SOPとは? 半導体工場の標準作業手順書
SOPはStandard Operating Procedureの略で、日本語では標準作業手順書、または標準操作手順書と呼ばれます。作業の手順を一つずつ書いた文書で、違う人が違うシフトでやっても、同じ結果になるようにするためのものです。公開されているSOP作成の手引きでは、組織がくり返し行う決まった作業を記録した、書面の指示の集まりと定義されています。半導体工場では、装置の立ち上げ方、メンテナンスでの分解と組み戻し、ガスボンベの交換に、それぞれSOPがあります。
組み立て家具の説明書に少し似ています。1番目にこの2枚の板、2番目にこのねじ。そのとおりにやれば、誰が組んでも同じものができます。違うのは、半導体工場では一手順の間違いで、ロットまるごと失うかもしれないことです。
SOPの3文字は何の意味?
- Standard:標準。みんなが同じものに従う。
- Operating:作業、操作。ふだん行っている仕事。
- Procedure:手順。一つずつ順に進めるやり方。
チップのパッケージにもSOPがありますが、こちらはSmall Outline Packageの略で、2辺から細いリードが出るパッケージのことです。この記事の文書とは別のものです(「チップのパッケージにはどんな形がある?」)。
SOPとレシピ、OCAPはどう違う?
まずレシピは、装置がそのとおりに動く数字の集まりです。温度、ガス、秒数(「半導体のレシピとは?」)。SOPは人が読むものです。どんな作業を、どの順で行い、何を確認するか。OCAPも人が読むものですが、異常が起きたときに、どの順で対応するかだけを決めています(「OCAPとは?」)。つまり、人はSOPに従ってロットを載せて確認し、装置はレシピどおりに動き、アラームが鳴ったらOCAPに従います。
半導体工場のSOPは、何を決めている?
分け方は工場ごとに違いますが、よくあるのは次のようなものです。
- 装置の操作:立ち上げ、ロットを載せる前に確認すること、処理のあとに見る数字、停止のしかた。規則をネットで公開している大学のクリーンルームにも、同じやり方のところがあります。装置ごとにSOPがあり、その装置の訓練を受けてからでないと一人では使えません。
- メンテナンス:PMのとき、どこを外し、何を替え、どの順で組み戻し、組み戻したあと何を確かめるか(「装置のPM(予防保全)とは?」「装置が直ったのに、なぜ『テストラン』をするのか」)。労働安全の資料は、メンテナンスでよくある失敗は組み戻しと再立ち上げのときに起きると注意しています。組み付けの間違い、一手順の抜け、安全装置のつなぎ忘れです。
- めったにないけれど、起きたら正しくやるべきこと:たとえば緊急停止や、停止のあとの再立ち上げ。危険性の高い化学プロセスを対象にした安全規則には、こうした場面も操作手順に書くよう求めるものがあります。
- 薬液とガス:特殊ガスのボンベ交換、薬液の補充、修理の前のロックアウト・タグアウト。一つひとつの手順、何を身に着けるか、2人でやるかどうかが、SOPに書かれています(「半導体工場の仕事は安全?」)。
SOPはどう作られ、どう改められる? 一つずつ見る
呼び方や書式、誰が承認するかは工場ごとに違います。よくある順番は次のとおりです。
- 書く:実際にその作業をする人が、装置にくわしいエンジニアと一緒に書きます。一手順に一つの動作、作業する順に並べます。その手引きも、その作業をよく知る人が、短く、あいまいさなく書くよう求めています。書く人が現場を知らないと、実際のやり方と合わず、みんな自分の癖でやるようになります。
- 審査する:その作業をわかっている別の人が読み、承認してから現場に出します。書いた本人には、自分が抜かした一手順がいちばん見えません。審査がないと、間違った手順がそのまま「標準」になります。
- 教えて、理解を確かめる:経験のある人について習い、目の前でやってみせ、できると確かめて訓練記録を残してから、一人で作業します。読んだことと、できることは別です。だから先ほどのような安全規則も、雇用主に、働く人が本当に理解したかを確かめ、その確かめ方を記録するよう求めています。確かめずに始めると、最初の練習が製品の上になります。
- 守って、記録を残す:作業中はSOPを手元に置き、一手順終えるたびにチェックし、数字はその場で書きます。記憶に頼ると抜けやすいからです。医薬品製造の規則も、書かれた手順に従い、その場で記録し、手順から外れたら理由を書き残すよう求めています。記録がないと、次のシフトはどこまで終わったのかわかりません(「半導体工場の交代の引き継ぎでは、何を渡す?」)。
- おかしいと気づいたら申し出て、手続きを踏んで改訂する:まちがった手順、抜けている手順、できない手順に気づいたら申し出て、決められた手続きで改訂します。新しい版も審査と承認を受け、改訂後にもう一度教えます。プロセス条件が変わる場合は、変更管理の手続きも通します(「半導体工場の変更管理とは?」)。紙の上の一手順が変わってはじめて、次の人もそのとおりにします。めいめいが現場でやり方を変えると、紙と現場が別々になります。
- 古い版を回収する:新しい版が出たら、古い版は現場とシステムから回収するか、廃止とはっきり示します。品質マネジメントの国際規格も、文書が使う場所で手に入ること、改訂が管理されていることを求めています。2つの版が並んでいれば、いつか誰かが古いほうを手に取ります。
誰も申し出なくても、SOPは定期的に見直され、今の現場のやり方と合っているかが確かめられます。
「SOPどおり」でも、なぜ間違いが起きる?
SOPがあれば間違えない、というわけではありません。よくあるのは次の4つです。
- 手順があいまい、または一手順書き忘れている:メンテナンスのあとバルブを自動に戻すのに、SOPにその1行がない。全部の手順をそのとおりにやっても、バルブは手動のままです。
- 古い版を見ている:SOPが改訂されたのに、手元にあるのは古い版。労働安全の公開資料は、手順が守られない理由として、まちがっている、古い、使いにくい、必要なときに手元にない、をよくある原因に挙げています。
- 手順を省く:急いでいるとき、またはその手順がむだに見えるとき(「付けたばかりだから、漏れないだろう」)。ヒューマンエラーの研究では、守りようのない決まりや時間の圧力が、決まりを飛ばすよくある原因とされています。飛ばすのが続くと、飛ばしていることにさえ気づかなくなります。
- SOPが想定していない状況:SOPに書いてあるのはふだんのこと。書いていない場面に出会ったら、手を止めて電話で聞きます。自分で推測はしません(「オペレーター(技術員)とエンジニアはどう違う?」)。
良いSOPは、どうやって守りやすくする?
- 短く、はっきり、現場の言葉で:一手順に一つの動作。使う人が書くのにも、問題探しにも加わります。
- 作業する場所に置く:装置の横やキャビネットの扉に貼り、事務所まで探しに戻らなくていいようにします。
- 大事なところには理由を書く:たとえば範囲を外れたらどうなるか、どう直すか。先ほどのような安全規則は、これを操作手順に書くよう求めています。手順についての研究論文も、作業する人がある一手順の理由をわかっていないと、むだだと思って飛ばすことがあると指摘しています。
- いちばん大事な手順は2人で:1人が読み、1人が作業します。航空機の操縦室のチェックリストも、1人が項目を読み、もう1人が確かめて答える使い方がよくあります。
- 仕組みで止められるなら、注意書きだけに頼らない:間違った一手順をそもそもできないようにすることを、ポカヨケといいます(「MOとは?」)。
同じ手順がいつも飛ばされるなら、まず理由を聞きます。直すべきなのは、たいていその人ではなく、そのSOPです。
fab24hrでは
「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプして装置エンジニアで止め、名前の下の「エッチング」を押します。朝シフト「チャンバー開放」では、ETCH-03のチャンバーAのESC(静電チャック)を交換します。分解と組み戻しにそれぞれ手順リストがあり、ロックアウト・タグアウト、チャンバーが冷めるのを待つところから、新しいものの取り付け、真空引き、リークチェックまで並んでいます。手順ごとにかかる分数が書かれていて、製造部のユンさんがときどき「何時に直る?」と電話してきます。いくつかの手順には「省略可」とあり、たとえばリークチェックには「付けたばかりの部品だ。漏れはしないだろう。」とあります。実施すると、カイさんが「リークチェックで1か所見つかったね。付けたばかりの部品が、いちばん漏れるんだ。」と言います。先にカードで「開発ライン」を押して装置メーカーの常駐エンジニアになり、夜シフト「四半期末」で顧客にもう1日もらって測り直すと、サービスレポートに「ESC交換後は、継手のリークチェックを行うこと。」と書きます。すると、この手順リストにその1行が加わり、リークチェックは省けなくなります。
ファシリティエンジニアまでスワイプし、名前の下の「ガス・化学品」を押すと、深夜シフト「当直」では、WET-02の酸補充バルブがメンテナンスのあと手動のままになっていて、PM記録には「作業後は自動に戻す」という一行がありません。03:30、その一行を書き足すことも、日勤に任せることもできます。朝シフト「ボンベ交換」では、フイルーさんが「手順書はキャビネットの扉に貼ってある。私が一手順読むから、一手順ずつやって。」と言います。エッチングのプロセスエンジニアの昼シフト、16:30の検討会では、部長が「SOPには、投入前に確認するとはっきり書いてある。それなのに、なぜ間違いが起きる?」と聞きます。結論は「つまり、直すべきはその段階だ。その人ではない。」です。
ゲームに出てくる会社、人物、装置番号、手順と分数は架空のものです。SOPとは何か、どう書きどう改めるかは、公開されている一般的な資料をもとに書いていて、実際の書式や誰が承認するかは会社ごとに違います。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかエッチング装置エンジニア(量産工場 › 装置 › エッチング)としてプレイすると、朝シフトはチャンバーを開けてESCを交換します。分解と組み戻しにそれぞれ手順リストがあり、いくつかの手順には「省略可」と書かれています。ファシリティエンジニア(量産工場 › ファシリティ › ガス・化学品)の朝シフトはボンベ交換。手順書はキャビネットの扉に貼ってあり、1人が読み、1人が作業します。
fab24hrの手順リストには、「省略可」と書かれた手順がいくつかあります。省くかどうかはあなた次第。省いた一手順は、あとで戻ってきます。
エッチング装置エンジニアで遊び、手順リストどおりに装置を直す先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「SOPとは? 半導体工場の標準作業手順書」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/what-is-sop/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
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