チップはどうやって基板にはんだ付けされる? 表面実装(SMT)とリフロー
チップは、表面実装(SMT)で回路基板にはんだ付けされます。SMTはSurface Mount Technologyの略です。基板にはんだペーストを印刷し、機械が部品を1個ずつ載せ、基板ごとリフロー炉に通します。はんだが溶けて、また固まれば、はんだ付けの完成です。この溶かす工程を、リフローはんだ付けといいます。スマホやパソコンの基板にぎっしり並んだ小さな部品の多くは、こうして付けられています。
パッケージに入ったチップは、何ではんだ付けする?
パッケージに入ったチップ(「パッケージングとは?」へ)の底には小さなはんだボールが並んでいるか、まわりに金属のリードが並んでいます(いろいろな形は「チップのパッケージにはどんな形がある?」へ)。回路基板には、リードやボールの1つ1つに向き合う位置に、小さな金属の面があります。これをランドといいます。はんだ付けとは、はんだでこの2つをつなぐことです。電気が通り、部品も固定されます。
それより前のやり方は、挿入実装(スルーホール実装)です。部品のリードを基板の穴に通し、裏側ではんだ付けします。表面実装は1960年代からあり、1980〜90年代に主流になりました。穴に通さないので、部品を小さくでき、基板の両面に載せられ、ぎっしり並べられます。
表面実装のラインでは、何を順番にしている?
ステップ1:はんだペーストを印刷する
- 何をする:はんだペースト(クリームはんだとも呼ばれます)は、とても細かいはんだの粉とフラックスを練り合わせたもので、ねばねばしています。小さな穴をあけた薄いメタルマスクを基板に重ね、穴を1つ1つのランドに合わせます。スキージではんだペーストを端から端へかき、穴に押し込みます。メタルマスクを外すと、各ランドに小さなはんだペーストが残ります。
- なぜ:ひとかきで、基板全体の何千か所にも印刷できます。型紙を当ててスプレーで塗るのと同じです。メタルマスクの厚さは0.1mmほどで、紙1枚くらいです。
- しないと:はんだ付けの良し悪しは、はんだの量で決まります。少なすぎればつながらず、多すぎればとなりへ流れます。
ステップ2:はんだペーストを検査する
- 何をする:カメラで、はんだペーストがどこにどれだけ印刷されたかを見ます。高さまで測って量を出す装置もあります。
- なぜ:まだ部品を載せていないので、印刷に失敗しても、直すのがずっと簡単です。
- しないと:はんだ付けのあとで見つかると、部品を外してはんだ付けし直すことになり、手間がかかるうえ、基板を傷めることもあります。
ステップ3:部品を載せる(マウント)
- 何をする:部品は、長いテープの小さなくぼみに入って、リールに巻かれています(テーピング。「チップはどうやって出荷される?」へ)。マウンター(部品を載せる機械)のノズルが真空で部品を吸い上げ、カメラで位置と向きを確かめて、はんだペーストの上に置きます。速い機械なら、1時間に1万個以上を載せます。
- なぜ:部品は小さくて数が多く、人の手では速くも正確にも置けません。ねばねばのはんだペーストが部品をくっつけておくので、次の工程へ運ぶあいだにずれません。
- しないと:ずれたり逆向きに置いたりすれば、そのままはんだ付けされてしまいます。チップには「1番ピン」を示す印があります。機械はテープの中の向きのまま部品を取り、設定された向きで置くので、テープの中でチップの向きがそろっていなければなりません(「チップはどうやって出荷される?」へ)。半回転して置かれると、電気を通しても動かず、焼けてしまうこともあります。
ステップ4:リフロー
- 何をする:基板はレールに乗って、長いリフロー炉の中をゆっくり進みます。炉はいくつかのゾーンに分かれています。まずゆっくり温め、基板全体の温度をそろえます。次に、はんだが溶ける200℃台まで上げて、少しのあいだ保ちます。最後に冷やして、はんだを固めます。1回通るのに数分ほどで、そのあいだの温度をグラフにしたものを温度プロファイルといいます。
- なぜ:部品には大きいものも小さいものもあり、大きいものほど温まるのに時間がかかります。一気に加熱すると、溶けたところとまだのところができてしまいます。はんだは先に印刷してあり、加熱はそれを「もう一度流す」ことです。英語のreflowで、リフローと呼ぶのはこのためです。溶けたはんだは丸くまとまろうとし、少しずれて置かれた小さな部品を、ランドの真ん中へ引き戻します。
- しないと:温度が低すぎたり時間が短すぎたりすると、はんだ付けが弱くなります。高すぎたり長すぎたりすると、部品や基板が傷み、はんだももろくなります。基板の種類ごとに、温度プロファイルを合わせる必要があります。
ステップ5:はんだ付けを検査する
- 何をする:カメラで基板全体を撮り、あるべき姿と比べます。部品はあるか、ずれていないか、はんだの形は正しいか。これを自動光学検査(AOI)といいます。底にはんだボールが並ぶチップは、はんだ付けの部分が下に隠れているので、X線で見ます。ボールどうしがつながっていないか、欠けていないか、中に気泡がないかがわかります。
- なぜ:カメラは速く、基板全体を見られます。X線は遅いので、おもにカメラで見えないところに使います。
- しないと:不良の基板が製品に組み込まれてから問題が出ると、原因を探すのがもっと難しく、もっと高くつきます。
ステップ6:挿入部品と手直し
- 何をする:いまも穴に通して付ける部品があり、表面実装のあとではんだ付けします。基板の裏を溶けたはんだの波の上に通したり、その数か所だけを温めたりします。数が少なければ手ではんだ付けします。
- なぜ:何度も抜き差しするコネクタや、大きくて重い部品は、穴に通したほうがしっかり付きます。その数か所だけを温めれば、付け終わった小さな部品に、もう一度熱をかけずに済みます。
- しないと:大きな力がかかる部品を表面の小さなはんだだけで留めると、外れやすくなります。
よくあるはんだ付けの不良は?
- はんだが少なく、つながらない:メタルマスクの穴が詰まったり、印刷が少なすぎたりすると、はんだがリードに届かず、電気が通りません。
- はんだが多すぎて、つながってしまう:となりのリードとのあいだにはんだの小さな橋ができ、ショートします(ブリッジ)。リードの間隔がせまいほど起きやすくなります。
- 部品の片側が立ち上がる(ツームストーン):小さな抵抗やコンデンサは、両端がそれぞれはんだペーストに乗っています。両端のはんだが溶けるタイミングがずれたり、量が大きく違ったりすると、先に溶けた側が部品を引っぱり、反対側が持ち上がって、墓石のように立ってしまいます。部品が小さいほど起きやすくなります。
- 湿気を吸った部品が、炉で押し広げられる:プラスチックのパッケージは、空気中の水分を吸います。防湿梱包を開けてから長く置き、乾燥させないまま炉に通すと、水分が熱で水蒸気になり、パッケージとチップを押し広げてしまいます。これをポップコーン現象といいます。だから袋を開けたら、決められた時間内にはんだ付けし、過ぎたら先に乾燥させます。
表面実装はどこでする? ウェーハ工場や後工程工場との関係は?
チップが製品になるまでに、おおまかに3種類の工場を通ります。
- ウェーハ工場:ウェーハの上に回路を1層ずつつくります。表面実装のラインはありません。
- 後工程工場:ウェーハをテストし、切り分け、パッケージに入れ、もう一度テストして、テーピングで出荷します(「OSATとは?」へ)。
- 組立工場:表面実装でチップやほかの部品を回路基板にはんだ付けし、スマホやパソコンに組み込みます。電子機器の組み立てを請け負う専門の会社に任せることがよくあります(「半導体のサプライチェーンとは?」へ)。
フリップチップやSiPの部品実装は、表面実装と同じ?
どれも、はんだを溶かして2つをつなぐのは同じです。違うのは、何を、どこにはんだ付けするかです。
| フリップチップ | SiPの中の部品実装 | 表面実装(この記事) | |
|---|---|---|---|
| 何を | チップそのものを、裏返して | 小さな抵抗やコンデンサ | パッケージに入ったチップ、モジュール、小さな部品 |
| どこに | パッケージの中の小さな基板 | モジュールの中の小さな基板 | 製品の回路基板 |
| はんだ | チップの小さなバンプ | はんだペースト | はんだペースト |
| おもにどこで | 後工程工場 | 後工程工場 | 組立工場 |
フリップチップはパッケージの中で、チップをパッケージの小さな基板にはんだ付けします(「フリップチップとは?」へ)。表面実装はパッケージの外で、パッケージに入ったチップを回路基板にはんだ付けします。
1つのSiPモジュールの中の部品実装は、同じ種類の作業をモジュールの中でするものです。小さな基板にはんだペーストを印刷し、抵抗やコンデンサを載せ、リフロー炉に通します(「SiPとは?」へ)。モジュールができあがると、組立工場で、こんどは表面実装でモジュールごと回路基板にはんだ付けされます。
fab24hrでは
メインストーリー「チップの一生」第11章「ボールが浮いた」では、あなたは後工程工場の組立プロセスエンジニアです。ラインリーダーのシューフイが、部品実装ラインへ案内してくれます。「ここでまず、抵抗やコンデンサを基板にはんだ付けする。これが部品実装。それからチップを接着する。これがダイボンド。」ここは小さな表面実装ラインです。
図鑑の「装置一覧」では、部品実装ラインも「分解して見る」ができます。「動きを見る」を押すと、はんだペーストをかき、ノズルがテープから抵抗やコンデンサを吸い上げ、リフロー炉を通るまでを一歩ずつ見せてくれます。
モジュールを回路基板にはんだ付けするのは、顧客の組立工場です。「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「後工程工場」を押し、左右にスワイプして顧客窓口にします(シフトは端末の時刻で決まります)。深夜シフトでは、顧客の組立工場から電話があります。リールからチップを吸い上げて基板に載せる機械の設定と、1番ピンの向きが合っていないようだ、と。朝シフトでは、顧客がエンジニアリングサンプルを1個返してきます。袋を開けてから3週間たって基板に載せ、炉に通す前に乾燥させていなかったものです。
ゲームの中に、入って歩ける組立工場はありません。後工程工場、チップのGlowmere、顧客、人物は架空です。表面実装のしくみは、公開されている一般的な資料をもとに書いていて、温度や速さはおおよその桁だけにしています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」第11章「ボールが浮いた」では、シューフイが後工程工場の部品実装ラインへ案内してくれます。ここでまず、抵抗やコンデンサをモジュールの小さな基板にはんだ付けします。「工場の一日」で顧客窓口になると、深夜シフトには顧客の組立工場から、リールの中のチップの向きについて電話があり、朝シフトに戻ってきた1個は、湿気を吸ったまま炉に通されて押し広げられたものでした。図鑑の「装置一覧」では、部品実装ラインも分解して見られます。
fab24hrでも、Glowmereのモジュールに載る抵抗やコンデンサは、はんだペーストを印刷し、部品を載せ、リフロー炉に通してはんだ付けされます。後工程工場の部品実装ラインは、小さな表面実装ラインです。
第11章を遊び、シューフイと部品実装ラインへ先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「チップはどうやって基板にはんだ付けされる? 表面実装(SMT)とリフロー」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/smt/
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