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チップの基本約8分

アナログ半導体とデジタル半導体は何が違う?

デジタルのチップとアナログのチップは、扱う信号が違います。デジタルのチップが扱うのは0と1の2つの状態だけ。アナログのチップは、なめらかに変わる信号を扱います。音の大きさ、光の明るさ、温度、電池にどれだけ電圧が残っているか、といったものです。アナログのチップはアナログ半導体、アナログICとも呼ばれ、デジタルのほうはデジタル半導体、デジタルICとも呼ばれます。どちらが進んでいるということはありません。デジタルは計算と記憶、アナログは現実の世界とのやりとりを受け持っています。両方を1つに載せたチップも多く、ミックスドシグナルと呼ばれます。

そもそもチップとは何かは、「半導体チップとは?」を先にどうぞ。

デジタル信号とアナログ信号は、どう違う?

家の明かりで考えてみましょう。

  • デジタルは、ふつうの電気のスイッチ:オンとオフの2つだけ。オンが1、オフが0です。
  • アナログは、回して明るさを変える調光つまみ:真っ暗からいちばん明るいところまで、その間のどの明るさにもできます。

チップのいちばん基本の部品はトランジスタで、電気で操作する小さなスイッチです(「トランジスタとは?」)。デジタル回路は、たくさんのスイッチのオンとオフで、0と1の並びを表します。

じつはデジタルの信号も電圧です。ただ回路は、それが十分に高いか、十分に低いかしか見ません。高ければ1、低ければ0で、その間には使わない幅をとってあります。だから信号が少し揺れても、読み間違えません。

これがデジタルのいちばんの強みです。少しくらいの雑音には負けず、コピーを100回くり返しても、まったく同じままです。アナログの信号はそうはいきません。雑音が少し混ざると、どこまでがもとの信号なのか、見分けがつかなくなります。コピーをさらにコピーすると、1回ごとにぼやけていくのと同じです。

現実の世界はアナログ。では、どうする?

音は、空気がぎゅっと押されたり、ゆるんだりをくり返す圧力の変化です。光の明るさ、温度、電池の電圧も、みんななめらかに変わり、自分から0と1になってはくれません。

チップにこうしたことを知らせるには、まず電気に変えます。マイクは音を、それに合わせて上下する電圧に変えます。カメラのイメージセンサーは光を電気に、温度センサーは暑さ寒さを電圧の高い低いに変えます。こうした電気の信号は、はじめはどれもアナログで、しかもとても弱いことがよくあります。

ここでアナログ回路の出番です。

  • 受け取って、増幅する:ごく小さな信号を、使える大きさまで大きくします。この回路を増幅器(アンプ)といいます。
  • ふるいにかける:いらない雑音を取り除きます。
  • 変換する:アナログを数字に、数字をアナログに変えます。

ADコンバータとDAコンバータは何をしている?

ADコンバータ(A/D変換器)は、アナログをデジタルに変える回路です。英語のanalog-to-digital converterを略してADCとも書きます。やっていることは2つです。

  1. ほんの少しの時間ごとに、何度も測る:上り下りのある道を歩きながら、1歩ごとに高さを測るようなものです。これをサンプリング(標本化)といいます。
  2. 測った値を、いちばん近い目盛りで記録する:ものさしの目盛りには限りがあるので、測った値はいちばん近い目盛りでしか書き留められません。それを0と1の並びにします。

測る回数が多く、目盛りが細かいほど、記録はもとの形に近づきます。音楽CDの規格を例にとると、1秒に44,100回測り、1回ごとに16個の0か1で記録します。高さを65,536段階に分けていることになります。なぜそんなに何回も測るのでしょう。人の耳に聞こえるのは、およそ1秒に20回から2万回ふるえる音です。あるふるえを記録するには、1秒にその2倍以上の回数を測る必要があります。

DAコンバータ(D/A変換器、DAC)はその逆で、数字の並びを、なめらかに変わる電圧に戻します。スピーカーやイヤホンを鳴らすには、これが必要です。

だから機械の中で、音はよくこう進みます。マイク → 増幅 → ADコンバータ → デジタル回路で処理 → DAコンバータ → スピーカー。

数字になってしまえば、いろいろなことがずっとやりやすくなります。ある高さの音だけを大きめにする、雑音を小さくする、保存する、どこかへ送る。

電源を管理するチップも、なぜアナログなの?

スマートフォンの中では、プロセッサ、メモリ、画面、無線の信号を送受信する回路が、それぞれ違う電圧を必要とします。電池の電圧も、使うにつれて少しずつ下がっていきます。電源IC(電源管理IC)は、電池やコンセントの電気を、それぞれの部分が使う、ぶれない電圧に変える役目です。

出している電圧をいつも見張り、下がれば足し、上がれば抑えます。扱っているのはなめらかに変わる電圧と電流なので、ふつうはアナログのチップに数えます。よくある方法は2つです。

  • 蛇口のように:余分な電圧をせき止めます。しくみが簡単で雑音も少ないのですが、せき止めた分は熱になります。
  • スイッチをとても速く入れたり切ったりして:電気をオン、オフ、オン、オフと流し、コイルやコンデンサでならします。むだが少なく、大きな電流を扱うところでよく使われます。

アナログのチップは、なぜ成熟プロセスで長くつくられるの?

デジタル回路は小さくすれば、そのまま得をします。アナログ回路は小さくしてもあまり得をせず、かえってつくりにくくなることもあります(「ニュースの「成熟プロセス」とは?」で書いたとおりです)。

  • 最新の世代は使う電圧がとても低く、信号が上下に振れる幅がせまくなるので、少しの雑音でも大きく見えてしまいます。
  • 抵抗、コンデンサ、コイルの大きさは、必要な値で決まります。スイッチが小さくなっても、いっしょには小さくなりません。
  • アナログ回路は、部品1つ1つの値が正確かどうかをとても気にします。温度が変わったり、製造でほんの少し違いが出たりするだけで、結果がずれます。

だから多くのアナログのチップは、何世代も前のつくり方でつくられ、今も8インチのウェーハを使うものが少なくありません(「12インチ、8インチのウェーハとは?」)。

長くつくり続けられることもよくあります。車や工場の機械は何年も使われるので、中のチップもずっと手に入らないと困ります。ずっと昔に設計されたアナログのチップが、今もつくられていることもあります。

デジタルのチップは、なぜ小さくなるのを追いかけるの?

デジタルのチップの力は、ほぼ2つで決まります。スイッチをいくつ載せられるか、そしてスイッチがどれだけ速く、少ない電気で切り替わるか。だから1世代小さくなるたびに、そのまま強くなります。線幅が小さくなって、同じ広さにもっと多くのスイッチが入ります。これをいちばん必要としているのが、プロセッサ、メモリ、AIのチップです(「ムーアの法則とは?」「ニュースの「2ナノ」、いったい何が2ナノなのか?」)。

デジタルのチップアナログのチップ
扱う信号0と1だけなめらかに変わる
よくある例プロセッサ、メモリ増幅器、電源IC、無線の信号を送受信する回路
小さくする得大きい(多く、速く、省電力に)あまりない。かえって難しくなることも
よく使うプロセス最新の数世代成熟プロセス

1つのチップに、両方あってもいい?

かまいません。これをミックスドシグナルといいます。ADコンバータやDAコンバータは、そもそもそういう回路です。片側がアナログ、もう片側が数字です。

そういうチップはたくさんあります。家電やリモコンによく入っているマイコンには、ADコンバータが内蔵されていることが多く、温度センサーの電圧をそのまま読めます。スマートフォンのSoCにも、計算する区画のほかに、外とのやりとりやアナログ信号を受け持つ区画があります(「SoCとは?」)。

いっしょに載せると、困ることが1つあります。デジタル回路はいつもスイッチを切り替えているので雑音が出て、チップの下に共通に広がっているシリコンを伝わっていきます。アナログ回路は敏感なので、離して守ってやらなければなりません。工事現場の横で録音するなら、まず窓を閉めるのと同じです。

fab24hrでは

fab24hrのメインストーリー「チップの一生」は、架空の補聴器用チップ「Glowmere」を追いかけます。補聴器は、音をはっきり聞き取る手助けをする小さな機器です。こうした機器はふつう、マイクで音を拾って増幅し、数字にして処理してから、また音に戻して耳に届けます。小さな電池を長くもたせることも欠かせません(補聴器には空気亜鉛電池がよく使われます)。Glowmereの中がどんな区画に分かれているかは、ゲームでは語られず、こうした変換も描かれていません。

ゲームで見られるのは、次のような場面です。第11章「ボールが浮いた」では、組立ラインのラインリーダー、シューフイが、Glowmereが入るのはSiPモジュールだと教えてくれます。小さな基板に、チップと、抵抗やコンデンサがいくつか載ったものです(「SiPとは?」)。終章の第13章「父の手に」では、あなたはシェンさんの父です。娘が玄関先で何か言っています。口が動いているのは見えるのに、声は遠く、ぼやけています。電池を入れると、補聴器から短い通知音がひとつ聞こえ、娘が「お父さん、聞こえる?」とたずねます。そのあと、妻が台所で「ごはんよ」と言い、あなたは壁ひとつ隔てて、それを聞き取ります。

「出勤」を押して「チップの一生」を選ぶと、Glowmereが開発ラインからシェンさんの父の手もとに届くまでを追えます。ゲームの会社、チップ、人物は架空です。アナログとデジタルのチップについては、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」は、架空の補聴器用チップ「Glowmere」を追いかけます。終章の第13章「父の手に」では、シェンさんの父が新しい補聴器をつけ、壁ひとつ隔てた台所から、夕食に呼ぶ妻の声を聞き取ります。チップの中で音を数字にし、また音に戻すところは、ゲームでは描かれていません。

fab24hrのメインストーリー「チップの一生」では、補聴器用のチップが開発ラインから、ひとりの父親の耳もとまで旅をします。最後に彼は、壁ひとつ隔てて、妻の声を聞き取ります。

出勤して、補聴器用のチップ「Glowmere」の旅を最後まで見る

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

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