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チップのつくり方約8分

CMPとは? ウェーハはなぜ平らに磨くのか

CMPは化学機械研磨(chemical mechanical polishing)の略で、化学機械平坦化(planarization)とも呼ばれます。研磨液でウェーハの表面をやわらかくしながら、回転する研磨パッドで高いところを削り、表面を平らにする工程です。チップは1層ずつ積み上げてつくり、層を重ねるたびに表面はでこぼこになります。先に平らにしておかないと、次の層のパターンをくっきり焼き付けられません。だから1枚のウェーハは、チップになるまでに何度もCMPを通ります。

ウェーハの表面は、なぜでこぼこになる?

チップはビルに少し似ています。いちばん下がトランジスタで、その上に金属配線の層が何層も重なります。1層のつくり方はおおよそ、材料の層をつける、パターンを焼き付ける、パターンで守られていない部分を削る、そして次の層をつける、の繰り返しです。

新しくつけた膜は、下の形をなぞるように育ちます。でこぼこのテーブルにテーブルクロスをかけると、クロスもでこぼこになるのと同じです。金属配線をつくるときは、絶縁膜に溝を掘ってから、ウェーハ全体を金属でおおうことがよくあり、溝の外にも余分な層が1枚のります。

放っておくと、高さの差は1層ごとに積み重なり、0.数マイクロメートルに達することもあります。小さく聞こえますが、次の工程にとってはもう大きすぎます。膜をどう積み上げるかは「成膜とは?」へ。

でこぼこだと、なぜ次の層がうまく焼けない?

チップのパターンはリソグラフィで焼き付けます。露光装置がレンズを通して、回路のパターンをウェーハに投影します。レンズには限界があって、ある高さの近くでしかパターンがくっきりしません。

スマホで花を接写するとわかります。1輪にピントを合わせると、手前と奥のものはぼやけます。くっきり写る前後の幅を、被写界深度といいます。露光装置にも同じような幅があり、こちらは焦点深度と呼びます。露光装置の焦点深度はとても浅く、大学の講義資料にある以前の世代の装置の例では、上下に約0.35マイクロメートルしかありません。髪の毛より何百倍も薄い幅です。レンズが進んで細い線を焼けるほど、焦点深度はたいてい浅くなります。

ですから表面の高さの差が焦点深度と同じくらいになると、同じパターンでも、くっきり焼けるところとぼやけるところが出てきます。ぼやけたところでは、焼けた線の線幅が狂います。平らに磨けば、ウェーハ全体がピントの合う範囲に収まります。焼き付けのしくみは「フォトリソグラフィとは?」へ。

CMPは、どうやって磨く?

CMP装置のおもな部品は次のとおりです。

  • 研磨パッド:大きな回転台(研磨定盤)に貼った、ウェーハより大きなパッド。たいていは小さな穴がたくさんあいたプラスチック(ポリウレタン)で、さわるとフェルトに少し似ています。
  • 研磨ヘッド:ウェーハを裏返し、表を下にして吸い付け、研磨パッドに押し付けます。
  • 研磨液(スラリー):とても細かい粒子と薬品をまぜた水。磨きながらパッドの上に垂らします。
  • コンディショナー:細かいダイヤモンドを貼り付けた円盤。ときどき研磨パッドをこすって、表面を粗いまま保ちます。

研磨定盤と研磨ヘッドがいっしょに回り、ウェーハはパッドの上で磨かれます。なぜ平らになるのでしょう。でこぼこの板を、紙やすりを巻いた平らな木片で磨くところを想像してください。先に紙やすりに当たるのは出っ張ったところなので、そこから先に削れ、へこんだところにはあとから届きます。CMPも同じで、高いところほど強く押されて速く削れ、高さの差はどんどん小さくなります。一般に、強く押すほど、速く回すほど、速く削れます。

なぜ「化学」と「機械」の両方なの?

薬液だけなら、ウェーハ全体を薬液に浸けるのと同じです。高いところも低いところもいっしょに溶けて、表面はでこぼこのままです。削るだけなら、粗い紙やすりで強くこするようなもので、平らにはなっても傷がつきやすく、下の材料まで傷めることがあります。チップの線は髪の毛より千倍以上細く、そんな傷には耐えられません。

CMPは両方を組み合わせます。研磨液がいちばん上のごく薄い層を変化させ、やわらかく、削りやすくします。研磨パッドと細かい粒子は、その上を軽くなでるだけで、この層を持ち去ります。焦げついた鍋をクリームクレンザーで洗うのに少し似ています。クレンザーが焦げをゆるめ、スポンジで軽くこすれば落ちるので、金属たわしでごしごしこする必要はありません。

どこで止める?

CMPは、たくさん磨けばいいわけではありません。多くの場合、下にある層がちょうど顔を出したところで止めます。たとえば金属を溝の中だけに残るところまで磨く、あるいはわざと下に敷いておいた、削れにくい層に届くまで磨く、といった具合です。

ウェーハは表を下にしているので、装置からは見えません。そこで信号を見て判断します。これを終点検出といいます。よく使われる信号には、たとえば次の2つがあります。

  • モーターの力:表面が別の材料に変わると摩擦が変わり、モーターが出す力も変わります。
  • 反射する光:パッドの下の小さな窓から光を当てると、金属と絶縁膜では返ってくる光が違います。

信号に変化が出たら、そこが終点です。散らばった残りを取りきるため、設定どおりもう少しだけ磨くことがよくあり、これをオーバーポリッシュといいます。足りないと、金属が残ってはいけないところに残り、隣どうしの配線がつながってしまうことがあります。磨きすぎると配線が薄くなり、電気抵抗が上がります。

CMPでよくある不良は?

  • ディッシング:幅の広い金属配線の真ん中が、浅いお皿のようにへこみます。研磨パッドは完全に硬いわけではなく、広いところでは少し沈み込みます。しかも金属と、となりの絶縁膜とでは削れる速さが違うので、真ん中が少し多く削れます。細い線が密集したところでは、そのあたり全体が低くなることもあり、これはエロージョンといいます。
  • スクラッチ:大きめの硬いものがウェーハとパッドのあいだにはさまると、引きずられて1本の傷になります。傷に金属が入り込むと、つながってはいけないところがつながり、歩留まりに響きます。だから研磨液の供給、研磨パッド、コンディショナーの状態から目が離せません。
  • 残った粒子:磨いたばかりの表面には、研磨液の粒子と削りくずがたくさんついています。残ったパーティクルは、次の層で欠陥になります。
  • だんだん削れなくなる:研磨パッドは使い込むと表面がつるつるになり、同じ時間で削れる量が減っていきます。そこで定期的にモニターウェーハを流し、磨く前とあとの厚さを測って、削れる速さが変わっていないかを確かめます。研磨パッドもコンディショナーも消耗品で、時期が来たら交換します。これもメンテナンス(PM)の一部です。

磨いたら、なぜすぐ洗う?

CMPのあとの表面は、必ず汚れています。研磨液も粒子も削りくずも、まだ上に残っているからです。だから磨いたらすぐに洗います。よく使われるのは、とてもやわらかいブラシと水でこすり洗いして、粒子を落とす方法です。落としきれなかったものは、次の層の欠陥になります。工場がなぜ何度もウェーハを洗うのかは「ウェーハ洗浄とは? なぜ何度も洗うのか」へ。CMPが工程全体のどこにあるかは「半導体工場の7つのプロセスエリアは、それぞれ何をしている?」へ。

fab24hrでは

「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてプロセスエンジニアで止め、名前の下の「CMP」を押すと、CMPのプロセスエンジニア(いまはBeta表示)になります。研磨液、研磨パッド、コンディショナーの条件はあなたの担当です。深夜シフトでは、自宅でオンコール中に、夜勤の技術員から電話がかかってきます。CMP-02の終点検出がずっと反応せず、どのウェーハも時間の上限まで磨いてから止まった。ロットをホールドするか、洗浄を済ませて次へ流すか。朝シフトでは、CMP-01のモニターウェーハの削れる量が3日続けて下がっていて、研磨パッドとコンディショナーは寿命間近です。いま2時間止めて交換するか、まず研磨時間を延ばすか。昼シフトでは、前の工程がターゲットを新しくして膜が厚くなり、C-4105の幅の広い金属配線の真ん中がへこんで出てきます。夜シフトでは、CMP-02の出口のブラシ洗浄モジュールが動かなくなり、磨いたばかりの濡れたウェーハを乾かすわけにはいきません。

同じエリアのCMP装置エンジニアは、研磨定盤、研磨ヘッド、コンディショナー、研磨液の供給を受け持ち、昼シフトにはモニターウェーハに出た何本もの曲がったスクラッチから、研磨液のどこに問題があるのかを突き止めます。開発ラインにはCMPの開発プロセスエンジニアもいて、ライン全体でCMP-R1は1台だけです。メインストーリー「チップの一生」の第2章「一工程ずつ」では、4日目にCMP-R1で窒化シリコンまで磨き、触れた瞬間に止めるか、レシピどおりもう少し磨くかを選びます。ゲームに出てくる会社・人物・装置・数字は架空です。CMPとは何か、どう磨くか、どんな不良が出るかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかCMPのプロセスエンジニア(量産工場 › プロセス › CMP)を遊ぶと、深夜に電話がかかってきます。CMP-02の終点検出が反応せず、装置は時間の上限まで磨いてから止まりました。昼シフトでは、幅の広い金属配線の真ん中がへこんで出てきます。

fab24hrのCMPのプロセスエンジニアは、4つのシフトの多くで「どれだけ磨くか、どこで止めるか」と向き合います。パッドは古くなり、前の工程の膜は厚くなり、磨いたばかりの濡れたウェーハは乾かしてはいけません。

CMPのプロセスエンジニアで遊び、どれだけ磨くか、どこで止めるかを決める

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