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チップのつくり方約8分

重ね合わせ(オーバーレイ)とは? チップの上下の層は、なぜぴったり合わせるのか

重ね合わせ(オーバーレイ)とは、チップのある層のパターンが、その下の層とどれだけ正確に合っているかのことです。ずれた量を、重ね合わせ誤差といいます。チップはリソグラフィで1層ずつ焼き付けてつくり、層の数は十数層から数十層になります。新しい層は、どれも下の層の真上にぴったり重ねなければなりません。合っていれば上下がつながり、ずれれば、つながるべきところがつながらず、触れてはいけないところが触れてしまいます。

なぜ、どの層も合わせる必要があるの?

多色刷りの版画を思い浮かべてください。赤、黄、青をそれぞれ別の版に彫り、1色ずつ刷ります。どれか1枚の版が少し曲がっているだけで、色が線からはみ出します。チップも同じように1層ずつ重ねてつくりますが、もっと厳しい世界です。上の層の小さな穴が、下の層の接点にぴったり乗らなければなりません。

パターンをどう焼き付けるかは「フォトリソグラフィとは?」で説明しています。この記事では「合わせる」ことだけを扱います。

どれくらいまで、ずれてもいい?

回路でいちばん細い線よりも、ずっと小さい量です。ある大学の講義資料にある目安は、最小線幅の3分の1から5分の1。公開されている大学の論文には、線幅0.18マイクロメートルの世代で、許されるずれは約0.06マイクロメートルという例があります。

最新の世代になると、業界が共同でまとめる技術ロードマップの目標は、わずか2〜4ナノメートルです。髪の毛の太さは数万ナノメートルなので、髪の毛の1万分の1よりも細い話です。

1層はどうやって合わせ、測り、直すのか

アライメントと重ね合わせは別のものです。アライメントは露光の前にする動作で、重ね合わせは終わったあとに測る結果。狙うことと、どこに当たったかを確かめることの違いです。

ステップ1:露光の前に、アライメントマークを探す

  • 何をする:ウェーハを露光装置に入れても、すぐには露光しません。センサーが、それまでの層がウェーハに残したアライメントマーク(小さな十字や縞模様。たいていはチップとチップのあいだの、最後に切り落とされる細い帯に置かれます)を探し、いくつものマークの位置を測ります。ウェーハ全体がどちらにずれ、どれだけ回り、少し伸びていないかを計算してから、各ショットをどこに焼くかを決めます。
  • なぜ:ウェーハは置くたびに少しずつ位置が違い、前の工程でわずかにゆがんでいることもあります。1点だけでは足りません。
  • しないとどうなる:合わせないまま露光すると、この層は下の層に重なりません。しかも、ずれ方がウェーハごとに違います。

1層目には、下に合わせる相手がまだありません。ウェーハの縁の小さな切り欠き(ノッチ)で向きをそろえるだけです。その層から先は、合わせるためのマークがあります。

ステップ2:露光と現像。測定用のマークもいっしょに焼く

  • 何をする:計算した位置どおりに1ショットずつ露光し、現像します。フォトマスクには回路のほかに重ね合わせを測る専用のマークもあり、下の層のマークのすぐそばに焼き付けられます。たとえば、下の層に大きな四角、この層にはその内側に小さな四角です。
  • なぜ:現像のあと、2つの層のマークが並ぶので、比べるものができます。
  • しないとどうなる:チップが完成して電気的に測るまで、ずれに気づけません。そのころには何週間もたっています。

ステップ3:現像のあと、どれだけずれたかを測る

  • 何をする:測定装置が光で2つの層のマークを見て、小さな四角が真ん中からどれだけ、どちらへずれているかを測ります。全部のウェーハは測りません。1ロットから数枚、1枚から数ショットを選び、ショットの四隅で1点ずつ測ることがよくあります。測定装置のしくみは「半導体工場は、工程がうまくいったかをどう確かめる?」へ。
  • なぜ:たくさんの点のずれを並べてはじめて、ウェーハ全体がどんなずれ方をしているかが見えます。
  • しないとどうなる:ずれに気づかないままエッチングへ進みます。

1点ずつ矢印で描くと、ずれ方はおおよそ次の種類に分かれます。

  • 左右(x)・上下(y):どの矢印も同じ向きで、長さもほぼ同じ。シールが少し横にずれて貼られたような形です。
  • 回転:矢印が中心のまわりを回るように並び、外側ほど長くなります。シールが斜めに貼られたような形です。
  • 倍率:矢印が中心から外へ(または内へ)向き、外側ほど長くなります。全体がほんの少し引き伸ばされた(または縮んだ)ような形です。

ウェーハ全体にもこうしたずれがあり、ショットの中にもあります。これらを差し引いても残る、細かくて補正しきれないずれを、残差といいます。

ステップ4:ずれすぎ? レジストのうちにやり直す

  • 何をする:規格を外れたら、まずそのロットをホールドし、リワークするかを決めます。レジストを丸ごとはがし、塗り直し、露光し直し、現像し直します。
  • なぜ:現像のあと、パターンはまだレジストの上にあるだけで、下の材料にはまったく手がついていません。
  • しないとどうなる:エッチングに進めば、ずれた位置が材料に刻まれ、もう戻せません。リワークにも代償があります。もう1回流し、もう1回処理を受け、数時間よけいにかかります。ずれがわずかなら、やり直す価値があるかを判断します。

ステップ5:ずれを露光装置に返し、次のロットで先に直す

  • 何をする:測ったずれ(x、y、回転、倍率がそれぞれどれだけか)を露光装置に返し、次のロットではその逆向きに少し調整します。これを補正といいます。補正量はシステムが自動で計算することが多く、「APCとは?」で取り上げています。
  • なぜ:同じ装置、同じ製品なら、ずれ方はくり返しがちです。このロットで測った分を、次のロットで先に直せます。
  • しないとどうなる:どのロットも同じようにずれ、毎回測ってから気づいて、リワークすることになります。

なぜ、ずれるの?

  • 露光装置そのもの:ウェーハステージの動き方や、レンズのわずかなゆがみ。どの装置にも、それぞれ小さなくせがあります。
  • ウェーハが引っぱられてゆがむ:前の拡散炉の高温や、上に成膜した膜が、ウェーハを少し反らせたり伸び縮みさせたりして、マークの位置もいっしょに動きます。
  • 熱による伸び縮み:温度が1°C違うだけで、直径30センチのシリコンウェーハは約0.8マイクロメートル大きくなります。最新の世代で許されるずれの何百倍にもなります。
  • マークが少し崩れる:CMPやエッチングでマークの形が左右非対称になると、センサーが読む位置がずれます。
  • 上下の層を別の露光装置で焼いた:2台のくせが違うので、打ち消し合いません。そのため、いちばん大事な何層かは同じ1台に固定することがあります。代わりに、その装置が混んでいるときは、ほかの装置が空いていても使えません。

ずれると、どうなる?

上の層の小さな穴は、下の接点や配線の上に乗らなければなりません。いちばん下でトランジスタにつながる穴がコンタクト、上下2層の配線のあいだの穴がビアです。

  • 届かない:ずれると触れる面積が小さくなり、抵抗が上がります。ひどければ、まったくつながりません。
  • 触れてはいけないところに触れる:横にずれて、トランジスタのゲートや隣の配線に触れると、ショートします。

こうした穴のつくり方は「トランジスタはどうやってつくる?」と「チップの中の配線はどうつくる?」へ。わずかなずれは、すぐにはわからないこともあります。回路がつながっているかは、何週間もあとのWATの測定でようやくわかることがよくあります。

fab24hrでは

「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押して、左右にスワイプしてプロセスエンジニアにし、名前の下の「リソグラフィ」を押すと、リソグラフィのプロセスエンジニアになります。朝シフトでは、ロットP-3A08の重ね合わせが規格外で、次の工程はエッチングです。測定装置で重ね合わせマップを見ます。格子はショット、黄色い矢印は、この層が下の層からどちらへどれだけずれているかを示します。平行移動補正、回転補正、倍率補正を試し、正しいものを選ぶと、矢印はわずかな残差だけになります。続けて記録を調べると、下の層は別の露光装置で焼かれていました。いちばん大事な何層かを同じ1台に固定するか、2台の差を補正に足すか。最後に、プロセスインテグレーションのヤーティンに答えを出します。リワークか、そのまま流すか。

同じエリアのリソグラフィ装置エンジニアの深夜シフトでは、露光装置がアライメントマークを見つけられずに止まります。開発ラインのリソ開発プロセスエンジニアの朝シフトでは、コンタクトの層をはじめて下の層に合わせ、重ね合わせを測ってから、どの項目を補正するかを選びます。メインストーリー「チップの一生」の第2章「一工程ずつ」では、1層目のパターンには下に合わせる相手がなく、ウェーハの切り欠きに合わせて置くだけです。ゲームに出てくる会社・人物・ロット番号・数字は架空です。重ね合わせの測り方と補正のしかたは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかリソグラフィのプロセスエンジニア(量産工場 › プロセス › リソグラフィ)の朝シフトでは、P-3A08の重ね合わせが規格外で、次の工程はエッチング。測定装置で重ね合わせマップを見て、平行移動・回転・倍率のどの補正で矢印が短くなるかを試し、リワークするかを決めます。

fab24hrのリソグラフィの朝シフトは、重ね合わせが規格外のロットから始まります。補正はあとのロットに入れるとして、このロットはリワークか、そのまま流すか。

リソグラフィのプロセスエンジニアで、重ね合わせマップを読む

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

この記事を引用する「重ね合わせ(オーバーレイ)とは? チップの上下の層は、なぜぴったり合わせるのか」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/overlay/
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