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ニュースのことば約9分

チップの設計会社は、ファウンドリとどう進める? 発注から納品までの流れ

ニュースでよく見る「あのチップがファウンドリで生産を始めた」の裏には、チップの設計会社と半導体工場のあいだの長い流れがあります。まずプロセスを選んで設計ルールを受け取り、生産枠と日程を決める。設計を渡してマスクにし、ウェーハを投入して工場で数か月かけてつくり、検査してから、後工程工場でテストと組立をする。テープアウトからチップが手元に届くまで、数か月かかるのがふつうです。

ファウンドリとは何かは「ニュースの「ファウンドリ」とは?」で書きました。この記事では、2つの会社が1ステップずつどう進めるかを見ていきます。

発注から納品まで、どんなステップがある?

本の出版にたとえてみます。出版社が原稿を印刷会社に渡し、紙と印刷日を決めてから、印刷会社が版をつくり、刷って、製本します。チップも同じですが、どのステップも、もっと時間とお金がかかります。おおまかに8つのステップです。

チップの分業:IC設計会社が回路を描き、それをフォトマスクにして半導体工場がウェーハの上につくり、後工程の会社がテストしてパッケージに入れ、製品に組み込まれます。材料と装置はサプライヤーが半導体工場と後工程の会社に届けます。
チップはおおまかに3段階でつくられ、それぞれ別の会社が担うことがよくあります。材料と装置はほかの会社が供給します。

ステップ1:プロセスを選び、設計ルールとデバイスモデルを受け取る

  • 何をする:ファウンドリと、プロセスの世代と、その世代の中のどの版かを選びます(同じ世代でも、速さ重視、省電力、待機中のリークがとくに少ないもの、といった何種類かに分かれていることがよくあります)。ファウンドリからは、設計用のファイル一式が渡されます。PDK(プロセス・デザイン・キット)と呼ばれることが多く、設計ルール(線をどこまで細くできるか、2本の線をどこまで近づけられるか)、トランジスタのモデル(回路の速さや消費電力をコンピュータで計算するためのもの)、チェック用のルールファイルが入っています。
  • なぜ:トランジスタのでき方は、会社ごと、世代ごとに違います。設計は、その工場でつくれるものに合わせて描く必要があります(「チップはどうやって設計する?」へ)。
  • しないと:ルールが違えば、チェックを通りません。モデルが違えば、できあがったチップの速さや消費電力が、コンピュータの計算と大きくずれます。

ステップ2:生産枠と日程を決める

  • 何をする:テープアウトはだいたいいつか、最初に何枚投入するか、その後は毎月どれくらい要るかを話し合います。ファウンドリは装置の予定に入るかを確かめ、枠を押さえます。生産枠を確保するために、先にお金を払う契約もあります。
  • なぜ:ウェーハは、つくるのに何か月もかかり、装置の予定は埋まっていることがよくあります(「半導体工場の生産管理は何をしている?」へ)。
  • しないと:設計ができても枠に入れず、待つしかありません。製品がよく売れても、増やせません。

ステップ3:テープアウトして、設計データを渡す

  • 何をする:設計のチェックがすべて通ったら、最終のレイアウトデータ(各層の図形)をファウンドリに渡します。これをテープアウトといいます(「テープアウトとは?」へ)。受け取ったファウンドリも、自分でもう一度チェックします。
  • なぜ:次のマスクづくりは高くて時間がかかるので、まちがいはここで見つけておきたいからです。
  • しないと:ウェーハができてからまちがいに気づくと、お金と数か月がいっしょに消えます。

ステップ4:マスクをつくる

  • 何をする:いちばん細かい層は、パターンをまずコンピュータで補正します。それから各層をフォトマスクにして、検査します。フォトマスクは回路を焼き付けるための「原版」で、1セットで数十枚になることがよくあります(「フォトマスクとは?」へ)。
  • なぜ:パターンは、マスク越しに光を当ててウェーハに焼き付けます。印刷に先に版が要るのと同じです。
  • しないと:マスクに見落とした欠陥が1つあれば、すべてのウェーハに焼き付きます。

ステップ5:ウェーハ投入

  • 何をする:マスクが届き、流す工程の順番が決まったら、最初のロットのウェーハを生産ラインに載せ、最初の工程を始めます。これがウェーハ投入です(「ウェーハ投入とは?」へ)。
  • なぜ:数か月後にどれだけ、だいたいいつ納められるかは、この日でほぼ決まるからです。
  • しないと:投入が1週間遅れれば、出荷も1週間遅れます。途中で増やしたくても、たいていは最初の工程からやり直しです。

ステップ6:ウェーハが1工程ずつ、数か月かけて進む

  • 何をする:ウェーハは数百の工程を通り、1層ずつ積み上がっていきます。業界ではよく、平均3か月くらいと言われ、先端のプロセスほど長くなります(「ウェーハをつくるのにどれくらいかかる?」へ)。途中で装置が止まったりロットがホールドされたりすれば、ファウンドリはお客さんに、遅れるかどうかを伝えます。
  • なぜ:チップは数十層あり、どの層も焼き付け、エッチング、成膜、測定が要ります。時間の大半は、装置の順番待ちです。
  • しないと:工程を1つ飛ばせば、チップの層が1つ足りません。早くしたければ、待ち時間を減らすしかなく(たとえば特急ロットにする)、工程は減らせません。

ステップ7:出荷前にWATを測り、データを渡す

  • 何をする:ウェーハができたら、まずWATです。チップとチップのあいだに測定用に置いた小さな構造にプローブを当て、トランジスタや抵抗といった基本の数字が合っているかを見ます(「WATとは?」へ)。この数字は、ウェーハといっしょにお客さんへ渡されることがよくあります。
  • なぜ:このロットが約束どおりのプロセスでつくられ、お客さんが設計に使ったモデルと合っていることを示すためです。
  • しないと:ずれても気づかないまま、テストされ、切られ、組み立てられて、お金と時間がむだになります。

ステップ8:後工程工場へ送る

  • 何をする:ウェーハを出荷用の密閉ケースに入れ、お客さんの手配どおり後工程の工場へ送ります。そこでウェーハテストで1個ずつ測り、ウェーハマップを描いてから、切り分け、パッケージに組み立て、もう一度テストします(「チップはどうテストする?」へ)。
  • なぜ:チップはまだウェーハの上でつながっていて、パッケージもないので、そのままでは回路基板にはんだ付けできません。
  • しないと:不良を先に取り除かないと、いっしょにパッケージされ、お金がよけいにかかり、お客さんの手元まで届いてしまうこともあります。

最初の試作は、なぜ「シャトル」に乗ることが多い?

サンプルを何個かつくるためだけにマスクを1セットつくるのは、高すぎます。よくあるやり方がマルチプロジェクトウェーハ(multi-project wafer、略してMPW)で、シャトルとも呼ばれます。何社かの設計を同じマスクのセットに詰め込み、1回分のウェーハでいっしょにつくって、費用を分け合います。乗り合いバスのようなもので、1台貸し切りにしなくていいかわりに、時刻表どおりに出発します。

  • よいところ:費用のごく一部で、実際に工場でつくったチップが手に入ります。大学でも使われていて、学生が自分で設計したチップを実際につくれます。
  • 引きかえに:出発日は決まっていて、乗り遅れたら次の便を待ちます。戻ってくるチップの数は限られ、多くはテスト用です。大量に出荷する製品は、やはり自分のマスクを1セットつくります。

エンジニアリングロットと量産ロットは何が違う?

自分のマスクを1セットつくった場合でも、新製品の最初の何ロットかは、たいていエンジニアリングロットです。試すため、問題を見つけるためのもので、売るためではありません。何枚かをわざと速め・遅めにつくり、設計が持ちこたえられるかを見ることがよくあります。これがスプリット実験で、そのずらし方をコーナーと呼びます。

量産ロットは、お客さんに渡して売るためのものです。固定された標準のやり方(POR)どおりに流し、どのロットも同じにつくります。量産に移る前には、たいていいくつかの関門があります。歩留まりが十分に安定していること、信頼性試験に通ったこと、お客さんが認めたこと。試験が終わる前に投入してしまうのがリスク投入です。

うまくできなかったら、途中で変えたくなったら?

最初のロットが、一度ですべてうまくいくとはかぎりません。設計会社はチップを基板に載せてテストし、ファウンドリはWATとウェーハマップを見て、どの工程がずれたかを探します。同じデータを見ながら両方で原因を探し、歩留まりはロットごとに上がっていきます(「チップが大きいほど、歩留まりが下がるのはなぜ?」へ)。

  • 設計がまちがっていた:設計を直してもう一度テープアウトし、変わった層のマスクをつくり直して、ウェーハは最初からです。費用を抑えるよくある方法は、あらかじめ予備の論理ゲートをチップのあちこちに置いておくことです。直すときはトランジスタの上の配線だけを変え、変わった層のマスクだけをつくり直します。
  • ファウンドリがプロセスを変えたい:お客さんが確かめたのは、もとのやり方でつくったチップです。だから、お客さんに影響する変更は、先に正式に知らせます(「半導体工場の変更管理とは?」へ)。

次にニュースで見たら、こう読める

  • 「新しいチップがテープアウトした」:設計を渡し、これからマスクをつくる段階です。チップはまだ誰の手元にもありません。
  • 「ファウンドリで生産を始めた」:ウェーハをつくり始めたということ。できるまで数か月かかり、そのあとにテストと組立があります。
  • 「サンプル出荷を始めた」:チップを買う会社に、試してもらうためのチップを少し送り始めたということ。まだ大量出荷ではありません。
  • 「来年まで受注で埋まっている」:来年までの生産枠の多くに、もうお客さんの注文が入っているということ。新しい注文は、枠が空くのを待ちます。

fab24hrでは

メインストーリー「チップの一生」は、架空の補聴器用チップ「Glowmere」を追いかけます。プロローグ「テープアウト」で、その設計が半導体工場に渡り、フォトマスク一式になります。第1章「12枚をどう分ける」はウェーハ投入の前日です。あなたは開発ラインの開発インテグレーションエンジニアで、第1ロットの12枚をどう分けるかを決めます。顧客の製品エンジニアのレオが、ビデオ通話でスプリット表を見にきます。第4章「2週間前倒し」では、信頼性試験はまだ3週間残っています。それを待つか、リスク投入にするか、お客さんへの提案をあなたが決めます。

「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてプロセスインテグレーションエンジニア(Beta)を選びます。深夜、新製品の第1ロットの電気テストの結果が出て、朝8時には後工程工場へ出荷の予定です。夜は、顧客のレオがオンラインで、あなたの説明を待っています。「後工程工場」を押して顧客窓口までスワイプすると、その夜シフトがメインストーリー第12章「出荷前夜」です。

ゲームの会社、チップ、人物、数字は架空のものです。設計会社とファウンドリがどう進めるかは、公開されている一般的な資料をもとに書いていて、実際のやり方は会社によって違います。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。

ゲームのどこで出会うかメインストーリー「チップの一生」はプロローグ「テープアウト」から始まります。Glowmereの設計が半導体工場に渡り、フォトマスク一式になります。第1章「12枚をどう分ける」では、顧客の製品エンジニアのレオがビデオ通話で、第1ロットの12枚の分け方を見にきます。「工場の一日」で量産工場のプロセスインテグレーションエンジニアになると、夜、お客さんがオンラインであなたの説明を待っています。後工程工場の顧客窓口なら明日が出荷で、お客さんに何を聞かれても答えられるようにしておきます。

fab24hrのメインストーリーでは、小さな会社が設計したチップがテープアウトから始まり、開発ライン、量産工場を通って、後工程工場から出荷されるまでを追いかけます。

第1章から:お客さんの最初のウェーハをどう分ける

先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。

この記事を引用する「チップの設計会社は、ファウンドリとどう進める? 発注から納品までの流れ」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/foundry-order/
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