チップの中の配線はどうつくる? ビア、銅、先に溝を掘ってから埋める理由
チップの中の配線は、トランジスタの上に1層ずつ「建てて」いきます。まず絶縁膜をつけ、そこに配線を通す溝と、下へつながる小さな穴を掘り、金属(いまはほとんどが銅)で埋めて、表面を平らに磨く。その上に次の層を重ねます。最先端のチップでは、配線は10層以上になります。工場では、トランジスタをつくる部分をFEOL(front end of line)、配線をつくる部分をBEOL(back end of line、配線工程)と呼びます。
日本語で「後工程」といえば、ふつうはチップを切り分けてパッケージに入れる工程のことです(「パッケージングとは?」)。BEOLはウェーハ工場の中の話で、別物です。
チップにはなぜ何層も配線がいるの?
チップのいちばん下には、シリコンの中につくったトランジスタがあります(多いものでは100億個を超えます)。電気で切り替える小さなスイッチです(「トランジスタとは?」)。それぞれのスイッチの結果は、1本の線の電圧の高い・低い(高いと1、低いと0)で、それをほかのスイッチへ届けなければなりません。線が多すぎて1層には収まらないので、チップはビルのような形になります。1階はスイッチでぎっしり、その上の階はどれも廊下です。
- 配線:同じ層の中を横に走る金属の線。各階の廊下にあたります。
- ビア:上下2層の配線を縦につなぐ小さな穴。階段にあたります。英語のviaから、ビアと呼びます。
- コンタクト:いちばん下の穴。1層目の配線から下へ、トランジスタにつながります。
スイッチにいちばん近いコンタクトは、銅ではなく、タングステンのような金属で埋めることがよくあります。理由はあとで説明します。トランジスタとコンタクトのつくり方は「トランジスタはどうやってつくる?」へ。この記事は、その上の10層あまりの話です。
配線1層はどうつくる?
配線は1層ごとに、だいたい同じ6つのステップを踏みます。
ステップ1:絶縁膜をつける
下の層の上に、二酸化ケイ素などの絶縁性の薄い膜をつけます(「成膜とは?」)。配線を絶縁膜の中に埋めるので、線と線のあいだに電気が流れません。この膜がないと、つながってはいけない2本の線が触れてショートします。
ステップ2:パターンを焼き付け、溝と穴を掘る
まずリソグラフィで、この層の配線の形をレジストに焼き付け、エッチングで絶縁膜に浅い溝と、もっと深い小さな穴を掘ります。溝にはあとで配線が入り、穴はビアになって下の層の配線につながります。溝と穴を同じ層に続けて掘り、いっぺんに埋めることも多く、これをデュアルダマシンといいます。穴が底まで開いていないと上下がつながらず、掘りすぎると下の層を傷めます。穴の数はとても多いので、工場では何千個もつなげてまとめて測ります(「WATとは?」)。
ステップ3:ごく薄いバリア層をつける
溝と穴の底と壁に、まずバリア層というごく薄い金属膜をつけます(よく使うのはタンタルと窒化タンタル)。銅の原子が、まわりにしみ込んでいくからです。絶縁膜に入れば絶縁が弱くなり、下のシリコンに入れば中に「トラップ」をつくって、トランジスタのリークを招きます。バリア層は銅を閉じ込め、銅がはがれないようにもします。これがないと、トランジスタが少しずつ悪くなり、しかもすぐには見えないことがあります。
バリア層のあとに、ごく薄い銅をつけます。次のステップの「種(シード)」です。
ステップ4:めっきで銅を埋める
ウェーハを銅のめっき液に入れて電流を流すと、シード層から銅が育って、溝と穴を埋めます。めっき液には添加剤が入っていて、穴の底のほうが口より速く育ち、下から上へ埋まっていきます。穴は細くて深いので、口が先にふさがると中にすき間が残り、電気が通りにくくなって、ひどいときは切れてしまいます。
ステップ5:余分を磨き取る
銅は溝の外の表面までおおい、すべての配線を1枚につないでしまいます。そこでCMP(化学機械研磨)で溝の外の銅とバリア層を磨き取り、絶縁膜が出てきたところで止めます。銅は溝と穴の中だけに残ります。表面が平らになれば、次の層のリソグラフィもくっきり焼き付けられます。磨き足りないと線と線のあいだに銅が残ってショートし、磨きすぎると配線が薄くなって抵抗が上がります(「CMPとは?」)。
ステップ6:上面をふさぎ、次の層へ
磨いた銅の上に、ごく薄い保護膜をかぶせます。バリア層が包んでいるのは銅の底と両側だけなので、上面もふさがないと、銅が上の層の絶縁膜へしみ込んでいきます。そしてステップ1に戻り、層の数だけくり返します。いちばん上は大きな金属のパッドにして、チップを外とつなぎます(「ワイヤボンディングとは?」)。
銅はなぜ「掘ってから埋める」の?
1990年代の終わりごろまで、配線はおもにアルミで、つくり方は逆でした。ウェーハ全体にアルミをつけ、パターンを焼き付け、いらないアルミをドライエッチングで削り、線と線のすき間を絶縁膜で埋めていました。
その後、銅に切り替わったのは、同じ太さなら銅の抵抗がアルミの6割ちょっとだからです。また、大きな電流が流れると、電子が金属の原子に当たり続け、年月とともに原子を押し流して線を切ってしまいますが、銅はアルミよりこれに強いのです。
問題は、銅をドライエッチングで線の形に削るのが難しいことです。ドライエッチングは、プラズマの中のとても反応しやすいかけらが表面と反応し、気体になって吸い出されることで削ります(「エッチングとは?」)。銅は反応しても、チップが耐えられる温度では気体になりにくく、表面に残ってしまい、きれいに削れません。
そこで逆にしました。銅が削れないなら、絶縁膜のほうを削って、銅を埋め、余分を磨き取る。これをダマシン法といいます。金属の器に模様を彫り、金や銀をはめ込む、昔ながらの象嵌の技法の名前からきています。
なぜ下の層は細く、上の層は太いの?
いちばん下の層は、隣のスイッチどうしをつなぎます。距離は短く、線の数はとても多いので、いちばん細く、いちばん密にします。最先端のチップでは、いちばん密な配線の間隔は数十ナノメートルしかありません(ニュースの「2ナノ」の記事)。
上の層は、信号をチップの反対側まで運び、すべてのスイッチに電源を届けます。距離が長く、電流も大きいので、線は幅広く、厚くします。配線は長いほど抵抗が大きく、太いほど小さいからです。町にたとえると、家の前の路地は細くてたくさんあり、町を横切る幹線道路は広くて少ない、というのと同じです。
銅に触れた装置やウェーハは、なぜ分けて扱うの?
シリコンに銅が少しでも入ると、トランジスタはリークします。トランジスタをつくる側のウェーハには、まだとても高温の工程が残っています(「拡散炉では何をしている?」)。銅に触れた装置やケースを通って銅が少しでもつくと、熱で銅がシリコンの中へ入り込み、同じ炉のウェーハがまとめて影響を受けることもあり、炉も汚れます。
だから多くの工場は線を引きます。銅の工程は別のエリアか専用の装置で行い、銅の工程を通ったウェーハはトランジスタ側の装置に戻しません。ウェーハのケースや搬送の道具も、銅の側だけで使います。ウェーハの裏面と端についた銅は別に洗い落とします。両方が共用する測定装置などを通るとき、裏面の銅を持ち込まないためです。
配線はなぜ、ますますチップの足を引っぱるの?
配線を通る信号には、2つの壁があります。1つは、線が細いほど抵抗が大きいこと。もう1つは、絶縁膜をはさんだ2本の線が小さなコンデンサーのようになることです。近いほど、片方の電圧が変わったときに隣を引っぱり、電圧も変わりにくくなります。
トランジスタは小さくすると速くなることが多いのに、配線は細くすると遅くなります。ある程度より細くなると、銅の抵抗は単純な比例の計算よりさらに高くなります。電子が線の表面や、銅の中の小さな結晶の境目にぶつかりやすくなるうえ、バリア層はいつまでも薄くはできないからです。そのため、先端のチップほど、信号の遅れのうち配線によるものが大きくなり、長い配線ほどそれが目立ちます。対策のひとつは、隣の線どうしが影響し合いにくい絶縁材料(低誘電率材料、low-k)を使うことです。いちばん細い層で別の金属を使うことも、エンジニアが試しています。
fab24hrでは
fab24hrでは、開発ラインのいくつもの役割が、同じ層に関わります。新しいコンタクトです。「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「開発ライン」を押し、左右にスワイプして開発プロセスエンジニアへ。名前の下で「成膜」を押すと、薄膜の開発プロセスエンジニアです(Betaの印つき)。朝シフトでは、新しい穴が細いので、バリア層をどれくらいの厚さにするかを決めます。深夜シフトでは、断面写真で、ウェーハの端のコンタクトの底にボイドがあります。開発ラインの洗浄エリアの昼シフトでは、別のグループが、端に金属が出ているウェーハを、1台しかない洗浄装置で洗いたいと言ってきます。金属を薬液に浸けると槽の壁に残り、同じ槽で洗うあとのロットにもつくおそれがあります。
メインストーリー「チップの一生」の第2章「一工程ずつ」で掘るのは、いちばん下の、トランジスタどうしを分ける溝です。溝を掘り、酸化膜で埋め、平らに磨く。この記事と同じリズムで、埋めるのが絶縁物だというだけの違いです。ゲームには銅めっきの装置は出てこず、コンタクトをどの金属で埋めるかも書いていません。会社、人物、装置、数字は架空のものです。配線のつくり方は、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うか薄膜の開発プロセスエンジニア(開発ライン › 開発プロセス › 成膜)になると、新しいコンタクトの穴にまずバリア層をつけ、それから金属を埋めます。できるのは開発ラインでCVD-R1の1台だけ。深夜シフトでは、断面写真で、ウェーハの端のコンタクトの底にボイドが見つかります。
fab24hrでは、開発ラインの新しいコンタクトが一工程ずつ進みます。エッチングで穴を掘り、成膜でバリア層をつけて金属を埋め、CMPで磨く。穴の底にすき間が残ったかどうかは、切って断面を見るまでわかりません。
薄膜の開発プロセスエンジニアで、新しいコンタクトにバリア層と金属を埋める先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「チップの中の配線はどうつくる? ビア、銅、先に溝を掘ってから埋める理由」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/interconnect/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
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