欠陥検査とは? ウェーハ上のパーティクルや傷をどう見つける?
半導体工場でいう欠陥検査(英語ではdefect inspection)は、ウェーハ全体を見て、あってはならないものがどこにあるかを探すことです。余計なパーティクル(微粒子)、1本の傷、角が欠けたパターン、洗い落とすはずだった残りかす。見つけたら、その一部を電子顕微鏡でよく見て正体を確かめ、すべての点を地図に描いて、どう分布しているかを見ます。そこから、どの工程、どの装置に問題があったかを判断します。
欠陥検査と計測はどう違う?
計測が問うのは「どれだけ」。膜の厚さ、線の幅、上下の層がどれだけずれずに重なっているか。数字が正しいかを確かめます。検査が問うのは「おかしなところはないか」。ここに余計なものがないか、あそこが欠けていないか。2つの役割分担や、膜厚と線幅の測り方は「半導体工場は、工程がうまくいったかをどう確かめる?」で書きました。この記事では検査だけを、最初から最後までたどります。
ウェーハ上の欠陥はどんな見た目?
よくあるのは次のようなものです。
- 余計なものがある:パーティクル、前の工程の残りかす、乾いた水の跡。
- 欠けている:パターンの角が欠ける、線が途中で切れる。
- つながっている:離れているはずの2本の線のあいだに小さなかたまりがあり、つながってしまう。
- 傷:硬いものが引きずられて、1本の線が残る。
欠陥がすべてチップをだめにするわけではありません。チップとチップのあいだのすき間や、影響のない場所に落ちれば、チップはそのまま動きます。線を切ったり、2本の線をつないだりすれば、そのチップは不良です。線が細いほど、小さなパーティクルでも致命傷になります。欠陥が多いほど不良のチップが増え、歩留まりが下がります(「ニュースの「歩留まり」とは?」)。
欠陥はどう見つける? 順を追って
ステップ1:光でウェーハ全体を走査する
検査装置は光を当てながらウェーハ全体を走査し、怪しいところを見つけるたびに、その位置とおおよその大きさを記録します。光を使うのは、ウェーハ全面を見きれるほど速いからです。電子顕微鏡のほうがずっとよく見えますが、遅すぎて、全面をそれで調べていたらロットが止まったままになります。全面を走査しなければ、いくつかの場所しか見られず、ほかに落ちたものはすべて見逃します。
ステップ2:となりのチップと比べ、違うところを記録する
1枚のウェーハ上のチップはどれも同じパターンなので、装置は各チップをとなりのチップと比べ、同じところは無視し、違うところを座標つきで怪しい点として記録します。こうするのは、チップの上はもともと線だらけで、1枚の画像だけでは、どれが設計どおりの線で、どれが余計なかたまりかが分からないからです。となりと比べなければ、線のすべてが欠陥に見え、本物の欠陥がその中に埋もれてしまいます。
ステップ3:一部を電子顕微鏡でよく見る(欠陥レビュー)
光でわかるのは「ここに何かがある、大きさはこのくらい」だけで、それが何かはわからないので、電子顕微鏡が座標をたどって一部の点を拡大して撮り、パーティクルか、傷か、残りかすか、2本の線がつながったものかに分類します。これを欠陥レビューと呼び、今はコンピュータが先に分類し、人が確かめることが多くなっています。分類するのは、欠陥の種類によって出どころが違うからです。よく見ずに直しにいくと、別の装置を直してしまうかもしれません。
ステップ4:すべての点を欠陥マップに描き、分布を見る
どの点にも座標があり、ウェーハの図の上に描くと欠陥マップになります。形を見るのは、散らばる、ひとかたまりになる、線に並ぶ、で疑う原因が変わるからです(次の節)。「このウェーハに何個」と数えるだけでは、どの工程が悪いのかわかりません。同じ30個でも、散らばったものと弧を描いて並んだものは、まったく別の話です。
ステップ5:管理限界を超えたら、止めて原因を探す
走査したウェーハごとに、欠陥の数を管理図に1点打ちます。点が限界を超えたら、そのロットをいったんホールドし、OCAPに沿って、このウェーハがどの装置を通ったか、どのロットから数が増えはじめたかを調べます(「SPCの管理図とは?」「OCAPとは?」)。止めるのは、原因が残っていれば、あとのロットも同じ目にあうからです。止めなければ、問題のある装置がロットを次々に処理し、だめになるウェーハが増え続けます。
欠陥マップの形は、何を指している?
以下は教科書や論文でよく挙げられる方向です。どれも手がかりで、答えではありません。
- 規則性なく散らばる:ランダムに落ちたパーティクルに近く、ひとつの原因を見つけるのは難しい。
- ひとかたまり:どこか1か所で何かが起きた。たとえば薬液が残したしみ、装置の中から落ちてきたかたまり状のごみ。
- 1本の線、1本の弧:多くは傷です。搬送用のアームがこすったのかもしれません。CMPで磨くとき、研磨液の中で固まった大きな粒や、研磨パッドのくずが引きずられたのかもしれません(「CMPとは?」)。
- 外周に集まる:ウェーハのいちばん外側は、もともと均一に仕上げにくい場所です。ウェーハをつかんだり運んだりするときに触れるのも端です。
- 露光のショットごとに同じ位置:露光装置は1ショットずつ焼き付けるので、問題はフォトマスクについてくることがよくあります。マスクの汚れ1つが、ショットのたびに焼き付けられます(「半導体工場のマスクエンジニアは何をしている?」)。1ショットに何個ものチップが入ることが多く、汚れが焼き付くのはそのうち1個だけなので、ステップ2のとなりとの比較で見つかります。1ショットにチップが1個だけのときは、引き算で一緒に消えてしまうので、設計データと比べたり、フォトマスクそのものを検査したりして見つけます(「半導体工場は、工程がうまくいったかをどう確かめる?」)。
もうひとつの方法もあります。同じウェーハを、ある工程の前に走査し、あとでもう一度走査する。増えた点が、その工程で加わった分です。装置を確かめるためだけに流すモニターウェーハも、よくこの使い方をします(くわしくは「モニターウェーハ、ダミーウェーハとは?」)。
ウェーハが完成すると、ウェーハテストで1個1個のチップの良品・不良を位置どおりに描いたウェーハマップができます(「WATとは? ウェーハマップから、どこで失敗したかをどう読む?」)。途中の欠陥マップをそれに重ねると、どの種類の欠陥が落ちたチップが本当に不良になったか、どの種類は影響がなかったかがわかります。ウェーハマップの読み方は、欠陥マップとよく似ています。
なぜ全部のウェーハを、全部の工程で検査しないのか
1枚走査するにも時間がかかり、検査装置の台数にも限りがあります。全部のウェーハを全部の工程で走査すれば、ロットが検査装置の前に並び、1枚のウェーハが仕上がるまでの時間がのびます。小さなものを探そうとするほど走査は遅くなり、誤報も増えます。規格内のわずかな膜厚や線幅の違いまで「違う」と拾ってしまうからです。
そこで多くは抜き取りです。1ロット(ウェーハケース1つに最大25枚)から数枚だけを走査することが多く、それも大事な工程のあと、たとえばリソグラフィの現像のあと、エッチングのあと、CMPのあとに置きます。とくに大事なのは現像のあとの検査です。パターンはまだレジストの上にしかないので、問題があればはがしてリワークできます。エッチングしてしまえば、もう戻れません。新しいプロセスや修理したばかりの装置はこまめに走査し、安定すれば回数を減らします。
パーティクルはどこから来る?
大きく分けて4つです。
- 人:皮膚のかけら、髪の毛、衣服の繊維。だからクリーンルームでは防塵服を着ます(「クリーンルームでは、なぜ全身を覆う防塵服を着るのか」)。
- 装置:動く部品はすり減ってくずを出します。チャンバーの壁に少しずつ積もったものは、厚くなるとはがれ落ちます。ウェーハを運ぶアームがこすったり、ぶつけたりすることもあります。
- 薬液、水、ガス:薬液、洗浄用の水、装置に送るガスの中の小さな粒が、いっしょにウェーハに乗ってしまいます。
- 空気:天井のフィルタと、上から下へ吹く風で防ぎます(「クリーンルームはどれくらいきれい?」)。
だから欠陥マップに点が増えたとき、探すのは「誰がほこりを持ちこんだか」だけではありません。どの装置、どの薬液のタンクに問題があるかを探すことも多いのです。
fab24hrでは
「出勤」を押して「工場の一日」を選び、「今日のあなたは」のカードで「量産工場」を押し、左右にスワイプして装置エンジニアで止め、名前の下の「CMP」を押すと、CMP装置エンジニアになります。昼シフトの13:40、CMPプロセスのピンユーから電話が来ます。MET-05が、午前中にCMP-02で磨いたモニターウェーハを走査し終えたところで、表面に曲がった傷が数本ある。同じ時間帯に磨いたC-4111は、先にホールドしたそうです。MET-05で欠陥スキャンの図を開き、たくさんの輝点の中から今回の問題を指します。平行で、同じ向きに曲がった3本の線は、引きずられてできたもの。外周の数個や、ばらばらの小さな輝点は、いつもあるものです。続いて研磨液の供給キャビネットで1項目ずつ確かめ、フィルタが詰まっていることを突き止めます。
同じ工場のリソグラフィのプロセスエンジニアは、夜シフトの18:30、現像後検査から連絡を受けます。P-8A02の全ウェーハに同じ欠陥がある。ウェーハ全体のショットの中から、どのショットでも同じ位置にあるその点を見つけます。洗浄のプロセスエンジニアの朝シフトでは、モニターウェーハの洗浄後のパーティクル数が3日続けて上がっていて、洗う前と洗ったあとを1枚ずつ比べます。品質保証エンジニアの深夜シフトでは、出荷前の表面検査で25枚から5枚を抜き取ったところ、2枚の外周に傷があり、そのうち1本はチップが並ぶ場所まで入りこんでいます。
ゲームの会社、人物、装置番号、ロット番号は架空のものです。欠陥検査の進め方、傷やパーティクルの出どころは、公開されている一般的な資料をもとに書いています。ほかの用語は「半導体工場の業界用語を、やさしく解説」へ。
ゲームのどこで出会うかCMP装置エンジニア(量産工場 › 装置 › CMP)を遊ぶと、昼シフトにMET-05がモニターウェーハを走査し終え、欠陥スキャンの図に曲がった傷が数本出ています。リソグラフィのプロセスエンジニアの夜シフトでは、現像後検査から「全ウェーハに同じ欠陥がある」と連絡が来ます。
fab24hrでは、欠陥スキャンの図に曲がった線が3本。装置を止めるか、研磨液のどこに問題があるのか、調べるのはあなたです。
CMP装置エンジニアで遊び、欠陥スキャンの図から傷を見つける先生へ:この記事は「授業でfab24hrを遊ぶ」と組み合わせて授業で使えます。
この記事を引用する「欠陥検査とは? ウェーハ上のパーティクルや傷をどう見つける?」fab24hr、更新。https://fab24hr.com/ja/blog/defect-inspection/
授業や非営利の目的なら無料で使えます。投影、プリントへの掲載、生徒への配布もかまいません。fab24hrと明記してください。販売することや、自分の作品として使うことはできません。 誤りを見つけたら報告
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