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チップのつくり方約9分

トランジスタはどうやってつくる? 素子分離から1層目の金属配線まで、一歩ずつ

トランジスタは、シリコンウェーハの表面で、次の順につくります。浅い溝を掘って絶縁物で埋め、トランジスタどうしを分ける(素子分離)。原子を打ち込んで、n型とp型の土台をつくる(ウェル)。とても薄い絶縁膜をつけ、その上にゲートをつくる。ゲートそのものを盾にして、両側にソースとドレインを打ち込む。加熱して原子を落ち着かせる(アニール)。絶縁膜でおおい、小さな穴をあけて金属で埋める(コンタクト)。そして1層目の金属配線につなぎます。ほとんどのステップで、いくつものプロセスエリアを使います。

この記事では、いちばん単純な「平面」トランジスタで考え方を説明します。簡略化していて、実際のフローにはもっと多くの工程があります。そもそもトランジスタとは何かは、「トランジスタとは?」へ。

できあがったトランジスタを切ると、どう見える?

完成したチップを横から切って断面を見ると、下から上へおおよそこうなっています。

  • シリコンの中:p型のウェルとn型のウェルが並び、トランジスタとトランジスタのあいだには、絶縁物で埋めた浅い溝が埋まっています。
  • トランジスタ1つ:とても薄い絶縁膜の上にゲートが1本のっています。ゲートの両側のシリコンが、ソース(入口)とドレイン(出口)です。
  • シリコンの上:厚い絶縁膜の中に金属の小さな柱が何本も立ち、下はトランジスタに、上は1層目の金属配線につながっています。

トランジスタは2種類あり、1つはp型のウェルに、もう1つはn型のウェルにのっていて、ペアで使います(「CMOSとは?」へ)。

なぜ一度にできないの? パターン1回で、ひと回り

工場では、小さな一部分だけを処理することができません。膜はウェーハ全面につき、イオン注入もウェーハ全面に当たります。ある場所だけで何かを起こすには、先に「型紙」を焼く必要があり、それでひと回りします。

  1. 材料の層をつける(成膜か拡散炉)。必要ならCMPで平らにする。
  2. リソグラフィでレジストを塗り、フォトマスク越しに露光して現像し、パターンをレジストに焼く。間違えても、ここならまだ洗い落としてやり直せる。
  3. レジストのパターンどおりにエッチングするか、レジストを盾にしてイオン注入する。
  4. レジストを取り、洗浄し、測る。

2000年に出た大学の教科書は、簡略化したCMOSのフローで教えていますが、それでも2層目の金属まででフォトマスクが十数枚、工程が100以上になります。今量産されているチップはずっと多く、ウェーハは何十回もリソグラフィに戻り、工程は合わせて何百にもなります。各エリアの仕事は「半導体工場の7つのプロセスエリアは、それぞれ何をしている?」へ。

チップは1層ずつつくられます。材料の膜をつけ、層によっては平らに磨き、パターンを焼き付け、いらない部分を削るか原子を打ち込み、これを何十回も繰り返します。洗浄と計測は工程の合間に入ります。
1つの層でおおよそ1周します。パターンを焼き付けたら、エッチングかイオン注入をします。すべての層でイオン注入や研磨をするわけではありません。焼いたらまず測り、エッチングや注入のあとはレジストを取り除き、洗浄と計測は各工程の合間に入ります。

トランジスタはどうつくる? 7つのステップ

ステップ1:素子分離、トランジスタのあいだに溝を掘って絶縁物で埋める

  • 何をする:下敷きに薄い酸化膜をつけ、その上を硬い窒化シリコンでおおい、トランジスタを残す場所を焼きます。それ以外の場所はシリコンに浅い溝を掘って酸化膜で埋め、平らに磨いたあと、窒化シリコンをはがします。
  • なぜ:トランジスタはぎっしり並んでいるので、1つずつのあいだに絶縁の壁がないと、電気が隣へ流れてしまいます。
  • しないと:隣どうしのトランジスタがリークし合い、スイッチがきちんと切れません。
  • 使うエリア:洗浄、拡散炉、成膜、リソグラフィ、エッチング、CMP。最初のステップだけで6つのエリアを通ります。

ステップ2:ウェル、原子を打ち込んでn型とp型の土台をつくる

  • 何をする:レジストで半分をおおい、リンを打ち込んでn型のウェルをつくります。型紙を替えてホウ素を打ち込み、p型のウェルをつくって、拡散炉で加熱します。
  • なぜ:入口と出口がn型のトランジスタはp型のウェルに、p型のトランジスタはその逆にのせます。あいだに反対の型のシリコンがあるので、ふだんは電気が通らず、ゲートの電圧で初めて道が開きます(「ドーピングとは?」へ)。
  • しないと:反対の型のウェルがないと、入口と出口がいつもつながっていて、スイッチを切れません。打ち込みを間違えると、スイッチが設計どおりに動きません。打ち込んだ原子は取り出せません。
  • 使うエリア:リソグラフィ、イオン注入、洗浄、拡散炉。
イオン注入の図:ホウ素やリンのイオンを電界で加速して、ウェーハに打ち込みます。レジストで覆ったところでは、イオンはレジストの中で止まり、開いたところではシリコンに入って、ある深さで止まります。エネルギーが高いほど深く、ドーズが多いほどたくさんの原子が入ります。打ったあとはアニールで加熱し、乱れたシリコンを並び直させ、原子が電気を通すようにします。
砂山に小石を投げこむのと同じで、強く投げるほど深く埋まり(エネルギー)、たくさん投げるほど中の小石が増えます(ドーズ)。打たない場所はレジストで覆い、打ったあとはアニールします(簡略図)。

ステップ3:ゲート、とても薄い絶縁膜とその上のゲート

  • 何をする:拡散炉でとても薄い酸化膜をつけて絶縁膜にし、電気を通すポリシリコンの層をのせます。ゲートを細い線として焼き、残りをエッチングで取り除きます。
  • なぜ:ゲートは絶縁膜をはさんで、電圧で下のチャネルを操ります。ゲートの線幅が、入口と出口の間隔をおおよそ決めるので、この層は特に細く、特に正確に焼かなければなりません。
  • しないと:絶縁膜が薄すぎるとリークし、厚すぎるとスイッチが遅くなります。ゲートが太すぎると遅く、細すぎるときちんと閉じません。
  • 使うエリア:洗浄、拡散炉、成膜、リソグラフィ、エッチング。

ステップ4:ソースとドレイン、ゲートそのものが盾になる

  • 何をする:もう一方の種類のトランジスタをレジストでおおい、ゲートの両側のシリコンに原子を打ち込みます。ゲートの真下はゲートがさえぎるので、入口と出口はゲートの両端にぴったり沿ってできます。これをセルフアライン(自己整合)といいます。
  • なぜ:別のパターンを焼いて合わせると、どうしても少しずれます。ゲートを盾にすれば、必ずそろいます。この考え方は1960年代からあります。
  • しないと:ずれると、入口か出口とチャネルのあいだにすき間があき、電気が通れません。
  • 使うエリア:リソグラフィ、イオン注入。多くのフローでは、まず浅く1回打ち込み、ゲートの両側に絶縁のサイドウォールをつけてから深く打ち込みます。チャネルの近くを薄めにして長持ちさせるためで、ここで成膜とエッチングも使います。

ステップ5:アニール、加熱して原子を落ち着かせる

  • 何をする:ウェーハを加熱して、打ち込んだ原子をシリコン原子の位置に入れ、乱れた結晶の並びを元に戻します。
  • なぜ:打ち込んだばかりの原子は、たいてい隙間にはまっていて、まだ電気を通しません。
  • しないと:熱が足りないとシート抵抗が高いまま。熱をかけすぎると原子が横へ動き、そろえたばかりの形がぼやけます。そのため数秒だけ加熱する速い方法がよく使われ、加熱はすべて熱履歴に積み上がります。
  • 使うエリア:拡散炉、または1枚ずつ短時間で加熱する装置(「拡散炉では何をしている?」へ)。

ステップ6:コンタクト、絶縁膜でおおい、小さな穴をあけ、金属で埋める

  • 何をする:厚い絶縁膜でおおって平らに磨き、小さな穴を焼いて、ソース、ドレイン、ゲートまでエッチングで掘ります。これがコンタクトです。とても薄いバリア層をつけ、タングステンなどの金属で埋めて、穴の外の余りを磨き取ります。
  • なぜ:上の配線がトランジスタに触れてよいのは、つなぐべき点だけです。それ以外はすべて絶縁しておく必要があります。
  • しないと:穴が底まで届かない、埋まりきらないと、抵抗が高くなるか、まったく通りません。穴がずれてゲートに触れるとショートします。だから、どの層も下の層にきちんと合わせます(重ね合わせ)。
  • 使うエリア:成膜、CMP、リソグラフィ、エッチング、洗浄。

ステップ7:1層目の金属配線、コンタクトをつないで回路にする

  • 何をする:もう1層絶縁膜をつけ、配線の形の溝を掘り、金属で埋めて平らに磨きます。
  • なぜ:配線でコンタクトをつないで初めて、2種類のスイッチがペアになり、スイッチの集まりが計算できる回路になります。
  • しないと:トランジスタがどんなによくできても、つながなければ、ばらばらのスイッチにすぎません。その上に重ねていく配線は「チップの配線はどうつくる?」へ。
  • 使うエリア:成膜、リソグラフィ、エッチング、CMP、洗浄。
平面トランジスタのつくり方を示す断面の連続図:素子分離で浅い溝を掘って酸化膜で埋め、リンとホウ素を打ち込んでn型とp型のウェルをつくり、とても薄い絶縁膜とポリシリコンのゲートをつけ、ゲートを盾にしてソースとドレインを打ち込み、アニールし、絶縁膜をつけて小さな穴を金属で埋めてコンタクトをつくり、1層目の金属配線でつなぎます。最後のこまは境目を示します。シリコンの中のトランジスタがFEOL、上の金属配線がBEOLで、コンタクトはその境目にあります。
どのこまも同じシリコンの断面です。左は入口と出口がn型のトランジスタで、p型のウェルにのります。右はp型のトランジスタで、n型のウェルにのります。簡略化した平面トランジスタで、縮尺は正確ではありません。最先端のトランジスタはもっと立体的で、工程も多くなります。

FEOLとBEOLの境目はどこ?

工場の中では、この流れをよく2つに分けます。シリコンの中にトランジスタをつくるステップ1〜5がFEOL(フロントエンド、基板工程)、その上に金属配線をつくるステップ7以降がBEOL(バックエンド、配線工程)です。ステップ6のコンタクトはちょうど境目にあり、FEOLに入れることも、BEOLに入れることもあり、「MOL(ミドル)」と呼ぶこともあります。FEOLには1000度を超える工程もありますが、金属がのったあとのウェーハは、もうそこまで熱せません。これも2つに分ける理由のひとつです。

業界全体の話では、ウェーハ工場の工程を「前工程」、パッケージングとテストを「後工程」と呼びます(「半導体はどうやって作られる?」へ)。FEOLもBEOLも、前工程の中の話です。

今のトランジスタも、こうしてつくる?

考え方は同じで、形が違います。最先端のチップでは、チャネルはたいてい薄いフィンとして立っているか、何枚か重ねた薄い板をゲートが四方から包んでいて、ゲートと絶縁膜の材料も替わっています(「トランジスタとは?」へ)。工程は増え、順番も一部変わりましたが、「分ける、土台をつくる、ゲートをつくる、ゲートに合わせて入口と出口をつくる、配線をつなぐ」という幹は今も同じです。

fab24hrでは

fab24hrのメインストーリー「チップの一生」第2章「一工程ずつ」が、この記事のステップ1と2です。ウェーハ投入から最初の5日間、あなたは開発インテグレーションエンジニアとして、架空の補聴器チップ「Glowmere」の最初の12枚について開発ラインを回ります。洗浄、拡散炉で下敷きの薄い酸化膜、モニターウェーハの測定、窒化シリコンの成膜、最初のパターン、溝のエッチング、窒化シリコンまでのCMP(レシピどおり少し多めに削るか、届いた瞬間に止めるか)、窒化シリコンの除去、n型とp型のウェルの注入。7つのプロセスエリアで、1つずつ自分の手で工程を進めます。

その後のステップは「工場の一日」にあります。「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「開発ライン」を押し、左右にスワイプして開発プロセスエンジニアへ。名前の下でエリアを選びます。拡散炉はゲートの下の酸化膜とアニールを、イオン注入はソースとドレインを受け持ち、リソグラフィ、エッチング、成膜、CMPがいっしょにコンタクトをつくります。ゲームの会社、チップ、人物、装置、数字は架空のものです。各ステップは公開されている一般的な資料をもとにしていて、簡略化しています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」第2章「一工程ずつ」:ウェーハ投入から最初の5日間、Glowmereの最初の12枚でやることが、この記事のステップ1と2、溝を掘る素子分離とウェルです。7つのプロセスエリアで、1つずつ自分の手で工程を進めます。

fab24hrでは、トランジスタの最初の2ステップを、12枚のウェーハと一緒に一工程ずつ自分の手で進められます。

第2章「一工程ずつ」から、素子分離とウェルを自分の手で

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

この記事を引用する「トランジスタはどうやってつくる? 素子分離から1層目の金属配線まで、一歩ずつ」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/transistor-flow/
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