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チップのつくり方約8分

STI(シャロートレンチアイソレーション)とは? トランジスタどうしをどうやって分けるのか

STI(シャロートレンチアイソレーション、shallow trench isolation)は、ウェーハの表面で、トランジスタとトランジスタのあいだに浅い溝を掘り、電気を通さない酸化物で埋めて、トランジスタどうしを分ける方法です。素子分離のひとつで、シリコンにトランジスタをつくる最初のステップでもあります。まず1つずつの場所を囲っておいて、そのあとの工程をその中に進めていきます。

この記事は、「トランジスタはどうやってつくる?」のステップ1を、くわしく分解したものです。

トランジスタどうしを、なぜ分けなければならないのか?

チップの上では、トランジスタがすぐ隣どうしに並んでいます。1つずつが電気で動かす小さなスイッチで(「トランジスタとは?」を参照)、どれも同じ1枚のシリコンの中につくられます。シリコンは半導体で、まったく電気を通さないわけではありません(「半導体とは?」を参照)。あいだに何もなければ、電気がまわりのシリコンを通って、隣のトランジスタへ流れてしまうことがあります。

すると、隣どうしのトランジスタがリークし合い、じゃまし合って、切れるべきスイッチがきちんと切れません。これもリークの一種です。リークがあるとなぜチップが電気を使い続けるのかは、「チップはなぜ電気を使う?」へ。

そこで、トランジスタが乗る小さなシリコンの区画は、まわりをぐるりと絶縁の壁で囲う必要があります。トランジスタのために残す区画を「アクティブ領域」(活性領域)といい、そのまわりの壁が素子分離です。

以前はどうやって分けていた? LOCOSと「バーズビーク」

以前よく使われたのは、シリコンの局所酸化(LOCOS)です。残したい場所を窒化シリコンでおおい、ウェーハを拡散炉に入れて、むき出しのシリコンをそのまま厚い酸化膜に変え、壁にします(熱酸化とは何かは「拡散炉では何をしている?」へ)。ところが、酸素は窒化シリコンのふちの下へ横向きにもぐりこむので、壁のふちは先のとがった薄い形に伸びて、隣のトランジスタをつくる場所に入りこみます。鳥のくちばしに似ているので、バーズビークと呼ばれます。バーズビークはトランジスタと一緒に小さくするのが難しく、トランジスタが小さくなるほど占める割合が大きくなり、表面も平らになりません。そのため、溝を掘って酸化物で埋める方法に置き換わりました。

シャロートレンチ分離はどうやってつくる? 一歩ずつ

以下は、教科書や大学の講義資料でよく見る順番を簡略化したものです。実際の流れでは、あいだに何度も洗浄と測定が入ります。

ステップ1:パッド酸化膜をつけ、窒化シリコンをかぶせる

  • 何をする:ウェーハを洗ってから拡散炉に入れ、シリコンの表面にごく薄い酸化膜をつけます。これを「パッド酸化膜」といいます。その上に、成膜装置で硬い窒化シリコンをかぶせます。
  • なぜ:窒化シリコンは、この段階全体の防具です。溝を掘るときは掘らない場所をおおい、磨くときは止まる目印の層になります。パッド酸化膜はあいだに敷くクッションです。窒化シリコンをシリコンに直接のせると、シリコンを引っぱって傷めてしまいます。
  • しないと:窒化シリコンがなければ、エッチングも研磨も止めるものがありません。パッド酸化膜がなければ、シリコンの表面に欠陥が残ります。トランジスタをつくるのは、まさにその表面です。

ステップ2:リソグラフィで、残す場所と掘る場所を焼く

  • 何をする:リソグラフィのエリアでレジストを塗り、フォトマスクを通して露光し、現像して、アクティブ領域の形をレジストに焼きます。おおわれた場所はトランジスタのために残り、むき出しの場所が溝になります。
  • なぜ:これはチップ全体で最初のパターンなので、下に合わせるものがまだありません。この層ができてはじめて、あとの層に合わせるものができます(重ね合わせ)。
  • しないと:ずれたり、ぼやけたりすると、アクティブ領域の大きさと位置がくるいます。ただ、レジストの段階なら、失敗しても洗い落として焼き直せます(「フォトリソグラフィとは?」へ)。

ステップ3:エッチングで浅い溝を掘る

  • 何をする:プラズマで、レジストのパターンどおりに下へ削ります。まず窒化シリコンとパッド酸化膜を抜け、それからシリコンに溝を掘ります(「エッチングとは?」へ)。
  • なぜ:溝は壁の型です。どんな形に掘るかで、壁の形が決まります。溝の側壁はわざと少しだけ斜めにするのがふつうで、そのほうがあとで埋めやすくなります。溝の角も、とがりすぎてはいけません。
  • しないと:深さがばらつくと、壁が高いところと低いところができます。線が密に並んだところは、掘るのが遅くなって浅めになりがちです。そこで、一緒に流したテストウェーハを切って、溝の形を確かめます。

ステップ4:溝の壁に薄い酸化膜をつけ、傷を直し、角を丸める

  • 何をする:レジストを取って洗浄し、もう一度拡散炉に入れて、溝の壁と底に出ているシリコンに、ごく薄い酸化膜をつけます。これを「ライナー」(内張り)といいます。
  • なぜ:プラズマを浴びたばかりのシリコンの表面は傷んでいます。酸化膜をつけるとその傷が直り、シリコンと酸化物の境目がきれいになります。溝の上のとがった角も、酸化されて少し丸くなります。
  • しないと:傷が残るとリークします。とがった角には電界が集中し、あとでその上につくるゲートの絶縁膜も薄くなりがちで、トランジスタの角の部分がリークしやすくなります。

ステップ5:溝を酸化物で埋める

  • 何をする:化学気相成長(CVD)で、溝に二酸化シリコンを埋めます。わざと溝の深さより厚くつけて、ウェーハ全体をおおいます(「成膜とは?」へ)。
  • なぜ:溝は底から上まで、電気を通さないものですき間なく埋めないと、壁になりません。上に余分についた分は、次のステップで磨き取るためのものです。
  • しないと:溝の口が先にふさがると、中に空洞(ボイド)が残り、壁に穴があいているのと同じことになります。溝が細く深いほど、埋めるのは難しくなります。

ステップ6:CMPで平らにし、窒化シリコンで止める

  • 何をする:CMPで溝の外の余分な酸化物を磨き取り、窒化シリコンが出てきたところで止めます。窒化シリコンは酸化物より削れにくいので、そこに届くと研磨の力や反射する光が変わり、装置は「届いた」とわかります(「終点検出とは?」へ)。
  • なぜ:表面が平らでないと、次の層をきれいに焼けません。窒化シリコンの上もきれいにしておかないと、次のステップではがせません。
  • しないと:磨き足りないと、窒化シリコンの上に薄い酸化物が残り、次のステップできれいにはがせません。磨きすぎると、幅の広い溝の真ん中が浅いお皿のようにへこみます。これをディッシングといいます。そこで、設定どおり少しだけ多めに磨き、両方のかね合いをとることがよくあります(「CMPとは?」へ)。

ステップ7:窒化シリコンとパッド酸化膜をはがす

  • 何をする:加熱したリン酸(熱リン酸)に浸します。熱リン酸は窒化シリコンを溶かしますが、酸化物にはほとんど触れません。そのあと希フッ酸に浸して、パッド酸化膜を取ります。
  • なぜ:窒化シリコンとパッド酸化膜は、この段階のための道具にすぎません。役目が終わったら取り除き、きれいなシリコンを出して、そこにトランジスタをつくります。
  • しないと:窒化シリコンが残ったところでは、トランジスタがうまくできません。希フッ酸は溝の中の酸化物も少し削るので、何度も浸すと壁がシリコンの表面より低くなります。だから、1回ごとにどれだけ削れるかを、前もって計算に入れておきます。

できあがりはどんな形? 次は何をする?

はがし終わると、シリコンの表面は島がいくつも並んだ形になります。1つの島が1つのアクティブ領域で、まわりを酸化物で埋めた溝が囲み、全体はおおむね平らです。

このあとはじめて、島の中に原子を打ち込んでウェルをつくり、ゲート、ソースとドレインをつくって、最後に配線をつなぎます。下の図のいちばん最初のコマが、この記事で見た素子分離です。

平面トランジスタのつくり方を示す断面の連続図:素子分離で浅い溝を掘って酸化膜で埋め、リンとホウ素を打ち込んでn型とp型のウェルをつくり、とても薄い絶縁膜とポリシリコンのゲートをつけ、ゲートを盾にしてソースとドレインを打ち込み、アニールし、絶縁膜をつけて小さな穴を金属で埋めてコンタクトをつくり、1層目の金属配線でつなぎます。最後のこまは境目を示します。シリコンの中のトランジスタがFEOL、上の金属配線がBEOLで、コンタクトはその境目にあります。
どのこまも同じシリコンの断面です。左は入口と出口がn型のトランジスタで、p型のウェルにのります。右はp型のトランジスタで、n型のウェルにのります。簡略化した平面トランジスタで、縮尺は正確ではありません。最先端のトランジスタはもっと立体的で、工程も多くなります。

fab24hrでは

メインストーリー「チップの一生」の第2章「一工程ずつ」の大半は、シャロートレンチ分離です。ウェーハ投入から最初の5日間、あなたは開発インテグレーションエンジニアとして、架空の補聴器チップ「Glowmere」の最初の12枚について開発ラインを回ります。洗浄、拡散炉でのパッド酸化膜、モニターウェーハの測定、窒化シリコンの成膜、最初のパターン、溝のエッチング。4日目には、CMP-R1で研磨テーブルを回す力を見て、エンドポイントを探します。

窒化シリコンに届いたら、あなたが選びます。レシピどおりエンドポイントのあと少し削れば、幅の広い溝が少しへこみます。届いた瞬間に止めれば、5日目に熱リン酸で窒化シリコンをはがすとき、何か所か残ってしまい、先に希フッ酸に浸してからもう一度はがすことになります。窒化シリコンをはがしたら、次はウェルです。

ゲームではこの段階を5日間にまとめていて、エッチングのあとの洗浄、ライナー、溝の埋め込みはナレーションで済ませ、パッド酸化膜をはがすところは出てきません。ゲームの会社、チップ、人物、装置、数字は架空のものです。各ステップは公開されている一般的な資料をもとにしていて、簡略化しています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」第2章「一工程ずつ」:ウェーハ投入から最初の5日間、Glowmereの最初の12枚でやることの大半が、シャロートレンチ分離です。パッド酸化膜、窒化シリコン、最初のパターン、溝のエッチング、窒化シリコンまでのCMP、窒化シリコンの除去と、一工程ずつ自分の手で進めます。

fab24hrでは、シャロートレンチ分離のほとんどの工程を、12枚のウェーハと一緒に自分の手で進められます。CMPをどこで止めるかも、あなたが決めます。

第2章「一工程ずつ」から、溝を掘って磨くところを自分の手で

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

この記事を引用する「STI(シャロートレンチアイソレーション)とは? トランジスタどうしをどうやって分けるのか」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/what-is-sti/
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