開発インテグレーションエンジニアは何をする? 新しいチップの最初のロットはどう進める?
開発インテグレーションエンジニアは、開発ラインでの新製品の担当者です。最初のウェーハをどう分けるか、できたチップが正しいか、いつ量産工場に渡せるか。それに答えるのがこの仕事です。プロセスインテグレーションエンジニア(PIE)の一種で、職種名は会社によって違い、「開発のプロセスインテグレーションエンジニア」と呼ぶこともあります。英語ではR&D process integration engineerとよく書きます。量産工場のインテグレーションエンジニアが見るのは、そこで大量に作られるロットです(「プロセスインテグレーションエンジニア(PIE)は何をする?」)。開発側が見るのは、新しいチップが初めて作られる最初の数ロットです。
開発のインテグレーションは、量産工場とどう違う?
いちばんの違いは、開発側ではすべてが初めてだということです。開発ラインは、新しいプロセスや新製品を最初に作る場所です。装置の種類はそろっていますが、同じ種類の台数は多くありません。一度に作るのは数枚で、条件を大きく変えられます。量産工場が求めるのは、同じものを大量に、くり返し作ることです。
レストランの新メニューにたとえられます。開発ラインは試作のキッチンで、1〜2皿ずつ、塩を少し多く、火を少し弱く、と決まるまで試します。量産工場はセントラルキッチンで、決まったレシピどおりに毎日同じ味を出します。開発インテグレーションエンジニアは、新しい料理を試作からメニューに載るところまで連れていく人です。
新製品を初めて作る最初の数ロットを試作といいます。開発ラインと量産工場のほかの違いは「開発ラインと量産工場は何が違う?」へ。
最初のロットは数枚だけ。なぜさらに「分ける」の?
最初のロットで答えたい問いは多いのに、ウェーハは少ないからです。よく使うのがスプリット実験です。同じロットのウェーハをいくつかの組に分け、組ごとに条件を1つだけ変えて、ほかは全部同じにします。何も変えない組も1つ残し、ベースライン(比べる基準)にします。終わってから比べれば、その条件の影響がわかります。
クッキーを焼くのと同じです。同じ生地を3枚の天板に分け、1枚は2分長く、1枚は2分短く、1枚はレシピどおりに焼く。比べれば、焼き時間の影響がわかります。
枚数が少ないので、1枚1枚が大切です。
- 1つの組に1枚だけだと、その1枚にたまたま何か起きたとき、条件のせいなのか、運が悪かっただけなのか区別できません。
- 新しい工程を先に試すために1枚先行させたい人もいれば、断面解析で中を見るために1枚ほしい人もいます。断面を見たウェーハは、もう使えません。
- 条件が多いと、1つずつ変えていては時間がかかりすぎます。そんなときは統計の「実験計画法」で複数の条件をまとめて組み、少ない枚数でそれぞれの効果を見ます。
だからスプリット表は、会議を開かないと決まらないことがよくあります。誰に1枚渡し、どの組をあきらめるかを決めるのは担当者です。
「コーナー」とは? なぜわざとずらして作るの?
同じ設計図でも、工場で作ると必ずばらつきが出ます。少し速いトランジスタもあれば、少し遅いものもあります。設計する人は、いちばんずれたときでもチップが動くかを知りたいのです。そこでスプリットのとき、何枚かをわざとずらして作ります。そのずらし方をコーナー(英語ではcorner)と呼びます。
チップにはN型とP型の2種類のトランジスタがあります。中心値はTT。両方とも速めがFF、両方とも遅めがSS、片方が速く片方が遅いのがSFとFSです。両方が同じ向きにずれると、主に変わるのはチップの速さです。片方だけ速いと厄介で、2種類のトランジスタの足並みがそろわず、回路によってはそのまま誤動作することがあります。
椅子を作るなら、平均的な体重の人だけでなく、いちばん軽い人といちばん重い人にも座ってもらいます。どのコーナーがいちばん大事かは製品によります。たとえば小さな電池で長く持たせる製品は、待機中のリークをいちばん恐れます。速めのトランジスタほどリークが多いので、FFは省けません。
できあがったら、まず何を見る?
電気特性の多くは、ウェーハが全部できあがってからでないと測れません。ウェーハ投入から何週間もたっていることがよくあります。結果が出たら、まず2つを見ます。
- WAT:ウェーハ上に測定用にわざわざ残してある小さな構造にプローブを当てて測ります。この構造をTEG(テストエレメントグループ)といい、ほとんどはチップとチップの間のスクライブライン(切り分けるときの切りしろ)に置かれています。測るのは、トランジスタが何ボルトで電気を通し始めるか、抵抗はどれくらいか、どれだけ漏れるか。これがWATで、ロット全体のずれが最初に見つかる場所のひとつであることが多いです。
- ウェーハマップ:次にウェーハテストでチップを1個ずつすべて測り、結果を位置どおりにウェーハマップにします。不良がどんな形に並ぶかが、よく手がかりになります。外周に輪のように並んでいれば、外周と中心で作り方のどこが違ったかを調べます。どの露光ショットでも同じ位置が不良なら、原因はフォトマスクについてまわることが多いです。弧を描く線は、傷の跡であることがよくあります。規則性なく散らばっていれば、ランダムに落ちたパーティクルに近いです。WATとウェーハテストの違いは「チップはどうテストする?」へ。
大事な習慣がひとつあります。まず測定を疑い、それからプロセスを疑う。プローブカードの針先が汚れていても数字はずれ、プロセスの問題のように見えてしまいます。
開発側にはもうひとつ仕事があります。見つけた問題は、すべて次のロットの条件に変えなければなりません。どの組をもう一度流すか、次のマスクにTEGの場所をもっと残すか。こうしたことはこの時期に決まることが多く、マスクができてしまうと変えにくいのです。
量産工場に渡す前に、何を確認する?
新しいプロセスが安定し、新製品の歩留まりが目標に届いたら、一式を量産工場に渡します。その前にあるのが技術移管審査です。条件、装置設定、作業手順書、トレーニング、信頼性を1項目ずつ照らし合わせます。
家の引き渡しの立ち会いに似ています。鍵は何本か、メーターの数字はいくつか、まだ直すところはどこか、すべて書いておきます。リストで「済み」とした項目は、それを示すものを出せなければなりません。済んでいない項目は、あとどれだけ残っているかを言えなければなりません。よくある項目は次のとおりです。
- 標準プロセス:各工程でどの種類の装置をどんな条件で使うかを、量産が従う1つの版にまとめたものをPORといいます。固定したあとは、数字を1つ変えるにも変更手続きが必要です。供給側がプロセスを変えるときに顧客へどう知らせるかを決めた、公開の業界標準もあります。
- 作業手順書とトレーニング:量産工場で手順書どおりに作業する人が、開発ラインに学びに来たことがあるとは限りません。だから、ほかの人が読んでわかるように1ステップずつ書きます。
- 信頼性:よくある試験のひとつがHTOLです。高温で電圧をかけ、チップを1000時間、約6週間、連続で動かして、早く壊れるものがないかを見ます。よくある基準は3ロット、各77個で、1つも壊れてはいけません。
信頼性試験が終わっていないのに顧客が急いでいると、リスク投入をするかどうかという問題になります。先に量産工場でウェーハ投入を始めて、合格すれば顧客は早く製品を受け取れ、不合格ならそのロットはまるごとスクラップになるかもしれません(「ウェーハ投入とは?」)。開発インテグレーションエンジニアは、両方の代償をはっきり説明したうえで、自分の提案を出すことがよくあります。
どの会社もこう分けている?
そうとは限りません。職種名や分担は会社によって違います。開発と量産でインテグレーションエンジニアが別々の会社もあれば、同じチームが最初から最後まで担当する会社もあります。技術開発や新製品立ち上げ(NPI)と呼ぶこともあります。ここに書いたのは、よくある形です。
fab24hrでは
fab24hrでは、「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「開発ライン」を押し、左右にスワイプして開発インテグレーションエンジニアを選びます。4つのシフトは、顧客の補聴器チップ「Glowmere」の別々の日です。朝シフトはウェーハ投入の前日で、スプリット会議で12枚のウェーハを3人が欲しがり、分け方はあなたが決めます。深夜シフトは投入から6日目で、洗浄を終えたばかりの12枚の次の工程の炉が止まり、Qタイムは残り90分です。昼シフトは1〜2か月後で、WATの1項目が不合格、ウェーハマップが3枚、さらに次のマスクに自分たちのTEGの場所を残すかを決めます。夜シフトは約4か月後で、技術移管審査の前夜にチェックリストを確認していると、顧客が2週間の前倒しを求めてきます。
メインストーリー「チップの一生」では、第1章「12枚をどう分ける」、第3章「不良の形」、第4章「2週間前倒し」の主人公が開発インテグレーションエンジニアです。第2章「一工程ずつ」では、同じ人がその12枚といっしょに7つのプロセスエリアをまわります。ゲームの会社、製品、人物、ロット番号、装置、数字は架空のものです。開発インテグレーションエンジニアが何をしているかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。実際の分担は会社によって違います。
ゲームのどこで出会うか「工場の一日」で開発ラインの開発インテグレーションエンジニアになると、スプリット会議で12枚の分け方を決め、WATと3枚のウェーハマップを読み、技術移管審査の前夜にチェックリストを確認します。メインストーリー「チップの一生」の第1・3・4章の主人公も、この役割です。
fab24hrで開発インテグレーションエンジニアの一日を。最初のロットは12枚、欲しい人は3人、分け方はあなたが決めます。
開発インテグレーションエンジニアで遊ぶ先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
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