FinFETとGAAとは? トランジスタが平らな形から立ち上がり、さらに四方を包む形になった理由
FinFETとGAAは、トランジスタの2つの形です。FinFET(フィン型電界効果トランジスタ)は、電流の通り道であるチャネルを立てて、高くて薄い「フィン(ひれ)」にし、ゲートが上と両側の三方からはさみます。GAAはgate-all-around(ゲートオールアラウンド)の略で、チャネルを何枚か重ねた薄いシートにし、ゲートが1枚1枚の上下左右をすっかり包みます。2回の形の変化は、どちらも同じ目的のためでした。とても小さなトランジスタでも、きっちり閉じられるようにすることです。
ゲートは何をしているの?
トランジスタは、電気で動かす小さなスイッチです(「トランジスタとは?」へ)。電気は入口(ソース)からチャネルを通って出口(ドレイン)へ流れます。チャネルの上のゲートは、蛇口のハンドルのようなものです。電圧をかければ開き、外せば閉じます。
平らなトランジスタは、なぜきっちり閉じなくなったの?
以前のトランジスタは平らでした。チャネルはシリコンの表面に寝ていて、ゲートは上にだけあります。小さくするにつれて入口と出口が近づき、上にあるゲートは、チャネルの上のほうは押さえられても、下のほうまでは押さえきれなくなりました。ゲートが「オフ」と言っても、少しだけ電気がすり抜けます。これがリークです。100億個以上が合わさると、スマートフォンを使っていないときにも電気が減っていきます(「チップはなぜ電気を使う?」へ)。
FinFET:チャネルを立てる
チャネルを、魚の背びれのような、とても薄い壁として立てます。ゲートは逆さまのUの字のようにフィンをまたぎ、上と両側をいっしょにはさみます。フィンの幅は数ナノメートルしかないので、両側からはさめばチャネル全体を押さえられ、ずっとよく閉じられます。
立てると、もう1つよいことがあります。電流が使える「幅」は、おおよそフィンの両側と上面を合わせた長さです。フィンを高くすれば、場所は同じままで、流せる電流が増えます。もっと電流がほしいトランジスタには、フィンを2枚、3枚と並べます。
この形のトランジスタは、2010年代のはじめごろから大量に使われるようになりました。名前をつけたのは2000年前後の大学の研究グループで、論文から量産まで10年以上かかっています(「新しい技術は、論文から量産まで何年かかる?」へ)。
FinFETは、一歩ずつどうつくる?
大きな流れは平らなトランジスタと同じです。分ける、土台をつくる、ゲートをつくる、ゲートに合わせて入口と出口をつくる、配線をつなぐ(「トランジスタはどうやってつくる?」へ)。増えるのは、最初にフィンを削り出すことと、ゲートをはじめは仮のものにしておくことが多い点です。一般的な流れを簡単にすると、次のようになります。
- フィンを削り出す:シリコンの上にとても細い線を何本も描き、下へエッチングして、フィンの列を残します。フィンは露光装置が1回で描ける線より細いので、マルチパターニングのような方法をよく使います(「193ナノメートルの光で、なぜ数十ナノメートルの線が焼けるのか?」へ)。フィンの幅や高さがそろわないと、トランジスタごとに電流が変わってしまいます。
- 分離して、フィンを出す:フィンのあいだを酸化膜で埋め、CMPで平らに削ってから、酸化膜を少し下までエッチングして、フィンの上半分を出します。埋まっている部分がトランジスタどうしを分け、出ている部分がチャネルになります。エッチングがむらになると、フィンの出る高さがそろわず、電流もそろいません。そのあと、平らなものと同じように原子を打ち込んで、n型とp型のウェルをつくります。
- 仮のゲートをフィンにまたがせる:ポリシリコンを積んで、フィンをまたぐ線に描き、両側に絶縁物のサイドウォールをつくって、ゲートの場所を決めておきます。本物のゲートの材料は、このあとの高温に弱いからです。最初から本物を置くと、あとの加熱で傷んでしまいます。
- ソースとドレインを成長させる:ゲートの両側のフィンを少し削り、エピタキシャル成長で、不純物を多く入れたシリコンやシリコンゲルマニウム(シリコンにゲルマニウムを少し混ぜたもの)として育て直してから、加熱して原子を落ち着かせます。こうすると電流が流れやすくなります(「エピタキシャル成長とは?」へ)。加熱するたびに熱履歴に積み上がり、熱が多すぎると原子が横へ動いて、形がぼやけます。
- 本物のゲートに替える:絶縁膜でおおい、仮のゲートが見えるまで削ってから取り除き、残った溝に、とても薄い新しい絶縁材料と金属を敷いて、フィンを三方から包みます。溝が埋まりきらないと、ゲートはフィン全体を押さえられません。
その上のコンタクトや配線は、平らなトランジスタと同じです(「チップの中の配線はどうつくる?」へ)。
フィンでは、なぜ足りなくなったの?
フィンはすでに数ナノメートルまで薄くなり、これ以上は薄くしにくくなりました。ゲートがさらに短くなると、三方からはさんでも、いちばん下のほうまでは押さえきれません。しかもフィンは1枚単位でしか増やせないので、電流は1枚分の1倍、2倍、3倍としか決められず、ちょうど1.5倍にはできません。
GAA:ゲートが四方を包む
GAAはフィンを「横倒し」にします。チャネルは上下に重ねた何枚かの薄いシートになり、1枚の厚さは数ナノメートルです。シートとシートのすき間にもゲートが入るので、1枚1枚が四方から包まれます。このシートをナノシートと呼び、もっと細くて線のようなものはナノワイヤと呼びます。
シートの幅は描いて決めるので、大きな電流がほしいスイッチは広く、電力や場所を節約したいスイッチは狭くできます。量産が始まったのは2020年代で、ニュースでいう3ナノや2ナノのあたりからです。切り替える時期はメーカーによって違います。「何ナノ」は世代の名前で、シートの寸法ではありません(「ニュースの「2ナノ」、いったい何が2ナノなのか?」へ)。
宙に浮いたシートは、どうつくるの?
シリコンを宙に浮かせて育てることはできません。そこで、あとで取り除く「詰め物」を先に入れておきます。
- 2種類の材料を交互に積む:エピタキシャル成長で、シリコンゲルマニウムの層とシリコンの層を交互に何組も重ねます。シリコンゲルマニウムは原子の並び方がシリコンとよく似ているので、下の結晶の並びに合わせて1層ずつ育ちます。それでいて化学的な性質は違うので、あとでそれだけを取り除けます。条件に合わない材料では、きれいに育たないか、きれいに取り除けません。
- 帯状に削り、仮のゲートを置き、ソースとドレインを育てる:FinFETのステップ1〜4とほぼ同じですが、削るのは積んだ層まるごとです。ソースとドレインの部分を削るときに、シリコンゲルマニウムを横から少しだけ削り込んで絶縁物で埋め、シートとシートのあいだに小さなサイドウォールをつくります。これがないと、次のステップでソースとドレインまで削られてしまうことがあります。
- シリコンゲルマニウムを取り除く:仮のゲートを外し、シリコンゲルマニウムだけを削ってシリコンにはほとんど触れないエッチングで、あいだの層をくりぬきます。残ったシリコンのシートは、両端をソースとドレインに支えられ、はしごの横木のように並びます。取り残しがあるとシートごとに違いが出て、削りすぎるとシートが薄くなったり切れたりします。
- すき間にゲートを埋める:1サイクルで原子1層までを積む原子層堆積(ALD)で(「成膜とは?」へ)、1枚1枚のまわりにとても薄い絶縁膜を敷き、金属で埋めます。すき間は数ナノメートルから十数ナノメートルしかありません。埋まりきらないと、そのシートにはゲートが押さえていない面が残ります。
GAAは、どこが難しい?
難しいのは、くりぬくことと埋めることです。どちらも数ナノメートルのすき間の中で行い、しかも1枚1枚を同じに仕上げなければなりません。さらに計測です。いちばん大事な部分は積み重ねの内側にあって、上からは見えません。光を使う計測は、ほんのわずかな取り残しには敏感ではないので、X線を使ったり、ウェーハを断面解析のために切ってTEMで見たりします。切ったウェーハは、もう使えません(「半導体工場は、工程がうまくいったかをどう確かめる?」へ)。
次は:上に重ねる
次の2つは、どちらもまだ研究段階です。
- n型とp型のスイッチを上下に重ねる:チップのスイッチは、たいてい2種類で1組です(「CMOSとは?」へ)。今は横に並んでいますが、重ねれば同じ広さにもっと多くの組が入ります。研究ではよくCFET(相補型FET)と呼ばれます。
- 2次元材料をチャネルにする:シリコンを数ナノメートルより薄く削ると、電子はだんだん通りにくくなります。二硫化モリブデンのような材料は、1層が原子数個分の厚さしかないシートで、そこまで薄くても電気を通します。難しいのは、ウェーハ全面に同じようにきれいに育てることと、金属とうまくつなぐことです。
上に重ねる方法は2つあり、難しいところが違います。1つは、全部を一度に積んでから上と下を別々につくるやり方で、高く積むほど削るのも埋めるのも難しくなります。もう1つは、下の層を先に仕上げてから、上にシリコンの層を敷いて上の層をつくるやり方です。ところがトランジスタづくりには1000度を超える工程もあり、仕上がった下の層はそれに耐えられません(熱履歴)。そのため研究では、上の層をだいたい500度以下でつくることが多いです。公開されている技術ロードマップの多くは、どちらの道も2030年代以降に置いていて、何年になるかは資料によって違います。
fab24hrでは
ゲームにはフィン型やゲートオールアラウンドのトランジスタは出てきません。メインストーリー「チップの一生」の架空の補聴器チップ「Glowmere」は、成熟した世代のプロセスを使っていて、トランジスタはいちばん小さい種類ではありません。それでも「きっちり閉じず、リークする」はあちこちに出てきます。第1章では、どのウェーハのトランジスタをわざと速めや遅めにつくるか(コーナー)を決め、速いものほどリークします。第10章「待機電流」では、テストエンジニアが、どこまでリークしたらチップを止めるかを決めます。
「工場の一日」にも出てきます。「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「開発ライン」を押し、左右にスワイプして開発プロセスエンジニアにしてから、「拡散炉」のエリアを押してください。昼シフトでは、開発ラインにたった1台の拡散炉で、加熱の条件を選びます。熱をかけすぎると、打ち込んだ原子が深くまで動き、短いトランジスタはきっちり閉じません。ゲームに出てくる会社・チップ・人物・数字は架空です。FinFETとGAAは、公開されている一般的な資料をもとに、簡単にして書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかゲームにはフィン型やゲートオールアラウンドのトランジスタは出てきません。メインストーリーの補聴器チップ「Glowmere」は、成熟した世代のプロセスを使っています。それでも「きっちり閉じず、リークする」はあちこちに出てきて、第10章「待機電流」では、どこまでリークしたらチップを止めるかを決めます。
fab24hrでは、トランジスタが閉じきれずに漏らすわずかな電気が、最後には補聴器の電池が何日もつかを左右します。
第10章「待機電流」から遊ぶ先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「FinFETとGAAとは? トランジスタが平らな形から立ち上がり、さらに四方を包む形になった理由」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/finfet-and-gaa/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
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