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工場で働く約7分

開発ラインと量産工場は何が違う?

開発ライン(試作ライン、英語ではpilot lineとも呼びます)は、新しいプロセスや新製品を初めて作る場所です。量産工場は、すでに安定したものを、毎日大量に、まったく同じように作る場所です。開発ラインは一度に数枚だけを流し、1つのロットを分けて違う条件を試すこともよくあります。問いは「作れるか、不良になるならなぜか」。量産工場の問いは「どのウェーハも同じか、十分な量を期限どおりに作れているか」です。

開発ラインとは?

ウェーハは数百の工程を通って、ようやくチップになります。この工程の流れ全体と、それぞれの工程でどの装置をどんな条件で使うかを、まとめて「プロセス」と呼びます(各エリアの仕事は「半導体工場の7つのプロセスエリアは、それぞれ何をしている?」へ)。

新しい世代のプロセスや、いくつかの工程を変える新製品では、新しい条件で何が起きるか、誰にもわかりません。どこかで先に試す必要があり、それが開発ラインです。装置の種類はひととおりそろっていて、最初の工程から最後の工程まで流せます。ただし、同じ種類の装置は1〜2台しかないことが多く、壊れても予備がありません。新製品を初めて作る数ロットを試作と呼び、多くはここで作られます。

トランジスタが一世代小さくなるたびに、新しい作り方もまず開発ラインで試されます(「ムーアの法則とは?」へ)。

なぜ量産工場で直接試さないのか

量産工場の装置は、毎日、出荷するロットで埋まっているからです。これを調べた論文があります。開発のロットを量産ラインに入れて優先させると、通常のロットが遅れ、1日に仕上がる量が減ってしまいます。逆に、開発のロットが後回しにされ、結果がなかなか戻ってこないこともあります。

そのため、開発ラインを別に持つところが多くあります。開発と量産で装置の大部分を共用するやり方もあり、費用は抑えられますが、装置の取り合いになります。試作ラインは、公開の説明でよく「少量多品種」と表されます。1つあたりは少しずつ、でも種類はたくさん。

開発ラインでは毎日何をしている?

開発ラインは、新しい料理を考える試作用のキッチンに似ています。一度に数人分だけ作り、こちらは塩を少し多めに、あちらは火を強めに。そして全部味見します。

  • ロットを分ける:同じロットのウェーハをいくつかの組に分け、組ごとに1つの条件だけを変えます。何も変えない組も1つ残し、比べる基準にします。これがスプリット実験です。最後に比べれば、その条件が何を変えたかがわかります。
  • 条件がよく変わる:同じ装置でも、朝はある製品の新しい温度、午後は別の製品の新しい材料、ということがあります。
  • たくさん測る:1組ごとに測り、ウェーハを切って顕微鏡で断面解析をすることもよくあります。たくさん測るからこそ、違いがどの工程から来たのかがわかります。
  • 必要な工程だけ流す:確かめたいのがプロセスの一部だけなら、その工程だけを流して専用のテスト構造を作ることがよくあります。これをショートループと呼びます。工程が少ないぶん、結果が早く戻ります。

開発ラインがいちばん気にするのは「どれだけ速く学べるか」です。結果が早く戻るほど、次の回を早く始められます。量産工場よりずっと大きなばらつきも受け入れます。不良になったウェーハからも、なぜ不良になったかという収穫があります。

量産工場が追うものは?

量産工場は、毎日何千食もの弁当を作るセントラルキッチンに似ています。レシピが決まったらそのとおりに作り、どの弁当も同じでなければなりません。しょうゆを別の種類に替えるだけでも、先に試します。

  • 大量に、くり返し:1ロットはウェーハケース1つ分、最大25枚のことが多く、同じ工程を何台もの装置が分担します。1台が止まっても、ほかの装置があります。
  • 見る数字が違う:歩留まり(できたチップのうち良品の割合)、生産能力(1日にどれだけ仕上げられるか)、納期(期限どおりに顧客へ届けられるか)、そしてコスト。
  • 条件は固定:各工程でどの種類の装置をどんな条件で使うかは、PORという標準プロセスに書かれています。数字を1つ変えるには、まず変えても問題ないことを示す必要があり、信頼性試験をやり直すこともあります。公開されている業界標準では、供給元が製品やプロセスを大きく変えるときは、前もって顧客へ知らせることも決められています。
開発ライン量産工場
一度に作る量数枚。1ロットをいくつもの組に分けることが多い1ケース最大25枚、それを毎日たくさん
同じ種類の装置1〜2台だけのことが多い何台もある。1台止まっても、ほかがある
条件よく変える。試すのが仕事PORで固定。変える前に検証が必要
よく出る問い作れるか? なぜ不良になる?どれも同じか? 量と納期は足りるか?

新しいプロセスはどうやって量産工場に渡る?

開発ラインでプロセスが安定し、歩留まりが目標に届き、信頼性試験にも合格したら、一式を量産工場に渡します。これを技術移管と呼びます。渡すのは条件の一覧だけではありません。よくあるのは次のものです。

  1. 標準プロセス:各工程の装置と条件をPORとしてまとめたもの。
  2. 規格:各工程の測定値がいくつなら正しいか、完成後に電気特性を測ったとき、数字がどこに入るべきか。
  3. 文書:装置の動かし方、部品の替え方を一歩ずつ書いた作業手順書。別の人がそのとおりにやっても、同じものが作れるように。
  4. 研修:量産工場の人が先に開発ラインへ来て、実際のやり方を学びます。
  5. 信頼性のデータ:チップを長く使っても早く壊れないことの証拠。

渡す前に技術移管審査を通り、1項目ずつ確かめます。

いちばん難しいのは、多くの場合、装置です。同じ条件でも、別の装置で流すと結果が変わることがあります。部品のすり減り方も、装置そのものの状態も、1台ごとに少しずつ違うからです。量産工場には同じ種類の装置が何台もあり、どれも同じ結果が出るように合わせなければなりません。これを装置間マッチング(tool matching)と呼びます。量産工場の装置と設定を、開発ラインとできるだけ同じにするやり方もあります。一方で、量産ではすべての工程をそのまま写す必要はなく、できあがるものが同じならよい、という考え方もあります。

渡したあとも、量産のはじめは、歩留まりがまだしばらく上がっていくのがふつうです(「ニュースの「歩留まり」とは?」へ)。信頼性試験が終わる前に、待てない顧客のために量産工場でウェーハを投入しておくこともあり、これをリスク投入と呼びます。「ウェーハ投入とは?」もどうぞ。

開発ラインで働く人は何をしている?

  • 開発プロセスエンジニア:エッチング、リソグラフィ、拡散炉など、1つのエリアを担当します。新しい工程の条件は、その人がエリアの装置で試して決めます。いくつかの組を試し、測り、断面を見て、1つに決め、最後にPORのその工程の欄に書き込みます。
  • 開発インテグレーションエンジニア:1つのエリアにとどまらず、プロセスの流れ全体と新製品の最初のロットを見ます。実験をどう分けるか、できたものを量産工場に渡せるか。「開発インテグレーションエンジニアは何をする?」へ。量産工場で流れ全体を見る人については「プロセスインテグレーションエンジニア(PIE)は何をする?」へ。
  • 開発ラインにも、装置を担当する装置エンジニアや技術員がいます。

職種名や分担は会社によって違います。ここに書いたのは、よくある分け方です。

fab24hrでは

fab24hrの開発ラインには8つの役割があります。開発インテグレーションエンジニアと、リソグラフィ、エッチング、成膜、CMP、拡散炉、イオン注入、洗浄の7つのエリアの開発プロセスエンジニアです。「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「開発ライン」を押し、左右にスワイプしてその仕事へ。開発プロセスエンジニアなら、名前の下でエリアを押します。エッチングの朝シフトでは、新しい工程を流せるのはETCH-R1の1台だけなのに、それが止まってしまいます。夜シフトでは、明日には標準プロセスを量産工場に渡すのに、PORにはあなたが署名する最後の空欄が残っています。拡散炉の夜シフトでは、量産工場の炉が開発ラインの条件で1回流してみたところ、数字は同じなのに膜厚が合いません。メインストーリー「チップの一生」の第1〜5章も開発ラインが舞台です。ウェーハ投入の前日に最初の12枚をどう分けるか決めるところから、技術移管審査の前の晩に8項目のリストを確かめるところまで。ゲームの会社、製品、人物、装置番号、スケジュールは架空のものです。開発ラインと量産工場の違いや、技術移管で何を渡すかは、公開されている一般的な資料をもとに書いていて、実際のやり方は会社によって違います。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うか「工場の一日」で「開発ライン」を押すと、開発インテグレーションエンジニアか、7つのエリアのどれかの開発プロセスエンジニアを遊べます。メインストーリー「チップの一生」の第1〜5章も開発ラインで、第4章と第5章は技術移管審査の前の晩です。

fab24hrでは、新しい工程を流せる装置は1台だけ。安定しても、PORの最後の空欄を埋めてから、ようやく量産工場に渡せます。

開発ラインで、エッチングの開発プロセスエンジニアとして遊ぶ

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

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