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チップのつくり方約8分

ウェーハをつくるのにどれくらいかかる? サイクルタイムが何か月にもなる理由

ウェーハは、投入から完成して工場を出るまでに、数週間から数か月かかります。業界でよく言われる平均は3か月ほど(12週前後)で、先端の、層の多いプロセスほど長くなります。この期間をサイクルタイム(製造期間)と呼びます。不思議なことに、その数か月のうち、ウェーハが装置の中で実際に加工されている時間はほんの一部です。ほとんどの時間、ウェーハは待っています。

サイクルタイムは、どこからどこまで?

始まりはウェーハ投入です。ウェーハのロットを生産ラインに載せ、最初の工程を始める日です(なぜこの日から数えるのかは「ウェーハ投入とは? ロットの日数はいつから数える?」へ)。終わりは、そのウェーハが最後の工程を終えて、工場を出るときです。

ウェーハが完成したあとも、後工程でさらに数週間かかります。ニュースでよく見る「納期」や「リードタイム」は、お客さんが注文してからチップを受け取るまでの期間です。前には生産枠が空くのを待つ時間が、後ろには後工程と輸送があるので、サイクルタイムよりずっと長くなることがよくあります。

なぜそんなに時間がかかるのか

工程がとても多いからです。チップは1層ずつ積み上げてつくり、1層ごとにウェーハはリソグラフィ、エッチング、成膜などのエリアをひと回りします(各エリアの仕事は「半導体工場の7つのプロセスエリアは、それぞれ何をしている?」へ)。チップの層は数十あり、工程は合わせて数百、複雑なプロセスでは千を超えます。

先端のプロセスほど層が多く、パターンを焼き付けるフォトマスクも1セットの枚数が増えるので、時間が長くなります。工場を研究する人たちは、「マスク1層あたり平均何日かかるか」で工場どうしを比べることがよくあり、その値は1日から数日程度です。仮の例で計算すると、マスク40層のプロセスで1層あたり平均2日なら80日。3か月近くになります。

その数か月、ウェーハは何をしている?

病院の健康診断を思い浮かべてください。採血、レントゲン、視力検査は、どれも数分で終わります。それなのに午前中がまるごと過ぎ、その大半は廊下の椅子で、次の検査に呼ばれるのを待っていた。

ウェーハも同じです。装置の中で加工されている時間は長くなく、残りの時間は待っています。待つものにも、いくつか種類があります。

  1. 装置の順番待ち:前にほかのロットが並んでいます。たいていこれがいちばん大きい部分です。
  2. 搬送待ち:12インチの工場では、ウェーハはFOUPに入り、天井を走るOHTで装置から装置へ運ばれます(「ウェーハは工場の中をどう移動する?」へ)。搬送車が来なければ、ケースは棚で待ちます。
  3. 測定待ち:多くの工程のあとには、まず測って、うまくいったのを確かめてから次へ進みます(「半導体工場は、工程がうまくいったかをどう確かめる?」へ)。測る量が多いほど、測定装置の前の列も長くなります。
  4. 1回分がそろうのを待つ:拡散炉のように一度にたくさんのウェーハを処理する装置は、ロットがある程度集まってから動かすことがよくあります。
  5. 判断待ち:ロットがホールドされ、先に進めてよいかをエンジニアが判断するのを待ちます。

半導体工場の研究論文では、よくこう言われます。ロットは時間の大半を、加工ではなく待つことに使っている。

「理論時間の何倍」とはどういう意味?

サイクルタイムを研究する人は、まず「理論時間」を計算します。どの工程に着いても装置がちょうど空いていて、搬送車もちょうど来て、1分も待たなかったとしたら、最初の工程から最後の工程までどれだけかかるか。加工そのものの時間だけを足したもので、正味の加工時間とも言います。

実際にかかった時間をこれで割ると、倍数が出ます。英語ではX-factor(Xファクター)、flow factorとも呼ばれます。

  • 1倍:まったく待たない。現実にはありえません。
  • 3倍:仮の例で言うと、理論上20日で終わるロットが、実際には60日かかった。加工は3分の1で、3分の2は待ち時間です。

製品によって工程の数が違うので、日数をそのまま比べるのは公平ではありません。倍数で比べると、どれがより多く待っているかがわかります。実際の工場では1倍をかなり上回り、1に近いほど優秀です。

なぜそんなに長い列ができるのか

装置が混むほど、待ちが長くなる

これはいちばん根本的な理由の一つで、しかも待ちは比例して増えるわけではありません(生産管理がそのバランスをどう取るかは「半導体工場の生産管理は何をしている? 納期はどう決める?」へ)。教科書でいちばん簡単な待ち行列のモデルで、おおよその姿を計算できます。ある装置が1ロットを平均1時間で処理し、ロットが来るタイミングも、1ロットの処理時間も、まったくばらばらだとします。

装置が動いている割合1ロットがそこにいる平均の時間
半分2時間
8割5時間
9割10時間

処理はどれも平均1時間で、それを超える分はすべて順番待ちです。実際の工場はこのモデルより複雑ですが、形は同じです。ほぼいっぱいのところでもう少し詰めると、列は一気に伸びます。だから工場は24時間動いていても、いちばん忙しい装置を100%まで詰め込むことはしません(「半導体工場はなぜ24時間止まらないのか」へ)。

同じウェーハが何度も戻ってくる

1層ごとに、ウェーハはリソグラフィやエッチングなどのエリアをもう一度通ります。同じ装置グループに何十回も戻ってくるロットもあり、そのたびに列に並び直します(ロットの順番を決めるのがなぜ難しいかは「半導体工場の製造部は何をしている? ロットの順番はどう決める?」へ)。

特急ロットが割り込む

急ぎのロット、特急ロットは、たいていどの工程でも優先されます。特急ロットが並ばずに済んだ分は、ほかのロットが余分に待っています。研究では、ライン上の特急ロットが多いほど、ふつうのロットの平均サイクルタイムが長くなり、読みにくくもなることがわかっています(「ホットロット(特急ロット)とは? 特急なのに、いつも先頭とは限らない理由」へ)。

装置が止まる

装置がダウンしているときやメンテナンス中は、ロットを流せず、前にたまっていきます。止まると生産能力が減るだけでなく、「いつ自分の番が来るか」も読みにくくなります。研究では、そのどちらも平均サイクルタイムを長くすることが示されています(「装置のPM(予防保全)とは? なぜ定期的に止めるのか」へ)。

サイクルタイムが短くなると、何がいい?

  1. 納期が早く、読みやすくなる:ロットが早く仕上がり、あとから追加したいときも早く補えます。1ロットの待ち時間が安定するので、生産管理が出す日付も信頼できるものになります。
  2. ラインに抱えるロットが減る:1日に仕上がる量が同じなら、1ロットがいる時間が短いほど、ライン上のロットは少なくなり、そこに寝ているお金も少なくなります(この関係は「半導体工場の製造部は何をしている?」へ)。
  3. 問題が早く戻ってくる:チップの電気的な特性が正しいかどうかは、多くの場合、ウェーハがすべて完成してからでないと測れません(「WATとは? ウェーハマップから、どこで失敗したかをどう読む?」へ)。新しいプロセスの歩留まりは、問題を見つけ、条件を変え、もう一度確かめる、という1周ずつで上げていきます。サイクルタイムが短ければ、その1周が早く回ります。半導体工場の研究論文は、ずっと前から歩留まりとサイクルタイムの関係を論じています。
  4. Qタイムを超えにくくなる:Qタイムのカウントダウンには、列に並んでいる時間も含まれます。2つの工程のあいだの待ちが短ければ、上限に近づくロットも、やり直すロットも減ります(「Qタイムとは? ウェーハを長く置いておけない理由」へ)。

その代わり、ロットの待ちを減らすには、装置に少し余裕を残す必要があり、どの装置も予定でいっぱいにするわけにはいきません。だから工場はいつも、「装置を遊ばせない」と「ロットを待たせすぎない」のあいだでバランスを取っています。

fab24hrでは

fab24hrでサイクルタイムにいちばん向き合うのは生産管理です。「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプして生産管理を選びます。深夜シフトは朝5時半、自宅でスマホの夜間の仕掛品レポートを見ます。エッチング装置ETCH-03が02:47にダウンし、後ろに9ロットが待っています。レポートには「今日は、エッチング工程のサイクルタイムがいつもより長くなる。」とあります。特急ロットH-2417はこの層のエッチングまで来ていて、後ろにまだ何層もあり、工場を出るのはあと4週間あまり先です。残りの道のりを1工程ずつ確かめます。どの日付が動いたか、予定に取ってあるバッファで吸収できるか。製造部を遊ぶと、同じ朝、ETCH-03の後ろの9ロットを、まだ動く装置に振り分けます。メインストーリー「チップの一生」でも、第三幕「後工程工場」の冒頭で語られます。あの日のあと、H-2417は量産工場でさらに4週間あまり進み、それから後工程工場へ送られました。ゲームの会社、人物、装置番号、ロット番号、日付は架空のものです。サイクルタイムとは何か、時間がどこに使われているかは、公開されている一般的な資料と研究論文をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うか量産工場の生産管理を遊ぶと、深夜シフトの朝5時半、夜間の仕掛品レポートに「今日は、エッチング工程のサイクルタイムがいつもより長くなる」とあります。特急ロットH-2417が工場を出るのは、あと4週間あまり先。残りの工程を一つずつ確かめます。

fab24hrで生産管理の一日を。夜中に装置が止まり、後ろに9ロットが待っています。特急ロットの残りの道のりを確かめ、どの工程が遅れたか、出荷日は動くのかを見きわめます。

生産管理で遊び、特急ロットがあとどれだけかかるかを確かめる

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

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