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工場の中約8分

装置が直ったのに、なぜ「テストラン」をするのか

装置が直ったのにテストランをするのは、「直った」が証明しているのは装置が動くことだけで、作るものが正しいかどうかはまだわからないからです。テストランとは、装置のPMや修理のあと、まず出荷しないまっさらなウェーハ(テストウェーハ)を何枚か入れ、決まった条件で一度流して、できたものを測ることです。規格内で、しかもその装置のふだんの数字に近ければ、装置は復旧して生産に戻れます。英語では qualification(略して qual)、メンテナンス後にもう一度やるものは requalification とも呼ばれます。

車の整備工場でブレーキを替えたあと、整備士がまず自分で近所を一周し、何度かブレーキを踏んでから鍵を返すのに少し似ています。PMのあとに通る関門の一覧は「装置のPM(予防保全)とは?」にあります。この記事は、そのうちのテストランだけを扱います。

直ったなら、なぜすぐ製品を流さないのか

理由は3つあります。

  1. チャンバーの中が前と同じではない。部品を替えたりチャンバーを開けたりすると、内壁の状態、中に残った水分、部品の位置が、止める前とは違います。きれいに清掃したばかりの内壁では、最初の何枚かがかえっていつもと違う削れ方をします。研究者はこれを「ファーストウェーハ効果」(first wafer effect)と呼んでいます。
  2. 修理そのものに間違いがあるかもしれない。部品がきちんと座っていない、継ぎ手が締め切れていない。その場では気づかないことがよくあります。
  3. 賭けに負けたときの損が違いすぎる。テストウェーハはまっさらなので、だめになったら1枚替えればすみます。お客さんのウェーハは1ケースに最大25枚で、どの1枚もすでに前の工程をたくさん通ってきています。それで試してロットを1つ失敗すれば、テストウェーハ数枚とは比べものにならない損になります。

テストランはどうやるのか:順番に見る

ステップ1:装置を止める

何をする:装置を計画どおりPMにかけるか、故障してアラームが出たら、状態をダウンにして、後ろのロットを入れません。なぜ:開けて手を入れる以上、中でロットが流れていてはいけません。やらないと:ロットが予定どおり入り、壊れた装置や分解途中の装置の中で不良になります。

ステップ2:装置エンジニアが直して引き渡す

何をする:装置エンジニアが部品を替え、組み立て直し、真空引きとリークチェックをして、ハードウェアに問題がないことを確かめてから、プロセスエンジニアに装置引き渡しをします。なぜ:先に「動くかどうか」を確かめておけば、テストランで測れるのは「正しく作れるかどうか」になります。やらないと:継ぎ手がまだ漏れていてテストランが通らず、ハードウェアの問題なのか条件の問題なのかも区別できません。

真空引きになぜ時間がかかるかは「半導体の装置は、なぜ真空にするのか」へ。

ステップ3:テストウェーハを流して測る

何をする:まずダミーウェーハを何枚か流して、清掃したばかりの内壁を落ち着かせます(シーズニング)。それからテストウェーハを決まった試験条件で流し、測定に回します。この2つを誰がやるかは、工場によって違います。エッチング装置なら、よく見るのは次の3つです。

  • エッチングレート:テストウェーハには膜が1層ついています。エッチングの前に厚さを測り、終わったらもう一度測ります。差を時間で割ると、1分間にどれだけ削れたかがわかります。
  • 均一性:同じ1枚の上でたくさんの点を測り、中心と端で同じように削れたかを見ます。
  • パーティクル:流す前に一度数え、流したあとにもう一度数えます。増えたパーティクルは、装置そのものから落ちたものです。

なぜ:3つはそれぞれ「十分に削れたか」「ウェーハ全体が同じか」「きれいか」に答えます。やらないと:1つだけ、たとえばエッチングレートだけ見て合っていても、かけらがたくさん落ちていることには気づきません。

膜をつける装置や注入装置で測るものは違います。「モニターウェーハ、ダミーウェーハとは?」へ。

ステップ4:規格を見て、その装置のふだんの数字とも比べる

何をする:数字をまず規格と比べ、次にその装置のこれまでの数字、たとえばその装置自身の管理図と比べます。なぜ:規格が教えるのは「合格か不合格か」、ふだんの数字が教えるのは「前と同じかどうか」です。規格内でも、ふだんと明らかに違えば、装置の中で何かが変わったということ。そんなときは、もう何枚か流して確かめることがよくあります。やらないと:毎回「ぎりぎり合格」のまま、装置が少しずつずれていき、本当に規格を外れたときには、もうたくさんのロットが流れています。

管理図の見方は「SPCの管理図とは?」へ。

管理図:中央はふだんの中心線、破線は工程自身のデータから計算した管理限界、外側の実線は規格限界です。1つの点が管理上限を超えていますが、まだ規格内で、これがOOCです。下:各工程で99.9%が良品なら、500工程後には約6割が残ります。
管理限界は「ふだんと違うか」、規格限界は「合格か」を見ます。点が管理限界を超えたら、製品がまだ合格でも、まず止めて原因を探します。

ステップ5:両方が通って、はじめて復旧

何をする:プロセスエンジニアが結果を確かめ、装置を生産に戻し、製造部にロットを流してよいと伝えます。通らなければステップ2に戻り、装置エンジニアがもう一度調べ、直してから、またテストランです。なぜ:装置エンジニアが引き渡すのは「装置が動く」こと、プロセスエンジニアが確かめるのは「作ったものが正しい」こと。半分ずつ、責任を持つ人がいます。やらないと:片方だけで決めてしまうと、残りの半分は誰も見ていません。

2種類のエンジニアの分担は「プロセスエンジニアと装置エンジニアはどう違う?」へ。

ステップ6:復旧のあと、最初の何ロットかは少し多めに見る

何をする:復旧後の最初の何ロットかは測定結果をもう一度よく見て、替えたばかりの部品にかかわるセンサーの数字も何日か見張ります。工場によっては、そのロットをいつもより多めに測ります。なぜ:テストウェーハは数枚、条件も1通りだけです。替えたばかりの部品の問題は、最初の1枚で出るとは限りません。やらないと:少しずつ悪くなるタイプの問題は、何ロットもあとになってやっと見つかります。

装置のセンサーがどう見張られているかは「FDCとは?」へ。

新しい装置の最初の検収と、PM後のテストランはどう違う?

どちらも「先に証明して、それから生産」ですが、証明するものが違います。

新しい装置の最初の検収PMや修理のあとのテストラン
いつ工場に運び込んで据え付けたときPM、修理、チャンバー開放のたび
何を証明する約束したことができて、生産に使えること止める前と同じ状態に戻ったこと
何と比べる買い手と売り手が前もって決めた条件規格と、その装置自身のこれまでの数字
どのくらいかかる長い。試す項目が多い短い。テストウェーハ数枚

新しい装置には、比べる「ふだん」がまだありません。契約どおりの検収に通ったあとも、しばらく流して自分の数字をためてから、ようやくその装置の管理限界線が引けます。そのあとのテストランは毎回、その数字と比べます。新しい装置が搬入から検収のサインまでどう進むかは「装置メーカーのフィールドサービスエンジニア(FSE)は何をしている?」へ。

fab24hrでは

「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてプロセスエンジニアで止め、名前の下の「エッチング」を押すと、エッチングのプロセスエンジニアになります。

  • 朝シフト「火消し」:ETCH-03のチャンバーAは02:47から止まったまま。朝会で課長に「何時に復旧できる?」と聞かれます。あとで装置のカイさんは「こっちが渡せるのは『装置が動く』ところまで。そこで作るものが正しいかどうかは、そっちのテストランが通ってはじめて決まる」。ハードウェアが引き渡されたら、まず真空ピンセットでテストウェーハを3枚、ウェーハケースに移します。手が揺れて、1枚落とすかもしれません。テストランでは2つの設定、シーズニングを何枚流すかと、真空引きとベークを何分やるかを動かして、エッチングレートとパーティクル増加数(10個以下)を同時に規格内に入れます。足りなければ通らないし、やりすぎれば後ろのロットがみんな待ちます。合格したら、製造部のユンさんにロットを流してよいと伝えます。カイさんは、新しいESCのHe流量を3日続けて見ると言います。「チップの一生」第7章「火消し」も、この朝です。
  • 夜シフト「帰れそうで帰れない」:先に帰らなければ、カイさんに、チャンバーAのHe流量をちょっと見ていてほしいと頼まれます。1枚ごとに少しずつ高くなり、警告ラインに届いて、黄ランプがつきます。黄ランプを消して帰るか、起票するか。決めるのはあなたです。
  • 午後の検討会から夜の引き継ぎまでのあいだ、測定装置に戻って見ることもできます。復旧後、もう3ロットが測られています。線幅は中心線のあたりに戻ったでしょうか。

エッチング装置エンジニア(スワイプして装置エンジニアで止め、名前の下の「エッチング」を押す)としてプレイすると、朝シフトはESCの交換のあと、装置引き渡しで終わります。引き渡しの前の手順には、省けるものがあるかもしれません。リークチェックを省くと、最初のテストウェーハでHe流量が警告ラインを超え、もう一度チャンバーを開けることになります。

ゲームに出てくる会社・人物・装置番号・数字は架空で、テストランの画面の規格にも「数字はイメージです」と書いてあります。テストランとは何か、なぜやるのかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。実際に何を試し、規格がいくつかは、装置の種類ごと、工場ごとに違います。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかエッチングのプロセスエンジニア(量産工場 › プロセス › エッチング)としてプレイすると、朝シフトでETCH-03のチャンバーAのESCが替わり、装置エンジニアから引き渡されたあと、テストランをするのはあなたです。エッチングレートは規格内、パーティクル増加数は10個以下で合格。夜シフトでは、新しい部品のHe流量を見張るのを手伝うこともあります。

fab24hrでは、装置エンジニアが引き渡すのは「装置が動く」こと。あなたが確かめるのは「作ったものが正しい」こと。テストランの時間はいちばん急かされやすく、いちばん削ってはいけません。

エッチングのプロセスエンジニアで遊び、部品交換のあとテストランをする

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

この記事を引用する「装置が直ったのに、なぜ「テストラン」をするのか」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/tool-qual/
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