SiPとは? チップと小さな部品を、1つの小さなモジュールに
SiPは System in Package の略で、日本語ではシステム・イン・パッケージと呼ばれます。チップと、それに必要な抵抗やコンデンサなどの小さな部品、多くの場合はほかのチップもいっしょに小さな基板に載せ、樹脂で封止して1つの小さなモジュールにしたものです。外から見ると普通のチップのようですが、中身は小さな1つのシステムです。
チップのまわりに、なぜ小さな部品がたくさんあるのか
電子機器を開けると、回路基板の上には黒いチップのほかに、ゴマ粒ほどの小さな部品がたくさん並んでいます。その多くは抵抗とコンデンサです。
- 抵抗:流れる電流の大きさをおさえます。水道のホースを少しつまむようなものです。
- コンデンサ:電気を少しだけためておき、必要なときにすぐ渡します。すぐそばに置いた小さなバケツのようなものです。チップが急にたくさん電気を使っても、電圧が一気に下がらずにすみます。
チップは、これらがあってはじめて安定して動きます。では、チップの中につくり込めばいいのでは? できるものもあります。しかし、たくさん電気をためるコンデンサはチップの上で広い面積を取り、チップの面積は高価です。そのため、別につくった小さな部品にすることが多いのです。1つの製品に、チップが1個だけとは限りません。
SiPは何をまとめるのか
普通のパッケージは、たいてい1個のチップを1つのケースに入れます(「パッケージングとは? できあがったチップをさらに包む理由」を参照)。製品をつくる会社は、そのチップと、まわりの何十個もの小さな部品を、1個ずつ自分の回路基板にはんだ付けします。
SiPでは、それをパッケージの中で先にすませます。チップと小さな部品を小さな基板に載せてつなぎ、まとめて封止します。製品をつくる側が受け取るのは、部品1個だけです。
お弁当に少し似ています。おかずは同じでも、先に1つの小さな箱に詰めてあるので、受け取ればすぐに食べられます。
SiPには、だれもが同意する1つの定義はありません。厳しい定義では、中に2個以上の違うチップが入っていることが条件です。よくあるSiPも、実際に数個のチップに抵抗やコンデンサを組み合わせたもので、アンテナやセンサーが入ることもあります。ニュースでいう「異種集積」は、別々につくった種類の違うものを1つにまとめることで、SiPはそのよくある形の1つです。
なぜSiPにするのか
- 小さく、場所を取らない:回路基板に散らばっていた部品が、モジュールの中ではずっと詰めて並び、1個にまとまります。イヤホン、腕時計、補聴器のように小さくて機能の多いものほど、これが必要です。
- 道が短い:コンデンサがチップに近いほど、すばやく電気を補えます。信号が通る道も短くなります。
- すぐに使える:モジュールは出荷前に丸ごとテスト済みで、製品をつくる側がはんだ付けする部品がぐっと減ります。
SiPとSoCの違いは?
SoCは System on Chip(システム・オン・チップ)の略で、日本ではシステムLSIとも呼ばれます。計算、記憶、無線などの機能を、すべて1つのチップの中に設計したものです。一方のSiPは、別々につくったチップや部品を、1つのパッケージに収めたものです。
たとえるなら、SoCはすべての店を1棟の大きなビルに入れたもの。SiPは、それぞれ別に建てた小さな店を同じ敷地に並べ、まわりを塀で囲んだものです。
| SoC(システム・オン・チップ) | SiP(システム・イン・パッケージ) | |
|---|---|---|
| どこにあるか | すべて1つのチップの上 | いくつものものが1つのパッケージの中 |
| つくり方 | すべて同じプロセスでつくる | チップごとに、いちばん合ったつくり方を選べる |
| 大きさ | いちばん小さい | SoCより大きいが、基板に散らばるよりずっと小さい |
| チップどうしの道 | いちばん短い(チップの中) | チップの中より長く、回路基板の上より短い |
| 新しくつくるとき | 一から設計してフォトマスクをつくるので、時間もお金もかかる。ただし、とても大量につくるなら1個あたりはいちばん安い | すでにつくってテストしたチップを組み合わせられるので、たいてい早い |
なぜ全部をSoCにしないのでしょうか。計算を受け持つ回路と同じつくり方では、いっしょにつくりにくいものがあるからです。たとえば無線の信号を扱う回路、一部のメモリやセンサーです。容量の大きいコンデンサも入りません。こうしたものは別につくり、あとで1つにまとめます。
どちらか一方を選ぶ、という話でもありません。多くのSiPの中には、SoCが1個入っていて、そのまわりに必要なほかのチップや小さな部品が並んでいます。
SiPと先端パッケージの違いは?
ニュースでいう先端パッケージは、数個のチップをインターポーザの上に横に並べたり、積み重ねたりして、すぐ近くで密につなぎ、1個の大きなチップのように働かせるものです(「ニュースの「先端パッケージ」とは?」を参照)。大事にしているのは、チップどうしの道を短く、太くすることで、AI用のチップでとくに必要とされます。
SiPが大事にしているのは、小さなシステムが丸ごと収まるかです。チップ、抵抗、コンデンサ、ときにはアンテナまで、1つの小さなモジュールに詰め込みます。つなぎ方は、部品実装、ワイヤボンディング、チップを裏返して基板に直接はんだ付けするフリップチップなど、こなれた方法が中心です。
2つの言葉は重なる部分もあります。チップを積み重ねるSiPもありますし、先端パッケージをSiPの一種に数える人もいます。こう覚えておくとよいでしょう。先端パッケージは数個のチップを1個のチップのように、SiPは小さなシステムを1個の部品のようにするものです。
SiPはどうやってつくる?
ワイヤボンディングで外につなぐSiPを例にすると、おおよそ次のような流れです(部品実装とダイボンドの順番は、ゲームの組立ラインに合わせています)。
- 先にテストしてから切る:ウェーハ上のチップを1個ずつ細い針でテストし(ウェーハテスト)、ウェーハを裏から薄く削ってから、1個ずつに切り分けます(ダイシング)。
- 部品実装:基板の小さな金属の面にはんだペーストを印刷し、小さな抵抗やコンデンサを載せて、長い炉に通します。はんだペーストが溶けて固まると、部品がはんだ付けされます。
- ダイボンド:良品のチップを1個ずつ取り上げ、接着剤で基板に貼ります。ウェーハテストで不良と判定されたチップは取り上げません。
- ワイヤボンディング:髪の毛より細い金属線で、チップの接点を1本ずつ基板につなぎます(くわしくは「ワイヤボンディングとは? チップはどうやって外とつながる?」)。ワイヤを使わず、フリップチップでつなぐSiPもあります。
- モールド:たくさんのモジュールが並んだ1枚の基板をまとめて金型に入れ、樹脂で封止します。そのあとX線で、線が樹脂に流されていないかを確かめます。
- 切り分ける:封止した1枚を、1個ずつのモジュールに切り分けます。
- ファイナルテスト:モジュールを丸ごと、もう一度テストします。封止したあとで初めて出てくる問題もあるからです。
- 梱包して出荷:モジュールをテーピングに入れます。樹脂は空気中の水分を吸い、回路基板にはんだ付けするときの熱で割れることがあるので、乾燥させてから防湿梱包にします。
中の1個が不良だったら?
SiPには弱点が1つあります。中の部品が1つでも不良なら、モジュールごと使えなくなり、ほかの良品もいっしょに無駄になります。封止したあとは、開けて直すのも難しいのです。
仮の数字で計算してみましょう。1つのモジュールにチップが4個入っていて、どのチップも良品である確率が90%だとします。4個とも良品である確率は 0.9 × 0.9 × 0.9 × 0.9 で、およそ3分の2しかありません。
だから、チップは1個ずつ先にテストし、良品だけを入れます。ウェーハを切る前にウェーハテストをするのも、そのためです(「チップはどうテストする? ウェーハテスト(CP)とファイナルテスト(FT)の違い」を参照)。
fab24hrでは
メインストーリー「チップの一生」第11章「ボールが浮いた」では、あなたは後工程工場の組立プロセスエンジニアです。ラインリーダーのシューフイが、ダイシング装置から部品実装ラインへ案内してくれます。「Glowmereが入るのはSiPモジュール。小さな基板に、チップと、抵抗やコンデンサがいくつか載ってる。」先に部品実装、それからダイボンド。ワイヤボンダの並ぶところでは、WB-03のプルテストで2本がおかしく、装置を止めるかどうかはあなたが決めます。第13章「父の手に」では、Glowmereの入った新しい補聴器が、シェンさんの父の手に届きます。
「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「後工程工場」を押し、左右にスワイプして組立プロセスエンジニアにします。4つのシフトのどれになるかは端末の時刻で決まり、どれもこの組立ラインです。午後のシフトが第11章です。
ゲームのGlowmereのモジュールは、ずっと単純です。チップは1個だけで、そこに抵抗やコンデンサがいくつか載っています。厳しい定義では、SiPと呼ぶには2個以上の違うチップが必要で、ゲームでは広い意味の呼び方を使っています。ゲームに出てくる後工程工場、チップ、人物、装置の番号は架空です。SiPとは何か、どうつくるのかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。「90%」は仮の数字です。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」第11章「ボールが浮いた」では、シューフイが組立ラインを案内し、部品実装ラインで、GlowmereはSiPモジュールに入ると教えてくれます。小さな基板にチップと、抵抗やコンデンサがいくつか載ったものです。「工場の一日」で後工程工場の組立プロセスエンジニアを選ぶと、4つのシフトはどれもこの組立ラインです。
fab24hrでは、補聴器用のチップといくつかの抵抗やコンデンサが、組立ラインで爪より小さなモジュールになります。部品実装、ダイボンド、ワイヤボンディング、モールド。どの工程にも、見守る人がいます。
第11章を遊び、シューフイとGlowmereがモジュールになるまでを見る先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
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