モニターウェーハ、ダミーウェーハとは? 装置は毎日どうやって「いつもどおり」を確かめるのか
モニターウェーハもダミーウェーハも、半導体工場の出荷しないウェーハです。お客さんの製品ではなく、工場が自分の装置の面倒を見るために使います。モニターウェーハ(英語ではmonitor wafer、control wafer)は測るためのもの。装置で決まった間隔に1枚流し、表面のパーティクル、膜の厚さ、電気の通りやすさを測って、装置がいつもどおりかを確かめます。ダミーウェーハ(dummy wafer)は埋めるためのもの。拡散炉のボートの両端や空いた段に置き、お客さんのウェーハを、温度とガスの流れが安定した場所に置けるようにします。
モニターウェーハ、ダミーウェーハ、製品ウェーハはどう違う?
3種類のウェーハを並べてみます。
| 製品ウェーハ | モニターウェーハ | ダミーウェーハ | |
|---|---|---|---|
| 誰のもの? | お客さんのもの | 工場のもの | 工場のもの |
| パターンはある? | ある。何層もの回路 | たいていない。まっさらなシリコン | ない |
| 何に使う? | チップになる | 測って、装置の状態を見る | 空きを埋める、装置を慣らす |
| 出荷する? | する | しない | しない |
これはよくある呼び方で、工場や地域によって少しずつ違います。モニターウェハ、モニタウェハ、ダミーウェハとも書き、英語では2つをまとめてC/D(control/dummy)ウェーハと書くこともあります。ゲームの中では、装置を試すためだけに流すウェーハを、テストウェーハと呼ぶこともあります。
製品を直接測ればいいのでは?
製品も測ります。ただ、製品を測るだけでは足りない理由が3つあります。
- 製品にはパターンがあって、測りにくい。表面は回路だらけで、柄のあるじゅうたんの上でほこりを1粒探すようなものです。まっさらなモニターウェーハは平らなので、レーザーでなぞれば、パーティクルが1個増えただけでもわかります。製品の膜の厚さは、チップとチップのあいだにわざと残した小さな空き地で測ることが多いです。
- ウェーハに触れたり、だめにしたりする測り方がある。電気の通りやすさを測るには細い針を表面に直接押し当てますし、層と層のあいだを見るにはウェーハを切って断面を見ます(断面解析)。切ったウェーハは、もう使えません。お客さんのウェーハに、そんなことはできません。
- 製品で測れたときには、もう遅い。モニターウェーハは、お客さんのウェーハが装置に入る前に流します。できあがった製品で気づくのを待っていたら、装置がずれていたあいだに、何ロットも流れているかもしれません。
モニターウェーハの一日を、順番に見る
ステップ1:生産の前、または決まった間隔で、まず1枚流す
何をする:お客さんのウェーハを入れる前に、または決まった間隔で、まっさらなモニターウェーハを1枚、いつもの条件で流します。なぜ:装置のできばえは少しずつ変わるので、出荷しないウェーハで試すのがいちばん安上がりです。やらないと:装置がずれても誰も気づかず、次のお客さんのロットがそのまま入って、ロットまるごと不良になります。
ステップ2:測る
何をする:何を測るかは、装置によって違います。
- 膜をつける装置(成膜、拡散炉):膜がどれだけの厚さになったか、ウェーハ全体で均一か。
- 削ったり除いたりする装置(エッチング、CMP、洗浄):処理の前と後に厚さを測り、その差で、どれだけ取れたかがわかります。
- イオン注入:打ったあと、まず加熱してからシート抵抗を測り、原子が足りているかを見ます。
- 多くの装置でパーティクルも数える:流す前に1回、流したあとにもう1回数えます。増えたぶんが、装置から落ちてきたものです。
なぜ:装置ごとに、変わりやすいところが違うからです。やらないと:違うものを測っていると、装置の本当に変わっているところを誰も見ておらず、ずれても気づきません。
ステップ3:管理図に打つ
何をする:測った数字を、その装置専用の管理図に打ち、これまで毎日の数字と並べます。なぜ:数字1つだけでは、いつもの揺れなのか、片側へずれ始めたのか区別できません。並べてはじめて見えます。やらないと:装置が毎日少しずつずれ、どの日も「まだ規格内」のまま、本当に規格を外れたときには、もうたくさんのロットが流れています。
管理図の読み方は「SPCの管理図とは?」へ。
ステップ4:限界の内側なら製品を流し、外れたら止める
何をする:数字が限界の内側なら、装置を生産に戻し、お客さんのウェーハを入れ始めます。外れたら、または点が続けて同じ方向へ進んでいたら、OCAPに従います。装置を止め、次のロットを入れず、測り間違いではないかを確かめ、エンジニアに連絡します。なぜ:先に止めてから調べれば、後ろのロットまで入って不良になることはありません。やらないと:「たぶん測り間違いだろう」と製品を流すと、確かめているあいだにもう1ロット入り、そのロットもホールドしなければなりません。
OCAPに何が書いてあるかは「OCAPとは?」へ。
ステップ5:修理やメンテナンスのあとも、まずモニターウェーハ
何をする:装置を直したあとやPMのあとは、まず出荷しないウェーハを何枚か流してチャンバーを慣らし(シーズニング)、それからモニターウェーハで結果を確かめます。この確認がテストランです。合格してはじめて、装置は生産に復旧します。なぜ:一度開けた装置は、組み立て直しても元どおりとは限りません。部品がきちんと座っていないことも、中にかけらが残っていることもあります。やらないと:かけらがお客さんのウェーハに落ち、修理後の最初のロットで問題が起きます。
メンテナンスのあとの確認の流れは「装置のPM(予防保全)とは?」へ。
ダミーウェーハは何をしている?
ダミーウェーハは拡散炉でよく使われます。拡散炉は、100枚以上のウェーハを縦長の棚(ボート)に並べ、熱い管の中へ入れます。管のいちばん上と下では、温度もガスの流れも真ん中とは違います。天板いっぱいにクッキーを並べて焼くと、端の何枚かは真ん中と焼け方が違うのと同じです。
そこで、
- 両端にダミー:いちばん面倒を見にくい場所にダミーウェーハを置き、お客さんのウェーハは全部真ん中に並べます。これも製品を守るやり方です。
- 空いた段にもダミー:その回のウェーハがボートを埋めるほどないときは、空いた段にダミーウェーハを差し、炉の中のガスの流れと温度を、満杯のときに近づけます。
- あいだにモニター:たとえば上・中・下に1枚ずつ挟み、取り出してから測れば、その回が全体として均一についたかがわかります。
拡散炉がどう分けて加熱しているかは「拡散炉では何をしている?」へ。
ステップ5で出てきた慣らし用のウェーハも、同じ仲間です。
使い終わったモニターウェーハやダミーウェーハは捨てる?
たいてい捨てません。使ったウェーハには膜がついていたり、何かが付着していたりします。薬液で膜を除き、表面を薄く研磨して洗えば、平らでぴかぴかのまっさらなウェーハに戻り、もう一度モニターウェーハやダミーウェーハとして使えます。こうして再利用するウェーハを再生ウェーハ(リクレイムウェーハ)と呼びます。
再生にも限りがあります。研磨するたびにウェーハは少し薄くなり、ある回数使うと廃棄するしかありません。再生したウェーハは等級にも分けられ、表面の状態がよくないものは一段下げて、要求の低い用途に回します。
モニターウェーハはただではない?
お金はかかります。それもウェーハ代だけではありません。
- ウェーハ:モニターウェーハもダミーウェーハもウェーハで、使う量が多いので、再生するのです。足りなくなると、装置が止まって待つことさえあります。
- 装置の時間:装置がモニターウェーハだけを流しているあいだは、お客さんの製品を流せません。
だから、どれだけ流すかは兼ね合いです。少なすぎれば、装置のずれに気づくのが遅れます。多すぎれば、出荷しないウェーハにお金と時間を使うことになります。
fab24hrでは
「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてプロセスエンジニアで止め、名前の下の「イオン注入」を押すと、注入のプロセスエンジニアになります。朝会では、イオン注入装置IMP-01のモニターウェーハのシート抵抗を、2週間分(1日1枚)見せます。10時、ビーム電流を調整したあと、最初のモニターウェーハは中心線より少し高く、まだ規格内なのに、装置はちょうど打てたと表示しています。待っている2ロットを、ホールドして装置のエンジニアに調べてもらうか、そのまま流すか。決めるのはあなたです。
名前の下で「拡散炉」を押すと、炉のプロセスエンジニアになります。朝シフトでは、ボートの上・中・下の3枚のモニターウェーハを測ります。いちばん上と下の段はダミーウェーハなので、測る必要はありません。夜シフトではボートを組み、両端と空いた段にダミーウェーハを足します。メインストーリー「チップの一生」第2章「一工程ずつ」でも、開発ラインの拡散炉でボートを組み、モニターウェーハを3枚入れるか、真ん中の1枚だけにするかを選びます。エッチングのプロセスエンジニアなら、昼間のシフトにランダムイベントが起きることがあります。成膜装置CVD-02の今日のモニターウェーハで、微粒子85個、上限10。OCAPどおりホールドするか、もう1枚測るか。
ゲームに出てくる会社、人物、装置番号、ロット番号、数字は架空のものです。モニターウェーハとダミーウェーハが何か、どう使い、どう再生するかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。実際にどれくらいの頻度で流すか、何を測るか、限界をどこに引くかは、装置ごと、工場ごとに違います。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うか注入のプロセスエンジニアを遊ぶと、朝会でIMP-01の2週間分のモニターウェーハのシート抵抗を見せます。ビーム電流を調整したあと、最初のモニターウェーハが少し高め。ロットを流すかどうかはあなたが決めます。炉のプロセスエンジニアなら、ボートの両端にダミーウェーハを足します。
fab24hrでは、装置を直したり調整したりしたあと、最初に流すのは製品ではなく、まず1枚のモニターウェーハということがよくあります。
注入のプロセスエンジニアで遊び、ロットの前にモニターウェーハを見る先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「モニターウェーハ、ダミーウェーハとは? 装置は毎日どうやって「いつもどおり」を確かめるのか」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/monitor-wafer/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
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