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チップの基本約7分

テープアウトとは? チップの設計を渡したあと、何が起きるのか

テープアウト(tape-out、tapeoutとも書きます)は、チップの設計を終えてチェックし、最終の設計データをフォトマスクづくりに渡す節目です。フォトマスクは、回路を焼き付けるための「原版」です。これができてはじめて、半導体工場は回路を1層ずつウェーハの上につくれます。テープアウトのあとで設計を変えるには、フォトマスクをつくり直すしかありません。お金がかかるうえ、何か月も余計に待つことになります。だからチップを設計する人にとって、テープアウトはプロジェクトでいちばん大事な日です。

なぜ「テープアウト」と呼ぶの?

よくある説明は、昔は最終の設計データを紙テープに、のちには巻いた磁気テープに入れて渡していたので、その名前が残った、というものです。もっと前、フォトマスクの拡大図を黒いテープで透明なシートの上に1本ずつ貼ってつくっていたから、という説もあります。どちらの説も語られています。いまはとっくにコンピューターでデータを送っていますが、名前はそのままです。

テープアウトは、チップの一生のどこにある?

チップはだいたいこう進みます。設計 → テープアウト → マスクづくり → ウェーハ投入、工場で何か月もかけて加工 → パッケージングとテスト → 出荷。テープアウトは、設計と製造の受け渡しの線です。その前、チップはコンピューターの中にしかありません。そのあと、はじめて本物になりはじめます。

設計がテープアウトまでどう進むかは「チップはどうやって設計する?」、チップを設計する会社が半導体工場とどう組むかは「チップの設計会社は、ファウンドリとどう進める?」へ。

半導体設計(IC設計)の流れの図:デジタルチップは、仕様、ハードウェア記述言語で動きを書く、検証、論理合成、配置配線、チェックを経てテープアウトし、マスクがつくられます。実際には何度も前の段階に戻ってやり直します。
チップはコンピューターで設計し、何度もチェックしてからテープアウトし、マスクをつくりに出します。テープアウトまでは何度も戻ってやり直し、そのあとで変えるにはマスクのつくり直しになります。

テープアウトの前後には、一歩ずつ何が起きる?

ステップ1:最後のチェックとサインオフ

  • 何をする:チップ設計の専用ソフト(「EDAとは?」)で、設計全体をもう一度調べます。図形が工場のルールを破っていないか、描いたレイアウトがもとの回路と同じか、信号が時間内に届くか。機能の検証も済ませます(「チップの検証とは?」)。すべて通ったら、責任者が確認して送り出しを認めます。この関門をサインオフと呼びます。
  • なぜ:テープアウトのあと、設計は固まり、もう気軽には変えられません。
  • しないとどうなる:まちがいをひとつ見逃すと、何か月も先にチップが戻ってきてから気づき、マスクをつくり直すしかなくなります。

ステップ2:設計データを渡す

  • 何をする:層ごとの図形をデータにまとめて渡します。すべての層の図形を重ねたひとそろいを、レイアウトと呼びます。あとで、層ごとに少なくとも1枚のフォトマスクをつくります。
  • なぜ:マスクはこのデータをもとにつくられ、あとでウェーハに焼き付く図形は、すべてここから来ます。
  • しないとどうなる:1層渡し忘れたり、版をまちがえたりすると、できたマスクはチェックした設計と合いません。

ステップ3:図形を「焼き付けられる形」に直す

  • 何をする:いちばん細い層では、図形を先にコンピューターで変えておきます。これをOPC(光近接効果補正)と呼びます。
  • なぜ:チップの線は、露光に使う光の波長より細いからです。そのまま焼き付けると、角は丸くなり、線の端は短くなります。
  • しないとどうなる:焼き付いた図が設計と合わず、つながるはずのところがつながりません。「OPC(光近接効果補正)とは?」へ。

ステップ4:マスクをつくる

  • 何をする:マスクをつくる工場が、補正した図形から1枚ずつマスクを描き、検査し、修正します。層ごとに少なくとも1枚、一式で数十枚になることもよくあります。
  • なぜ:ウェーハの上の図形は、露光装置がマスク越しに光を当て、縮小して焼き付けたものだからです。
  • しないとどうなる:マスクに欠陥がひとつ残っていると、すべてのウェーハに焼き付きます。「フォトマスクとは?」へ。

ステップ5:ウェーハ投入

  • 何をする:マスクが届いたら、工場は最初のウェーハをラインに入れます。これがウェーハ投入です。新しいチップの最初の数ロットは試作です。
  • なぜ:テープアウトで渡すのは設計で、ウェーハが本当に加工されはじめるのは投入からです。まずつくってみないと、設計と工場のつくり方がかみ合うかわかりません。
  • しないとどうなる:試作をせずにいきなり量産して、設計にまちがいがあれば、すべてのロットがむだになります。テープアウトとウェーハ投入の違いは「ウェーハ投入とは?」へ。

ステップ6:何か月か待って、チップが戻ってくる

  • 何をする:ウェーハは一工程ずつ、何百もの工程を進みます。終わったあと、たいていは切り分けてパッケージに入れ、ようやく最初のチップが設計した人の手に戻ります。
  • なぜ:チップは1層ずつつくり、どの工程でも装置の順番を待つからです。工場の中だけで平均3か月ほど、とよく言われます(「ウェーハをつくるのにどれくらいかかる?」)。
  • 急ごうとすると:どの工程でも優先してもらえば待ちは少し減りますが、何百もの工程はひとつも省けません。だからテープアウトの日に、最初のチップが届く時期もほぼ決まります。

ステップ7:テストして、まちがいがあればもう一度テープアウト

  • 何をする:チップをテスト装置や基板につなぎ、仕様どおりに動くか1項目ずつ確かめます(「チップはどうテストする?」)。
  • なぜ:コンピューターでどれだけシミュレーションしても、本当にできたチップと完全に同じではないからです。
  • しないとどうなる:問題が、使う人の手に渡ってからはじめて見つかります。テストでまちがいが見つかったら、設計を直してもう一度テープアウトします。これを版の作り直し(リスピンとも呼びます)といい、何度か作り直すチップも多いと言われます。
テープアウト前後の流れ:設計、チェックとサインオフのあとでテープアウトし、図形の補正、マスクづくり、ウェーハ投入、工場で何か月も、切り分けてパッケージに、テストと進む。仕様どおりなら量産へ。まちがいがあれば設計を直してもう一度テープアウトし(リスピン)、小さなまちがいなら配線の層のマスクだけつくり直すこともある。
テープアウトは境目の線です。その前は設計する側の手もとにあり、まだ直せます。そのあとは図形をコンピューターで補正してから、マスクとウェーハになり、変えるにはマスクのつくり直しと何か月もの待ちが必要です。模式図で、時間の長さは実際の比率ではありません。

テープアウトは、なぜそんなに大ごとなの?

マスクは一度できたら、その図は変えられないからです。変えるには、つくり直すしかありません。つくり直すたびに、ふたつを同時に失います。

  • お金:一式で数十枚、どれも極めて細かく描き、欠陥はひとつも残せないので高価です(「半導体チップは、なぜこんなに高いのか」)。
  • 時間:新しいマスクができたら、ウェーハもまた最初の工程からやり直しで、また何か月もかかります。

だからテープアウトの前、設計チームはもう一度チェックするほうを選びます。テープアウトの日は、チームでお祝いをすることも多い日です。またマスクが高いので、大学の研究や、少しのチップしかいらない設計では、ほかの設計と同じマスク一式に並べていっしょにテープアウトし、同じウェーハでつくって費用を分け合うことがよくあります。これをマルチプロジェクトウェーハ(MPW)と呼びます。

小さなまちがいでも、全部やり直し?

そうとは限りません。チップのいちばん下にはトランジスタがあり、その上に配線が何層も重なっています(「チップの中の配線はどうつくる?」)。トランジスタをつくる層は図形がいちばん細く、マスクもいちばん高価です。

そこで多くの設計では、テープアウトの前に、まだ使っていない予備の小さな回路をチップのあちこちに置いておきます。テープアウトのあとで小さなまちがいが見つかったら、トランジスタより上の配線のつなぎ方だけを変えて、予備の回路をつなぎ込みます。下の層のマスクはそのまま使い、変えた配線の層のマスクだけをつくり直すので、一式をつくり直すより安く済みます。ただ、この方法で直せるまちがいには限りがあり、変更が大きすぎれば一式をつくり直すことになります。

fab24hrでは

ゲームでは、チップを設計する人として遊ぶことはできません。メインストーリー「チップの一生」は、テープアウトのあとから始まります。はじめて遊ぶと、まずプロローグ「テープアウト」。半年前、補聴器をつくる小さな会社がはじめて自分で設計したチップ「Glowmere」の設計が終わってチェックも済み、半導体工場に渡ってフォトマスク一式になります。図鑑の「チップの一生」のページにあるチップの履歴書も、最初の欄はテープアウトです。終章まで遊び終えると、最後のカードの時間の流れも、テープアウトから始まります。

第1章「12枚をどう分ける」はウェーハ投入の前日で、あなたは開発ラインの開発インテグレーションエンジニアです。第1ロットの12枚の分け方を決めます。第3章「不良の形」はウェーハ投入の1〜2か月後で、次のマスクが来週確定します。チップの中に自分たちのTEGを2つ置くかを決めますが、チップの面積はお客さんのものです。

ゲームの会社、チップ、人物は架空のものです。テープアウトとは何か、その前後の流れは、公開されている一般的な資料をもとに書いていて、実際のやり方は会社によって違います。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」をはじめて遊ぶと、まずプロローグ「テープアウト」。補聴器用チップ「Glowmere」の設計が終わってチェックも済み、半導体工場に渡ってフォトマスク一式になります。図鑑のチップの履歴書も、最初の欄はテープアウトです。

fab24hrのメインストーリー「チップの一生」では、Glowmereはもうテープアウトしています。これから何か月も、たくさんの人の手を渡っていきます。各章で、あなたはそのひとりです。

メインストーリーを、テープアウト後の最初のウェーハから遊ぶ

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

この記事を引用する「テープアウトとは? チップの設計を渡したあと、何が起きるのか」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/what-is-tapeout/
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