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ニュースのことば約8分

ニュースの「先端パッケージ」とは? チップを横に並べたり積み重ねたりする理由

ニュースでよく聞く「先端パッケージ」とは、いくつものチップを1つのパッケージにまとめることです。チップどうしをすぐ近くに置いて密につなぐので、まるで1個の大きなチップのように働きます。おもな方法は2つ。とても細い配線のある薄い板の上に横に並べるか、そのまま積み重ねるかです。まずは、従来のパッケージから見ていきます。

従来のパッケージはどうなっているの?

ウェーハの上でできあがったチップは、切り分けてケースに収めてから、回路基板にはんだ付けします。これがパッケージングです(パッケージングとはの記事で説明しています)。従来は、たいてい1個のチップに1つのケースでした。いくつものチップがいっしょに働くときは、それぞれをパッケージに入れて回路基板にはんだ付けし、基板の上の配線でデータをやりとりします。

先端パッケージは違います。いくつものチップを先に並べてつなぎ、最後にまとめて1つの部品にします。

1個の大きなチップをつくればいいのでは?

何もかも1個のチップに載せると、チップはとても大きくなります。そして大きなチップには、困ったことが2つあります。

1つめは、大きなチップほど歩留まりが下がることです。ウェーハには、目に見えないほど小さな欠陥がどうしてもいくつか落ち、当たったチップはだめになります。チップが大きいほど、当たりやすくなります(ニュースの「歩留まり」の記事で、クッキーのたとえで説明しています)。

2つめは、大きさに上限があることです。露光装置は1回に1区画ずつしか焼けず、1区画の大きさは決まっています。いちばん大きなチップは、もうほぼ1区画いっぱいの大きさで、それ以上大きくすると1区画に収まりません。

小さく分けると、何がいいの?

仮の数字で計算してみます。1枚のウェーハに、大きなチップが40個とれるとします。そこに欠陥が10個落ちると、だめになるのは多くて10個。良品は少なくとも30個残ります。

大きなチップを1個ずつ4つの同じ小片に分けると、同じウェーハに160個とれます。同じ10個の欠陥でだめになるのは多くて10個で、良品は少なくとも150個。4個で1組にすると、37組できます。同じウェーハから、使えるものが30個から37組に増えるわけです。

この小片が、ニュースでいうチップレットです。1個の大きなチップをいくつかに分け、それぞれつくってテストしてから、組み合わせます。実際はもっと複雑で、分けるとつなぐための場所が余分に要り、パッケージングも難しくなります。だから、どんなチップでも分ければいいというわけではありません。

世代ごとに高くなることと、どう関係するの?

新しいプロセスの世代は、1世代ごとにつくるのが難しく、高くなっています(ニュースの「2ナノ」の記事で説明しています)。でも、チップのすべての部分が最新の世代を必要とするわけではありません。たとえば外とやりとりする部分や、アナログ信号を扱う部分は、新しい世代でつくってもあまり小さくなりません。

チップレットにすれば、いちばん必要な部分(たとえば計算を受け持つ部分)だけを最新の世代でつくり、ほかの部分は何世代か前の、安くて安定したつくり方でつくって、あとでまとめられます。お金を、いちばん必要なところに使えるのです。

チップどうしの道は、なぜ短く、広くしたいの?

2個のチップをそれぞれパッケージに入れて回路基板に載せると、データはいったんケースの外に出て、基板の上の数センチの配線を通り、もう一方のチップに入ります。道は長く、並んで通れる線も多くありません。2つの町が、長い田舎道1本だけでつながっているようなものです。

1つのパッケージにまとめれば、チップどうしはほんのわずかしか離れていません。あいだの配線は細く、たくさん引けます。田舎道を、短くて車線の多い高速道路に変えるようなものです。道が短ければ、データは速く届き、電気も少なくてすみます。車線が多ければ、一度にたくさん送れます。

チップはどうやって並べ、どうやって積むの?

従来:1個のチップに1つのケース回路基板道が長く、車線が少ない2.5D:インターポーザの上に横に並べる演算メモリインターポーザ基板チップの間:道が短く、車線が多い3D:そのまま積み重ねるTSV(貫通電極)基板道はいちばん短いが、熱がこもりやすい
横から見た模式図で、縮尺は正確ではありません。赤い線は、チップのあいだでデータが通る道です。

インターポーザの上に横に並べる:2.5D

いくつかのチップを、インターポーザと呼ばれる薄い板の上に横に並べます。インターポーザにはよくシリコンが使われます。チップをつくる方法で、回路基板よりずっと細い配線を描けるので、となりのチップどうしを密につなげるからです。チップは裏返して、小さな突起(バンプ)ではんだ付けします。パッケージングの記事に出てきたフリップチップと同じです。インターポーザは、その信号をさらに下の基板へつなぎます。

業界ではこれを2.5Dと呼びます。チップは積み重ねていませんが、下に1枚よけいに敷いていて、平らに置くのと積み重ねるのとの中間にあたるからです。

そのまま積み重ねる:3D

もう1つの方法は、チップを1層ずつ積み重ねることです。上と下の層は、どうつなぐのでしょう。シリコンにとても細い穴をあけて金属を詰め、信号がチップを突き抜けて上下に通るようにします。この穴をシリコン貫通電極(TSV)といい、髪の毛よりずっと細いものです。

積み重ねると、道はいちばん短く、場所もいちばんとりません。そのかわり、つくるのはもっと難しくなります。チップをとても薄く削らなければならず、あいだにはさまれた層は熱も逃げにくくなります。

AI向けのチップのとなりには、よくメモリがいくつか積み重なって置かれています。何枚ものメモリのチップを積み重ね、シリコン貫通電極でつないだもので、広帯域メモリ(HBM)といいます。これが何か、なぜAIに特に必要なのかは、別の記事で書く予定です。

なぜニュースは、AIチップの決め手だと言うの?

AIは計算する量がとても多く、計算するチップとメモリのあいだを、データが絶えず行き来します。いちばん大きなチップはもう1区画の上限に達しているので、もっと計算とメモリを詰めこむには、いくつものチップを1つのパッケージにまとめ、十分に近づけて密につなぐしかありません。だからAI向けのチップは、計算するチップのとなりにメモリをいくつか並べ、1枚のインターポーザに載せていることがよくあります。2.5Dと3Dの両方を使っているわけです。ある政府の先端パッケージの研究開発プログラムは、はっきりこう書いています。近年のAIの進歩は、先端パッケージなしには実現できなかった、と。

なぜ「生産能力が足りない」とよく言われるの?

ニュースでは、先端パッケージの「生産能力がひっ迫している」とよく言われます。一般的な言い方をすると、ここ数年でAI向けチップの需要が一気に増え、高性能のAI向けチップの多くがこのパッケージングを通ります。この方式は工程が多く、シリコンに配線を描いたり穴をあけたりする工程もあって、使う装置ややり方は前工程の半導体工場に近いものです。新しいラインを建て、安定してつくれるようにするには時間がかかります。だから、チップそのものはつくれても、パッケージングで止まってしまうことがあります。前工程に近い工程があるので、先端パッケージは、後工程工場だけでなく、前工程の半導体工場でも行われています。

それに、失敗が許されにくい方式でもあります。1つのパッケージの中のチップはどれも高価で、1個でも不良だったり、どこか1か所でもつながっていなかったりすると、1組まるごとむだになります。だから、どのチップも組み合わせる前にテストしておきます(ウェーハテスト)。

次にニュースで見たら、こう読める

  • 「先端パッケージの生産能力がひっ迫」:いくつものチップを1つにまとめるラインが足りない。チップそのものはつくれても、AI向けのチップがここで止まっているのかもしれません。
  • 「チップレット設計を採用」:このチップは、実はいくつかの小片の組み合わせ。それぞれつくってテストしてから、1つのパッケージにまとめています。
  • 「2.5D・3Dパッケージ」:2.5Dはインターポーザの上に横に並べる方式、3Dはそのまま積み重ねて、シリコンを貫く細い穴でつなぐ方式です。
  • 「異種集積」:別々につくった種類の違うチップ(働きが違うもの、ときには違う世代のつくり方でつくったもの)を、1つのパッケージにまとめることです。ほかの小さな部品がいっしょに入ることもあります。

fab24hrでは

メインストーリー「チップの一生」の第三幕は、後工程工場が舞台です。第11章「ボールが浮いた」では、シューフイが組立ラインを案内してくれます。ゲームの補聴器用チップ「Glowmere」が入るのはSiPモジュールで、小さな基板にチップが載り、となりに抵抗やコンデンサがいくつか並びます。先に部品実装とダイボンド、それからワイヤボンディングとモールド。これも1つのパッケージに2種類以上のものをまとめていますが、モジュールの中のチップは1個だけで、ワイヤボンディングで外につないでいます。インターポーザの上に並べたチップや、積み重ねたチップは、ゲームには出てきません。ゲームに出てくる会社・チップ・人物は架空です。先端パッケージとは何か、なぜそうするのかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。記事の中の数字は仮のものです。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」の第11章では、シューフイが組立ラインを案内してくれます。GlowmereはSiPの小さなモジュールに入ります。小さな基板に、チップと、抵抗やコンデンサがいくつか載っています。「工場の一日」でも、後工程工場の組立プロセスエンジニアを選べます。

fab24hrでは、補聴器用のチップが爪より小さなモジュールに収められます。部品実装、ダイボンド、ワイヤボンディング、モールド。どの工程にも、見ている人がいます。

第11章で、シューフイと組立ラインを歩く

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