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ニュースのことば約7分

極端紫外線(EUV)とは? その装置は、なぜそんなにつくるのが難しいのか

ニュースではよく「最先端のチップにはEUVが欠かせない」「ある工場がEUVを導入」と言います。EUVは極端紫外線(extreme ultraviolet)の略で、波長がわずか約13.5ナノメートルの光です。いちばん進んだ露光装置は、この光でチップのいちばん細いパターンを焼き付けます。この光を使う技術を、EUVリソグラフィ(EUV露光)といいます。難しいのは、この光がほとんどのものに吸収されてしまううえ、光そのものをつくるのも難しいからです。そのため、装置をまるごと考え直す必要がありました。

露光装置は何をしているの?

露光とは、フォトマスクの回路パターンを光で縮小し、ウェーハに塗った光に反応する膜、レジストに焼き付けることです。手順全体(レジスト塗布、露光、現像、そしてエッチングへ)は「フォトリソグラフィとは?」に書きました。ここでは、そのうちひとつだけ、使う光の話をします。

波長が短いほど、なぜ細く焼けるの?

光は波です。波長とは、波の山から次の山までの距離のこと。目に見える光の波長は、およそ400〜700ナノメートルです。

光はフォトマスクのとても細いすき間を通ると、少し広がります。これを回折といいます。すき間が細いほど、広がり方は大きくなります。広がりすぎると、ウェーハの上で像がぼやけ、2本の線が見分けられなくなります。波長が短いほど広がりにくく、細い線もくっきり焼けます。

ペンで線を描くのを思い浮かべてください。波長はペン先の太さで、ペン先が細いほど細い線が描けます。レンズがどれだけ斜めの光まで取り込めるか(開口数、NAといいます)や、さまざまな工夫も効きますが、何十年ものあいだ、露光に使う光はどんどん波長の短いものに替わってきました。

EUVは、それまでの光とどれくらい違うの?

光波長
目に見える光約400〜700ナノメートル
青紫の光(g線)436ナノメートル
紫外線(i線)365ナノメートル
深紫外線248ナノメートル、193ナノメートル
極端紫外線(EUV)約13.5ナノメートル

193ナノメートルから13.5ナノメートルへ、一気に十数倍短くなりました(193÷13.5≒14)。極端紫外線は、ふつうにいう紫外線よりずっと短く、もうX線に近いところにあります。

EUVが使えるようになるまで、エンジニアは193ナノメートルの光で長く粘りました。レンズとウェーハのあいだに水を入れて、より斜めの光までレンズが取り込めるようにし、いちばん細い層は2回、3回に分けて焼きました。それで焼けはしますが、工程が増え、位置を合わせる回数も増えます。EUVに替えると、そうした層の一部を1回で焼けます。

何が難しい? その1:空気にさえ吸収される

極端紫外線はとても吸収されやすく、空気にさえ飲み込まれて、遠くまで進めません。だから光源からフォトマスク、ウェーハまで、光の通り道はすべて真空にします。光の通り道にある部品も、ひとつ残らず真空の中で動かなければなりません。

何が難しい? その2:ガラスにも吸収されるので、鏡を使う

それまでの露光装置は、ガラスのレンズを何枚も組み合わせて、パターンを縮小してウェーハに映していました。カメラのレンズのようなものです。極端紫外線はガラスに入ったとたん吸収されるので、レンズは使えません。すべて鏡で光を運びます。

ところが、ふつうの鏡も、極端紫外線をほとんど反射しません。そこで、モリブデンとシリコンという2種類の材料を交互に重ねます。何十組も重ね、1層の厚さはわずか数ナノメートル。境目ひとつひとつが反射する光はほんの少しですが、層の間隔をぴったり合わせてあるので、反射した光の山と山がそろって重なり、強くなります。大勢で手をたたくとき、拍子がそろうと大きな音になるのと同じです。数ナノメートルの膜をつけるのは、チップの上でも毎日やっていることです(「成膜とは?」へ)。

それでも、鏡1枚が反射できるのはよくて約7割で、残りの多くは吸収されて熱になります。光源からウェーハまで、光は何枚もの鏡で反射します。1枚ごとに7割が残るとすると、6枚で1割あまり、10枚で3%ほどしか残りません。鏡の表面もとても滑らかでなければならず、凹凸は0.数ナノメートル以内、原子1個ほどの大きさに抑えます。

フォトマスクも変わります。「フォトリソグラフィとは?」に書いたフォトマスクは、光を通すガラスでした。極端紫外線用のフォトマスクは、それ自体が同じように何十層も重ねた鏡で、その上に光を吸収する材料をパターンの形にのせてあります。光は斜めに当たり、覆われていないところで反射して、パターンを乗せたままウェーハへ向かいます。

何が難しい? その3:光はどこから? スズの粒にレーザーを当てる

ふつうのランプやレーザーでは、13.5ナノメートルの光を十分な強さで出せません。そこで、髪の毛より細い小さなスズの粒を、真空の中に次々と飛ばします。その数は毎秒何万個。粒はまず弱めのレーザーで打たれて、小さなパンケーキのように平たくなります。すぐに強いレーザーが当たり、スズは一瞬で数十万度以上、太陽の表面よりはるかに熱くなります。原子から電子がはがれ、スズはプラズマ、つまり電子が原子から離れてしまうほど熱い気体になります。このプラズマが極端紫外線を出し、そばの大きな鏡が光を集めて装置の中へ送ります。

目の前を飛んでいく小さな水滴を、毎秒何万個も撃ち抜くようなもので、しかも一発も外せません。それだけ手間をかけても、レーザーのエネルギーのうち使える光になるのは数%だけです。スズのかけらは光を集める鏡にも飛び散るので、ずっと掃除し続けなければなりません。

光は、なぜそんなに強くないといけないの?

鏡が途中で光をどんどん減らすので、ウェーハに届く光はもう多くありません。光が弱いと、1ショットごとに長く当てなければならず、1時間に焼けるウェーハの枚数が減ります。

もうひとつ理由があります。光は「光子」という小さな粒の集まりです。極端紫外線の光子1個のエネルギーは、193ナノメートルの光子の約14倍。だから同じ量の光を当てても、光子の数は十数分の一になります。光子が少なすぎると、「運」が入り込みます。たまたま少し多く当たる場所と、少なく当たる場所ができ、細い線のふちがでこぼこになったり、ひどいときは線が切れたり、2本がくっついたりします。運の影響を小さくするには、もっと多くの光を当てるしかなく、光源はさらに強くなければなりません。

これを全部同時に成り立たせる必要があったので、EUVリソグラフィは1980年代から研究されていたのに、大量生産に使われ始めたのは2010年代の終わりになってからでした。

EUVがあれば、それまでの光はもう使わないの?

今も使います。チップは何十層もあり、どの層も同じほど細いわけではありません。EUVを使うのは、いちばん細い層だけ。ほかの層は、これまでどおり深紫外線で足ります。ニュースの「何ナノ」の意味は「ニュースの「2ナノ」、いったい何が2ナノなのか?」へ。「ムーアの法則とは?」もどうぞ。

次にニュースで見たら、こう読める

  • 「ある工場がEUVを導入」:その工場で、いちばん細い層を、極端紫外線の露光装置で焼き始める。ほかの層は、これまでの光のままです。
  • 「最先端プロセスにはEUVが欠かせない」:線をそこまで細く焼くには、193ナノメートルの光だと何回にも分けて焼かなければならない。13.5ナノメートルなら1回で焼ける層があり、工程も、ミスが起きる機会も減ります。
  • 「高NA EUV(High-NA EUV)」:光は同じ13.5ナノメートルのまま、鏡を設計し直して、より斜めの光まで取り込めるようにしたもの。もう少し細く焼けます。そのかわり、ピントが合う範囲はさらに浅くなります。

fab24hrでは

fab24hrでは、「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてプロセスエンジニアで止め、名前の下の「リソグラフィ」を押すと、リソグラフィのプロセスエンジニアになります。どのシフトも露光装置のまわりの仕事です。真夜中、下流のエッチング装置が止まり、露光の前でどのロットを待たせるかを決めます。朝は、あるロットの重ね合わせが規格外。夜は、フォトマスク上のひとつの点が、どのショットにも同じ位置に焼き付きます。同じエリアのリソグラフィ装置エンジニア(Betaの印付き)は、真夜中、露光装置がアライメントマークを見つけられずに止まるシフトを受け持ちます。

ゲームの露光装置は、どの光を使っているかを言いませんし、リソグラフィの物語にも「何ナノ」は出てきません。「露光装置」の用語カードの「もう少し詳しく」には、極端紫外線のことが2文だけ書いてあり、この記事と同じことを言っています。ゲームに出てくる会社・人物・装置番号・数字は架空です。極端紫外線がなぜ扱いにくいのかは、公開されている一般的な資料をもとに書き、決まった数字が見つからないところは、おおよその大きさだけを書いています。用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかリソグラフィのプロセスエンジニア(量産工場 › プロセス › リソグラフィ)は、どのシフトも露光装置のまわりで働きます。重ね合わせ、線幅、フォトマスク上のひとつの点。ゲームの露光装置は、どの光を使っているかを言いません。「露光装置」の用語カードの「もう少し詳しく」には、極端紫外線のことが2文だけ書いてあります。

fab24hrのリソグラフィのプロセスエンジニアは、露光装置のまわりをまるごと見ています。層がきちんと重なっているか、線幅は合っているか。

リソグラフィのプロセスエンジニアで、どの層もきちんと焼き付ける

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