フリップチップとは? チップをはんだのバンプで外とつなぐしくみ
フリップチップ(flip chip)は、チップを「裏返して」外とつなぐ方法です。まず、チップ表面の接点の1つ1つに、小さな突起(バンプ)をつくります。はんだでできたものが多いので、はんだボールとも呼ばれます。次に、チップを表を下にして裏返し、バンプを基板の接点に合わせて、加熱してはんだ付けします。線を1本ずつ渡す必要はなく、すべての接点が一度につながります。表を下に向けるので、フェースダウン実装ともいいます。
ワイヤボンディングとは何が違う?
チップはウェーハの上でつくられます。回路は表の面にあり、外から電気を受け取り信号をやりとりする小さな金属の部分(接点)も、表の面にあります。
ワイヤボンディングでは、チップを表を上にして小さな基板に貼り付け(ダイボンド)、髪の毛より細い金属線で、4辺に並んだ接点から基板へ1本ずつつなぎます(「ワイヤボンディングとは? チップはどうやって外とつながる?」)。
フリップチップは、チップを裏返して表を下にします。バンプをはんだ付けすると、チップは固定され、同時に電気もつながります。ダイボンドとワイヤボンディングが、1つの工程にまとまるのです(あとで下に樹脂を入れて補強します)。
| ワイヤボンディング | フリップチップ | |
|---|---|---|
| チップの表の面 | 上向き | 下向き |
| つなぎ方 | 細い線を1本ずつ | 小さなバンプを一度にはんだ付け |
| 接点の場所 | おもに4辺 | 面全体に置ける |
| 信号の道のり | 線1本ぶんの長さがある | バンプの高さだけ |
新しい方法ではなく、1960年代からあります。
なぜチップを裏返すの?
たくさんつなげる。ワイヤボンディングの接点は4辺に並びます。テーブルの縁にしか座れないようなものです。フリップチップは面全体を使えます。仮の数字で計算してみましょう。1辺10ミリのチップで、ワイヤボンディングの接点を0.05ミリごとに並べると、4辺で約800個です。フリップチップのバンプはもっと大きく、仮に0.2ミリごとに1個とします。それでも面全体に並べられるので、50列×50個で2,500個になります。チップが大きいほど差は開きます。4辺は辺の長さに比例してしか増えませんが、面は面積に比例して増えるからです。
道のりが短く、信号が速い。線が長いほど、速く変化する信号は遅れたり形がくずれたりしやすく、途中で失われるものも増えます。バンプはほんの少しの高さしかないので、信号がすばやく出入りできます。
熱を逃がしやすく、場所もとらない。裏返すと、チップの裏面が上を向くので、金属のふたやヒートシンクをじかに載せられます。熱はバンプを通って下へも逃げます。まわりに線を渡すスペースが要らないぶん、パッケージも少し小さくできます。
バンプはどうやってつくる?
バンプはふつう、ウェーハを切り分ける前に、1枚まるごと、すべてのチップに一度につくります。だいたい次のとおりです。
- 下地をつくる:接点の1つ1つに、ごく薄い金属を何層か重ねます。はんだがしっかり付き、下の金属と反応しないようにするためです。
- 小さな穴をあける:レジストを塗り、半導体工場と同じように露光と現像をして、接点の真上に小さな穴をあけます。
- はんだを入れる:めっきで、穴の中にはんだを少しずつ育てます(印刷する方法もあります)。
- ボールにする:レジストを洗い落とし、もう一度加熱します。はんだが溶け、表面張力で丸い小さなボールになります。ハスの葉の上で水が玉になるのと同じです。
従来のバンプの間隔は、およそ100〜200マイクロメートルです(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)。先端パッケージで使う、さらに小さな「マイクロバンプ」は、間隔が数十マイクロメートルしかなく、髪の毛1本の太さと同じくらいです。
チップはどうやって裏返してはんだ付けする?
ウェーハをダイシングで1個ずつに切り分けたあと、次のように進めます。
- フラックスを付ける:バンプか基板の接点に、少しフラックスを付けます。加熱したとき、はんだがよく溶けて広がり、しっかり付くようにするためです。
- 裏返して位置を合わせる:装置がチップを吸い上げて裏返し、カメラでチップのバンプと基板の接点を同時に見て、位置が合ったら置きます。
- リフロー:炉に通して加熱すると、はんだが溶けて基板の接点とつながり、冷えると固まります。溶けたはんだには表面張力があるので、少しずれて置かれたチップも、真ん中へ引き戻されることがよくあります。
- アンダーフィル:チップと基板のあいだには、とても狭いすき間が残ります。チップの縁に液体の樹脂を1列置くと、樹脂は自分ですき間にしみ込み、バンプのあいだを埋めていきます。紙タオルの角を水につけると、水が勝手にのぼっていくのと同じです。最後に加熱して、樹脂を固めます。
アンダーフィルは何を守っている?
ものは温まると膨らみ、冷えると縮みます。でも、膨らむ量は材料ごとに違います。シリコンはほとんど膨らみません。よく使う基板はおもに樹脂でできていて、シリコンの何倍も膨らみます。
チップは使うたびに温まり、止まると冷えます。そのたびに、あいだにある小さなバンプは、上と下から違う向きに引っぱられます。何度も行ったり来たりするうちにひびが入ります。針金を何度も折り曲げると、いつか切れるのと同じです。チップが大きいほど、中心から遠いバンプほど強くねじられます。
アンダーフィルは、チップと基板を面全体でくっつけます。引っぱる力を面全体で分け合うので、はんだの接合部が耐えられる温度の上がり下がりの回数は、ずっと多くなります。モールドとは別のものです。モールドはチップ全体を樹脂で包みますが、アンダーフィルはチップの下のすき間だけを埋めます。
フリップチップの弱点は?
- 高い:バンプをつくる工程が増えます。基板も、たくさんのバンプを受けるために、とても密な接点と細い配線が必要です。接点が多くないチップなら、ふつうはワイヤボンディングのほうが安くすみます。
- 直しにくい:接合部はチップの下に隠れて見えないので、きちんとはんだ付けできたか、アンダーフィルがすき間を埋めたかは、X線や超音波で調べます。樹脂が固まると、チップを外すのはとても難しくなります。不良があると、パッケージごと捨てることも多いのです。だから、はんだ付けの前にチップを1個ずつテストし(ウェーハテスト)、良品だけを使います。
- 熱による伸び縮み:上で書いた引っぱり合いです。基板が温まって反ることもあります。
- 設計のときに決まる:接点も基板も、フリップチップに合わせて用意しておく必要があります。ワイヤボンディングのほうが融通がききます。
フリップチップのはんだボールは、パッケージの下のはんだボールと同じ?
違います。大きさがまるで違います。チップの下のバンプがいちばん小さく、基板にはんだ付けされます。その基板の下に、ずっと大きなはんだボールが並び、回路基板にはんだ付けされます(「パッケージングとは?」で紹介したのは、こちらです)。あいだの基板は変換アダプターのようなもので、上は小さく密なバンプ、下は大きなはんだボールを受け持ちます。
フリップチップと先端パッケージの関係は?
ニュースでいう先端パッケージは、いくつかのチップをインターポーザという薄い板の上に並べたり、積み重ねたりします(ニュースの「先端パッケージ」とは?)。そこでチップをつなぐ方法の多くが、フリップチップです。チップを裏返し、小さなマイクロバンプでインターポーザにはんだ付けし、インターポーザはもっと大きなバンプで基板に、基板はさらに大きなはんだボールで回路基板につながります。ボールが3段あり、下へいくほど大きくなります。
積み重ねたメモリでも、層と層のあいだを小さなバンプではんだ付けすることがよくあります(ニュースの「HBM」とは?)。マイクロバンプより密につなぐために、はんだを使わず、2つの層の銅の接点をじかに貼り合わせるハイブリッドボンディングもあります。
fab24hrでは
ゲームにフリップチップは出てきません。メインストーリー「チップの一生」第11章「ボールが浮いた」では、あなたは後工程工場の組立プロセスエンジニアです。この組立ラインで、チップ「Glowmere」は表を上にしてSiPモジュールの小さな基板に貼り付けられ、細い線でワイヤボンディングされ、モールドされます。ワイヤボンダの説明には、チップ1個に線が十数本と書いてあります。接点がこのくらいなら、ワイヤボンディングがちょうど合います。
ゲームでいちばんフリップチップに近いのは、部品実装ラインの長いリフロー炉です。はんだペーストを印刷し、抵抗やコンデンサを載せて炉に1回通すと、はんだが溶けて固まり、部品が固定されます。フリップチップのはんだ付けも同じ考え方で、違うのは、はんだ付けするのが裏返したチップだという点です。
「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「後工程工場」を押し、左右にスワイプして組立プロセスエンジニアにします。4つのシフトのどれになるかは端末の時刻で決まります。深夜はワイヤボンダを待つ基板、朝はダイシング装置の刃、午後は第11章のプルテスト、夜はモールドで流された線です。
後工程工場、チップ「Glowmere」、人物、装置は、どれも架空の設定です。フリップチップとは何か、どうつくるかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。接点の数を数えるのに使ったチップの大きさと間隔は、仮の数字です。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかゲームにフリップチップは出てきません。後工程工場の組立ラインはワイヤボンディングです。「工場の一日」の「今日のあなたは」カードで「後工程工場」を押し、組立プロセスエンジニアまで左右にスワイプすると、ダイシング、部品実装、ダイボンド、ワイヤボンディング、モールドを受け持ちます。部品実装ラインのリフロー炉で「はんだペーストが溶けて固まる」のは、フリップチップのはんだ付けと同じ考え方です。
fab24hrでは、チップ「Glowmere」は裏返さず、細い線で1本ずつ外へつなぎます。ダイボンド、ワイヤボンディング、モールド、どの工程も組立プロセスエンジニアの担当です。
組立プロセスエンジニアで遊び、ワイヤボンディングのラインを見る先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
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