クリーンルームでは、なぜ全身を覆う防塵服を着るのか
半導体工場のクリーンルームに入る人は、頭から足まで覆い、目だけを出します。理由は、人こそがクリーンルームでいちばんのほこりの発生源だから。人は1分間にどれだけパーティクルを出すのか、清浄度のクラス、上から順に着る理由をやさしく解説します。

半導体工場の写真では、みんな同じつなぎを着て、フードとマスクをつけ、目だけを出しています。この服が防塵服(クリーンルームウェア)です。英語では、まるっとした見た目から「バニースーツ」とも呼ばれます。守っているのは着ている人ではなく、クリーンルームのウェーハ。防いでいる相手は、人そのものです。
人は、クリーンルームでいちばんのほこりの発生源
人の体からは、いつも何かが落ちています。皮膚のかけら、髪の毛、服の繊維、息や話し声に含まれる小さな水滴。目には見えませんが、数はとても多いのです。大学のクリーンルームの規則には、こんな数字がよく引かれています。じっと立っている人でも、0.5マイクロメートルより大きいパーティクルを1分間に10万個以上出し、歩くと100万個以上になる。
クリーンルームの装置や配管、床は、きれいなまま保つように設計できます。でも人だけは、毎日出たり入ったりします。だからクリーンルームのルールの多くは、実は「人」のためのルールなのです。
見えないひと粒が、なぜチップを壊すのか
髪の毛の太さは数十マイクロメートル。0.5マイクロメートルのパーティクルはその100分の1ほどで、まったく見えません。けれどもチップの回路の線幅はナノメートルの単位で、そのパーティクルよりさらに何倍も細いのです。
ウェーハにパーティクルが落ちるのは、印刷の途中の紙に小石が落ちるようなものです。露光をさえぎって線を切ってしまうこともあれば、離れているはずの2本の線をつないでショートさせることもあります。1枚のウェーハにはたくさんのチップがあり、ひと粒でそのうちひとつがだめになる。それが歩留まりの損失です。
クリーンルームはどれくらいきれいなのか
クリーンルームの清浄度は、いまは国際規格ISO 14644-1(日本ではこれをもとにしたJIS B 9920-1)で分類するのが一般的です。ISO 1(いちばんきれい)からISO 9まで、空気1立方メートルあたり、ある大きさ以上のパーティクルが何個まで許されるかで決まります。
| クラス | 1 m³あたり0.5 µm以上の粒子の上限 | 昔の呼び方 |
|---|---|---|
| ISO 5 | 3,520個 | クラス100 |
| ISO 6 | 35,200個 | クラス1,000 |
| ISO 7 | 352,000個 | クラス10,000 |
| ISO 8 | 3,520,000個 | クラス100,000 |
「クラス100」は昔の米国の規格の呼び方で、空気1立方フィートあたり0.5マイクロメートル以上の粒子が100個以下、という意味です。だいたいISO 5にあたります。半導体工場でいちばん大事な場所には、ISO 5よりさらに厳しい清浄度が求められることもよくあります。ふつうの外の空気なら、同じ1立方メートルに、この大きさの粒子が数千万個あることもあります。
空気をきれいに保つしくみ
- 天井一面がフィルター:空気は高性能のHEPAフィルター(いちばん捕まえにくい0.3マイクロメートルの粒子を99.97%以上止める)や、さらに細かいULPAフィルターを通って、天井から下へ吹き出します。
- 上から下への気流:きれいな空気が上から下りてきて、床や壁ぎわから吸い出されます。パーティクルは宙をただよわず、下へ運ばれていきます。
- 陽圧:クリーンルームの気圧は外より少しだけ高く保たれています。扉を開けると空気は外へ流れるので、外のほこりが入りにくいのです。
防塵服の着方:上から下へ、手袋は最後
工場や大学の研究室ごとに順番は少しずつ違いますが、大学のクリーンルームが公開している着衣手順には共通点があります。
- 毛羽の出る上着を脱ぎ、髪をすべてヘアネットに入れる。
- マスクをつけ、フードをかぶる。
- つなぎを着て、フードのすそを襟元に入れ、ファスナーを上げる。
- ブーツカバーをはく。
- 最後に手袋をはめる(保護メガネも、ということが多い)。
なぜ上から下へ? 頭はいちばんパーティクルを出す場所で、パーティクルは下へ落ちるからです。頭を先に覆い、体、足と進み、手袋を最後にすれば、着替えのあいだに手がほかのものに触れずにすみます。脱ぐときはだいたい逆の順番です。
入口にエアシャワーがあるクリーンルームも多くあります。前後2つの扉が同時には開かない小部屋で、フィルターを通した強い風がノズルから吹き出し、中で腕を上げたり回ったりして、服の表面のパーティクルを吹き飛ばしてから入ります。化粧品、ふつうの紙、くずの出るものも持ち込めません。
防塵服を着れば、パーティクルはゼロになる?
なりません。防塵服は人が出すパーティクルを大きく減らしますが、ゼロにはなりません。防塵服を着て歩いても、すき間から粒子は出てきます。だからクリーンルームでは走らずに歩き、ゆっくり動きます。ウェーハもできるだけ密閉された箱(FOUP)に入れて、頭上の天井搬送で運びます。どのルールも理由はひとつ。人がウェーハに近づくのは、少なければ少ないほどいいのです。
fab24hrでは
fab24hrの製造部と装置エンジニアは、オフィスからクリーンルームに入る前にロッカーで着替えます。順番はヘアネット、マスク、フード、つなぎ、ブーツカバー、保護メガネ、手袋。着替えたあとの3Dの人物は、フード、メガネ、マスク、ブーツカバー、青い手袋をつけていて、オフィスに戻ると脱ぎます。ゲームに出てくる会社や人物は架空で、クリーンルームのルールは大学や研究機関が公開している手順をもとに書いています。この服で、転ばないように気をつけて。
fab24hrでは、オフィスからクリーンルームに入る前に、ロッカーで防塵服に着替えます。
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