンジニアの一日」でどうぞ。
fab24hrの「工場の一日」は、サイトを開いた時刻によって深夜・朝・昼・夜のどれかのシフトから始まります。深夜シフトは02:47の電話から。
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