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ニュースのことば約6分

ニュースの「歩留まり」とは? 1%の差がなぜ大きいのか

ニュースでよく聞く「歩留まり」とは、1枚のウェーハでつくったチップのうち、良品が何割かということです。100個つくって90個が良品なら、歩留まりは90%です。

9割と聞くと十分に思えますが、ニュースでは歩留まりが数ポイント違うだけで大きな話になります。その理由は、チップがどう「焼き上がる」かから見ていくとわかります。

1枚のウェーハに、チップは何個ある?

チップは1個ずつつくるのではありません。工場では、薄くて丸いシリコンの板、ウェーハの上に、同じチップをまとめてたくさんつくります。小さなチップなら1枚に1,000個以上、とても大きなチップなら数十個しか載りません。できあがったら切り分けて、1個ずつパッケージに収めます。

これはクッキーを焼くのに似ています。天板にまとめて並べてオーブンに入れると、何枚かは焦げたり欠けたりします。歩留まりが問うのは、その天板のうち、売れるのは何割かということです。

なぜ全部が良品にならないのか

チップのいちばん細い線は、髪の毛の1,000分の1よりも細いほどです。これほど小さいものには、よくある壊れ方が2つあります。

ひとつは、何かが落ちてくること。目に見えないほど小さなパーティクル(微粒子)が、ちょうど悪い場所に落ちると、2本の線がつながったり、1本の線が切れたりします。クリーンルームがどれだけきれいでも、ゼロにはなりません。

もうひとつは、少しずれてできること。ある膜が少し厚い、線幅が少し太い。チップは動くかもしれませんが、遅すぎたり、待機中のリーク(漏れる電流)が多すぎたりすれば、やはり良品とはいえません。

1工程99.9%なら、最後にどれだけ残る?

ウェーハは工場に投入されてから完成するまで、数百の工程を通ります。どの工程でも、少しずつチップがだめになる可能性があります。簡単な計算で見てみましょう。どの工程も1,000個のうち1個しかだめにしない、つまり1工程ごとに99.9%が良品だとします。

1工程で99.9%、2工程で99.9%×99.9%。これを掛け続けると、次のようになります。

  • 100工程:約9割が残る
  • 300工程:約4分の3が残る
  • 500工程:約6割が残る

1工程ごとの差はわずかでも、掛け合わせると大きな差になります。逆にいえば、500工程を終えて95%を残したいなら、1工程ごとに99.99%、つまり1万個に1個しかだめにできません。

実際の工場では、工程ごとに失敗の起こりやすさは違います。ここで見たいのは掛け算の力です。どこかの工程が少しずれれば、それが最後の歩留まりに掛け合わされます。だから半導体工場は、どの工程もこれほど慎重に扱うのです。

チップが大きいほど、なぜ歩留まりが下がる?

クッキーに戻りましょう。どの天板にも焦げが10か所、でたらめな場所にできるとします。

小さなクッキーを天板に100個並べれば、焦げ10か所でだめになるのは多くて10個。9割は売れます。大きなクッキーを10個だけ並べると、同じ10か所の焦げで、平均6〜7個が当たってしまいます。

チップも同じです。欠陥の数がほぼ同じなら、チップが大きいほど当たりやすくなります。だから歩留まりを見るときは、まずどれくらいの大きさのチップかを知る必要があります。大きさの違うチップの歩留まりは、そのまま比べられません。

1%の差が、なぜ大きいのか

ウェーハ1枚にかかるお金は、良品がいくつ取れても、ほぼ同じです。材料、装置の時間、電気、水、人手は、つくっているあいだに使ってしまいます。良品が少ないほど、1個あたりが背負う分が大きくなります。

仮の数字で計算してみます。1枚のウェーハにチップが1,000個あるとします。

歩留まり良品良品1個が背負うコスト
90%900個1倍
60%600個1.5倍
45%450個2倍

量が多いと、1%の差はもっとはっきりします。さらに、このウェーハを1か月に1万枚つくるとします(これも仮の数字です)。歩留まりが90%から91%になれば、1枚あたり良品が10個増え、1か月で10万個増えます。そのウェーハはもともとつくるものなので、ウェーハ工場の側ではほとんど追加のお金がかかりません。逆に歩留まりが1%下がれば、10万個をつくったのに売れない、ということになります。

歩留まりが予定より低いと、もうひとつ困ることがあります。お客さんに約束した数が足りなくなるのです。補うにはウェーハを多めに投入するしかありませんが、ウェーハは投入から完成まで数週間から数か月かかるので、補う分は遅れて届きます。

新しいチップは、なぜ最初は歩留まりが低い?

新しい世代のプロセス(ニュースで聞く「2ナノ」など)や、新しく設計したチップをつくりはじめたときは、まだ見つかっていない問題がたくさんあります。ある工程の条件がまだ合っていない、ある装置がウェーハの端だけ違う仕上がりになる、フォトマスクに汚れがついている。新しい製品を初めてつくる数ロットを試作といい、このころの歩留まりは低いことが多いのです。

エンジニアは、原因をひとつずつ探します。どの壊れ方がいちばん多いか、ウェーハのどこで起きているかを見て、いちばん大きな原因から片づけ、次に取りかかります。ひとつ片づくたびに、歩留まりが一段上がります。

終わりに近づくほど、上がり方はゆるやかになります。残った原因が小さく、見つけにくくなるからです。歩留まりが十分に高くなり、採算が合うようになって、はじめて本格的な量産が始まります。この、上がりながらだんだん平らになっていく線が、ニュースでいう歩留まりの立ち上げ(ランプアップ)で、学習曲線とも呼ばれます。

どのチップが良品か、どうやって見分ける?

できあがったウェーハは、切り分ける前に、たいていウェーハテストを受けます。プローブカードのとても細い針をチップの接点に当て、電気を流してひととおり測ります。抜き取りではなく、1個残らず測ります。

測り終えたら、結果ごとに分類します。良品はひとつのグループ、不良は壊れ方ごとに別のグループです。この分類をビンといいます。結果を位置どおりに描いたものがウェーハマップで、良品と不良が色分けされます。ウェーハを切り分けたあと、パッケージに進むのは良品だけです。

ウェーハマップは、原因を探す手がかりにもなります。不良がばらばらに散らばっていれば、でたらめに落ちたパーティクルのようです。外周のリング、露光装置が一度に焼き付けるマス目のどれにも同じ位置、1本の弧のように並んでいれば、たいていはある工程、ある装置、あるいはフォトマスクに問題があります。

次にニュースで見たら、こう読める

  • 「歩留まりが悪い」「歩留まりが上がらない」:つくったチップのうち、不良が予定より多い。良品1個が高くなり、約束した数も間に合わないかもしれない。
  • 「歩留まりが向上」:同じウェーハから取れる良品が増えた。コストが下がり、納められる数も増える。
  • 「歩留まりの立ち上げ」:新しいプロセスやチップをつくりはじめたところで、エンジニアが不良の原因をひとつずつ片づけ、歩留まりが一段ずつ上がっている途中。
  • 「量産レベルの歩留まりに達した」:良品の割合が十分に高く、採算が合うようになった。本格的な量産を始められる。

fab24hrでは

メインストーリー「チップの一生」の第3章では、開発ラインの開発インテグレーションエンジニアになります。補聴器のチップ「Glowmere」の最初のロットがウェーハテストを終え、3枚のウェーハマップにそれぞれおかしな形があります(外周のリング、格子状、1本の弧)。それぞれが何を指しているのかを読み解きます。第10章では、後工程工場のテストエンジニアです。ビンの中でいちばん多い不良を見つけ、それがウェーハのどこにあるかを見て、待機電流の上限をどこに引くかを決めます。厳しくすると歩留まりは5ポイント近く下がり、初回分の数が足りなくなります。ゲームに出てくる会社・チップ・人物・歩留まりの数字は架空です。歩留まりとは何か、なぜ100%にならないのかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」の第3章では、開発ラインの最初のロットのウェーハテストが終わり、3枚のウェーハマップからおかしな形を見つけます。第10章では後工程工場のテストエンジニアとして、ビンとウェーハマップを見てテストの上限を決め、歩留まりもそれで変わります。

fab24hrでは、テストの上限を少し厳しくするだけで歩留まりが数ポイント下がり、初回分の数が足りなくなります。

第10章で、テストエンジニアとして上限を決める

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