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チップの基本約7分

ムーアの法則とは? なぜ減速していると言われるのか

ムーアの法則(Moore's law)とは、チップに載るトランジスタの数が、一定の間隔でおよそ2倍になっていくというものです。といっても物理法則ではありません。1965年、チップの仕事をしていた技術者ゴードン・ムーア(Gordon Moore)が、データを見て気づいた観察です。最初は「およそ毎年2倍」と言い、1975年に「およそ2年ごとに2倍」と改めました。ニュースで「ムーアの法則が減速した」「限界だ」と言われるのは、トランジスタが原子に近い大きさまで小さくなり、つくるのがどんどん難しく、高くなって、2年ごとの倍増に追いつかなくなってきたからです。

ムーアは、もともと何と言ったの?

1965年、ムーアは電子業界の雑誌に短い記事を書きました。集積回路が発明されてまだ数年のころで、いちばん複雑なチップでも、部品(トランジスタや抵抗など)はおよそ64個でした。

彼はそれまでの数年分の数字をグラフにしました。点はたった5つでしたが、ほぼ毎年2倍になっているのが読み取れました。そこで思い切って線を10年先まで延ばし、1975年にはチップ1つにおよそ6万5千個の部品が載る、と書きました。毎年2倍を10年続けると、2倍を10回で、およそ1000倍です。64の1000倍あまりで、6万5千ほどになります。

彼が見ていたのは、じつは「いちばん割に合う」部品の数でした。1つのチップに多めに詰めると、部品1個あたりの値段は少し下がります。でも詰めすぎると、不良になるチップが増えて、かえって高くなります。だからムーアの法則は、最初から技術だけでなく、お金の話でもあったのです。

なぜ「2年ごと」になり、「18カ月」という話もあるの?

1975年、ムーアはもう一度見積もり直し、これからは少しペースが落ちると考えて、およそ2年ごとに2倍と改めました。ふつうムーアの法則と言えば、この形です。その後の何十年か、業界はおおむねこのリズムで進んできました。

よく聞く「18カ月」は、ムーア本人の言葉ではありません。別の人が「トランジスタ1個も速くなる」ことまで加えて、チップの性能がおよそ18カ月で2倍になると見積もり、それがいつのまにか混ざったものです。「法則」という呼び名も、あとからほかの人が広めました。

物理法則でないなら、何なの?

物理法則は、手を離せば物が落ちるように、人が何をしても成り立ちます。ムーアの法則は違います。観察であり予測で、たくさんの人が努力し続けて、はじめて実現します。

やがてそれは、業界全体の目標になりました。業界は一緒に技術ロードマップをつくり、どの世代が何年ごろにどこまで小さくなるべきかを書いて、みんながその予定に合わせて研究開発を進めました。だからよく「自己実現的な予言」と言われます。みんなが2倍になると信じたから、みんなで必死に2倍にしてきたのです。

トランジスタを小さくすると、なぜ速く、省電力で、安くなるの?

トランジスタは、チップの中にある、電気で操作する小さなスイッチです(「トランジスタとは?」でくわしく説明しています)。小さくすると、いいことが3つあります。

  • たくさん入る:同じ広さにより多くのスイッチが入り、できることが増えます。
  • 速く、省電力に:スイッチが小さいと、1回切り替えるのに必要な電気が少なく、切り替えも速くなります。
  • 安くなる:ウェーハ1枚をつくる費用が世代ごとに少し上がったとしても、1枚に載るトランジスタはおよそ2倍になるので、1個あたりではずっと安くなります。

この3つが、何十年もいっしょに起きてきました。2年ごとに2倍なら、20年でおよそ1000倍、40年でおよそ100万倍です。1970年代のはじめ、最初期のプロセッサのチップにはトランジスタが数千個しかありませんでした。いまはスマートフォンのチップ1つに100億個以上あり、数百万倍の差です。スマートフォンが高性能で、しかも手の届く値段なのは、このおかげです。

ニュースの「何ナノ」は、こうして世代ごとに小さくなってきた名前で、いまは実際の寸法とは一致しません(「ニュースの「2ナノ」」で説明しています)。

なぜムーアの法則は減速していると言われるの?

2010年代ごろから、倍増のペースが2年ごとより少し遅くなったと、多くの人が見ています。理由は3つです。

1. 寸法が原子に近づいた

シリコンの原子を並べると、1ナノメートルに数個しか入りません。最先端のトランジスタには、原子数十個ぶんの幅しかない部分があり、ゲートの下の絶縁膜は一時、1〜2ナノメートルまで薄くなって、材料を変えるしかなくなりました。原子は半分には切れません。ここまで小さいと、原子が数個違うだけでトランジスタのふるまいが変わることもあり、縮める余地はどんどん減っています。

2. リークと発熱が抑えられない

トランジスタが小さすぎると、きっちり閉じられず、オフのときも少し電流が漏れます。これがリークです。絶縁膜が薄すぎると、電子がそのまま突き抜けることもあります。以前は、1世代小さくするたびに電圧も下げられたので、同じ面積あたりの消費電力はほとんど変わりませんでした。2000年代の半ばごろには、リークが大きくなって電圧をあまり下げられなくなり、スイッチを密に詰めるほどチップが熱くなるようになりました。

そのため、コンピュータのプロセッサが1秒間に切り替わる回数(クロック周波数)は、そのころからあまり上がっていません。かわりに、1つのチップに複数のコアを載せて、いっしょに計算するようになりました。

3. 世代ごとに難しく、高くなった

もっと細いパターンを焼くには、露光装置の光を、もっと波長の短いものに変えなければなりません。いちばん細いパターンは、1つの層を何回かに分けて露光しないと焼けないこともあります。チップが通る工程はどんどん増え、どの工程でも失敗は起こりえます。最先端の半導体工場を1つ建てるには、いまや100億ドルを超えることも珍しくありません。小さくして浮いたお金の一部は、どんどん高くなる装置と、増えていく工程に食われています。

では、ムーアの法則は終わったの?

見方は分かれていて、違いは定義にあります。「2年ごとに2倍、しかもトランジスタ1個が安くなる」と厳しく考えれば、いまはそれが難しいので、もう終わったと言う人がいます。「世代ごとに前より多く詰められる」とだけ考えれば、ペースは落ち、お金もかかるようになったものの、まだ進んでいるので、終わっていないと言う人もいます。業界の意見は、いまもまとまっていません。

業界は、どうやって先へ進もうとしているの?

同じ比率で縮めるだけでは足りなくなったので、別の道を進んでいます。よく挙げられるのは次のようなものです。

  1. トランジスタの形を変える:平らなものから、薄い板を立てた形へ、さらに通り道を四方から包む形へ変え、とても小さなスイッチでもきっちり閉じられるようにしてきました(「トランジスタとは?」で説明しています)。トランジスタそのものを上下に積み重ねる研究も進んでいます。
  2. 上へ積む:土地が足りなければ、高い建物にします。メモリのチップには、データをためるセルを何層にも積み重ねたものが、もう前からあります。チップどうしを、そのまま積み重ねることもできます。
  3. 先端パッケージで組み合わせる:何もかも1個の大きなチップにつくるのではなく、いくつかの小さなチップに分け、それぞれにいちばん合う世代でつくってから、1つのパッケージの中で近づけて密につなぎます(「ニュースの「先端パッケージ」とは?」)。
  4. もっと細い光:いちばん細い層は、ずっと波長の短い極端紫外線(EUV)で焼き付けます。

それに、すべてのチップが最新の世代を必要としているわけではありません。車や家電の中の多くのチップは、何世代も前のつくり方で十分です(「ニュースの「成熟プロセス」とは?」)。

fab24hrでは

ゲームの半導体工場は架空で、何ナノの工場かは書いていません。メインストーリー「チップの一生」の補聴器チップ「Glowmere」は、成熟した世代のプロセスを使っていて、トランジスタはいちばん小さい種類ではありません。それでも、トランジスタを小さくするほどぶつかる壁は、開発ラインで見えます。「工場の一日」で拡散炉の開発プロセスエンジニアを遊ぶと、朝シフトで、ゲートの下の酸化膜をどこまで薄くするかを決めます。薄いと、トランジスタは速く切り替わります。薄すぎると、電子がそのまま突き抜けやすくなり、待機中にリークします。しかもGlowmereは、ボタン電池1個で動くチップです。新しいプロセスはどれもこうして、まず開発ラインで試し、安定してから量産工場に渡します。「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「開発ライン」を押し、左右にスワイプして開発プロセスエンジニアにしてから、「拡散炉」のエリアを押してください。ゲームに出てくる会社・チップ・人物・数字は架空です。ムーアの法則についての部分は、公開されている一般的な資料をもとに書き、統一された数字がないところは大まかな規模だけにしています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うか「工場の一日」で開発ラインの炉の開発プロセスエンジニアになると、朝シフトで、トランジスタのゲートの下の酸化膜をどこまで薄くするかを決めます。薄いと速く切り替わり、薄すぎるとリークします。トランジスタを小さくするときにぶつかる壁が、ゲームではこのひとつの選択です。

fab24hrでは、新しいプロセスはまず開発ラインで、炉を1回ずつ回して決めていきます。もう少し薄く、もう少し小さくも、まずだれかがそこで試しています。

開発ラインの炉の開発プロセスエンジニアで遊び、酸化膜の厚さを決める

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