ワイヤボンディングとは? チップはどうやって外とつながる?
ワイヤボンディング(wire bonding)は、髪の毛より細い金属線で、チップの接点を1本ずつ外につなぐ工程です。つなぐ先は、パッケージの中の小さな基板か、リードフレームと呼ばれる金属の枠です。パッケージングの工程のひとつで、ダイボンドのあと、モールドの前に行います(パッケージングの各工程は「パッケージングとは? できあがったチップをさらに包む理由」で紹介しています)。
チップはなぜ線で外につなぐの?
チップは、表面にある小さな金属の部分を通して、外から電気を受け取り、信号をやりとりします。これを接点といいます。接点1つの幅は、数十マイクロメートルほどしかないことがよくあります(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)。髪の毛1本の太さと同じくらいか、もっと小さいのです。
回路基板のはんだ付けの点は、そこまで小さくつくれません。そこで、まずチップを基板やリードフレームに貼り付け、接点の1つ1つから細い線を渡します。これがワイヤボンディングです。基板やリードフレームが、それをずっと大きな金属の端子やはんだボールに変えて、外に出します。
使う線は、よくあるもので太さ20〜30マイクロメートルほど。髪の毛の数分の1です。
1本の線は、どうやって打つの?
ワイヤボンダのいちばん先には、キャピラリという細い管があり、線はその中心を通って出てきます。1本を打つ流れは、だいたい次のとおりです。
- ボールをつくる:装置が線の先に高電圧の火花を飛ばし、先を少し溶かします。溶けた金属は表面張力で丸くなり、線より少し太い小さなボールになります。
- 1つ目の接合はチップの上:下の加熱台が、チップを100°Cを超える温度に温めておきます。キャピラリがボールを接点に押しつけ、同時に超音波でキャピラリを細かく速く振動させます。熱、圧力、超音波の3つがそろうと、ボールと接点の金属が、液体に溶けることなく接合します。ボールはつぶれて、くぎの頭のような形になります。
- 弧を描く:キャピラリが持ち上がり、決められた道すじで基板側へ動きます。線はキャピラリから送り出され続け、空中に弧を描きます。この弧をループといいます。
- 2つ目の接合は基板の上:キャピラリが、線をそのまま基板やリードフレームの接点に押しつけます。今度はボールをつくらず、線を押しつぶして小さな平たい点にします。
- 切って、次の1本へ:小さなクランプが線をはさみ、キャピラリが持ち上がると、線は押しつぶされていちばん薄いところで切れます。キャピラリの下には短い線の先が残り、次の1本はそこからボールをつくります。
糸で縫うのに似ています。ひと針目はチップに、ふた針目は基板に。自動のワイヤボンダは、1秒間に何本も打てます。
弧が低すぎると、線がチップの縁に触れてショートすることがあります。高すぎると、あとのモールドで流れてくる樹脂に押されて曲がり、となりの線に触れやすくなります。
ボールボンディングとウェッジボンディングの違いは?
ここまでの方法がボールボンディングです。1つ目の接合がボールで、ほとんどのチップはこの方法で打ちます。ボールは丸いので、線をどの方向へ引き出してもよく、そのぶん速く打てます。
ウェッジボンディングはボールをつくりません。先が平たいくさびのような工具で、線をそのまま接点に押しつぶすので、両端とも平たくなります。線は工具の後ろから斜めに送り込まれるため、2つ目の接合は線のまっすぐ先にしか置けません。向きを変えるには工具か部品を回す必要があり、そのぶん遅くなります。そのかわり接合部が小さく、とても密に並んだ接点にも打てます。ウェッジボンディングではアルミ線がよく使われ、室温でも超音波と圧力だけで接合できます。大電流を流すパワー素子では、太さが数百マイクロメートルもあるアルミ線を使うこともあります。
金線と銅線、どちらを使う?
昔から多いのは金線です。金は酸化しないので、ふつうの空気の中でもきれいなボールができ、やわらかくて打ちやすいのです。難点は値段が高いことです。
そこで今は、多くの製品が銅線に切り替えています。ずっと安く、電気も金よりよく通します。ただ、銅は硬く、ボールをつくるときに酸化しやすいので、ボールは保護ガスの中でつくります(窒素に少し水素を混ぜたものがよく使われます)。条件の管理もより厳しくなります。金線より少し大きな力とエネルギーが要りますが、強すぎると接点の下のチップを傷めてしまいます。
しっかり付いているかは、どうやって確かめる?
やっかいなのは、接合が弱い線でも、打った直後はたいてい電気が通ることです。電気のテストでは見つからないことがあります。しばらく使ううちに、温度が上がったり下がったりして、線とチップと基板の膨らみ方の違いで引っぱり合い、少しずつはがれていきます。だから実際に力をかけて確かめます。
- プルテスト:小さなフックを弧の真ん中あたりに引っかけ、切れるまで上に引っぱって、どれだけの力が要ったか、どこで切れたかを記録します。線の途中で切れるのは、線そのものが限界まで引っぱられたからで、正常です。ボールがまるごと接点から浮き上がるのは、しっかり接合されていないからです。引っぱった線はもう使えないので、ふつうは一定の間隔でいくつかを抜き取って引きます。
- ボールシェアテスト:小さな刃を接点のすぐ上に当て、つぶれたボールを横から押してはがし、どれだけの力が要ったかを測ります。プルテストは線全体を、シェアテストはボールと接点のくっつき具合をじかに見るもので、よく組み合わせて使います。
どちらのテストも、公開されている軍用の試験法や業界の規格に、やり方が決められています。モールドのあとは、X線で線が曲がっていないかも確かめます。
なぜ、しっかり付かないことがあるの?
よくある原因は2つです。1つは接点の表面が汚れていること。目に見えない汚れが少しついただけで、ボールはしっかり付きません。そのため多くの組立ラインでは、ワイヤボンディングの前にプラズマで表面の汚れを飛ばします。ただ、洗浄してから長く置くと、空気中の汚れがまたついてしまうので、洗浄からボンディングまでには時間の制限があることが多いのです。半導体工場のQタイムと同じ考え方です(Qタイムとは?)。
もう1つは装置の条件です。押す力、超音波の強さと時間、温度。弱すぎれば付かず、強すぎれば接点を傷めます。キャピラリも使い続けたら交換し、新しいものに替えたら条件を調整し直します。
ワイヤボンディングを使わないチップがあるのはなぜ?
ワイヤボンディングの接点は、ふつうチップの4辺に沿って並んでいます。外につなぐ点が多いほど4辺は混み合い、線にもある程度の長さがあるので、信号は回り道をして外に出ることになります。
そのため、接点がとても多いチップや、特に速く動くチップでは、フリップチップを使うことがよくあります。接点に小さな突起(バンプ)をつくり、チップを裏返して、そのまま基板にはんだ付けする方法です。チップの面全体に接点を置けて、道のりもずっと短くなります。ニュースでいう先端パッケージで、いくつかのチップをインターポーザという薄い板の上に並べるときも、チップを裏返して小さなバンプではんだ付けします(ニュースの「先端パッケージ」とは?)。
ワイヤボンディングの強みは、安く、技術として成熟していて、設計を変えるときにも融通がきくことです。だから接点が多くなく、最高の速さも要らないチップでは、今でもワイヤボンディングがよく使われています。
fab24hrでは
メインストーリー「チップの一生」第11章「ボールが浮いた」では、あなたは後工程工場の組立プロセスエンジニアです。ラインリーダーのシューフイが、ダイシングから部品実装、ダイボンドを通って、ワイヤボンダの並ぶところまで案内してくれます。ワイヤボンディング担当のグオが、WB-03の今日のプルテストの抜き取りから、拡大写真を6枚見せて、おかしいものを選ぶよう頼みます。線の途中で切れているのは正常で、ボールがまるごと浮いているものがおかしいのです。キャピラリは3日前に交換したばかりで、新しい製品の最初のロットのチップの接点の表面かもしれません。装置を止めてキャピラリを替えて調整し直し、その日に打ったトレイをすべて抜き取り直すか、打ち続けて抜き取りの回数を増やすか。決めるのはあなたです。
「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「後工程工場」を押し、左右にスワイプして組立プロセスエンジニアにします。4つのシフトのどれになるかは端末の時刻で決まります。深夜は、プラズマ洗浄を終えた基板がワイヤボンダを待っていて、待ちすぎたものは洗浄し直します。朝は、ダイシング装置から出てきたチップの縁に小さな欠けがあり、刃を替えるかどうか。午後が第11章のシフトです。夜は、モールドの樹脂で細い線が流されていないか、8つのキャビティのX線から探します。
後工程工場、チップ「Glowmere」、人物、装置の番号、「洗浄から何時間以内に打つ」といった数字は、どれも架空の設定です。ワイヤボンディングの打ち方と確かめ方は、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」第11章「ボールが浮いた」では、組立プロセスエンジニアとしてワイヤボンダWB-03の前でプルテストの写真を見て、装置を止めるかを決めます。「工場の一日」で後工程工場の組立プロセスエンジニアを選ぶと、4つのシフトはどれも組立ラインです。
fab24hrでは、ワイヤボンダのプルテストで2本がおかしい。ボールがまるごと接点から浮いています。装置を止めるかどうかは、あなたが決めます。
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