プレイする

← fab24hrブログ

チップのつくり方約8分

フォトマスクとは? どうやってつくり、1セットがなぜそんなに高いのか

フォトマスク(単にマスク、またはレチクルとも呼びます)は、露光に使う「原版」です。回路パターンを描いた透明な石英の板で、薄い金属の膜があるところは光を通さず、ないところは光を通します。露光装置はこれに光を通し、レンズでパターンを縮小してウェーハに焼き付けます。チップのどの層のパターンにも少なくとも1枚のマスクが要り、1セットで何十枚にもなることがよくあります。1枚1枚がとても細かく正確でなければならず、欠陥をひとつも残せないので、高くなります。

フォトマスクは何をしている? はんこのようなもの

チップのパターンは、光で「印刷」します。この工程がフォトリソグラフィ、略してリソグラフィです。ウェーハに光に反応するレジストを塗り、フォトマスクを通して光を当てると、光が当たったところのレジストの性質が変わり、洗い流すとパターンが残ります。工程の全体は「フォトリソグラフィとは?」へ。

マスクのパターンは、ふつうチップ上の4倍の大きさで描かれていて、レンズで縮小してから焼き付けます。一度に焼くのは小さな四角ひとつだけで、これを露光ショットと呼びます。1ショット焼いたらウェーハを少し動かして次を焼く。同じはんこで紙1枚を埋めていくようなものです。だからマスクに点がひとつ増えれば、どのショットにも同じ位置に点がひとつ増え、それがロットからロットへと焼き付けられていきます。

リソグラフィの4つのステップ:削りたい層の上にフォトレジストを塗る。フォトマスク越しに光を当てる。現像して、光が当たったレジストを洗い流す。むき出しになった層をエッチングで削り、レジストを取り除く。
ここでは光が当たったレジストが洗い流されるタイプを描いています。反対に、光が当たらなかった部分が洗い流されるタイプもあります。簡略図:実際の露光装置ではマスクとウェーハのあいだにレンズがあり、マスクのパターンは4倍の大きさです。

フォトマスクはどんな形をしている?

  • とても平らな石英の板:多いのは、一辺が約15センチ(6インチ)、厚さ6ミリ少々の正方形です。石英はとても純度の高いガラスで、露光に使う紫外線を通します。
  • 光をさえぎる金属の膜:よく使われるのはクロムで、回路の形に描かれています。
  • ペリクル:パターンの上に浮かび、パターンをほこりから守ります(ステップ5で説明します)。

最先端の、極端紫外線(EUV)を使う露光装置は例外です。マスクそのものが光を反射する鏡で、その上に光を吸うパターンが描かれています。「極端紫外線(EUV)とは?」へ。

チップ1つに、なぜ何十枚ものマスクが要るのか

チップはビルのように、1層ずつ積み上げてつくります。いちばん下がトランジスタ、つまりスイッチで、その上に金属の配線が何層も重なります。層ごとに形が違うので、どの層にも少なくとも1枚のマスクが要ります。いちばん細かい層は、2〜3回に分けて焼くこともあり、そのたびに別のマスクを使います。だから1セットで何十枚にもなることが多く、進んだプロセスほど多くなります。

フォトマスクはどうやってつくる?

マスクは、マスクショップと呼ばれる専門の工場でつくります。半導体工場が自分で持っているところもあれば、どこからでも注文を受けるところもあります。やり方は、ウェーハのリソグラフィとよく似ています。レジストを塗り、露光し、現像し、エッチングする。違うのは露光のステップです。マスクは最初の原版なので、焼き写すもとになる原版がありません。少しずつ描いていくしかないのです。

ステップ1:設計データを「焼き付けられる」形に直す

  • 何をする:チップの設計ができあがって引き渡すことを、テープアウトといいます。いちばん細い層のパターンには、まずコンピュータで補正を加えます。これをOPC(光近接効果補正)といい、線の端に小さな四角を足すなど、わざと狙いとは少し違う形に描きます。補正したデータをマスクショップに渡し、そこで4倍に拡大して、装置が描ける小さな図形に切り分けます。
  • なぜ:線が、露光に使う光の波長と同じくらいか、それより細いからです。そのまま焼くと、角は丸くなり、線の端は短くなります。
  • しないと:焼き付いた形が設計と合わず、つながるべきところがつながりません。OPCについては「OPC(光近接効果補正)とは?」へ。

ステップ2:電子ビームかレーザーで、少しずつ描く

  • 何をする:マスクブランクスを用意します。石英の板にクロムをつけ、その上にレジストを塗ったものです。描画装置は、細く絞った電子ビームをデータどおりに小さな図形ひとつずつ当てていきます。それほど細かくない層は、レーザーで描くこともあります。
  • なぜ:電子ビームはとても細く絞れて、いちばん細かいパターンまで描けます。レーザーは速いものの、そこまで細かくは描けません。
  • しないと:描いているあいだに装置がわずかでもずれると、描いたパターンの位置がずれます。ウェーハに焼くと、その層が下の層と合いません(「重ね合わせ(オーバーレイ)とは?」へ)。

ステップ3:現像とエッチングで、パターンをクロムに刻む

  • 何をする:現像で、描いたところのレジストを溶かし(逆の性質のレジストもあります)、下のクロムを出します。出てきたクロムをエッチングで取り除き、残ったレジストをはがします。
  • なぜ:実際に光をさえぎるのはクロムで、レジストは途中で使う型紙にすぎません。
  • しないと:クロムが削りきれていないと、光を通すはずのところが遮られたままになります。削りすぎると、線が細くなります。

ステップ4:測定、検査、修正

  • 何をする:線の幅と位置を測ります。検査装置が板全体を走査し、同じパターンどうし、または設計データと比べて、余分なもの、足りないもの、汚れを探します。見つかった欠陥は、とても細い電子ビームやイオンビームで、余分なところを取り、足りないところを足して直します。
  • なぜ:焼き付くような欠陥がマスクにひとつあると、どのウェーハのどのショットにも焼き付くからです。
  • しないと:見逃した点ひとつで、たくさんのチップがまとめてだめになり、歩留まりが下がります。直せないマスクは、つくり直すしかありません。

ステップ5:洗浄して、ペリクルを貼る

  • 何をする:最後に洗浄してもう一度検査し、ペリクルを貼ります。枠に張ったとても薄い透明な膜を、パターンの数ミリ上に浮かせるものです。
  • なぜ:膜の上に落ちたほこりは、パターンから離れすぎていてピントが合わず、たいてい焼き付きません。
  • しないと:パターンの上に直接落ちたほこりは、どのショットにもくっきり焼き付きます。ペリクルのその後の管理は「半導体工場のマスクエンジニアは何をしている?」へ。

ステップ6:ケースに入れて、工場へ出荷する

  • 何をする:専用のマスクケースに入れ、検査報告を付けて、半導体工場へ送ります。
  • なぜ:運ぶあいだも、さわらず、ほこりを入れず、湿気を避けなければならないからです。
  • しないと:途中でペリクルの下に入りこみ、パターンの上に落ちたパーティクルひとつも、同じように焼き付きます(膜の上に落ちたものは、たいてい焼き付きません)。だから工場はマスクを受け取ると、自分たちでもう一度検査します。

電子ビームで描けるなら、なぜウェーハに直接描かないのか

遅すぎるからです。マスクなら、少しずつ描くのは1回だけ。そのあと露光装置は1ショットごとに光を当てるだけなので、何十から百を超えるショットがあるウェーハでもすぐに焼けて、同じマスクでとてもたくさんのウェーハを焼けます。ウェーハを1枚ずつ電子ビームで直接描いていては、量産に追いつきません。だから電子ビームは、おもにマスクづくりや研究、ごく少ない数しかつくらないものに使われています。

マスク1セットは、なぜそんなに高いのか

  • とても正確に描かなければならない:パターンは4倍に縮小され、誤差も一緒に小さくなります。でもチップのいちばん細い線は数十ナノメートルしかなく、残ったわずかな誤差でも、線幅や位置が規格から外れることがあります。
  • 欠陥をひとつも残せない:板全体をもれなく検査し、修正します。検査だけで、マスクづくりにかかる時間のかなりの部分を占めます。
  • 描くのに時間がかかる:補正が多いほど角や辺が増え、描く図形も増えて、たいてい時間も長くなります。描画装置も検査装置も高価で、長く使えばそれだけお金がかかります。
  • 1セットに何枚も要り、使い道はひとつだけ:どのマスクも、あるチップのある層のためだけのもので、ほかのチップには使えません。
  • 進んだプロセスほど高い:線はさらに細く、補正も枚数も増え、EUVのマスクはさらにつくるのが難しくなります。

そのお金がチップ1個1個にどう割り振られるかは「半導体チップは、なぜこんなに高いのか」へ。テープアウトのあとで設計の誤りに気づくと痛いのも、このためです。マスクのつくり直しには、お金と時間の両方がかかります。

fab24hrでは

ゲームには、マスクをつくる場面は出てきません。マスクショップは電話の中だけに登場します。メインストーリー「チップの一生」のプロローグでは、Glowmereの設計が半導体工場に渡り、1セットのマスクになります。これをテープアウトといいます。第3章「不良の形」では、あなたは開発インテグレーションエンジニアです。あるウェーハマップでは、どの露光ショットでも同じ位置が不良で、問題はマスクについて回っています。そして16時のマスク会議で、次のマスクに自分たちのTEGを2か所残すかどうかを決めます。

マスクの世話をするなら、「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてマスクエンジニア(Beta)で止めます。工場に届いたマスクは、あなたの担当です。朝は、洗浄から戻ったマスクを自分で受け入れ検査します。昼は、ペリクルに傷が1本あり、その層には予備がありません。夜は、どの露光ショットにも同じ位置に同じ点があります。ゲームに出てくる会社、マスクショップ、チップ、人物、マスクの番号、数字は架空です。マスクのつくり方と高い理由は、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかマスクエンジニア(量産工場 › フォトマスク)を遊ぶと、シフトのあいだずっと、マスクショップから届いたマスクを見ています。受け入れ検査、ペリクルの1本の傷、どのショットにも同じ位置にある点。メインストーリー第3章「不良の形」では、開発ラインの16時のマスク会議で、次のマスクについて話し合います。

fab24hrでは、マスクはできあがってからが始まりです。工場に届いた1枚1枚を、露光装置に載せる前に誰かが確かめます。

マスクエンジニアで遊び、装置に載せる前にマスクを確かめる

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

この記事を引用する「フォトマスクとは? どうやってつくり、1セットがなぜそんなに高いのか」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/what-is-photomask/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告

ほかの記事

このサイトのほかのページ