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工場の中約8分

半導体工場はなぜ大量の電力を使うのか

半導体工場がたくさん電気を使うのは、2つの大きなかたまりが、ずっと電気を使い続けているからです。ひとつはチップをつくる製造装置。ガスをプラズマにし、ウェーハを加熱し、チャンバーを真空に引きます。もうひとつは、工場全体を生かしておくファシリティのシステムです。クリーンルームの空調と送風、冷水をつくる冷凍機、超純水、冷却水、排ガスの処理。公開されているいくつかの研究は、年も計算のしかたも違いますが、おおよその規模は同じです。製造装置が工場の電力のおよそ4〜5割を使い、残りの多くがファシリティで、その中でいちばん大きいのは空調と冷水づくりであることが多い。しかも、どれも一年中止めません。

工場の電気は、どこで使われている?

電気を使うところしていること
製造装置プラズマ、加熱、真空ポンプ、露光の光源
クリーンルームの空調と送風ろ過した空気を休まず上から下へ流し、温度と湿度を一定に保つ
冷凍機冷水をつくり、空調と装置を冷やす
ほかのファシリティ超純水、冷却水、排気、排ガス処理、圧縮空気

それぞれのシステムが何をしているかは「半導体工場のファシリティエンジニアは何をしている?」、超純水は「超純水はどれくらい純粋?」、工場にほかに何があるかは「ファブとは?」へ。ここでは、なぜ電気を食うのかだけを見ます。

クリーンルームの空調は、なぜそんなに電気を使う?

家のエアコンは、部屋を涼しくすれば十分です。クリーンルームの空調は、4つのことを同時にこなします。

  1. 風を止めない:天井からろ過した空気を吹き下ろし、穴のあいた床から戻して、もう一度ろ過します。いちばんきれいな場所では、部屋じゅうの空気が1時間に100回以上入れかわります(「クリーンルームはどれくらいきれい?」)。ファンは24時間回っています。
  2. 温度と湿度を一定に:リソグラフィのように、温度と湿度に敏感な工程があります。外は暑かったり寒かったり、乾いていたり湿っていたりしても、中はずっと同じでなければなりません。
  3. 新しい空気を補い続ける:装置の排気が空気をずっと吸い出していて、しかも室内の気圧は外より少し高く保つ必要があります。足りなくなった分は外から取り入れ、そのすべてをろ過し、天気に合わせて冷やして除湿したり、温めて加湿したりします。
  4. 装置の熱を運び出す:装置が使った電気は、最後にはほとんど熱になります。その熱は空調と冷却水で運び出し、冷水をつくる冷凍機もまた電気を使います。つまり装置が電気を使うたびに、その熱を運び出すための電気も余分にかかります。

アメリカの国立研究所の調査では、クリーンルームや実験室のある建物は、同じ床面積で比べると、ふつうの商業ビルの数倍から100倍のエネルギーを使うことがあります。

製造装置の電気は、何に使われる?

  • プラズマ:エッチングや成膜の多くの工程では、高周波の電力でガスをプラズマにします(「エッチングとは?」)。1台の装置にチャンバーがいくつもあることもよくあります。
  • 加熱:拡散炉は、たくさんのウェーハをまとめて高い温度まで加熱します(「拡散炉では何をしている?」)。
  • 真空ポンプ:多くの工程は真空の中で行います。真空に引くポンプはたいてい下の階のサブファブにあって、ずっと回っています。その横で排ガスを燃やしたり分解したりする排ガス処理も、エネルギーを使います。
  • 露光:最先端の露光装置が使う光はつくるのがとても難しく、大きな力をかけても、使える光になるのはごく一部です(「極端紫外線(EUV)とは?」)。

先端のプロセスほど電気を使うのはなぜ?

新しい世代のチップは、スイッチ1個あたりの電気が少なくてすみます(「ニュースの「2ナノ」、いったい何が2ナノなのか?」)。でも、それをつくるのには、より多くの電気がかかります。

  • 工程が増える:線が細く、層が多くなるほど、1つの層を何回にも分けて露光し、何回にも分けてエッチングすることが多くなり、その前後の洗浄や測定も増えます。工程がひとつ増えるたびに装置の時間が増え、空調やポンプもそのぶん長く動きます。
  • 電気を多く使う装置もある:たとえば最先端の露光装置です。ただし、何回かの露光を1回にまとめられるので、前後の工程も減り、その工程で使うはずだった電気も減ります。

研究機関の分析でも大学の分析でも、同じ面積のチップをつくるのに使う電気は、世代が新しくなるたびに増えています。

止めて節電すればいいのでは?

大きな理由は「半導体工場はなぜ24時間止まらないのか」のとおりです。装置は高価で、ウェーハは何か月もかけて流れ、止めるとなかなか再開できません。電気の面では、さらに2つあります。

  • 空調を止めると、クリーンルームはクリーンルームでなくなる:パーティクル、温湿度、差圧がみな崩れます。立ち上げ直して確認し直さないと、ウェーハを入れられません。
  • 待っている装置も電気を使う:真空は保ち続けなければならず、拡散炉はやや温めた状態にしておくことが多い。有毒ガスの排気は、一瞬も止められません(「半導体工場ではどんなガスを使う?」)。

停電や電圧の落ち込みは、なぜ深刻?

外から来る電気の電圧が、たいていは1秒に満たないあいだだけ急に下がること。これを瞬時電圧低下といいます。家なら照明がちらついて終わりですが、工場では装置が止まることがあります。装置の中の小さな部品ひとつ、たとえばある制御回路が持ちこたえられないだけで、装置ごと止まってしまうのです。

止まると、3つの代償があります。

  1. 中のウェーハ:工程の途中で止まったウェーハは、測ってみるまで使えるかどうかわかりません。スクラップになるものもあります。
  2. 立ち上げ直し:装置を立ち上げ直し、テストランでできばえを確かめてからでないと復旧できません。軽ければ数時間、重ければもっとかかります。
  3. 下の階も戻す:ポンプ、排気、排ガス処理、冷却水もいっしょに止まることがあります。それが戻らないうちは、装置を立ち上げても処理できず、また止まることもあります。

だから業界は、短い瞬時電圧低下なら装置が持ちこたえるよう求める規格をつくりました。大事な設備には、無停電電源装置や発電機をつなぐこともよくあります。本当に停電したときは、安全がいちばん先です。有毒・可燃性ガスの供給は自動で閉じ、非常用電源が照明、消防設備、有毒ガスの排気とガス検知を支え、点検が終わってからガスの供給を再開します。

工場はどうやって省エネする?

  • 熱を回収する:工場から運び出した熱は、捨てるとは限りません。外気は除湿したあとに温め直すことが多く、そこに回収した熱を使えば、ボイラーや電気ヒーターをあまり使わずにすみます。外へ出ていく空気と入ってくる空気のあいだで、熱を受け渡すこともできます。
  • 風は必要な分だけ:ファンの電力は風量に比例しません。風量を1割減らすと、ファンの電力は2割から3割近く減らせます。ファンやポンプにはインバーターをつけて回転数を調整することも多く、いつも全速で回す必要はありません。
  • いちばんきれいな場所を小さくする:ウェーハは密閉されたFOUPに入って運ばれ、装置の入口で初めて開きます。いちばん厳しい清浄度は、その小さな空間だけに残します(「ウェーハは工場の中をどう移動する?」)。部屋全体にそこまで強い風を流さなくてよくなり、電気がかなり減ります。
  • 冷水を2つの温度に分ける:どこでもいちばん冷たい水が要るわけではありません。必要なところだけとても冷たい水を使い、ほかは少しぬるめの水にすれば、冷凍機の負担が軽くなります。
  • 待っている装置はいっしょに休む:業界の規格で、装置の省エネ待機の状態が決められています。処理していないあいだは、下の階のポンプや排ガス処理にも伝えて動きをゆるめ、ウェーハが来るときに通常に戻します。

fab24hrでは

「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてファシリティエンジニアを選びます。深夜シフト「当直」では、中央監視室で壁一面を見ます。電力、冷却水、クリーンルーム温湿度がそれぞれ1マスで、「電力」を押すと、外から来る電気は安定していて、一度も落ちていないと書かれています。朝・昼・夜シフトでは、ランダムイベント「瞬時電圧低下」に出会うことがあります。照明が1秒もないあいだちらつき、中央監視室から、装置3台とポンプ1台が止まったと連絡が来ます。排気・排ガス処理・冷却水・ポンプが戻ったのを確かめてから各エリアに復旧してもらうか、各エリアに先に復旧してもらうかを決めます。エッチングのプロセスエンジニアでも、同じできごとに装置の側から出会うことがあります。ゲームに出てくる工場、人物、装置番号は架空のもので、この工場がどれだけ電気を使うかも書いていません。工場の電気がどこで使われ、なぜ止められないのかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかファシリティエンジニア(量産工場)を遊ぶと、深夜シフトは中央監視室で壁一面を見ます。電力、冷却水、クリーンルーム温湿度がそれぞれ1マス。朝・昼・夜シフトでは、ランダムイベント「瞬時電圧低下」に出会うことがあり、照明がちらついて装置3台とポンプ1台が止まります。

fab24hrでは、ファシリティの中央監視室には24時間誰かがいて、電力も冷却水もクリーンルームの温湿度も、壁のマスのひとつです。

ファシリティエンジニアで遊び、中央監視室で工場の電気と水を見守る

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

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