フォトマスクとは? どうやってつくり、1セットがなぜそんなに高いのか
フォトマスク(単にマスク、またはレチクルとも呼びます)は、露光に使う「原版」です。回路パターンを描いた透明な石英の板で、薄い金属の膜があるところは光を通さず、ないところは光を通します。露光装置はこれに光を通し、レンズでパターンを縮小してウェーハに焼き付けます。チップのどの層のパターンにも少なくとも1枚のマスクが要り、1セットで何十枚にもなることがよくあります。1枚1枚がとても細かく正確でなければならず、欠陥をひとつも残せないので、高くなります。
フォトマスクは何をしている? はんこのようなもの
チップのパターンは、光で「印刷」します。この工程がフォトリソグラフィ、略してリソグラフィです。ウェーハに光に反応するレジストを塗り、フォトマスクを通して光を当てると、光が当たったところのレジストの性質が変わり、洗い流すとパターンが残ります。工程の全体は「フォトリソグラフィとは?」へ。
マスクのパターンは、ふつうチップ上の4倍の大きさで描かれていて、レンズで縮小してから焼き付けます。一度に焼くのは小さな四角ひとつだけで、これを露光ショットと呼びます。1ショット焼いたらウェーハを少し動かして次を焼く。同じはんこで紙1枚を埋めていくようなものです。だからマスクに点がひとつ増えれば、どのショットにも同じ位置に点がひとつ増え、それがロットからロットへと焼き付けられていきます。
フォトマスクはどんな形をしている?
- とても平らな石英の板:多いのは、一辺が約15センチ(6インチ)、厚さ6ミリ少々の正方形です。石英はとても純度の高いガラスで、露光に使う紫外線を通します。
- 光をさえぎる金属の膜:よく使われるのはクロムで、回路の形に描かれています。
- ペリクル:パターンの上に浮かび、パターンをほこりから守ります(ステップ5で説明します)。
最先端の、極端紫外線(EUV)を使う露光装置は例外です。マスクそのものが光を反射する鏡で、その上に光を吸うパターンが描かれています。「極端紫外線(EUV)とは?」へ。
チップ1つに、なぜ何十枚ものマスクが要るのか
チップはビルのように、1層ずつ積み上げてつくります。いちばん下がトランジスタ、つまりスイッチで、その上に金属の配線が何層も重なります。層ごとに形が違うので、どの層にも少なくとも1枚のマスクが要ります。いちばん細かい層は、2〜3回に分けて焼くこともあり、そのたびに別のマスクを使います。だから1セットで何十枚にもなることが多く、進んだプロセスほど多くなります。
フォトマスクはどうやってつくる?
マスクは、マスクショップと呼ばれる専門の工場でつくります。半導体工場が自分で持っているところもあれば、どこからでも注文を受けるところもあります。やり方は、ウェーハのリソグラフィとよく似ています。レジストを塗り、露光し、現像し、エッチングする。違うのは露光のステップです。マスクは最初の原版なので、焼き写すもとになる原版がありません。少しずつ描いていくしかないのです。
ステップ1:設計データを「焼き付けられる」形に直す
- 何をする:チップの設計ができあがって引き渡すことを、テープアウトといいます。いちばん細い層のパターンには、まずコンピュータで補正を加えます。これをOPC(光近接効果補正)といい、線の端に小さな四角を足すなど、わざと狙いとは少し違う形に描きます。補正したデータをマスクショップに渡し、そこで4倍に拡大して、装置が描ける小さな図形に切り分けます。
- なぜ:線が、露光に使う光の波長と同じくらいか、それより細いからです。そのまま焼くと、角は丸くなり、線の端は短くなります。
- しないと:焼き付いた形が設計と合わず、つながるべきところがつながりません。OPCについては「OPC(光近接効果補正)とは?」へ。
ステップ2:電子ビームかレーザーで、少しずつ描く
- 何をする:マスクブランクスを用意します。石英の板にクロムをつけ、その上にレジストを塗ったものです。描画装置は、細く絞った電子ビームをデータどおりに小さな図形ひとつずつ当てていきます。それほど細かくない層は、レーザーで描くこともあります。
- なぜ:電子ビームはとても細く絞れて、いちばん細かいパターンまで描けます。レーザーは速いものの、そこまで細かくは描けません。
- しないと:描いているあいだに装置がわずかでもずれると、描いたパターンの位置がずれます。ウェーハに焼くと、その層が下の層と合いません(「重ね合わせ(オーバーレイ)とは?」へ)。
ステップ3:現像とエッチングで、パターンをクロムに刻む
- 何をする:現像で、描いたところのレジストを溶かし(逆の性質のレジストもあります)、下のクロムを出します。出てきたクロムをエッチングで取り除き、残ったレジストをはがします。
- なぜ:実際に光をさえぎるのはクロムで、レジストは途中で使う型紙にすぎません。
- しないと:クロムが削りきれていないと、光を通すはずのところが遮られたままになります。削りすぎると、線が細くなります。
ステップ4:測定、検査、修正
- 何をする:線の幅と位置を測ります。検査装置が板全体を走査し、同じパターンどうし、または設計データと比べて、余分なもの、足りないもの、汚れを探します。見つかった欠陥は、とても細い電子ビームやイオンビームで、余分なところを取り、足りないところを足して直します。
- なぜ:焼き付くような欠陥がマスクにひとつあると、どのウェーハのどのショットにも焼き付くからです。
- しないと:見逃した点ひとつで、たくさんのチップがまとめてだめになり、歩留まりが下がります。直せないマスクは、つくり直すしかありません。
ステップ5:洗浄して、ペリクルを貼る
- 何をする:最後に洗浄してもう一度検査し、ペリクルを貼ります。枠に張ったとても薄い透明な膜を、パターンの数ミリ上に浮かせるものです。
- なぜ:膜の上に落ちたほこりは、パターンから離れすぎていてピントが合わず、たいてい焼き付きません。
- しないと:パターンの上に直接落ちたほこりは、どのショットにもくっきり焼き付きます。ペリクルのその後の管理は「半導体工場のマスクエンジニアは何をしている?」へ。
ステップ6:ケースに入れて、工場へ出荷する
- 何をする:専用のマスクケースに入れ、検査報告を付けて、半導体工場へ送ります。
- なぜ:運ぶあいだも、さわらず、ほこりを入れず、湿気を避けなければならないからです。
- しないと:途中でペリクルの下に入りこみ、パターンの上に落ちたパーティクルひとつも、同じように焼き付きます(膜の上に落ちたものは、たいてい焼き付きません)。だから工場はマスクを受け取ると、自分たちでもう一度検査します。
電子ビームで描けるなら、なぜウェーハに直接描かないのか
遅すぎるからです。マスクなら、少しずつ描くのは1回だけ。そのあと露光装置は1ショットごとに光を当てるだけなので、何十から百を超えるショットがあるウェーハでもすぐに焼けて、同じマスクでとてもたくさんのウェーハを焼けます。ウェーハを1枚ずつ電子ビームで直接描いていては、量産に追いつきません。だから電子ビームは、おもにマスクづくりや研究、ごく少ない数しかつくらないものに使われています。
マスク1セットは、なぜそんなに高いのか
- とても正確に描かなければならない:パターンは4倍に縮小され、誤差も一緒に小さくなります。でもチップのいちばん細い線は数十ナノメートルしかなく、残ったわずかな誤差でも、線幅や位置が規格から外れることがあります。
- 欠陥をひとつも残せない:板全体をもれなく検査し、修正します。検査だけで、マスクづくりにかかる時間のかなりの部分を占めます。
- 描くのに時間がかかる:補正が多いほど角や辺が増え、描く図形も増えて、たいてい時間も長くなります。描画装置も検査装置も高価で、長く使えばそれだけお金がかかります。
- 1セットに何枚も要り、使い道はひとつだけ:どのマスクも、あるチップのある層のためだけのもので、ほかのチップには使えません。
- 進んだプロセスほど高い:線はさらに細く、補正も枚数も増え、EUVのマスクはさらにつくるのが難しくなります。
そのお金がチップ1個1個にどう割り振られるかは「半導体チップは、なぜこんなに高いのか」へ。テープアウトのあとで設計の誤りに気づくと痛いのも、このためです。マスクのつくり直しには、お金と時間の両方がかかります。
fab24hrでは
ゲームには、マスクをつくる場面は出てきません。マスクショップは電話の中だけに登場します。メインストーリー「チップの一生」のプロローグでは、Glowmereの設計が半導体工場に渡り、1セットのマスクになります。これをテープアウトといいます。第3章「不良の形」では、あなたは開発インテグレーションエンジニアです。あるウェーハマップでは、どの露光ショットでも同じ位置が不良で、問題はマスクについて回っています。そして16時のマスク会議で、次のマスクに自分たちのTEGを2か所残すかどうかを決めます。
マスクの世話をするなら、「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてマスクエンジニア(Beta)で止めます。工場に届いたマスクは、あなたの担当です。朝は、洗浄から戻ったマスクを自分で受け入れ検査します。昼は、ペリクルに傷が1本あり、その層には予備がありません。夜は、どの露光ショットにも同じ位置に同じ点があります。ゲームに出てくる会社、マスクショップ、チップ、人物、マスクの番号、数字は架空です。マスクのつくり方と高い理由は、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかマスクエンジニア(量産工場 › フォトマスク)を遊ぶと、シフトのあいだずっと、マスクショップから届いたマスクを見ています。受け入れ検査、ペリクルの1本の傷、どのショットにも同じ位置にある点。メインストーリー第3章「不良の形」では、開発ラインの16時のマスク会議で、次のマスクについて話し合います。
fab24hrでは、マスクはできあがってからが始まりです。工場に届いた1枚1枚を、露光装置に載せる前に誰かが確かめます。
マスクエンジニアで遊び、装置に載せる前にマスクを確かめる先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「フォトマスクとは? どうやってつくり、1セットがなぜそんなに高いのか」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/what-is-photomask/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
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