プラズマとは? 半導体工場がエッチングにプラズマを使う理由
プラズマとは、電気のエネルギーでガスが「ばらばら」になった状態です。分子の一部は電気を帯びたイオンと電子に分かれ、さらに多くが、ほかのものとすぐ反応したがるとても活発なかけらになり、まだ分かれていないガスと混ざっています。半導体工場では、低い圧力まで引いたチャンバーにガスを入れ、高周波の電気をかけてプラズマをつくります。エッチングにプラズマを使うのは、2つの仕事を同時にこなすからです。かけらが化学反応を受け持ち、電気を帯びたイオンは電界で下に引っぱられて真下にぶつかります。だから下へだけ削れ、細くまっすぐな溝が掘れます。
ドライエッチングとウェットエッチングの違いは「エッチングとは? ドライエッチングとウェットエッチングは何が違う?」で説明しました。この記事はもう一段深く、プラズマとは何か、エッチング装置の中で一歩ずつ何をしているのかを見ていきます。
プラズマとは? 身近なところにもある?
氷を温めると水になり、水を温めると水蒸気になります。気体にさらにエネルギーを与えると、分子の一部はかけらに分かれ、一部は電子を引きはがされてプラスの電気を帯びた「イオン」になります。これがプラズマで、よく物質の「第4の状態」と呼ばれます。点灯しているネオンサインや蛍光灯の管の中のガス、雷やオーロラもプラズマです。ガスの種類が違えば、光の色も変わります。
工場で使うプラズマでは、実際にイオンになるのはごく一部で、1%に届かないことがよくあります。電子はとても速く動いていて、温度に直すと数万度になります。けれど電子はとても軽いので、ガスそのものは熱くありません。だからウェーハを高温にしなくても、反応が進みます。
工場ではどうやってプラズマをつくる?
- 低い圧力のチャンバー:大気圧のおよそ1万分の1から10万分の1、あるいはそれより低くまで引きます。ガスが薄いと、電子は次の分子にぶつかるまでに加速する距離があるので、分子をばらばらにできるだけのエネルギーをためやすくなります。
- ガス:削る材料に合わせて選びます。フッ素や塩素を含むガスがよく使われます。
- 高周波の電気:電気の向きが1秒に1千万回以上行ったり来たりし(13.56 MHzがよく使われます)、ガスにエネルギーを送り込みます。
エッチング装置の多くは電源を2つ持っています。上の電源はプラズマをつけて、その濃さを決めます。ウェーハの下の電源は、イオンがどれだけ強くぶつかるかを決めます。
なぜエッチングにプラズマを使う?
- かけらが化学反応をする:教科書では「ラジカル」と呼ばれます。むき出しの材料と反応してガスに変え、ポンプで運び出します。
- イオンが真下にぶつかる:電子は軽くて速いので先にウェーハに届き、表面をマイナスに帯電させます。すると、プラスの電気を帯びたイオンが引き寄せられます。ウェーハのすぐ上のごく薄い層では電界がウェーハへまっすぐ向いていて、イオンはほぼ垂直に降ってきます。
よく知られた実験では、イオンだけ、あるいは反応しやすいガスだけでシリコンを削るとどちらも遅く、両方を同時に当てると、それぞれ単独のときより何倍も速くなりました。イオンは真下にしか当たらないので、穴の底は削れ続け、側壁はほとんど変わりません。
側壁はなぜ削られない?
かけらには向きがないので、本来は側壁にも入り込みます。そこで多くのエッチングでは、ガスに「膜をつくる」成分を混ぜ、表面に薄い保護膜をつけます。穴の底ではイオンが膜をはがし続けるので、下へ削れ続けます。側壁にはイオンがほとんど当たらないので膜が残り、かけらを防ぎます。膜が少なすぎると側壁が削られ、多すぎると穴がだんだん細くなります。たとえば炭素とフッ素を含むガスなら、酸素を少し増やすと保護膜は取れやすくなります。ガスの割合は、こうやって調整します。
1枚のウェーハは、エッチング装置の中をどう進む?
ステップ1:チャンバーに入れ、吸着し、裏面にヘリウムを流す
- 何をする:ロボットアームがウェーハをチャンバーに運び、静電チャックの上に置いて平らに吸着します。ウェーハの裏とチャックのあいだの細いすき間に、ヘリウムを流します(He背圧)。
- なぜ:真空の中では吸引で吸い付けられないので、静電気で吸着します。真空はほとんど熱を伝えません(魔法瓶と同じです)。だからプラズマから来る熱は、ヘリウムを通して下の冷やされた台へ逃がします。
- しないと:削るうちにウェーハが熱くなり、削った形や線幅がずれます。
ステップ2:扉を閉めて、真空引き
- 何をする:扉を閉め、チャンバーをさらに低い圧力まで引きます。
- なぜ:中には、これから流すガスだけを残したいからです。
- しないと:よけいなガスや水分が反応に混ざり、結果が設定どおりになりません。
ステップ3:ガスを流し、圧力を安定させる
- 何をする:レシピ(装置が従う設定)どおりに数種類のガスを流します。流す量はsccmで数え、圧力を設定値に保ちます。
- なぜ:ガスと圧力で、何を削るか、どれだけまっすぐ削れるかが決まります(下の表)。
- しないと:流量や圧力がふらつくと、1枚ごとに仕上がりが変わります。
ステップ4:プラズマをつける
- 何をする:上の電源を入れると、チャンバーの中に光のかたまりが現れます。続いてウェーハの下の電源を入れ、イオンを下へ引っぱります。
- なぜ:一方がプラズマの濃さを、もう一方がイオンのぶつかる強さを受け持ち、分けておくと別々に正確に調整できます。
- しないと:電源が1つだけだと、2つがいっしょに動いてしまい、両方をちょうどよくするのが難しくなります。
ステップ5:削る
- 何をする:かけらとイオンが、むき出しの材料をガスに変えて運び出し、側壁には保護膜がついていきます。レジストに覆われたところは残ります。
- なぜ:こうしてパターンが、レジストのとおりにまっすぐ下へ写されます。
- しないと:削りすぎると、自分も少しずつ削られているレジストが先になくなり、残すべきところまで削れてしまいます。
ステップ6:終点を見る
- 何をする:装置はチャンバー側面の小さな窓から、プラズマの光を見続けます。この層を削り抜けて下の層が出てくると、光の色や明るさが変わるので、届いたとわかります。そのあと少しだけ余分に削り(オーバーエッチ)、すべての穴が底まで届くようにします。
- なぜ:膜の厚さや削れる速さは1枚ごとに少しずつ違うので、時間だけを見るより、光を見るほうが正確です。
- しないと:止めるのが早すぎると穴が貫通せず、遅すぎると下の層を傷めます。同じ材料の中を決まった深さまで掘るだけのときは光が変わらないので、測っておいた削れる速さから時間を決めることが多いです。
ステップ7:プラズマを止め、ガスを抜いて、取り出す
- 何をする:プラズマを止めてガスを引き切り、チャックが吸着を解き、ウェーハを持ち上げて運び出します。
- なぜ:エッチングで使う特殊ガスには、毒性や腐食性のあるものが少なくありません。引き出した排ガスは排ガス処理を通してから外に出します。
- しないと:ガスを抜き切らないまま扉を開けると、ウェーハを受け渡す空間にガスが流れ込み、次のウェーハや装置の部品に触れます。
圧力、電力、ガスは、それぞれ何を変える?
| 変えるもの | だいたいどうなるか |
|---|---|
| 圧力 | 低くすると、イオンが進路をそらされにくく、まっすぐ削れます。高くすると、化学反応の割合が増え、横にも削れやすくなります |
| 上の電源 | 上げると、プラズマが濃くなり、速く削れます |
| ウェーハの下の電源 | 上げると、イオンが強くぶつかり、まっすぐ速く削れますが、材料を選ばなくなり、レジストも多く減ります |
| ガスの種類と割合 | 何と反応するか、材料をどれだけ選ぶか、側壁の保護膜がどれだけつくかが決まります |
これらの条件はひとまとめに決めて、レシピに書き込みます(「半導体のレシピとは?」)。
パターンの粗い・密で、削れ方が違うのはなぜ?
- 削る部分が広く密集しているところ:そこではかけらが早く使われて足りなくなり、削れるのが遅くなります。
- 細くて深い穴:かけらもイオンも底まで届きにくく、深くなるほど遅くなります。同じウェーハでも、細い穴は太い穴より遅れて底に届くことがよくあります。
だから終点を検出したあとも、オーバーエッチが必要です。
裏面の冷却がうまくいかないと、どうなる?
チャックの表面がすり減ったり、ウェーハの裏にパーティクルがついたりすると、ウェーハがぴったり密着せず、ヘリウムがふちから漏れます。装置が見ているのはヘリウムの流量で、流量が高いほど漏れが多いということです。少し漏れるとウェーハの温度が上がり、線幅が少しずつ片方へずれることがあります。たくさん漏れると装置がアラームを出して止まり、ウェーハがエッチングの途中でチャンバーに残ることもあります。だからヘリウムの流量がじわじわ上がること自体が、だれかが見ておくべき警告です。
プラズマはエッチングだけに使う?
- 膜をつける:プラズマCVD(プラズマを使う化学気相成長)。かけらはもともと反応したがっているので、ウェーハをそれほど熱くしなくても膜がつきます(「成膜とは?」)。
- レジストを取る(アッシング):レジストは主に炭素と水素でできています。酸素をプラズマにするとレジストと反応し、二酸化炭素と水蒸気になって運び出されます。下のシリコンや酸化膜はほとんど影響を受けません。レジストを燃やして灰にするようなもので、灰化とも呼ばれます。
fab24hrでは
「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてプロセスエンジニアで止め、名前の下の「エッチング」を押します。あなたが担当するETCH-03が、プラズマエッチング装置です。タップして「分解して見る」、続けて「動きを見る」を押すと、ウェーハが入ってから出ていくまでが一工程ずつ動きます。エッチングチャンバーを直接開くこともできます。
「チップの一生」の第6章では、02:47にETCH-03のチャンバーAがHe背圧のアラームを出します。第7章「火消し」では、装置で手がかりを探します。ヘリウムの流量は3日前からじわじわ上がり続け、ESCは交換周期の96%まで使われていました。ESCを交換したら、あなたがテストランを行い、シーズニングのウェーハを何枚流すか、真空引きとベーキングをどれだけ続けるかを決めます。開発ラインのエッチングの開発プロセスエンジニアは、朝シフトにETCH-R1が止まる場面に出会います。プラズマの電力がチャンバーに入らず、跳ね返っていたのです。夜シフトは第5章「最後の空欄」で、ヘリウムの流量のアラームの上限を決めます。
ゲームの会社、人物、装置番号、数字は架空のものです。プラズマとは何か、エッチング装置がそれをどう使うかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかエッチングのプロセスエンジニア(量産工場 › プロセス › エッチング)を遊ぶと、あなたが担当するETCH-03がプラズマエッチング装置です。タップして「分解して見る」「動きを見る」を押すと、ウェーハがチャンバーに入る様子や、プラズマがつく様子が見られます。メインストーリー「チップの一生」第7章「火消し」では、ヘリウムの流量とESCから、真夜中に止まった原因を探します。
fab24hrでは、エッチング装置が真夜中に止まった原因が、ウェーハの裏の薄いヘリウムの層に隠れています。
第7章「火消し」から、ETCH-03の裏面でヘリウムが漏れる原因を探す先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「プラズマとは? 半導体工場がエッチングにプラズマを使う理由」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/what-is-plasma/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
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