プレイする

← fab24hrブログ

工場で働く約7分

半導体工場の製造部は何をしている? ロットの順番はどう決める?

ひとことで言うと、半導体工場の製造部は、ウェーハを予定どおり1工程ずつ先へ進める人たちです。ウェーハは数百の工程を通りますが、その時間の大半は装置の前で順番を待っています。どのロットを先にどの装置へ流すか、止まった装置をどう避けるか、特急ロットをどこに割り込ませるか。それが製造部の毎日の仕事です。中でもいちばん中心になる仕事を、工場ではディスパッチと呼びます。

製造部は、プロセスエンジニアや装置エンジニアとどう分担している?

同じ装置でも、3種類の人が見ているものは違います。

誰何を見ているかよく聞く質問
プロセスエンジニア装置がつくったものが正しいかこのロットは規格内? 先に進めていい?
装置エンジニア装置そのものが動くかどの部品が壊れた? いつ直る?
製造部ロットが予定どおり進んでいるかこのロットはどこ? 次はどの装置? 間に合う?

前の2つの違いは「プロセスエンジニアと装置エンジニアはどう違う?」をどうぞ。製造部は、装置をどんな条件で動かすか(レシピ)を決めませんし、装置も直しません。見ているのはライン全体の「流れ」です。装置のランプが赤になったとき、最初に気づくのは、シフトでラインを見ている人であることがよくあります。異常時の処置手順であるOCAPに沿って、止めるべきものを止め、ロットをその装置に入れないようにしてから、エンジニアに連絡します。装置を実際に操作するのは、多くの場合、技術員です。エンジニアとの違いは「オペレーター(技術員)とエンジニアはどう違う?」へ。

もうひとつ、よく混同されるのが生産管理です。生産管理が決めるのは「このロットをいつまでに仕上げ、いつ出荷するか」。製造部の仕事は、工場の中でロットを実際にそこまで運ぶことです。片方は旅程を組み、もう片方は運転する、という関係です。

ディスパッチとは?

忙しいレストランの厨房を思い浮かべてください。待っているテーブルはたくさんあるのに、コンロは数口しかありません。どのテーブルの料理を先につくるかで、全員の待ち時間が変わります。ディスパッチは、半導体工場でのこの仕事です。どのロットを、どの装置に、先に流すかを決めること。

工場は厨房より順番を決めにくく、理由は3つあります。

  • 同じウェーハが何度も戻ってくる:チップは1層ずつ積み上げてつくるので、1層ごとにウェーハはリソグラフィやエッチングなどのエリアをもう一度通ります。だから、ラインに入ったばかりの新しいロットと、もうすぐ終わる古いロットが、同じ装置を取り合うことがよくあります。
  • どの装置でもどのロットでも流せるわけではない:決まった数台にしか流せないロットがあります。
  • 装置は止まる:故障やメンテナンスの間、テスト用のウェーハを流している間は、ロットを入れられません。

多くの工場は、すべての工程を前もって予定に組むのではなく、ディスパッチシステムがルールに沿って、その場で次のロットを決めます。先に来たものから、納期の近いものから、あるいは「納期までの残り時間」と「残りの作業にかかる時間」を比べて、といったルールです。どのルールにも得意と不得意があり、どの数字でもいちばん、というものはありません。だから普段はシステムに任せ、何かあったときに人が調整します。

どのロットを先に流すかは、どう決める?

人が手を入れるのは、たいてい次のような場面です。

  1. 特急:特急ロットはどの工程でも先頭に並びます。でも特急が速いのは、ほかのロットが譲っているからです。特急ロットが増えると普通のロットの製造期間がはっきり延びる、という研究があります。特急は多ければいいわけではありません。
  2. Qタイムが迫っている:ある工程のあと、次の工程を決められた時間内に始めないと、やり直しや、ときには廃棄になります。期限が近いロットを先に流します。さらによいのは、逆から考えること。次の装置が空いていないなら、前の工程をまだ始めません。なぜ期限があるのかは「Qタイムとは? ウェーハを長く置いておけない理由」へ。
  3. 装置の状態:1台がダウンしたら、並んでいたロットを、まだ動く装置へ振り分けます。その装置でしか流せないロットは、直るまで待つしかありません。メンテナンスをどの日に入れるかでも、明日のロットをどこへ先に流すかが変わります。
  4. 次の工程が詰まらないか:ロットを一度に全部送り出すと、次の工程でもさばききれません。高温の拡散炉のように一度に複数のロットを入れる装置では、いっぱいになるまで待つか、先に始めるかも決めます。

こうした情報はすべて、製造実行システムのMESに集まります。各ロットがどの工程にいて、いつ終わり、次にどこへ行くかが、そこに記録されています。

MoveとWIPは何を見ている?

製造部が毎日ボードで追うのは、MoveとWIPの2つの数字です。

  • Move:ウェーハ1枚が1工程を終えると1 Move(ロット単位で数える工場もあります)。今日のMoveが多ければ、ロットが前に進んでいるということです。
  • WIP:work in process、日本語では仕掛品。ラインの上で、まだ仕上がっていないロットのことです。

この2つは一緒に見ます。仕掛品と「1枚がどれだけ工場にいるか」には、簡単な関係があります。仕掛品=1日に仕上がる量×1枚が工場にいる平均日数。たとえば1日に1,000枚仕上がるラインに30,000枚の仕掛品があれば、1枚は平均30日いることになります。1日に仕上がる量が同じなら、仕掛品が積み上がるほど、1枚あたりの待ち時間は長くなります。だから「もっとウェーハを入れれば早く出てくる」とは限りません。

Moveにも見えないところがあります。急ぎかどうかに関係なく、どの工程も1つと数えるからです。流しやすい工程にロットを多めに通せば数字はよく見えますが、止まった装置の前の特急ロットは1歩も進んでいない、ということが起こります。だからボードでは、Moveのほかに、どの工程にロットが溜まっているか、どのロットのQタイムが迫っているかも見ます。

シフトの引き継ぎでは何を渡す?

半導体工場は24時間止まりません。理由は「半導体工場はなぜ24時間止まらないのか」へ。ラインを見る人は12時間シフトで、いくつかの班が交代で入ることが多く、1日に少なくとも2回、担当が替わります。

シフトの引き継ぎで渡すのは、まだ終わっていないことです。どの装置が止まっていて、誰を待っているか。どのロットがホールドされていて、理由は何で、誰が決めるのか。どのロットのQタイムが迫っているか。特急ロットがいまどこにあるか。公開されている労働安全のガイドラインは、引き継ぎを対面で、双方向に、口頭と書面の両方で行い、引き継ぐ人がその場で質問できるようにすることを勧めています。シフトをまたいで装置の修理が続いているときは、なおさらです。シフトが長いほど、書き残した数行が頼りになります。

fab24hrでは

fab24hrでは、「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプして製造部を選びます。担当はエッチングエリアで、どのシフトでもディスパッチボードを開きます。ロットを押してから装置を押し、Qタイムが減っていくのを見ながら、「計画」と「実際」に仕上がった枚数の2本の線を追います。深夜シフトでは、エッチング装置ETCH-03が02:47に赤ランプ。OCAPに沿ってオンコールのエンジニアに電話するか、先にリセットを押すかは、あなたが決めます。そのあと洗浄装置の前の4ロットの順番を決め、引き継ぎ表を書きます。朝シフトでは、ETCH-03のチャンバーAは止まったまま。待っていた9ロットを、まだ動くチャンバーと装置へ振り分け、朝会ではMoveの数字を報告します。さらに、実験に使うはずだった装置を、Qタイムが迫ったロットのために空けてもらうよう、ジョウ先輩を説得します。昼シフトでは、生産管理から超特急ロットの電話が入り、天井のOHTまでちょうど止まります。夜シフトでは、引き継ぎ表の5行はすべて正しいのに、1ロットが抜けています。技術員の病欠や、ディスパッチシステムの切断に出会うこともあります。同じカードには生産管理の役割もあります。ゲームの会社、人物、装置番号、ロット番号、数字は架空のものです。製造部が何をしているか、ディスパッチがどう決まるかは、公開されている一般的な資料をもとに書いていて、実際の分担は会社によって違います。

ゲームのどこで出会うか量産工場の製造部を遊ぶと、どのシフトでもディスパッチボードを開きます。ロットを1つずつ装置に並べ、Qタイムのカウントダウンと特急ロットの割り込みを見ながら、「計画」と「実際」に仕上がった枚数の2本の線を追います。

fab24hrで製造部の一日を。夜中に装置が赤ランプ、昼には特急ロットが割り込み、引き継ぎ表から1行が抜けている。それでもロットは前へ進めなければなりません。

製造部で遊び、ディスパッチボードを自分で組む

ほかの記事

このサイトのほかのページ