ニュースの「シリコンフォトニクス」とは? 電気の代わりに光でデータを送る理由
ニュースでは「シリコンフォトニクス」「CPO」という言葉や、AIのデータセンターで「銅線を光に置き換える」という話をよく見ます。「光電融合」という言葉と一緒に出てくることもあります。シリコンフォトニクスとは、チップをつくる方法で、シリコンの上に光を通す細い道や、電気を光に、光を電気に変える小さな部品をつくる技術です。チップとチップのあいだ、ラックとラックのあいだでデータを運ぶ速さが足りず、電力も使いすぎる。その問題を解こうとしています。まずは、いまデータがどう運ばれているかから話しましょう。
いま、データはどうやって運ばれているの?
チップの中やチップのあいだで、データは0と1の長い列です。たいていは電気で送ります。電圧の高い・低いで0か1を表し、銅の線の上を走らせます。
AIのサーバーの中では、何個ものチップが一緒に計算しています。データセンターには、サーバーを入れた背の高い棚が何列も並んでいて、これをラックといいます。そのあいだを、データが絶えず行き来します。AIがなぜデータをたくさん運ぶのかは、ニュースの「HBM」の記事で説明しました。ここでは、チップからメモリまでよりも遠い道のりの話です。
銅線は、なぜ苦しくなってきたの?
速く送るほど、電圧は1秒間に何度も上下しなければなりません。上下が速くなるほど、銅線の上で信号は失われていきます。電流が線の表面に押し寄せて、抵抗が大きくなったのと同じことになり、線を包む絶縁材料にも少し吸われます。線が長いほど、向こう側に着く信号は弱く、ぼやけます。
向こう側でまだ0と1を見分けられるように、両端に回路を入れて信号を強め、整えます。これには電力が要り、熱も出ます。だから速度が上がるほど、銅線で届く距離は短くなります。公開されているイーサネットの規格で見てみましょう。1本のレーンで1秒に100億個の0か1を送る世代では、銅ケーブルの距離はおよそ7メートルでした。1秒に1,000億個になると、およそ2メートル。ほぼ1つのラックの中でしか使えない長さです。
光は何がいいの?
光ファイバーはとても細いガラスの糸で、光はその中に閉じ込められて進みます。
- ほとんど減らない:長距離用の光ファイバーなら、光は1キロメートル進んでも数%しか減りません。だからラックとラックのあいだや、都市と都市のあいだは、とっくに光ファイバーです。
- 一度にたくさん送れる:1本の光ファイバーに、いくつもの色の光を同時に通して、それぞれ別のデータを運べます。1本の道路をいくつもの車線に分けるようなものです。
そのかわり、両端で変換が要ります。チップは電気でしか計算しないので、送り出す前に電気の信号を点滅する光に変え、向こう側でまた電気に戻します。これをするのが光トランシーバ(光モジュール)という小さな箱で、スイッチ(データを正しい行き先へ送り分ける機器)の前面に差し込みます。
シリコンフォトニクスとは何か
変換のための部品は、これまで別々につくってから組み立てることが多くありました。シリコンフォトニクスの考え方はこうです。チップをつくる方法は、ものを小さく、たくさんつくるのが得意。それなら同じ方法で、光の部品もシリコンの上につくってしまおう。よく使われる部品は3つです。
- 光導波路(光の通り道):シリコンの上の細いシリコンの線で、幅はおよそ0.5マイクロメートル、厚さは0.2マイクロメートルほど(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)。まわりを二酸化ケイ素、つまりガラスの主な成分が包んでいます。シリコンフォトニクスで使うのは人の目に見えない赤外線(波長はおよそ1.3か1.55マイクロメートル)で、シリコンはこの光をほとんど通します。シリコンの中を進む光の速さは、ガラスの中のおよそ4割しかありません。2つの材料がこれだけ違うので、光はシリコンの線の中に閉じ込められ、小さなカーブも曲がれます。
- 光変調器(電気から光へ):レーザーの光はつけっぱなしです。変調器は電気の信号に合わせて、その光をすばやく明るくしたり暗くしたりします。シリコンでは、光の通り道に動ける電荷を入れたり抜いたりします。するとシリコンの中を光が進む速さが少し変わります。そのうえで光を2本の道に分けてまた合わせたり、小さなリングを回らせたりすると、この小さな変化が明るさの違いになります。
- 受光器(光から電気へ):光が当たると電流を生む部品です。シリコンはこの光をほとんど通してしまうので、とらえられません。そこで、シリコンの上にゲルマニウムを小さく成長させることがよくあります。ゲルマニウムはもうひとつの半導体で、この光を吸収できます。
どれも半導体工場のやり方でつくります。出発点はよく「シリコン・ガラス・シリコン」のサンドイッチのようなウェーハです。いちばん上にとても薄いシリコンがあり、その下に二酸化ケイ素の層が敷かれています。リソグラフィで光の通り道のパターンを焼き付け、エッチングで削り出し、膜をつけ、イオンを注入し、金属の配線をつなぎます。使うのは同じ種類の装置です。光の通り道の幅や厚さで光の進み方が決まるので、ここでも線幅から目が離せません。
ひとつ区別しておきたいのは、ニュースに出てくるシリコンフォトニクスは、たいてい「送る」ためのもので、光で「計算する」話ではないことです。チップの中の計算は、いまもトランジスタがしています。
CPO(コパッケージド・オプティクス)とは?
いまよくある形では、光トランシーバはスイッチの前面に差し込み、スイッチチップは機器のまん中にあります。チップを出た電気の信号は、回路基板の上を数センチから数十センチ走ってから、モジュールで光に変わります。速度が上がるほど、この区間が苦しくなります。
CPO(co-packaged optics、コパッケージド・オプティクス)は、「電気を光に変える」部分を、スイッチチップと同じパッケージの中、すぐとなりに移す方式です。電気は数ミリ走るだけで光に変わり、パッケージから直接光ファイバーにつながります。道が短くなるので、信号を整える回路をずっと簡単にでき、電力を減らせます。パッケージのまわりから引き出せるデータの道も増えます。これは一般的な説明で、AI向けのチップのとなりに置こうという考えもあります。
ニュースの「先端パッケージ」と同じ方向の話です。たえずデータをやりとりするチップどうしを、もっと近づける。シリコンフォトニクスで光の部品を十分小さくできるから、パッケージの中に入れられる。だから2つの言葉はよく一緒に出てきます。ただ、一方は部品をつくる方法、もう一方は並べ方です。
まだどこでも使われていないのはなぜ? 何が難しいの?
- シリコンはほとんど光らない:シリコンは電気のエネルギーを光にして出すのが苦手で、使えるレーザーになりません。そこで光源は、別の種類の半導体(たとえばリン化インジウム)で別につくり、貼り付けたり、はんだ付けしたり、パッケージの外に置いて光ファイバーで光を送り込んだりします。
- 光ファイバーをとても正確に合わせる:光ファイバーの中で光を通す芯は太さがおよそ10マイクロメートル。シリコンの上の光の通り道は1マイクロメートルにも満たず、数十倍の差があります。少しずれるだけで、光は大きく減ってしまいます。
- 熱に弱い:レーザーや一部の光の部品は、温度が変わると、光の色や強さがずれていきます。ところがスイッチチップ自体がとても熱くなります。光源を外に置く設計があるのは、これも理由のひとつです。
- 壊れたら交換しにくい:前面に差し込むモジュールなら、壊れても抜いて差し替えれば済みます。パッケージに入れたものは、まるごと交換になるかもしれません。だから入れる前にテストし、長く使えることも求められます。
次にニュースで見たら、こう読める
- 「シリコンフォトニクス」:チップをつくる方法で、シリコンの上に光の部品をつくり、「電気を光に、光を電気に」を小さくする技術。
- 「CPO」「コパッケージド・オプティクス」:光の部品を、スイッチチップ(またはAI向けのチップ)と同じパッケージに入れること。電気は数ミリ走るだけで光になります。
- 「銅線から光へ」:たいていは、どんどん速く、長くなっていく区間が光に変わるという話です。チップの中や、すぐ近くのチップどうしは、いまもほとんど電気です。
- 「光トランシーバ」「光モジュール」:スイッチに差し込み、電気と光を変換する小さな箱。
fab24hrでは
ゲームにシリコンフォトニクスは出てきません。光でデータを送るチップもありません。ゲームのチップ「Glowmere」は架空の補聴器用チップで、後工程工場で小さなモジュールに入り、細い金属の線(ワイヤボンディング)で外へつながります。運ぶのは電気です。
いちばん近いのは、量産工場のリソグラフィエリアです。そこでは光で回路パターンをウェーハに焼き付けます。シリコンフォトニクスの光の通り道も、同じように焼き付けてから削ってつくります。「工場の一日」の「今日のあなたは」カードで「量産工場」を押し、プロセスエンジニアまで左右にスワイプして、名前の下の「リソグラフィ」を押すと、リソグラフィのプロセスエンジニアです。たとえば昼のシフトでは、コータデベロッパTRK-01から出た2ロットの線幅が片側だけ太く、片側だけ細くなり、どのウェーハをリワークするか選びます。
ゲームに出てくる会社・チップ・人物は架空です。シリコンフォトニクスとは何か、何が難しいのかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかゲームにシリコンフォトニクスは出てきません。光でデータを送るチップもありません。いちばん近いのは量産工場のリソグラフィエリアで、そこでは光で回路パターンをウェーハに焼き付けます。「工場の一日」の「今日のあなたは」カードで「量産工場」を押し、プロセスエンジニアまで左右にスワイプして、名前の下の「リソグラフィ」を押します。
fab24hrの光はデータを運ばず、リソグラフィエリアで回路パターンをウェーハに焼き付けます。シリコンフォトニクスの光の通り道も、同じように焼き付けてから削ってつくります。
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