WATとは? ウェーハマップから、どこで失敗したかをどう読む?
半導体工場でいうWATは、Wafer Acceptance Test(ウェーハ受入れテスト)の略で、PCMやパラメトリックテストとも呼ばれます。ウェーハができあがって工場から出る前に、ウェーハ上に測定用にわざわざ残してある小さな構造にプローブを当て、トランジスタの電流、抵抗、リークといった基本的な数字を測って、そのロットが正しく作れたかを判断します。ウェーハマップは、もう1枚の成績表です。ウェーハテストでチップを1個ずつすべて測ったあと、良品と不良を位置どおりに描いた図です。WATは「プロセスがずれていないか」に、ウェーハマップは「不良がどこにあり、どんな形に並んでいるか」に答えます。不良が輪や片側、線、きれいな格子の形に並ぶと、それぞれ別の問題を指していることがよくあります。
ウェーハテストのやり方は「チップはどうテストする?」に書きました。この記事は、結果が出たあとにどう読むかの話です。
WATは何を測る? なぜチップを直接測らない?
1枚のウェーハの上では、チップとチップのあいだに細いすき間が通っています。これをスクライブラインといい、最後にウェーハを切り分ける(ダイシング)ときに刃が通る場所です。どうせ切り落とすので、エンジニアはそこに測定専用の小さな構造を置きます。これがTEGです。
TEGのつくりは単純です。1個だけ取り出したトランジスタ、長い抵抗、つなげたコンタクトの列。それぞれが数個の金属パッドにつながっていて、プローブを直接当てられます。となりのチップと同時に作られ、まったく同じ工程を通ります。
なぜチップを直接測らないのか。1個のチップには数千万から100億を超えるスイッチが詰まっていて、ある種類のトランジスタが何ボルトで電気を通し始めるかを、チップ全体のふるまいから逆算するのは難しいからです。建物を建てるとき、同じトラックのコンクリートで別に試験体をいくつか作り、押しつぶして強さを確かめるのと似ています。壁を壊さなくても、そのコンクリートが合格かどうかがわかります。
WATでどんな数字がわかる?
よく測るのは、次のようなものです。
- トランジスタ:何ボルトで電気を通し始めるか(しきい値電圧)、オンのときにどれだけ電流が流れるか、オフのときにどれだけリークするか。
- 抵抗:ある層がどれだけ電気を通しやすいか(シート抵抗)と、コンタクトの抵抗。
- 長いコンタクトの列:何千個も一列につないであります。1個でも切れていれば列全体が通らないので、1回測るだけで、つながっていないものがないかがわかります。
- 絶縁膜:容量がどれくらいか、何ボルトまで壊れずに耐えられるか。
1枚のウェーハで測るのは、中央から外周まで散らばった数か所だけで、それぞれで同じ数十項目を測ります。数点だけなので、チップを1個ずつテストするよりずっと速く、WATはロット全体のずれに最初に気づく場所のひとつになることがよくあります。ふつうは数字がすべて規格内のときだけ、ロットはウェーハテストへ進みます。1項目でも外れれば、ロットはいったんホールドされ、エンジニアの判断を待ちます。
WATの1項目が不合格なら、何を意味する?
チップが壊れているとは限りません。どこかの工程がずれたかもしれない、ということです。どの項目がずれたかで、関係する工程の見当がつくことがよくあります。たとえばコンタクト抵抗が高いなら、コンタクトの穴が底までエッチングされていない、または埋まりきっていない可能性があります。
ただし最初にすることは、たいていプロセスより先に測定を疑うことです。プローブカードの針先に汚れが付くと接触が悪くなり、抵抗が高く測れて、プロセスの問題のように見えます。針を掃除してもう一度測り、数字が戻れば、プロセスのせいではありません。
TEGはウェーハ全体に散らばっているので、WATの数字も位置ごとに並べて見られます。中心と外周でどれだけ違うか、この1枚と次の1枚でどれだけ違うか。ロットごとの数字は管理図にも記入され、少しずつ片側へずれていくなら要注意です(「SPCの管理図とは?」)。
ウェーハマップはWATと何が違う?
| WAT | ウェーハマップ | |
|---|---|---|
| 測るもの | スクライブライン上のTEG | お客さんのチップ1個1個 |
| 何点測るか | 1枚につき数か所 | 全チップ |
| 答える問い | プロセスはずれていないか? | どのチップが、どこで不良か? |
ウェーハテストが終わると、チップはそれぞれビンに分けられ、位置どおりに描いてウェーハマップになります。良品と不良で色を分け、ずれたものにも別の色を使うことがあります。歩留まりは良品の数を数えたものです(「ニュースの「歩留まり」とは?」)。ウェーハマップは、もうひとつのことを教えてくれます。不良がどこにあるか、です。
ウェーハマップによく出る形は、それぞれ何を指す?
研究でよく使われる公開データセットには、実際のウェーハマップが80万枚以上収められていて、そのうち約2割に、9種類のどれかのラベルが付いています(1種類は「形なし」)。たとえば中央の固まり、外周のリング、傷、ランダムな散らばりです。以下は、教科書や論文がよく挙げる方向性です。どれも「よく指している」だけで、答えではありません。
- 規則性なく散らばっている:ランダムに落ちたパーティクルに近い形です。原因をひとつに絞りにくく、クリーンルームと装置をきれいに保つしかありません(「クリーンルームはどれくらいきれい?」)。
- 中央に集まっている:どこかの工程で、中心と外側の扱いが違った。たとえば研磨のむら、薬液の残したしみ、装置のある機構の不具合です。
- 外周のリング:ウェーハのいちばん外側は、もともと中央より均一にしにくい場所です。ガスも温度もプラズマも、端では中央と違うふるまいをします。そこで、成膜、エッチング、研磨、加熱のように、全面をそろえる必要がある工程から調べることが多いです。
- 片側だけ、一部分だけ:その側だけ、ある工程で扱いが違った可能性があります。
- 線や弧:多くは傷です。たとえば搬送アームや、研磨中に硬い粒が引きずられた跡。
- きれいな格子:一定の間隔ごとに不良が1個。その間隔が露光装置が1回で焼き付ける1ショットと同じなら、問題はフォトマスクについてまわることが多いです。マスクの汚れひとつが、ショットのたびに焼き付けられます(「半導体工場のマスクエンジニアは何をしている?」)。間隔が、プローブカードが一度に当てるチップの数と合うなら、プローブカードのある1組の針を疑います。それなら、測定の問題かもしれません。
- ほぼ全面が不良:ある工程がウェーハ全体で大きく失敗したか、テストそのものに問題があるのかもしれません。
実際のウェーハマップでは、2つの形が重なっていることもよくあります。同じロットのウェーハは同じ工程を通るので、マップもよく似ます。
形が見えたら、次に何をする?
形は範囲を絞るだけです。よくある次の手順は、こうです。
- まず測定を疑う:針を掃除してもう一度測るか、答えがわかっているウェーハで確かめます。
- 1枚ずつ比べる:全部のウェーハにあるのか、何枚目から始まったのか。急に現れたなら、そのころに何かが変わったことが多いです。
- 記録と突き合わせる:不良のウェーハが通った装置を書き出し、全部に共通する1台を探します。
- 切って見る:不良のチップで断面解析をし、電子顕微鏡(たとえばTEM)で断面を見ます。穴が埋まっていないのか、線が切れているのか、余計な層があるのか。
- ほかの数字とも見比べる:ウェーハマップで外周のリングが出ているなら、WATの外周の数字もずれていないか(途中の工程の確かめ方は「半導体工場は、工程がうまくいったかをどう確かめる?」)。
fab24hrでは
メインストーリー「チップの一生」の第3章「不良の形」で、あなたは開発ラインの開発インテグレーションエンジニアです(「開発インテグレーションエンジニアは何をする?」)。ウェーハ投入から1〜2か月後。補聴器用チップ「Glowmere」の最初のロット、R-0912のWATの結果が出ました。9枚目のコンタクト抵抗が規格より3割高い。電気測定室のシャオウェンに聞かれます。もう一度プロービングするか、プロセスの問題として報告書に書くか。第1章でジョウ先輩に断面解析用のウェーハを1枚渡していれば、切ってみて何が見えたかを教えてくれます。
続いてシャオウェンが、3枚のウェーハマップを画面に並べます。緑は正常、赤は不良、オレンジは速め。それぞれの、ほかと違うところをタップします。3枚目の外周のリング(不良ではなく、速めに振れているだけ)、8枚目以降の格子状の点、11枚目の1本の弧。16:00のマスク会議では、次のマスクで、チップの中に自分たちのTEGを置く場所を2か所残すかどうかも決めます。
「工場の一日」では、「今日のあなたは」のカードで「開発ライン」を押し、左右にスワイプして開発インテグレーションエンジニアを選ぶと、昼シフトがこの日です(シフトは端末の時刻で決まります)。ゲームの会社、チップ、人物、ロット番号、数字は架空のものです。WATとウェーハマップとは何か、どう読むかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」の第3章「不良の形」では、開発ラインの最初のロットで1枚がWATの規格を外れ、続いて3枚のウェーハマップで、それぞれのおかしなところをタップします。「工場の一日」で開発ラインの開発インテグレーションエンジニアになると、昼シフトがこの日です。
fab24hrでは、WATで1枚が規格外、3枚のウェーハマップにはそれぞれ別の形。測定を疑うか、プロセスを疑うかはあなたが決めます。
第3章「不良の形」で、3枚のウェーハマップを読む先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
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