フォトリソグラフィとは? チップの回路パターンはどうやって焼き付けるのか
フォトリソグラフィは、光を使ってチップの回路パターンをウェーハに「焼き付ける」工程です。略してリソグラフィとも、「露光工程」とも呼ばれます(台湾の工場では、照明の色から「黄光」と呼ばれます)。やり方は、暗室で写真を焼き付けるのによく似ています。ウェーハに光に反応する膜を塗り、回路が描かれた「ネガ」越しに光を当て、光が当たった部分(または当たらなかった部分)を洗い流すと、パターンが残ります。チップの線もスイッチの位置も、こうして1層ずつ焼き付けられます。
なぜ「焼き付ける」のか?
スマートフォンのチップには100億個を超えるスイッチがあり、いちばん細い線は髪の毛より千倍以上も細いほどです。そんなものを1本ずつ描くことはできません。全体をまとめてつくるしかなく、しかもどのウェーハでもまったく同じに仕上げなければなりません。
光なら、それができます。写真と同じで、シャッターを切れば画面全体が一度にフィルムに写ります。英語の lithography はもともと「石版印刷」のことで(litho はギリシャ語の「石」)、そこに photo(光)が付いて、「光で刷る」という意味になります。
用意するものは3つ
- レジスト:光に反応する膜。光が当たったところだけ性質が変わります。写真フィルムの感光層のようなものです。
- フォトマスク:露光のための「ネガ」。とても平らなガラス板(たいていは石英)に、光を遮る薄い膜が回路の形に付いています。膜があるところは光を通さず、ないところは通します。チップの層ごとに、それぞれ専用のフォトマスクを使います。
- 露光装置:フォトマスクを通した光を、ウェーハに当てる装置です。
レジストは青い光や紫外線に反応するので、この作業をするエリアの照明は黄色です。その理由は「リソグラフィのエリアは、なぜ黄色い照明なのか」に書いたので、ここではくり返しません。
フォトリソグラフィの手順は?
- レジストを塗る:ウェーハの中心にレジストを少し垂らし、ウェーハを高速で回します。余分は飛ばされ、薄く均一な膜が残ります。厚さは1マイクロメートルほどかそれ以下で、髪の毛の数十分の一以下です。塗ったら軽く焼いて溶剤を飛ばし、膜を安定させます。
- 露光する:露光装置が、フォトマスクを通して光を当てます。光を通すところではレジストが変わり、遮るところは変わりません。この時点ではまだパターンは見えません。撮影したけれど現像していないフィルムと同じです。
- 現像する:まずホットプレートでもう一度軽く焼き(露光後ベーク)、レジストの中の反応を終わらせます。それから薬液で洗います。光が当たった部分が溶けるレジストもあれば、その逆で、当たった部分だけが残るレジストもあります。ウェーハに残ったレジストが、パターンです。これが現像です。
- 確かめる:線がどれだけの幅で焼けたか(線幅)、下の層とずれていないか、欠陥がないかを測ります。
- エッチングに渡す:レジストに覆われたところは守られ、覆われていないところはエッチングで材料が削られます。削り終えたら残ったレジストを取り除き、この層のパターンが本当にウェーハに刻まれます。エッチングが何をしているかは「半導体工場の7つのプロセスエリアは、それぞれ何をしている?」へ。
レジストを塗る、焼く、現像するは、ふつう1台のコータデベロッパで行います。露光装置とつながっていて、ウェーハは2台のあいだを自動で行き来します。
露光装置はどう焼き付ける? 縮小するはんこ
フォトマスクのパターンは、ふつう実物の4倍の大きさで描かれています。露光装置はレンズでそれを縮小してウェーハに写すので、マスク上の小さな誤差も一緒に小さくなります。
露光装置が一度に焼き付けるのは、小さな四角ひとつだけです。これを露光ショットと呼び、大きさは2〜3センチ四方ほど。チップが1個入っていることも、何個か入っていることもあります。1ショット焼いたらウェーハを少し動かして、次のショットを焼く。同じはんこで、紙を1マスずつ埋めていくようなものです。
同じ「はんこ」なので、フォトマスクに汚れがひとつあると、どのショットにも同じ位置に同じ点が焼き付き、どのウェーハでもたくさんのチップがまとめてだめになることがあります。だからマスクは定期的に検査され、上にはペリクルと呼ばれる透明な保護膜が張ってあります。ほこりが膜の上に落ちても、パターンから数ミリ離れているのでピントが合わず、たいてい焼き付きません。
なぜ何十回も、1層ずつくり返すのか?
チップは一度にはできません。ビルに似ています。いちばん下がトランジスタ、つまりスイッチで、その上に金属の配線が何層も重なり、スイッチどうしをつないでいます。各階を通る配管や配線のようなものです。スイッチについては「トランジスタとは?」へ。
層ごとに形が違うので、層ごとに材料の膜をつけ、リソグラフィでその層のパターンを焼き、そのとおりに削ります。簡単なチップで10層前後、複雑なものは何十層にもなり、それぞれに専用のフォトマスクがあります。ウェーハは完成するまでに、何十回もリソグラフィに戻ってきます。
どの層もぴったり合わせる:重ね合わせとは?
カラー印刷を思い浮かべてください。色ごとに1回ずつ刷り、1回でもずれると、色が枠からはみ出します。チップはもっと厳しく、上の層の配線が、下の層のスイッチにぴったり届かなければなりません。少しずれるだけで、つながるべきものがつながらず、触れてはいけないものが触れてしまいます。
この層が下の層とどれだけ正確に合っているかを、重ね合わせといいます。露光の前に、露光装置はそれまでの層がウェーハに残したアライメントマークを探し、ウェーハ全体がどれだけずれ、どれだけ回っているかを計算してから、各ショットをどこに焼くかを決めます。許されるずれは、回路でいちばん細い線の何分の一かしかありません。ロットごとに重ね合わせを測り、ずれていれば露光装置を調整して、次のロットで取り戻します。
どこまで細く焼けるかは、何で決まる?
おもに光の波長です。光をペンにたとえると、波長が短いほどペン先が細く、細い線が描けます。だから何十年ものあいだ、露光に使う光はどんどん短い波長に変わってきました。青紫の光から紫外線へ、そして今よく使われる深紫外線は、波長193ナノメートルです。よりよいレンズとさまざまな工夫を重ねて、幅わずか数十ナノメートルの線まで焼けます。
いちばん進んだものは極端紫外線で、波長はわずか13.5ナノメートル。空気にさえ吸収されてしまい、まったく別の種類の装置が必要です。これはまた別の記事で書きます。ニュースの「何ナノ」の意味は「ニュースの「2ナノ」、いったい何が2ナノなのか?」へ。
失敗したら、やり直せる?
やり直せます。ここが、リソグラフィとほかの工程のいちばん違うところです。現像のあと、パターンはまだレジストの上にあるだけで、下の材料にはまったく手がついていません。線幅がおかしい、重ね合わせが規格を外れた、欠陥が見つかった。そんなときはレジストをまるごとはがし、塗り直し、露光し直し、現像し直します。これをリワークといいます。
エッチングに進んで材料を削ってしまったら、もう戻れません。だからリソグラフィ直後の測定は、ライン全体でもいちばん大事な関門のひとつです。リワークにもコストはかかります。ウェーハはもう一周し、何時間も余計に待つことになります。
fab24hrでは
fab24hrでは、「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「役割を変える」でリソグラフィの役割を選べます。リソグラフィエンジニア(量産工場 › プロセス › リソグラフィ)の朝は、あるロットの重ね合わせが規格外で、次の工程はエッチング。リワークするか、そのまま流すか。昼は、コータデベロッパの保守のあと、線幅が片側だけ太く、片側だけ細くなり、どのウェーハをリワークするかを選びます。夜は、現像後検査から1枚の画像が届きます。どのショットにも、同じ位置に同じ点。フォトマスクです。露光装置を止めてマスクを替えるか、印を付けて今夜のロットを流しきるか。
同じエリアにはリソグラフィ装置エンジニアもいて、真夜中、露光装置がアライメントマークを見つけられずに止まります。マスクエンジニアは工場のフォトマスクを見ます。受け入れ、検査、ペリクル、洗浄への送り出し。開発ラインのリソ開発プロセスエンジニアは、新しい層のために露光のフォーカス(ピントをどこに合わせるか)とドーズ(光をどれだけ当てるか)を探します。これらの役割にはどれもBetaの印が付いています。ゲームに出てくる会社・人物・装置番号・数字は架空です。リソグラフィで何をしているか、なぜ層を合わせるのか、なぜやり直せるのかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかリソグラフィエンジニア(量産工場 › プロセス › リソグラフィ)の夜のシフトでは、露光装置がどのショットにも同じ位置に同じ点を焼き付け、フォトマスクをどうするか決めます。マスクエンジニア(量産工場 › フォトマスク)は、シフトのあいだずっとフォトマスクを見ています。
fab24hrのリソグラフィエンジニアは、どの層のパターンも見守ります。重ね合わせ、線幅、そしてフォトマスク上のひとつの点。
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