稼働率とは? 装置のアップ、ダウンの時間はどう数える?
稼働率とは、装置の時間のうち、どれだけを生産に使えたかのことです。英語では uptime や availability と呼ばれます。製品を流せる状態がアップ、流せない状態がダウンです。稼働率は、装置がどの時間にどの状態だったかを記録し、それを百分率にしたものです。計算のしかたは工場によって少し違います。このあと説明します。
装置はとても高価で、動いていてもいなくても毎日価値が目減りしていくので、工場はこの数字を毎日見ています(「半導体工場はなぜ24時間止まらないのか」)。
装置の時間は、どんな状態に分けられる?
公開された国際規格があり、ある期間の1分1分を、重なりのない6つの状態に分けます。
| 状態 | 意味 |
|---|---|
| 生産 | 予定どおり、出荷するウェーハを流している |
| 待機 | 装置は正常で流せるが、いまはロットがない |
| エンジニアリング | 装置は正常だが、実験や新しい条件の試しに使われている |
| 計画停止 | 前もって予定した停止。たとえばメンテナンス |
| 計画外停止 | 予定していなかった停止、つまり故障 |
| 非稼働時間 | もともと使う予定がない時間。工場の停止、休日、新しい装置の据え付け中など |
タクシーの一日にたとえると、お客さんを乗せて走っているのが生産、空車でタクシー乗り場に並んでいるのが待機、整備工場での点検が計画停止、走っている途中の故障が計画外停止、運転手さんの休みの日が非稼働時間です。メンテナンスとはPMのことで、なぜ定期的に止めるのかは「装置のPM(予防保全)とは?」をどうぞ。
故障による停止は、いつまでを数える? fab24hrでは、装置が本当に製品を流せるようになるまでです。修理が終わっても、そのあとのテストランに通るまではロットを入れられないので、その時間も停止に入ります(「装置が直ったのに、なぜ『テストラン』をするのか」)。
なぜこんなに細かく分けるのでしょう。同じ「生産していない」でも、原因が違えば打つ手も違うからです。故障なら装置担当、メンテナンスの入れ方が悪ければメンテナンス計画、ロットがなければ着工の順番を決める人。全部を「止まっていた」とだけ記録すると、どこから手をつければいいかわかりません。
稼働率はどう計算する? 工場によって数字が違うのはなぜ?
計算しやすい例を挙げます(数字は作ったもので、どの工場のものでもありません)。ある装置の1日24時間のうち、生産18時間、待機2時間、エンジニアリング1時間、メンテナンス2時間、故障1時間だったとします。
- ロットを流している時間だけを数える:18 ÷ 24 = 75%。
- 装置が正常な時間を数える:生産+待機+エンジニアリング=21時間、21 ÷ 24 ≈ 88%。
同じ装置の同じ日で、数字が2つ出てきます。英語では後者を uptime と呼ぶことが多く、availability や utilization という言葉もよく使われますが、指す範囲は場所によって違います。分母も違うことがあります。すべての時間を使うところもあれば、もともと使う予定のない時間を先に引くところもあります。だから、2台の装置や2つの工場の稼働率を比べる前に、まず「どう計算した?」と聞きます。
故障だけを見るなら、よく使われる数字がさらに2つあります。
- MTBF(mean time between failures、平均故障間隔。どれくらいの間隔で壊れるか):ある期間に装置が正常に働いた時間を、壊れた回数で割ったもの。「1回壊れた」と数えるのは予定外の故障だけで、予定したメンテナンスは入りません。
- MTTR(mean time to repair、平均修復時間。1回あたり平均どれくらいで直るか):故障で止まっていた時間の合計を、壊れた回数で割ったもの。手を動かして修理している時間だけを数えるところもあれば、故障に気づいてから製品を流せるようになるまでを数えるところもあります。
MTBFが長いほど、MTTRが短いほど、故障に取られる時間は少なくなります。
稼働率を上げるには? 順番に見る
ステップ1:すべての時間の状態を記録する
何をする:装置の状態が変わるたびに、時刻と理由を記録します。多くの状態は装置が自分で工場のコンピューターに知らせますが(「MESとは?」)、止まって何を待っているのかは、人が書き足すことが多いです。なぜ:時間がどこへ行ったのかは、記録があってはじめて見えます。やらないと:「稼働率が下がった」としかわからず、故障なのか、メンテナンスなのか、ロットがないのかが言えません。状態を間違えて記録すると、数字はよく見えても、問題が隠れてしまいます。
ステップ2:時間を並べて、いちばん大きいところから手をつける
何をする:1か月の各状態の時間を合計し、大きい順に並べます。故障の時間は、どの部品か、どのアラームか、原因ごとにさらに分けます(「装置のアラームとワーニングとは?」)。なぜ:人も時間も限られているので、いちばん大きいところが先です。それから、ライン全体でいちばん混んでいる工程、つまりボトルネックを先に見ます。そこが1時間止まれば、ライン全体の生産が1時間分減るからです(「半導体工場の生産管理は何をしている?」)。やらないと:小さなところに力を使い、ライン全体の出来高は変わりません。
ステップ3:故障を減らす(MTBFを延ばす)
何をする:なぜ壊れるのかを突き止め、原因から直します。壊れやすい部品を替える、メンテナンスの内容を変える。前ぶれにも目を配ります。たとえば何度も出る黄ランプや、FDCの上で少しずつずれていく数字です。なぜ:不具合を取り除かなければ、何度でも戻ってきます。やらないと:リセットを押して装置をとりあえず動かすだけになり、次もまた夜中に止まるかもしれません(「根本原因分析とは?」)。
ステップ4:故障を早く直す(MTTRを縮める)
何をする:1回の停止を分けて見ます。気づく、人を呼ぶ、人が来るのを待つ、原因を探す、部品を待つ、直す、テストランをする。どこがいちばん長いかを見て、よく使う部品は先に用意し、対応の手順をSOPにし、夜はオンコールの人を決めておきます。なぜ:停止時間の一部は、直しているのではなく「待っている」時間だからです。やらないと:止まっている時間が長いほど後ろにロットがたまり、Qタイムを超えるロットが出るかもしれません。
教科書にこんな例があります。稼働率が同じ2台の装置で、片方は短い停止がたびたび、もう片方はまれに長く止まる。後者の後ろのロットは、平均してずっと長く待つことになります。一度長く止まると、ロットが一気にたまるからです(「ウェーハをつくるのにどれくらいかかる?」)。
ステップ5:メンテナンスは、時期を選び、ちょうどよく
何をする:メンテナンスの日はたいてい少し前後に動かせるので、ロットが少なく、同じ工程にほかに流せる装置があるときを選びます。部品や工具を先にそろえておけば、メンテナンス自体も短くなります。なぜ:メンテナンスも停止で、時期を誤れば、故障と同じように後ろのロットをせき止めます。やらないと:多すぎればメンテナンスに時間を取られ、少なすぎれば故障が増えます(「装置のPM(予防保全)とは?」)。
ステップ6:ロット待ちは、着工の順番を決める人といっしょに見る
何をする:装置は正常なのにロットがないとき、原因は装置にないことが多いです。前の工程が遅い、あるいはロットがほかの装置へ回された。これは製造部のディスパッチや生産管理といっしょに見ます(「半導体工場の製造部は何をしている?」)。なぜ:待機の時間は、装置担当が修理してなくせるものではありません。やらないと:ボトルネックの装置が空いて待っていると、ライン全体の生産がそのまま減ります。ただし、ボトルネックでない装置に少し空きがあるのはふつうのことです。
稼働率は高いほどいい?
そうとは限りません。数字は「削る」ことでよく見せられますが、その代償はあとで返ってきます。
- メンテナンスを削る:今月の停止は減っても、あとで故障が増え、長く止まります。
- テストランを削る:装置は早く生産に戻ります。でも本当は直っていなければ、お客さんのウェーハが1ロットまるごと不良になり、リワーク、ときにはスクラップです。
- どの装置も目いっぱい詰める:装置がずっと空かない状態に近づくほど、ロットの待ち時間は長くなります。
業界では OEE(設備総合効率)もよく見ます。「動いているか」に加えて、「十分な速さで動いているか」と「作ったものが良品か」を掛け合わせた数字です。
fab24hrでは
「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプしてプロセスエンジニアで止め、名前の下の「エッチング」を押します。
- 朝シフト「火消し」:朝会の前に、装置のカイさんに、今日10:00のチャンバーBのメンテナンスを明日に延ばしてもらうよう頼みます。「チャンバーAがいまダウンしているので、両方止まると装置全体の生産能力がなくなります」。08:30の朝会では、生産ボードの2つが赤ランプです。MOVE達成率82%と、「ETCH-03稼働:チャンバーAダウン、02:47から」。課長に「何時に復旧できる?」と聞かれます。チャンバーAが復旧すると、そのマスは「チャンバーA復旧済み、今日9.8h停止」に変わります。
- エッチング装置ETCH-03を押す:カードに「装置時間の6つの状態」の表があり、今日の赤ランプは「計画外停止」に入ります。
- スマホを開く:いちばん上に並ぶ付箋も同じ6つの状態(UP、IDLE、ENG、PM、DOWN、OFF)で、自分の分を1つ選べます。
ゲームに出てくる会社・人物・装置番号・ボードの数字は架空です。稼働率とは何か、装置の時間をどう分けるかは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。実際の状態の名前や計算のしかたは、工場ごとに違います。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかエッチングのプロセスエンジニア(量産工場 › プロセス › エッチング)としてプレイすると、朝シフト08:30の朝会で、生産ボードの「MOVE達成率」と「ETCH-03稼働」の2つが赤ランプになっていて、課長に何時に復旧できるかと聞かれます。エッチング装置ETCH-03を押すと、カードに装置時間の6つの状態の表があります。
fab24hrでは、ETCH-03のチャンバーAが02:47に止まってからの1分1分が、ボードのあの赤いマスに入っています。何時に直るのか、後ろのロットはどうするのか。朝会では、みんながあなたの答えを待っています。
エッチングのプロセスエンジニアで遊び、朝会で復旧の時刻を聞かれる先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「稼働率とは? 装置のアップ、ダウンの時間はどう数える?」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/tool-uptime/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
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