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パッケージとテスト約8分

チップレットとは? 1個の大きなチップを、なぜいくつもの小さなチップに分けるのか

チップレットとは、1個の大きなチップとしてつくるはずだったものを、いくつかの小さなチップに分けたものです。それぞれ別々につくり、先にテストしてから、横に並べたり積み重ねたりして1つのパッケージ(チップを守り、外とつなぐための外側のケース)にまとめ、1個のチップのように働かせます。英語のchipletの「-let」は「小さい」という意味です。全部を1個にまとめてつくるチップは、英語でモノリシック(monolithic)と呼ばれます。ニュースでいう「先端パッケージ」は、多くの場合、チップレットを組み合わせることです。

なぜ、わざわざ分けて、また組み合わせるのでしょう。最初から見ていきます。

1個の大きなチップを、なぜいくつにも分けるの?

おもな理由は3つあります。

欠陥1つでだめになるのは、小さな1個だけ

1枚のウェーハには、目に見えないほど小さな欠陥がどうしてもいくつか落ち、当たったチップはだめになります。チップが大きいほど当たりやすく、歩留まりが下がります(ニュースの「歩留まり」の記事で、クッキーのたとえで説明しています)。

大きなチップは、欠陥が1つ落ちただけで、まるごと捨てることがよくあります。4個の小さなチップに分けておけば、同じ欠陥が当たるのはそのうち1個だけ。その1個を捨てればすみ、残りの3個は良品のままです。ほかの良品のチップレットと組み合わせて、1組にできます。

大きなチップには、大きさの上限もあります。露光装置は1回に1区画ずつしか焼けず、チップを1区画より大きくするのは難しいので、もっと詰めこむには、たいてい分けて組み合わせることになります(ニュースの「先端パッケージ」の記事で説明しています)。

部分ごとに、いちばん合った世代でつくれる

1個のチップは、1つの世代のつくり方でしかつくれません。チップレットに分ければ、計算を受け持つチップレットは最新の世代で、外とのやりとりやアナログ信号を受け持つチップレットは、新しい世代にしてもほとんど小さくならないので、何世代か前の、安くて安定したつくり方でつくれて、お金をいちばん必要なところに使えます(ニュースの「先端パッケージ」の記事で説明しています。何世代か前のつくり方はニュースの「成熟プロセス」へ)。

同じチップレットで、別の製品もつくれる

チップレットは積み木のようなものです。同じ計算用のチップレットを、少なく載せれば小さめの製品に、多く載せれば大きめの製品になります。外とやりとりするチップレットは、いくつもの製品で共通にできます。

チップを設計するのにも、フォトマスクを1そろいつくるのにも、大きなお金がかかります(半導体チップは、なぜこんなに高いのか)。1つのチップレットを多くの製品に使うほど、1つの製品が負担する分は少なくなります。すでにつくって確かめたチップレットは、次の製品にもそのまま使えます。

一歩ずつ見る:チップをどう分け、どう組み合わせ直す?

ステップ1:設計をいくつかに切り分ける

  • 何をする:チップを設計するときに、どの機能を同じチップレットに入れるかを決めます。たとえば、計算で1個、外とのやりとりで1個。
  • なぜ:1か所切るたびに、チップの中の配線のひと区間が、2個のチップレットのあいだの道に変わります。行き来するデータが少ないところ、急がないところで切るのがいちばんです。
  • しないと:データがいちばん行き来するところで切ると、道が渋滞して、全体が遅くなり、電力も多く使うようになります。

ステップ2:それぞれ別々につくり、1個残らず先にテストする

  • 何をする:それぞれを半導体工場で別々につくります。まだウェーハの上にあるうちに、プローブカードで1個残らずウェーハテストをして、良品だけを先へ送ります(チップはどうテストする?)。
  • なぜ:1つのパッケージの中に1個でも不良があると、1組まるごと使えなくなることが多く、ほかの良品もいっしょにむだになるからです。
  • しないと:不良がまぎれこみ、組み合わせてから気づくことになります。良品のチップレットも、パッケージングの費用も、いっしょに失います。

チップレットどうしをつなぐ接点はとても小さく、すき間なく並んでいるので、針がすべてに届くとはかぎりません。そこで設計のときに、針を当てるための接点を別に用意したり、チップが自分で自分を確かめるのを助ける回路を入れたりすることがよくあります。

ステップ3:良品を横に並べるか積み重ね、密につなぐ

  • 何をする:選んだ良品のチップレットを、とても細い配線のある薄い板の上に横に並べるか、そのまま積み重ねて、たくさんの、細くて短い配線でつなぎます。
  • なぜ:チップレットどうしは、たえずデータをやりとりします。配線が短く、数が多いほど、速く、少ない電力で送れて、1個のチップのように働きます。
  • しないと:従来のように1個ずつ別にパッケージングして回路基板でつなぐと、道は長く、車線も少なくなります。分けて節約したお金が、遅くなった分で帳消しになります。

いちばん密なつなぎ方では、はんだの小さなバンプも使いません。2個のチップの表面にある銅の接点を、まわりの絶縁膜といっしょに位置を合わせて直接貼り合わせ、銅と銅をつなぎます。これをハイブリッドボンディングといいます。積み重ねたチップを上下にどうつなぐかは、「TSV(シリコン貫通電極)とは?」へ。

ステップ4:組み合わせたあと、1組まとめてもう一度テストする

  • 何をする:パッケージにまとめたら、1組全体を1個のチップとして、もう一度テストします。これがファイナルテストです。
  • なぜ:積む、はんだ付けする、つなぐ、という作業のあいだに、接点が1つつながらなかったり、どれか1個が傷ついたりすることがあるからです。チップレットどうしの道が通じているかも、組み合わせてからでないと確かめられません。
  • しないと:問題のある1組が製品に組み込まれ、使う人の手元で壊れます。パッケージにまとめたあとで、不良の1個だけを外して交換するのは難しくなります。だからステップ2で先に食い止めるのです。

分けると、何と引きかえになるの?

  • 道が少し長くなる:1個のチップの中なら、信号はチップの中の配線を通るだけで届きます。分けると、いったん1個から出て、パッケージの中の配線を通り、もう1個に入ります。どれだけ短く密にしても、1個の中より少し遅く、0や1を1つ送るのに使う電力も少し多くなります。
  • インターフェースの回路が増える:どのチップレットにも、データの送受信だけを受け持つ回路を余分につくる必要があります。つなぐ両側に1つずつです。合計すると、使うシリコンと電力は、1個にまとめたチップより多くなります。
  • パッケージングが難しく、高くなる:配線はとても密で、位置もとても正確に合わせなければなりません。何個も近くに詰めこむので、熱も逃げにくくなります。接点が小さく密なので、先に1個ずつテストする手間も増えます。

だから、どんなチップでも分ければいいわけではありません。チップがそれほど大きくなく、世代を混ぜる必要もなければ、1個にまとめたほうが簡単で安くすみます。チップレットとシステム・オン・チップ(SoC)、SiPとの違いは、「SoCとは?」の記事の表を見てください。

別々の人がつくったチップレットを、どうつなぐの?

2個のチップレットがデータをやりとりするには、先に両側でつなぎ方を取り決めておく必要があります。接点をどう並べるか、配線を何本使うか、信号をどう送るか、データをどんな形式にするか。コンセントとプラグの形がそろっていないと、電気製品を差しこめないのと同じです。

1つの会社が自分で使うチップレットなら、社内で決めればすみます。でも、別々の人が設計し、ときには別々の工場でつくったチップレットを組み合わせるには、みんなが合意した共通のインターフェースが必要です。業界はここ数年、こうした共通のインターフェースづくりを進めています。それが固まれば、大きなチップをつくるのも、部品を選ぶように、できあいのチップレットをいくつか選び、自分がいちばん得意な部分だけを設計する、という形に近づくかもしれません。

fab24hrでは

ゲームにチップレットは出てきません。メインストーリー「チップの一生」の補聴器用チップ「Glowmere」は、1個のチップです。第三幕の後工程工場で、SiPモジュールに入ります。小さな基板に、この1個のチップと、抵抗やコンデンサがいくつか載り、ワイヤボンディングで外につながります。

それでも、「先にテストして、良品だけをまとめる」ことは、ゲームの中で見られます。第10章「待機電流」では、あなたはテストエンジニアです。Glowmereの最初の量産ウェーハは、チップを1個残らずテストします。ビンとウェーハマップを見てから、待機電流の上限をどこに引くかを決めます。第11章「ボールが浮いた」では、ウェーハが切り分けられ、良品のチップだけがモジュールに入ります。組立ラインのダイボンダを押して説明を見ると、ウェーハテストで不良と判定されたものは吸い上げられない、と書いてあります。「工場の一日」で後工程工場の組立プロセスエンジニアになると、朝シフト「チッピング」では、縁がほんの少し欠けただけのチップを残すかどうかも決めます。

ゲームに出てくる会社、チップ、人物は架空です。チップレットとは何か、なぜ分けるのかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」第11章「ボールが浮いた」では、Glowmereのウェーハが切り分けられ、良品のチップだけがSiPモジュールに入ります。組立ラインのダイボンダは、ウェーハテストで良品と判定されたものだけを吸い上げます。ゲームにチップレットは出てきませんが、「先にテストして、良品だけをまとめる」のは同じ考え方です。

fab24hrでは、ウェーハを切り分けたあと、テストで良品とわかったチップだけが吸い上げられ、爪より小さなモジュールに収まります。

第11章で、良品のチップがモジュールに入るところを見る

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

この記事を引用する「チップレットとは? 1個の大きなチップを、なぜいくつもの小さなチップに分けるのか」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/what-is-chiplet/
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