エッチングとは? ドライエッチングとウェットエッチングは何が違う?
エッチングとは、リソグラフィでレジストに焼き付けたパターンどおりに、ウェーハの上のレジストで覆われていない層を削り取る工程です。レジストは、ウェーハに貼った型紙のようなものです。覆われたところは残り、むき出しのところが削られます。削ったあとレジストを取り除くと、回路のパターンが本当にウェーハに刻まれます。
エッチングとリソグラフィの関係は?
リソグラフィが「焼き付け」、エッチングが「削る」担当です。リソグラフィがパターンをレジストに焼き付けた時点では、下の材料はまだまったく削れていません。焼き付けのしくみは「フォトリソグラフィとは?」に書きました。そのあとエッチングが、むき出しの材料を実際に取り除きます。
チップは1層ずつ積み上げてつくります。多くの層で「材料の層をつける → リソグラフィでパターンを焼く → エッチングで削る」をくり返すので、1枚のウェーハは完成までに何度もエッチング装置を通ります。
ウェットエッチングとは?
ウェットエッチングは、薬液に浸す方法です。ある材料を溶かす薬液にウェーハを浸すか吹き付けると、むき出しの層が少しずつ溶けていきます。たとえばフッ酸は、ガラスの主な成分である二酸化ケイ素を溶かします。
利点はシンプルなことです。装置が複雑でなく、速く削れて、ひとつの薬液槽で何枚もまとめて処理できます。薬液はたいてい「選り好み」もはっきりしていて、溶かしたい層だけを溶かします。
問題は方向です。たいていの薬液には向きがなく、下に溶かしながら横にも溶かし、レジストのふちの下にもぐり込んでいきます。下に削った深さと同じくらい横にも削れ、ふちはスプーンですくったお椀のように丸くなります。
なぜ細かいパターンにはウェットエッチングを使えないの?
層の厚さと同じくらいの幅の線を削るところを想像してください。ウェットエッチングで層を下まで削り抜くころには、線の両側も層の厚さぶんくらいずつ削られています。線は大半がなくなるか、まるごと消えてしまいます。
パターンが大きければ、ふちが少し削れても困りません。大学の講義資料には、ウェットエッチングが向くのはおよそ数マイクロメートル以上のパターン、とあります(膜の厚さにもよります)。いまのチップでいちばん細い線は数十ナノメートルかそれ以下で、それより数十倍以上も細いのです。そこで細かいパターンはたいていドライエッチングにまかせ、ウェットエッチングは主に、層をまるごと取り除く、表面を洗うといった、パターンに沿って削らなくてよいところで使われます。
ドライエッチングとは? プラズマとは?
ドライエッチングは薬液ではなく、ガスを使います。ウェーハを、真空近くまで引いた密閉空間に入れます。これがチャンバーです。決まったガスを流し込み、高周波の電気でガスをプラズマにします。
プラズマは、ガスが電気で「ばらばら」になった状態です。原子から電子が引きはがされ、電気を帯びた粒子のかたまりと、ほかのものとすぐ反応したがるとても活発なかけらがたくさんできます。ネオンサインの中で光っているのもプラズマで、エッチング装置のチャンバーの中も光ります。
プラズマは2つの力で同時に削ります。
- 化学反応:活発なかけらが表面の材料と反応してガスになり、吸い出されます。
- 衝突:電気を帯びた粒子が電界で下へ引っ張られ、ウェーハにまっすぐぶつかって表面をはがします。真空の中でするサンドブラストのようなものです。
粒子は真上から飛んでくるので、穴の底はずっと当たり続け、側壁にはほとんど当たりません。だからドライエッチングは主に下へ進み、まっすぐで深い壁を削れます。その代わり装置はずっと複雑で、管理する条件も多くなります。
| くらべると | ウェットエッチング | ドライエッチング |
|---|---|---|
| 何で削る | 薬液 | プラズマ |
| どの向きに削れる | 四方八方 | 主に真下 |
| 削ったふち | 丸い、お椀の形 | まっすぐ |
| 主な使いみち | 大きなパターン、層をまるごと除去、洗浄 | 細かいパターン |
どこまで細く、まっすぐ、どこで止める?
エッチングで気にするのは、だいたい3つです。削った線幅がリソグラフィで焼いたとおりになっていること。側壁がまっすぐで、下がえぐれていないこと。この層を削り抜きつつ、下の層を傷めないこと。
削り抜けたことを、装置はどうやって知るのでしょう。多くの装置は、削りながらプラズマの光を見ています。削られている材料がはじき出されてプラズマに混ざると、ある決まった色の光が強くなります。この層がなくなって下の材料が出てくると、その色は弱くなります。この変わり目が見えたら、削り終わったとわかります。これを終点検出といいます。
ただ、この時点ではまだ全部の場所が削り抜けているわけではありません。1枚のウェーハの中でも、膜の厚さはどこも同じではなく、削れる速さもどこも同じではないからです。そこで、すべての穴が底まで届くように、もう少しだけ削り続けます。これがオーバーエッチです。長すぎると下の層を傷め、短すぎると開かない穴が残ります。穴が細く深いほど、加減は難しくなります。
選択比とは?
消しゴムで鉛筆の字を消すところを思い浮かべてください。字はすぐ消えるのに、紙はほとんど薄くなりません。エッチングも同じで、削りたい層は速く、残したいものはゆっくり削れてほしいのです。2つの材料が削れる速さの比を、選択比といいます。
選択比が高ければ、オーバーエッチのあいだも下の層はほんの少ししか削れません。低いと、数秒よけいに削っただけで下の層まで抜けてしまいます。レジスト自体も削られるので、選択比が足りないと、エッチングが終わる前にレジストがなくなってしまいます。一般に、化学反応で削るほうが材料の選り好みがはっきりしていて、衝突だけで削るほうはあまり選びません。ドライエッチングは2つの力を組み合わせて、「まっすぐ」と「選り好み」を両方手に入れようとしているのです。
失敗したら、やり直せる?
ほとんど無理です。リソグラフィなら、エッチングに進む前であればレジストをはがして焼き直せます。これがリワークです。でも、エッチングで取り除いた材料は戻せません。削り足りなかったときは追加で削れることもありますが、削りすぎて下の層を傷めたら元に戻らず、ひどければスクラップです。
なぜエッチング装置は毎日見ていないといけないの?
チャンバーの中の状態が少しずつずれていくからです。1枚削るたびに、削った材料の一部がチャンバーの内壁につき、だんだん層になります。この層がプラズマの中の成分を吸ったり出したりするので、削れる速さも変わっていきます。同じレシピ(装置が従う設定)でも、今月と来月で削れ方が違うことがあります。そこで、決まった手順で面倒を見ます。
- 定期的なPM(保守):チャンバーを開けてきれいにし、すり減った部品を替えます。
- 掃除した直後は壁がきれいすぎて、最初の何枚かはいつもと違う削れ方をします。そこで、お客さまの製品ではないウェーハを何枚か流して、内壁を安定した状態に戻します。これがシーズニングです。
- 次にテストウェーハを流して、削れる速さと、増えたパーティクルの数を測ります。どちらも規格内なら生産に戻します。これがテストランです。
- ふだんも削ったあとの線幅を測って管理図に記録し、少しずつ片側に寄っていないかを見ます。
装置に何かあるとランプがつきます。ランプの見方は「装置の赤・黄・緑のランプは何を意味するのか」へ。できたものを見る人と装置を見る人の分担は「プロセスエンジニアと装置エンジニアはどう違う?」へ。
fab24hrでは
fab24hrでは、エッチングは主役のひとつです。「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてプロセスエンジニアで止め、名前の下の「エッチング」を押すと、エッチングのプロセスエンジニアになります。深夜シフトでは02:47に電話が鳴ります。ETCH-03のチャンバーAがアラームを出し、1枚のウェーハがエッチングの途中で中に残っています。朝シフトでは、開けたチャンバーにシーズニング用のウェーハを何枚流すか、真空引きとベーキングをどれだけ続けるかを決め、エッチングレートとパーティクルを両方とも規格内に戻します。昼シフトでは、その1枚の残りを追加エッチングで仕上げますが、手動投入の画面を開くと全部のウェーハが選ばれています。あなたが押し間違えなければ、つまずくのは隣のETCH-05の新人です。夜シフトでは、ETCH-03のヘリウム流量が少しずつ上がり、黄ランプがつきます。
「チップの一生」の第6〜9章が、このプロセスエンジニアの一日です。第5章「最後の空欄」は開発ラインで、エッチングの開発プロセスエンジニアが、量産工場に引き渡す前にヘリウム流量のアラーム上限を決めます。ゲームに出てくる会社・人物・装置番号・数字は架空です。エッチングのしくみと、なぜ毎日見るのかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかエッチングのプロセスエンジニア(量産工場 › プロセス › エッチング)を遊ぶと、02:47に電話が鳴ります。ETCH-03が止まり、1枚のウェーハがエッチングの途中でチャンバーに残っています。「チップの一生」の第6〜9章がこの一日です。第5章「最後の空欄」は開発ラインで、エッチングの開発プロセスエンジニアになります。
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