12インチ、8インチのウェーハとは? ウェーハはなぜ大きくなってきたのか
「12インチウェーハ」「8インチ工場」の数字は、ウェーハの直径のことです。12インチウェーハは直径300mm(30センチ)、8インチウェーハは直径200mm(20センチ)。ウェーハはチップをつくるための丸くて薄いシリコンの板で、チップはその上に並べて一度につくり、最後に切り分けます(半導体チップとは?)。ニュースの「12インチ工場」は、12インチのウェーハでチップをつくる工場のこと。ミリで「300mmウェーハ」と呼ぶことも多く、どちらも同じものです。
「インチ」は本当のインチ? なぜ300mmが12インチなのか
インチではありますが、おおよそです。1インチは25.4mmなので、ちょうど12インチなら304.8mm。300mmをインチに直すと、実は11.8インチです。8インチも同じで、200mmはおよそ7.9インチです。
ウェーハの規格はミリで決まっています。業界の公開された規格には直径300mm、200mmと書かれ、厚さまで決められていて、ウェーハをつくる側も装置をつくる側もそれに合わせています。ごく初期のウェーハは本当にインチで決められていて、2インチ、3インチといったサイズでした。100mmのころからミリで決めるようになりましたが、呼び方は習慣のまま、いちばん近い整数のインチが使われ続けています。つまり「12インチ」は名前で、測るとちょうど12インチになるわけではありません。
ウェーハのサイズは、どう大きくなってきた?
ウェーハは最初からこんなに大きかったわけではありません。おおまかには次のとおりです。
- 4インチ(100mm)以前:もっと前の時代に、1世代ずつ大きくなってきました。
- 6インチ(150mm):1980年代。
- 8インチ(200mm):1990年代初めから量産に使われ始めました。
- 12インチ(300mm):2000年前後から。いま新しくできる先端のラインの多くはこのサイズです。
6インチから12インチまでは、およそ10年ごとに1世代。そのたびに、工場の装置も、ウェーハを入れるケースも、運び方も変えなければなりません。12インチになると満杯のケースは7〜9キロになり、運ぶのは天井のレールを走るOHTに変わりました(ウェーハは工場の中をどう移動する?)。
12インチは8インチよりどれだけ大きい? チップは何個多く取れる?
直径は1.5倍(300÷200)。でもチップは面いっぱいに並ぶので、面積は1.5を2回かけます。1.5×1.5=2.25倍です。12インチウェーハの片面はおよそ707平方センチで、A4の紙1枚より少し大きいくらい。8インチはおよそ314平方センチで、A4の半分ほどです。
並べられるチップの数は、2.25倍よりさらに少し多くなります。丸い板に四角いチップを並べると、縁に入りきらず、むだになる部分が出ます。ウェーハが大きいほど、そのむだの割合は小さくなります(「ウェーハはなぜ丸いのか」で書きました)。大学の授業でよく使われる大まかな式で、1センチ角、だいたい爪くらいの大きさのチップを計算すると、こうなります。
| ウェーハ | 直径 | 面積 | 並べられる数 |
|---|---|---|---|
| 8インチ | 200mm | 約314平方センチ | 約270個 |
| 12インチ | 300mm | 約707平方センチ | 約640個 |
640÷270で、およそ2.4倍。これは「何個並べられるか」で、「良品が何個か」ではありません。できたうち良品が何割かは歩留まりといいます(ニュースの「歩留まり」とは?)。
これだけ差があるので、生産能力を数えるときは「8インチ(200mm)換算」のように1つのサイズにそろえることが多く、12インチ1枚は2枚と少しに数えます(ウェーハ投入とは?)。
ウェーハはなぜ大きくなってきたのか
クッキーを焼くところを想像してください。オーブンで一度に焼けるのは天板1枚分。天板を大きくすれば一度に何枚も多く焼けますが、焼く時間やオーブンを見ている人は、それほど増えません。
半導体工場も同じです。多くの工程はウェーハを1枚ずつ、または1バッチずつ処理するので、ウェーハが大きくなれば、1回の処理でできるチップが増えます。一方で、装置、建物、人、電気や水は2.25倍にはなりません。チップ1個あたりに割り振ると、コストが下がる可能性があります。
「可能性」と言うのは、大きいほうが高くもつくからです。12インチの装置もウェーハも工場も高く、装置をいつも動かしておけるほどたくさんつくって、やっと元が取れます。だから、スマートフォンやパソコンのプロセッサやメモリのように数がとても多いチップは、主に12インチの工場でつくられています。
では、なぜずっと大きくならなかったのか
もう1つ上のサイズも開発されました。2010年代に共同研究の計画があり、ウェーハを450mm、いわゆる18インチまで大きくしようとして、試験用のウェーハや一部の装置もつくられました。しかし数年のうちに開発は棚上げになり、量産はいまも12インチです。よく挙げられる理由はいくつかあります。
- すべての種類の装置をつくり直す必要がある:露光、エッチング、成膜、洗浄、測定、搬送。どれも設計し直し、評価し直す必要があり、開発費が莫大です。
- みんなで一緒に切り替えないと意味がない:ウェーハをつくる側、装置をつくる側、半導体工場がそろって切り替えて、初めて得をします。いまの12インチ工場をそのまま改造するのも難しいのです。
- 得られるものが思ったほど大きくない:もともと小さな区画ごとに進める工程もあります。露光装置は一度に小さな1区画しか焼き付けないので(フォトリソグラフィとは?)、ウェーハが大きくなっても焼き付ける区画が増えるだけで、ここはほとんど得になりません。
- 大きいほどつくるのも難しい:大きいウェーハは重く、自分の重さを支えるために厚くする必要があります。ウェーハを切り出すシリコンの結晶も太く育てなければならず、それも難しくなります。
お金がかかるわりに得られるものがはっきりしないので、業界は12インチにとどまっています。
8インチ工場はいま何をつくっている?
8インチの工場はいまもたくさん動いています。つくっているのは、いちばん小さいスイッチを必要としないチップです。
- 電源管理:電池やコンセントの電気を、各部分が使う電圧に変えます。
- パワーデバイス:大きな電流や高い電圧を扱うスイッチで、車やモーターに使われます。
- アナログチップ:音、温度、明るさのように、なめらかに変わる信号を扱います。
- センサー、MEMS:MEMSはシリコンの上につくる小さな動く構造で、たとえばスマートフォンの向きが変わったのを感じ取るセンサーです。
こうしたチップは、何世代も前のつくり方で十分うまくつくれます。何年も使ってきた装置はとっくに元が取れていて、安定して安くつくれます(ニュースの「成熟プロセス」とは?)。まるごと12インチに切り替えても、割に合うとは限りません。
ウェーハの多くはシリコンですが(なぜシリコンなのかは「半導体とは?」で)、そうでないものもあります。パワー半導体に使う炭化ケイ素(SiC)は、シリコンよりずっと結晶を育てにくく、よく使われるウェーハはいまも6インチで、8インチへ移りつつあります(ニュースの「ワイドバンドギャップ半導体」とは?)。
ウェーハの厚さは?
1ミリもありません。業界の規格では、12インチウェーハがおよそ0.775mm(775マイクロメートル)、8インチがおよそ0.725mmで、クレジットカード(0.76mm)とほぼ同じです。
大きいウェーハほど厚いのは、自分を支えなければならないからです。運ぶとき、加熱するとき、高速で回すとき、薄すぎると反ったり割れたりしやすくなります。シリコンの密度から重さを計算すると、12インチ1枚はおよそ130グラム、8インチはおよそ50グラムです。
チップができたあと、後工程の工場でパッケージに入れる前に、ウェーハは裏面から削って薄くされます(パッケージングとは?)。だからスマートフォンの中のチップは、もとのウェーハよりずっと薄くなっています。
fab24hrでは
用語カード「ウェーハ」には、この工場は直径30cm(12インチ)のウェーハを使い、1ケースに25枚入ると書いてあります。特急ロットH-2417の説明カードにも、25枚をぴったり閉まるケースに入れ、そのケースをFOUPという、とあります。量産工場でエッチング装置ETCH-03をタップして「分解して見る」を押すと、チャンバーの中のウェーハに直径300mmとあります。後工程工場でダイシング装置をタップすると、説明カードには、ウェーハをまず裏面から削って薄くし、スクライブラインに沿って切る(ダイシング)と書いてあります。
ゲームに8インチの工場は出てきません。工場が何ナノメートルかも言っていません。会社、人物、ロット番号、装置番号は架空で、ウェーハのサイズ、厚さ、大きくなってきた理由は、公開されている一般的な資料と業界の規格をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うか用語カード「ウェーハ」には、この工場は直径30cm(12インチ)のウェーハを使い、1ケースに25枚入ると書いてあります。量産工場でエッチング装置ETCH-03をタップして「分解して見る」を押すと、チャンバーの中のウェーハにも直径300mmとあります。
fab24hrで一日じゅう見守るのは、25枚入りの12インチウェーハのケースです。
出勤して、12インチウェーハのケースを見に行く先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
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