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チップの基本約8分

SoCとは? スマートフォンの中の「システム・オン・チップ」をやさしく解説

SoCは System on a Chip の略で、日本語ではシステム・オン・チップ(システムオンチップ)と呼ばれ、システムLSIとも言います。電子機器に必要ないくつもの機能、たとえば計算を受け持つプロセッサ(CPU)、画面を描くグラフィックスプロセッサ(GPU)、メモリを管理する回路、無線通信、カメラの写真を処理する回路などを、すべて1つのチップにつくり込んだものです。スマートフォン、タブレット、腕時計でいちばん大事なチップは、たいていSoCです。CPUは、その中の一部分です。

そもそもチップとは何かは、「半導体チップとは?」から読んでみてください。

SoCの中には何がある?

SoCを1棟のビルだと考えてみましょう。各階に部署があって、それぞれの仕事をしながら、いっしょに働いています。中身はSoCごとに違いますが、スマートフォンのSoCにはよく次のような区画があります。

  • プロセッサ(CPU):プログラムに従って一歩ずつ計算し、判断します。チップ全体の指揮役です。コアをいくつも持っていることが多く、コアとは、それぞれ独立して働けるプロセッサ1つ分のことです。
  • グラフィックスプロセッサ(GPU):画面を描きます。同じような小さな計算をたくさん同時にこなすのが得意で、ゲームや、画面のなめらかな動きはこれに頼っています。
  • AI用の回路:NPUと呼ばれることが多く、顔認識や音声認識のようなAIの仕事を専門に受け持ちます。
  • 画像処理:ISPと呼ばれることが多く、カメラがとらえた生のデータを1枚の写真に仕上げます。
  • 無線通信:モバイルネットワークや、そのほかの無線の信号につなぐ回路です。
  • メモリ制御:チップの外にあるメモリとのデータの読み書きを管理します。チップの中にも、キャッシュと呼ばれるとても速い小さなメモリが少しあります。

ほかに、画面や充電端子など、外のものとつなぐための回路もあります。全部合わせると、スマートフォンのSoCには今、100億個以上のトランジスタがあります(トランジスタとは?)。

SoCとCPUの違いは?

ひとことで言うと、CPUはビルの中の1つの部署、SoCはビル全体です。

昔ながらのデスクトップパソコンでは、CPUは1個のチップで、メモリ、グラフィックスボード、ネットワークはそれぞれ別のチップとして回路基板に散らばり、基板の配線でつながっています。スマートフォンにはそんなにたくさん置く場所がないので、その多くを1つのチップにまとめます。だから、スマートフォンの「プロセッサ」と言うときは、たいてい中のCPUだけでなく、SoC全体のことを指しています。

家電やリモコンによく入っているマイコン(マイクロコントローラ、MCU)も、プロセッサと少しのメモリ、周辺の回路を1つのチップに載せたものです。SoCによく似ていますが、ずっと小さく、ずっと単純です。

なぜ1つのチップにするのか

  • 小さい:何個ものチップと、そのあいだの配線が1個にまとまります。回路基板が小さくなるから、スマートフォンは薄くでき、腕時計は手首に着けられます。
  • 電気が少なくてすむ:信号がチップの外に出るには、端子を通り、回路基板の上の数センチの配線を進まなければなりません。この配線はチップの中の配線よりずっと「重く」、データを1回送るのに何倍もの電気がかかります。チップの中にとどまれば、その電気を節約できます。電池で動くものほど、ここを気にします(チップの電気がどこに使われるかは「チップはなぜ電気を使う?」へ)。
  • 速い:チップの中の道は短く、並べられる配線も多いので、データがすばやく行き来します。
  • たくさんつくれば安い:1個で何個ものチップの代わりになるので、買う部品も、はんだ付けする部品も減ります。たくさん売れるほど、1個あたりが負担する設計費は小さくなります。

SoCのデメリットは?

設計が大きく、難しい

100億個以上のトランジスタと、まったく種類の違ういくつもの回路を1つにぎっしり詰め込み、同時に動かし、しかもおたがいに邪魔しないようにしなければなりません。だから、すべての区画をゼロから描くことはまずありません。多くの区画は、以前に設計して確かめたものを使い回します。チップ全体が正しく動くかを確かめるだけでも、時間の大きな部分を使います(設計で何をするかは「VLSI設計と半導体工場の仕事はどう違う?」へ)。

時間もお金もかかる

設計を始めてから最初のチップができるまで、数か月から1年以上かかることがよくあります。設計ができあがってテープアウトすると、まずフォトマスクを1セットつくります。パターンの層ごとに1枚で、新しい世代ほど高くなります。テープアウトのあとでまちがいが見つかれば、設計を直し、フォトマスクをつくり直して、さらに数か月待つことになります。

小さな1区画が壊れると、全体が使えなくなることが多い

1枚のウェーハには、目に見えないほど小さな欠陥が必ずいくつか落ちます。SoCのどの区画に当たっても、その区画は壊れます。機能がすべて同じチップにあるので、1区画が壊れるとチップ全体が使えなくなることが多いのです。チップが大きいほど当たりやすく、歩留まりは下がります(ニュースの「歩留まり」の記事で、クッキーのたとえで説明しています)。

救う方法もあります。プロセッサのコアのように同じ部分がいくつもあれば、壊れた1つを止めて、少し性能の低いチップとして使えます。でも、1つしかない区画が壊れたら、たいていどうにもなりません。

どの区画も同じつくり方でつくるしかない

1つのチップは、1つの世代のプロセスでしかつくれません。計算を受け持つ区画には、最新の世代がいちばん得です。小さく、速く、電気も少なくてすみます。でも、外とのやりとりやアナログ信号を受け持つ区画は、最新の世代にしてもあまり小さくならず、値段は高くなります(新しい世代がなぜ高いかは「ニュースの「2ナノ」、いったい何が2ナノなのか?」へ)。

そもそも入れられないものもあります。スマートフォンのDRAMと、写真を保存するフラッシュメモリは、ロジックのチップとつくり方がまったく違うので、ふつうは別のチップです。SoCのすぐ上に積み重ねることもあります(「メモリとプロセッサは何が違う?」)。スマートフォンで無線の信号を増幅する部品も、別の半導体材料でつくられることがよくあります(「ニュースの「ワイドバンドギャップ半導体」とは?」)。

SoC、SiP、チップレットの違いは?

SoCが大きくなりすぎたり、高くなりすぎたり、入れられないものがあったりするときは、別の方向に進みます。全部を1つのチップにつくるのではなく、別々につくったチップを1つにまとめるのです。よく聞くのは次の2つです。

  • SiP(システム・イン・パッケージ):チップと、抵抗やコンデンサなどの小さな部品を小さな基板に載せ、1つの小さなモジュールに封止したもの(「SiPとは?」)。
  • チップレット:1つの大きなチップをいくつかに分け、それぞれつくってテストしてから、横に並べたり積み重ねたりして密につなぎ、1つの大きなチップのように働かせるもの。つなぎ合わせるのが、ニュースで言う先端パッケージです(「ニュースの「先端パッケージ」とは?」)。
SoC(システム・オン・チップ)SiP(システム・イン・パッケージ)チップレット
ひとことですべての機能を1つのチップにチップと小さな部品を1つの小さなモジュールに大きなチップをいくつかに分けて、まとめ直す
それぞれのつくり方全部同じプロセスチップごとに、いちばん合ったつくり方にできる部分ごとに違う世代を使える
部品どうしの道いちばん短い。チップの中チップの中より長く、基板の上より短いチップの中より少し長いが、短くて配線が多い
1つが不良ならチップ全体が使えないことが多いモジュール全体が使えない。だから先に1個ずつテストする先に全部テストし、良品だけを組み合わせる
よく使われる場所スマートフォン、タブレット、腕時計のメインのチップイヤホン、腕時計、補聴器のような小さなものAIチップのようなとても大きなチップ

3つは、どれか1つを選ぶものではありません。多くのSiPの中にはSoCが1個入っていて、まわりに必要な小さな部品が並んでいます。チップレットは、もともと1個でつくるはずだった大きなチップを、分けてつくったものであることが多いです。

SoCが入っているのは?

いちばん多いのは、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチです。家庭用のルーターのような小さな機械でも、主な仕事を1個のSoCがしていることがよくあります。共通点は、小さく、電気が少なくてすみ、それでいて機能が多いことです。

fab24hrでは

fab24hrのメインストーリー「チップの一生」は、架空の補聴器用チップ「Glowmere」を追いかけます。開発ラインで試作し、量産工場でウェーハに仕上げ、後工程工場へ進みます。ゲームでは、GlowmereがSoCかどうかも、中がどんな区画に分かれているかも語られません。第11章「ボールが浮いた」では、ラインリーダーのシューフイが組立ラインを案内しながら教えてくれます。「Glowmereが入るのはSiPモジュール。小さな基板に、チップと、抵抗やコンデンサがいくつか載ってる。」

「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「後工程工場」を押し、左右にスワイプして組立プロセスエンジニアにします。4つのシフトのどれになるかは端末の時刻で決まり、どれもこの組立ラインです。昼シフトが第11章です。

ゲームに出てくる会社、チップ、人物は架空です。SoCとは何か、なぜこうつくるのかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかゲームにSoCは出てきません。メインストーリー「チップの一生」第11章「ボールが浮いた」で、シューフイが、補聴器用のチップ「Glowmere」はSiPモジュールに入ると教えてくれます。小さな基板に、チップと、抵抗やコンデンサがいくつか載ったものです。小さなシステムを小さくする、もう1つの方法です。

fab24hrのメインストーリー「チップの一生」では、補聴器用のチップが開発ラインから使う人の手元まで旅をします。第11章では、いくつかの抵抗やコンデンサといっしょに、爪より小さなモジュールに収まります。

出勤して、補聴器用のチップの旅を最後まで見る

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

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