シリコンウェーハはどうやってつくる? 砂から、磨き上げた1枚のウェーハまで
シリコンウェーハは、こうしてつくります。まず砂(珪砂)に含まれる二酸化シリコンからシリコンを取り出し、とても純粋にします。それを溶かし、小さな種結晶を浸して、回しながらゆっくり引き上げると、原子がきれいに並んだ円柱が育ちます。これをインゴットと呼びます。インゴットを丸く削り、薄く切り、平らにし、切ったときの傷を薬液で溶かして取り、鏡のように磨きます。洗って検査したら、ケースに入れて半導体工場へ送ります。インゴットを育てる工程は「結晶成長」や「単結晶の引き上げ」と呼ばれます。
この記事で扱うのはウェーハそのものの作り方だけです。ウェーハが工場に届いてからチップになるまでは「半導体はどうやって作られる?」へ。
シリコンウェーハの製造工程は、どんな順番?
おおまかに9つのステップです。順番に見ていきます。
ステップ1:砂からシリコンを取り出す
砂や石英のおもな成分は二酸化シリコンで、シリコンと酸素がしっかり結びついています。まずこれを引き離します。石英の塊を、コークスや木くずのような炭素を含むものといっしょにアーク炉に入れ、2000度ほどまで熱すると、炭素が酸素を奪って一酸化炭素になって出ていき、シリコンが残ります。こうしてできるシリコンの純度は98〜99%ほどで、金属シリコン(金属級シリコン)と呼ばれます。残りの1〜2%はおもに鉄やアルミニウムで、チップに使うにはまだまだ足りません。
ステップ2:とても純粋になるまで精製する
金属シリコンを砕いて塩化水素と反応させ、常温で液体のトリクロロシランという化合物にします。液体なので、お酒の蒸留のように何度も蒸留して、不純物を分けられます。次にそれを高温で分解すると、加熱した細いシリコンの棒の上にシリコンが1層ずつ積もり、多結晶シリコンになります。小さな結晶がたくさん集まったもので、結晶の向きはばらばらですが、純度はすでに99.9999999%(9が9つ並ぶ「ナインナイン」)以上、不純物は10億個に1個ほどです。ここまで純粋にするのは、チップにわざと加えるホウ素やリンが、少ないところではシリコン原子およそ1億個に1個しかないからです(「半導体とは?」)。望まない不純物はそれよりずっと少なくなければ、電気の通り方が狂い、金属の不純物はトランジスタのリークの原因にもなります。
ステップ3:溶かして種結晶を浸し、回しながら引き上げる
いちばんよく使われるのはチョクラルスキー法(CZ法)です。多結晶シリコンの塊を石英のるつぼに入れ、アルゴンを満たした炉の中で1400度あまりに熱して溶かします(シリコンの融点は約1414度)。インゴット全体をp型やn型にしたいときは、このとき融液にホウ素やリンをほんの少し加えます。次に、単結晶シリコンでできた小さな種結晶を下ろして液面にそっと触れさせ、種結晶とるつぼを反対向きにゆっくり回しながら、種結晶をとてもゆっくり引き上げます。溶けたシリコンは種結晶の下で固まるとき、種結晶の原子の並び方をそのまま受け継いで1層ずつ積み重なります。種結晶は行列の先頭の人のようなもので、うしろの原子はみなそれにならって並びます。だからインゴット全体がひとつの結晶になるのです。
最初に、細くて短い「ネック(首)」を引き上げます。種結晶が熱い融液に触れた瞬間、急に熱が加わるため、原子の並びが乱れることがあります。最初を細くしておくと、その乱れはネックの中で表面まで抜けて止まり、うしろのインゴットには持ち込まれません。そのあと目標の直径まで太くして、その太さのまま育て、最後に細くしぼって液面から離します。
引き上げはとてもゆっくりです。1分に1ミリ前後、1時間でわずか数センチしか伸びません。インゴットは長さ2メートルほどまで育てられます。シリコンの密度から計算すると、直径30センチ、長さ1.5メートルのインゴットは200キロを超えます。引き上げるだけで1日ほどかかります。回しながら育つので、断面は自然に丸くなります(「ウェーハはなぜ丸いのか」)。速く引きすぎたり温度がふらついたりすると、原子が並ぶ時間が足りず、並びの乱れができて、その部分はチップに使えなくなることがあります。
ほとんどのウェーハはこの方法でつくられます。るつぼを使わないFZ法という育て方もあり、より純粋なシリコンになりますが、大きな結晶はつくれないため、おもにパワー半導体などに使われます。
ステップ4:両端を切り、外周を削り、向きの目印をつける
インゴットの両端はとがっているので切り落とします。真ん中の太さにも少しばらつきがあるため、外周を正確な直径まで削ります。12インチなら300ミリです(「12インチ、8インチのウェーハとは?」)。次に結晶の向きを測り、側面に小さな溝を削ります。切り分けたあと、それが各ウェーハの縁の小さな切り欠き(ノッチ)になります(小さいウェーハでは直線の縁)。装置はこれを見て、どのウェーハも同じ角度にそろえます。これをしないと、ウェーハの大きさがまちまちで装置にきちんと収まらず、向きもわかりません。
ステップ5:薄く切る
たくさんの細い鋼線を平行に並べ、研磨材をつけて(またはダイヤモンドをつけた線を)往復させ、そこにインゴットを押し当てて、一度にたくさんの枚数に切ります。ゆで卵スライサーのようなものです。線が細いほど切りしろが狭く、粉になってむだになるシリコンが減ります。1枚ずつ仕上がりより少し厚めに切り、あとで削る分を残しておきます。それでも表面にはのこぎりの跡が残り、その下には並びの乱れた層(ダメージ層)があるので、まだ使えません。(チップができたあと、ウェーハを1個ずつのチップに切り分けるのは別の工程です。「ウェーハはどうやってチップに切り分ける?」へ。)
ステップ6:縁を丸め、平らに削り、ダメージ層を薬液で取る
まず縁を丸くします(面取り)。角がとがっていると少しぶつけただけで欠け、そこからウェーハが割れることもあります。次に両面を平らに削り、ウェーハ全体の厚さをそろえます。最後に酸やアルカリの薬液に浸して、のこぎりの跡と削ったときのダメージ層を溶かします。この層は目には見えませんが、原子の並びはもう乱れています。残しておくと、ステップ3できれいにそろえた結晶が、表面のこの部分だけむだになってしまいます。
ステップ7:鏡のように磨く
回転する研磨パッドにウェーハを押し当て、ごく細かい粒子の入った研磨液を垂らします。薬液が表面を少しやわらかくし、粒子がそれをこすり取って、鏡のようになるまで磨きます。しくみは工場の中のCMPと同じです。ここまで平らにするのは、あとで回路を焼き付ける露光装置が、ごく浅い高さの範囲でしかピントが合わないからです。表面の凹凸が大きいと、同じパターンがある場所でははっきり、別の場所ではぼやけて写ります(「CMPとは?」)。磨いたあと、表面にきれいにそろったシリコンの層をもう1枚育てるウェーハもあり、エピウェーハと呼ばれます(「エピタキシャル成長とは?」)。
ステップ8:洗浄と検査
磨いたあとの表面には、研磨液の粒子やごく微量の金属が残っているので、薬液と超純水で洗い落とします(「ウェーハ洗浄とは?」)。続いて厚さを測り、ウェーハ全体と小さな区画ごとの平らさを測ります。さらにレーザーでウェーハ全体を走査します。鏡のような表面は光をそのまままっすぐ反射しますが、パーティクルや傷に当たると光が横に散り、装置がそこを1つの点として記録します。パーティクルが1つ悪い場所に落ちるだけで、チップが1つだめになることがあります(「クリーンルームはどれくらいきれい?」)。合格しなかったものは出荷しません。
ステップ9:密閉ケースに入れて、半導体工場へ送る
合格したウェーハは、出荷専用の密閉ケースに入れます。12インチでは前面が開くタイプで、運ぶあいだほこりや衝撃から守ります。半導体工場に着いたら、工場の中で使うウェーハケースFOUPに移し替え(「ウェーハは工場の中をどう移動する?」)、生産ラインに流します。これがウェーハ投入です(「ウェーハ投入とは?」)。
なぜ単結晶でなければならないのか
単結晶では、ウェーハ全体のシリコン原子が同じ向きにきちんと並んでいます。部屋じゅうのタイルを、すべて同じ向きに貼ったようなものです。多結晶は、小さな区画ごとに別々に貼ったタイルのようなもので、区画どうしの継ぎ目が合いません。電子はきれいな並びの中ならすんなり進めますが、継ぎ目では引っかかり、継ぎ目の近くでは電流も漏れやすくなります。1つのチップに何億ものトランジスタが載ることもあり、どれも同じようにはたらく必要があります。だからチップは単結晶の上につくるのです。
fab24hrでは
fab24hrには、ウェーハをつくる工場は出てきません。ゲームは、ウェーハが半導体工場に入り、投入を待つところから始まります。いちばん近いのは、メインストーリー「チップの一生」の第1章「12枚をどう分ける」です。ウェーハ投入の前日、あなたは開発ラインの開発インテグレーションエンジニアとして、スプリット会議で、架空の補聴器用チップ「Glowmere」の第1ロット12枚をどう分けるかを決めます。第2章「一工程ずつ」の1日目は「ウェーハ投入」。12枚はまず洗浄装置WET-R1で洗われ、それから拡散炉FURN-R1に入ります。ボートに装填するとき、上・中・下にモニターウェーハを1枚ずつはさむか、真ん中に1枚だけにするかを選びます。ゲームの説明では、モニターウェーハは「何もないシリコンのウェーハ」、つまりまだパターンをつけていないウェーハです。
図鑑の「用語」にある「ウェーハ」の「もう少し詳しく」でも、単結晶シリコンの引き上げ方が読めます。ゲームに出てくる会社・人物・チップ・装置番号は架空です。ウェーハの作り方は、公開されている一般的な資料をもとに、簡単にして書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかゲームはウェーハ投入から始まり、ウェーハをつくる工場は出てきません。いちばん近いのは、メインストーリー「チップの一生」第1章「12枚をどう分ける」。ウェーハ投入の前日、Glowmereの第1ロット12枚をどう分けるかを決めます。図鑑の「用語」にある「ウェーハ」の「もう少し詳しく」でも、単結晶シリコンの引き上げ方が読めます。
fab24hrでは、ウェーハが工場に入ってからの道のりが、第1章の12枚から始まります。
第1章から:明日投入する12枚を、どう分けるか決める先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「シリコンウェーハはどうやってつくる? 砂から、磨き上げた1枚のウェーハまで」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/wafer-making/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
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